1話:クビにされた狼獣人と一緒に離れる美少女
なろう投稿処女作です、投稿期間も未定なのでもし興味がありましたら気長にお待ちください
オーレシア帝国、城下町の宿屋の一室。
「命令をマトモに出来ないお前はクビだ!」
「・・・・・・ハイ?」
討伐から帰って来て武器のメンテをやってる時にいきなり来た俺も一応所属している冒険者パーティー『王冠』のリーダー、マーク・マルクスが開口一番に言い放った言葉に、灰色の毛皮に覆われた狼獣人こと俺ガルシアは首を傾げた。
「前々から貴様の様な獣人を俺のパーティーに入れている事を後ろ指を指されるのを我慢していたがもう我慢できん!今すぐにこのパーティー(バタン!!)!?」
マークが怒鳴っている中、いきなり扉が開いたと思ったらそこに居たのは金髪長髪、体型も顔立ちも美しいと言っても良い人族の女が入って来た。
「おお!ルイン!丁度良いところに来てくれた」
「このクズ野郎!!」
「なっぶっばっ!!?」
その女、ルインはマークを問答無用で蹴り飛ばしマークは壁に叩きつけられた。
「ナッ……」
「てめぇガルシアに生命救われておきながら言うことがそれかこのクズ!!」
ルインは俺の言いたいことを蹴り付きで代弁してくれた。
俺達が入っているパーティー王冠はついさっきまでダンジョンに潜り、中間地点で悪魔と遭遇した。
悪魔の適正ランクはBランクの上位に対して王冠の冒険者ランクはAランク、ランク差は一つ程度しか無い相手に俺達は戦闘を開始した。
王冠のパーティーメンバーは俺とルイン、リーダーのマークを除けば四人で全員女、しかも戦闘にはほぼ参加せずに後衛でただマークの応援をするだけのルイン曰く腰巾着。
オマケにマークも一応貴族だからか魔力は高めだがルイン曰く使い方がまるで駄目、更に剣の腕もへっぴり腰…素人目で見ても剣術の類いを修めた人間の動きじゃなかった。
そんなお荷物五人を抱えた状態で戦った、先ず女四人は悪魔の放つ範囲魔法で戦闘不能、避けた俺とルイン、運良く難を逃れたマークで俺は撤退を提案したがマークは俺の話しを聞かず突撃、しかも俺にはあの命令を遵守しろと言いやがった。
結果マークはあっさり返り討ちに逢い、悪魔にトドメを刺される一歩手前の状態に陥った。
俺はマークの命令を遵守不能と判断してルインと二人で悪魔と交戦、そしてどうにか悪魔を討伐してダンジョンから撤退した。
それで宿屋で休んだ所にマークが入ってきて冒頭の状態ってワケだ。
「テメェ…もう一回ダンジョン潜って悪魔の餌にしてやろうかアアッ!!」
「ちっ違うんだルイン!俺はあの時アイツの気を逸らそうと演技をしてたのにあの獣人が…」
「ハッ!涙混じりで小便垂らしたのが演技か!大した名演技だな冒険者辞めて大道芸人に成ることだな!第一今まで私やガルシアにおんぶにだっこでAランクに無理矢理なった癖に未だに実力も着かねぇボンクラが偉そうに話すな!」
マークは必死に言い訳を言うがルインはそれを一蹴し中指を突きだした。
事実なんだよなぁ…
俺とルインは二年前までコンビで冒険者をやり始めて俺が言うのもなんだがメキメキとランクを上げていった、そして一年前にギルマスからの指名依頼で俺らはマークと不愉快な女たちと一緒にパーティーを組むハメになっちまった。
俺とルインはその時特例処置でB+ランクになっていたのに対してマーク達は俺らのランクに寄生する形でAランクになったハリボテ野郎共、しかも中身は最低のFランク以下でも可笑しく無い程に貧弱だ。
「潮時か…」
俺はもう一発蹴りを咬まそうとするルインの脚を止めてマークに近づいた。
「オイなにすんだガルシア!」
「マーク、確認だが…俺が自主的に離れるんじゃなくお前が俺を辞めさせるでいいんだな?」
「あっああ!決まっているだろ!」
俺は念のためにマークに確認をとった、するとさっきまでルインに対して小鹿の様に震えていた奴とは別人の様に強気に答えた。
「…分かった、なら今日付けでお前らとの契約は終了にしてもらうぜ」
「ならとっとと出ていけ!お前の獣臭さにはうんざりだ!」
