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2話:狼獣人と美少女、行き先の方針を決める

12年前、シエル村(ガルシアとルインの故郷)


「グスッ……グスッ……」


()、ガルシアは村の近くの川で泣いていた。


この世界で6歳になる子供は魔力がどれくらい有るかを確かめる為に町や村にある魔力計測器に触れて量と質を調べる…


だけど……


「痛ッ!?」


いきなり頭に硬い何かがぶつかって僕の頭に血が流れた、僕は振り返ると三人の僕と同じ様に魔力の測定をしていた子が石を持って僕を笑いながら見ていた。


「へっ!こんなところで泣いてる奴が居たんだな!川に投げようとしたけど間違えちゃったぜ!」

「でも良いじゃん別に、こんな()()()()()()()だったら問題無いよ」

「そうそう!こんな何の才能も無い奴なんだから寧ろ的になってくれてアイツも嬉しいだっろ!」


一人が石を投げるとそれを皮切りに二人も僕に目掛けて石を投げ出した、僕はそれを身を屈めて震えて受け続けた。


止めてって言っても止める気なんか無いのは分かってる…寧ろそう言えばもっと石を投げて来るって分かってた僕は泣きながら黙って受け続けた。


「ナニしてんだこのクソ共!」


そんな時、別の声が聞こえた、僕も含めて三人が振り返ると金髪の女の子が猛ダッシュで向かってきた。


「ナニ弱い者イジメしてんだこのボケェ!」

「やっばルインだ!?お前らずらかるぞ!」

「「分かった!!」」

「待てやゴルァ!!」


女の子…ルインは三人を追いかけたけど逃げ出したのが早かったのか諦めた。


「チッ!アイツら後で首の後ろに泥入れてやる」


ルインは悪態を付きながら僕に近づいて来た。


「で?今度はどういう理由でやられたんだ泣き虫狼」

「…」


僕は涙で腫らした目でルイン見た、そして僕は…


「ルインは良いよね…」

「あ?」

「だってルインは魔力測定で魔力がB+だし色んな魔法の適正だって有った…しかもこの村の村長の娘だし…」

「…」

「なのに僕はよそ者だし、魔力だって無い…しかも村でたった一人の獣人だから…」


僕は気付いたらルインと僕を比べてた、ルインの恵まれている環境に嫉妬してた…


でも良いんだ…こんな僕の所に居るより皆の所に居る方がルインは…


「ウリャ!」

「わふっ!?」


ルインは僕の尻尾をいきなり抱き絞めてきたのに驚いて川の畔に一緒に突っ込んでしまい二人ともずぶ濡れになった。


「ゲホッ…なにするの!?」

「ん?尻尾抱きしめた」

「そうだけど…じゃなくて何で!?」

「あのなぁ…あんま私を見くびんなよ…」


ルインは座った目で僕をジッっと見てきて僕は目を反らしたけどルインは僕の上顎と下顎を掴んで向き直した。


「私ゃあ確かにこの村の村長の娘だけどな!こんな村で終わらせる気は更々無い!私はこの村を出て冒険者になる!」

「ええっなんで!?僕なら兎も角ルインが」

「私ゃなあガルシア…村の外で自由気ままに生きたいんだ!このままこの寒村で生涯一生居たくねぇから外出て飯食って酒を飲んで金を稼ぐ!」

「欲望に忠実過ぎないったぁ!?」


無謀にも突っ込んだ僕はルインに頭をひっぱたかれた。


「でも良いだろ?私の人生だから私が決める」


でも言ってる事に惹かれる様になった自分もいた。


「それにたった一人っつうなら私だってこの村でも少ない()()()()()だ、ガルシアお前は将来どうするんだ?」

「どうってそれは…」

「前に言ってたろ?冒険者になって両親の事を知りたいって」


僕はこの村の近くの森にまるで隠れる様に布に巻かれて置かれたのを爺ちゃんに拾われた、唯一分かってる事と両親の手掛かり…僕はルインに言われてハッと首にかけられたモノを見た。


(ガルシア・ヴァン・ウォルフ)


