時計
俺は、渚。
俺は今日、自分への誕生日プレゼントに時計を買った。
そこは、お世話になっている店なのだが、店主に
「その時計は買うな。絶対にだ。」
と念を押された。
理由も言われなかったので、そのまま購入した。
その時計は中古品だが、「幸せを呼ぶ時計」と言われているものだった。
「さて、今日は…2010/12/31か…ま、今日誕生日だし分かってはいたけどね。今年も終わりかぁ…」
この時計を買って、数十年が経過した。
孫も立派に成長して、企業を立ち上げた。
一度目は失敗したのだが、二度目は成功して、あまり大きな会社では無いが、今では有名な会社になった。
その孫が、曾孫を連れてきた時にはどれ程嬉しかったか。
今でもその喜びは忘れず残っている。
今日は、俺の誕生日だ。
友人や家族を呼んで、色々な話をした。
買い忘れたものがあったりもしたが、体力の減少も筋力の衰えも感じていなかったので、俺が買いに行った。
「今日は…2110/12/31か…まぁ、分かってるけど。」
俺は、凪。
ある店の店長をしているのだが…今、ひどく後悔している。
売ってしまった。売ってはいけないものを売ってしまった。
「お父さん!大丈夫?」
その声で、意識が戻った気がした。
その声の主は、今この店で働いている娘だった。
私は、娘にその日起きた事を話した。
私は…それを売ってしまったのだ。
死を奪う、呪いの時計を。
忘却の時計を。