俺は騒動の内に準備をしていた荷物を持って部屋から出ていった。
◆◆◆
同時刻、宿屋の前。
俺は宿屋でチェックアウトを終わらせると背伸びをして空を見上げた、そこにはルインが今まさに宿屋の窓から飛び降りようとしていた。
「ちょ…待ってくれルイン!」
「誰が待つか!テメェは他の女共とちちくりあっとけ!」
「君はもう自由なんだ!あんな獣人に無理して合わせて野蛮な言葉使いをしなくても…」
「素だっつってんだろが妄想族が!テメェの所に居るくらいならゴブリンの巣を裸で突っ込む方が遥かにマシだ!」
そんなやり取りをし終わるととルインは窓から飛び降りて俺の隣に着地した。
「お疲れさん、お前の分のチェックアウトも済ませたぞ」
「おっサンキュー、やっぱ気が効くな!」
「お前が馬鹿殿と一緒に冒険者として動くなんて万に一つもねぇだろ、それとも俺と別れる為に来たのか?」
「まさか」
俺の問いにルインは肩をすくめて真顔で言い切った、すると窓から馬鹿殿が顔を出して来た。
「ルイン!君の事を本当に愛しているのは俺なんだ!早くそんな獣人から離れて愛する俺の腕に帰って来てくれ!」
「……ルイン、あっちから熱烈なラブコールが来てるが…」
「やるこたぁ一つだろ?」
俺とルインは頷きその場からダッシュで走りだした、後ろからなんか言ってるが俺達は無視して走りやがて大通りに出た。
「もう良いんじゃないか?」
「だな、にっしても漸くあのクソから離れられるぜ!」
「………そもそもアイツと一緒に居なきゃいけない理由を作ったのはお前だぞルイン」
「ウッ!?しっしかたねえだろ!意外と金払いは良かったんだから!」
「内容も良く聞かずに即決で金に釣られた癖に…ゼニゲバ女」
「んっだとこのイヌッコロが!!」
「いひゃいいひゃいい!?」
俺はルインに頬を左右に引っ張られながらどうにかルインを引き剥がそうとしたが意外と力も強い強欲女に苦戦しながら俺は話を切り出した。
「にゃがどうしゅるんで?きょのにゃにゃめいもくにょいりゅのにゃみゃずくにゃうか?(だがどうするんだ?このまま帝国に居るのは難しくないか?)」
「確かにそうだな…半年前からこっちの雲行きが怪しくなりやがったし」
魔導帝国オーレシア…大陸の西に存在する特に魔法に関して力を入れている国で俺達が拠点にしている国だ。
魔導帝国って言われても実はそれ以外の技術については殆ど歯牙にも欠けず、俺達が産まれる大分前には貴族主義の独裁政治を行って国から離れる国民が多かった。
だがそれは新しい皇帝が即位してからは改善されて、他国の技術も組み込んで急速に国を活気づけた、更に新皇帝は長年人族至上主義だった帝国を改めて俺の様な獣人やエルフ、ドワーフにも人権を持たせ異種族交流も進めてくれた。
そんな流れと帝国からの方が村から近いって事もあって俺達は冒険者活動をしていた…だけど半年程前から貴族が大手を振りだし始め、しかも種族差別発言や問題行動があっても憲兵も騎士も動かなくなりだした。
それに噂程度だが帝国は異世界人の召還をやり始めたって話だ…この世界は外の世界にいる人間を呼び出した事があり嘗ては何十人もの異世界人を呼び出した。
だがその結果一部の異世界人は文明の発展を促してくれたが大半は暴虐の限りを尽くし、場所によっては小さな国を自身の手中に収めてやりたい放題しまくった。
だから異世界人の召還は本来五大国の首脳会議で執り行うかを決める筈のものをこの国は無断でやったことを秘匿しやがる。
…まあ俺らも会ったことも見たこともねぇし判断も出来ねえから噂程度の解釈なんだよなぁ…
兎に角だ、俺達はこの後どうするかだな…今のギルマスはボンクラ貴族の味方ってのを考えても問題はねぇけどその先がなぁ…
「オイオイオイオイオイ!なに道のど真ん中でハシャいでんだテメェらは!」
「んあ?」
「いっだぁッ!?」
俺達に突然声を掛けた見るからに蛮族の風体をした二人に絡まれてルインは俺の頬を引っ張ってから離したせいで俺は悲鳴を上げた。
「こんな所でハシャグより良いところに連れていってヤるぜぇ」
二人の男が俺達に近づいて来た。