少し細長い箱の様なモノに僕の名前と思われる字が書かれているコレは不思議な箱…箱の上部分の頑丈な紐を着けた場所を押すと反対側に変な金属が飛び出す。


「ホント変なモノだなコレ」

「うん…これが僕と両親とを繋げてくれるモノだから…」

「……諦めるか?」

「イヤだ…やっぱり諦めたくない…」


僕は首を横に振った、それに対してルインは僕を笑顔で迎えてくれた。


「なら良い!第一魔力無しなんて言われてしょげる暇があったら武器を振れって話だ」

「うん…そうだね…僕は…」

「おっと待ったガルシア」

「へ?」

「今度から()なんてナヨナヨした感じじゃなくて()って言え」

「えっ!?でも僕…イッタァ!?」

「言わなかったらお仕置きだ♪」

「そっそんなぁ…」

「まず私が満足するまで何度も言え」

「えっそんな!?」

「言え」

「ハッはい!?」



◆◆◆



現在、オーレシア帝国、酒場。


拝啓、村長様…()は目の前の現状について心の中で村長(ルインの親父さん)に対して手紙を書いていた。


二年前、シエル村から出た俺とルインは帝国を拠点に冒険者として活動しています…村の方はどうですか?ルインの弟君はどうしてますか?貴方に頼まれて俺はルインのガサツさをどうにかしてほしいと村を出る前にコッソリ言ってましたね。


結論から言います、無理です。


俺は今現在のルインの状況を見て断言した、そして当の本人は…


「プッハァ!やっぱ酒ってのはこういうのが良いんだよこういうので!」

「なんだよルイン!確か坊っちゃまのお守りで金はたんまり入ってんだろ?高ぇ酒は飲まなかったのかよ!」

「あんなちょびっとの酒飲んでも仕方ねえだろが!高い癖に量はアイツの短剣より少ねぇんだぞ!満足出来るかっての…その癖アイツは『君の様な子がそんな所に行っちゃいけないよ!彼処は低俗な庶民が行く場所なんだ!僕が良いところに連れていってあげるよ』って言って金はクソ程掛かる癖にあんな少っくねえ飯と酒頼んでしかもコッチの金に手を着けるドクソ野郎が!テメェの金で払えやゴルァ!」

「やっぱ貴族ってクソだな…全員とは言わねぇけど」

「権力を傘に着てる時点でアウトだろ弟よ…特に他種族をゴミの様に見てるのはダメだが…」

「やっぱそうだよなドーン!てかガルシア!お前もミルクばっか飲まねぇで酒飲めや!」


ジョッキ4杯目に入って絡み酒に発展し始めてます。


俺達は大広間で出会った二人の人族の男…この二人は俺達の先輩冒険者でモヒカン頭が兄のドーン・カルマ、ハゲの方が弟のカァン・カルマ、双子の冒険者で現在のランクはBで俺達が駆け出しの頃に色々世話になった二人だ、面倒見はかなり良い…見た目はただのゴロツキだけど…。


俺達が大広間で話した所を二人が見つけ、俺達は誘われるままに一緒に酒場に向かってルインが飲みまくってるってのが顛末だ、本当は断りたい所だけど俺も丁度良い理由があるから付いていったが…


「そりゃ腰を下ろしてたら飲むが今の俺達の状況も考えようぜ?」

「うっ!?けっけどよぉ…」

「あん?なんか訳ありだったのか?」

「ええ、それで二人に相談したい事が…」


俺は二人についさっき前の事を話した、二人はジョッキを一斉に飲んで叩きつけた。


「あー…遂に辞めたか…」

「いや兄貴、コレどっちかって言うと辞めさせられたじゃね?」

「どっちにしろ馬鹿だろあのギザ男、パーティー名の本当の意味も知らなかったっぽいし」

道化(クラウン)だったか…アレ教えて貰った時は爆笑したなぁ…」

「ありゃ私もセンスについては爆笑だったが…寧ろそれの意味を知って吹き出さなかった私も誉めてくれよ」


まっ名付けに付いては俺がやったが…言ったのはアイツだぜ…


「『私が居るパーティーに相応しい名を付けろ獣人』っつったからそうしただけだぜ俺は」

「どちらにしろ大馬鹿だろ、よりにもよってここの冒険者ギルドの稼ぎ頭筆頭をクソな理由で辞めさせて…」


「で、お前らはこの後どうするかって決めたのか?」

「おお…良く私らの実情分かったな」

「俺らだって伊達でBランク冒険者じゃねえぞ、貴族からの指名依頼だってやってりゃ相手の考えを知っとかなきゃ食いっぱぐれるぜ」

「流石…実を言うと俺達は一旦冒険者を辞めようと考えてますね」

「ハアッ!?」


と言うのも理由がある。


俺達冒険者はDランク以上になると冒険者カードが紙で出来た物から鉱石を混ぜたしっかりしたカードに変わる。


このカードになると冒険者ギルド間限定のアイテムボックスとして使えて道中の素材を入れるのに便利になる、更にこれを作る際には当人の血を混ぜると万が一遭難などをした時には一番最後に向かったギルドは冒険者の居場所を大雑把だが知ることが出来る…最も、後者の方はマジの緊急時限定だけど。


()()であれば緊急時以外で冒険者の居場所を調べて報告するのはギルド間との信頼関係に問題が起こるからマトモなギルドマスターならやるはずが無いが…。


()()()なギルドマスターなら…。


「なるほど…お前…いやルインか?」

「えっ?どゆことだ兄貴?」

「あの太鼓持ち(ギルドマスター)の事だ、場所を教えて欲しいって馬鹿貴族が頼み込んだからあっさりゲロったんだろ」

「大正解」


今の帝国冒険者ギルドマスターは国の上層部から来た男でコイツがまームカつくこと…褒賞金はがめるは素材はチョロまかすはその癖貴族関係者にはゴマすって俺達の様な平民にはザル対応だ。


「私が秘密で隣町で飲んでた時にあのクソが出ばって来たぜ、絶対アイツがチクってやがる」

「あのギルドマスターの事だ、俺達の位置情報なんて速攻で晒すぞ」

「あー…だから冒険者辞めると」

「つっても帝国から出たら別の場所で再登録するけどな」

「えーもったいなく無いか?折角B+ランクなんて特例中の特例まで貰ったのに始めっからにしちまうなんて」

「ランクはまた上げれば良い…アイテムボックスは少し惜しいけど」

「お前ら二人ならすぐに上がるだろうな…」

「ただ問題がなぁ…行き先がなぁ…」


ドーンは苦笑いをしながらジョッキを口に運んだ所で俺達は本題を口にした。


「行き先?」

「そ、もう帝国にゃあ居れないからな…かと言って帝国領で活動すっとまたメンドクサイ事になりそうだし…」

「それに最近だと帝国の雲行きが怪しくなったからもういっそのこと別の場所を拠点にする気なんだがそれを何処にするかまだ断定してないんですよ」


そう、俺達は帝国領から出るってのは良い、だが問題は次は何処で活動するかってのが問題になっている。


と言うのも…


「やっぱ東のヤマト国にしようぜ!酒も旨いし」

「却下、ヤマトは島国だから入国する準備自体も大掛かりになる…ここは北のヴァイスタン連邦が良いだろ?」

「ざけんな!あそこガッチガチの雪国じゃねえか!こちとらお前の様なモフモフは常備してねえんだよぉ!」


お互いがお互い譲り合う事をしないからだ。


「あーなるほどな…」

「……ちなみに二人別れるって選択肢は…」

「ルインを一人にしたら絶対何処かで借金漬けになってる」

「私の枕をなんで手放さなきゃいけないんだ?」

「これだよ…」

「てかお前らまだ二人で寝てんのかよ」

「俺としてはいい加減にしてほしい…尻尾や毛皮がヨダレまみれで起きるんだぞ俺…」

「御愁傷様」

「うーん…アレ?お前らなんで王国は入ってないんだ?」


ドーンは俺達の行き先に関して候補に挙げていない場所を聞いてきた。


「あー…中央のセントエルモ王国だろ?」

「アソコは多種族国家だぞ、しかも大陸の中央ってだけにヤマトもヴァイスタンとも流通はしてるから地元産とは言わずとも両方手に入れられる」


大陸の中央に位置するセントエルモ王国、確かにあそこが一番良いんだが…


「んー懸念があってな…なん月か前に国境で帝国とイザコザがあったろ」

「だから王国で活動すっと関わりあいになっちまうってな…帝国とは距離は一番近いし」

「イザコザ?」

「…確か帝国騎士が国境に雁首揃えて向かったってのは聞いたが…」


だから下手に向かって行って問題起こしたくねぇんだよなぁ…俺達って帝国騎士に煙たがられてるし。


「その事だったら良いニュースがあるぜ、その帝国騎士はもう引き返したぞ」

「引き返した?いつの間に…」

「2日前だな、辺境伯が帝国騎士を追い返したのを俺達が見たからな」

「おお……ガルシア」

「問題なし、嘘じゃない」

「お前ら…」

「前にタダ働きさせたアンタが悪い」

「言われたなぁアニきったぁ!?」


カァンがド突かれてる間に俺は考えを走らせた。


今の間にだったらセントエルモに行く事は出来るか…もう一つの懸念はあるけどそっちは仮に起こってもまだいけるか。


「ルイン」

「決まりだな、そもそも王国に行けないから行き詰まってたし」


俺は立ち上がって財布から1万Z(ゼニー)を取って二人の前に出した。


「ありがとうございます、こちらはお礼です」

「少な!」

「前のお返しです」

「まあ貰えるだけ良いか…お前らもう行くのか?」

「善は急げって奴ですよ、これから冒険者ギルドでケジメ取って離れます」

「そうか!俺らも近々ここを発つからそん時はまた頼むぜ」

「今度私ら利用したらそのトサカもぎ取ってカァンと区別つかないようにしてやる」

「ヘイヘイ」


俺達は酒場から出て冒険者ギルドに向かった。

















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