2-2:少女村
tips
カガミ:金髪、頭のてっぺんから垂らしたポニーテールが肩まで下りている
魔法使いのような白い外套、ジャケットタイプの赤い制服
ハナ:体系はすらりとして、腰まである銀色の髪
お嬢様を思わせるシックでシンプルなデザインの制服
細目でわかりにくいが、その瞳は深い藍色をしている
レネ:140センチないくらいの身長、明るい色の髪を左右でおさげにしている
人懐っこいまん丸の目は小動物のような雰囲気
ぶかぶかの紺のジャージを着ていた。
2-2:少女村
少女の集団が村についてから、およそ6時間後。
村の中央。
そこは小さな広場のようになっていた。
そこへ集まるようにと、各家に声がかけられた。
スズハ達のグループはララミィ以外はきちんと目を覚ました。
そのララミィはほとんど目を閉じたままで、スズハの袖をつかみ、かろうじてついてきた。
エリナ達のグループはマユルとメアリが眠たげであるが、皆そろってやってきた。
ほかのグループは、見たところ何人か欠けている。
まだ眠っている人がいるのかもしれないなとエリナは思った。
エリナはその違いに少し安堵した。
関わる人間でハズレを引くのは面倒だと、彼女は考える質だった。
広場には、木製の大きな横長の板が立てられていた。
横3メートル、縦1,5メートルくらいである。
そこには地図と思われる大きな紙が貼られていた。
紙の端はボロボロになっている。
その板の前、ハナとミユナが話し合っていた。
ハナは各家から少女たちが集まってきたのを視認すると、
「みなさん、こんにちは。
よく眠れたかしら。
全員……ではないみたいね。
……まぁ、いいわ。
後で、伝えてください。
面倒でしたら個々で私のほうに訪ねてもかまいません。
とりあえず、これから説明会を開かせていただきます」
そう言って、地図の前に大きな毛布を何枚か敷き、少女たちに着席を促した。
その毛布は、ガサガサで、けっして座り心地の良いものではなかった。
ララミィは座ると、スズハに体を預ける形で再び寝入ってしまった。
ナナルはふふと笑うと、
「なんだか、すごく懐かれちゃってるわね」
と、いたずら気に小声でスズハに言った。スズハも、
「へへ、なんでだろう。
最初のグループ分けからなんか……ね」
不思議そうにしながらも、ララミィのその頭を優しく撫でた。
それを遠目でエリナが見ていた。
エリナはスズハを気にかけていたが、マユルは何か勘違いしたようで、
「何?
エリナも撫でてほしいの?
撫でようか?」
そう言いながら、エリナをおもむろに撫でようとしたが、「違うわよ!」と、エリナに遮られた。
各々、そんなことをしている中で、不意にソレは訪れた。
香り。
脳に直接訴えかけるような強烈な香りであった。
いや、通常ではソレはそれほどの強烈な香りではない。
ただのパンの焼けた香りなのだから。
何故そのように強烈に感じたのか。
ナナルは考えた。
すぐさま、その答えにたどり着く。
たどり着いたが、意識するまで、気づけなかった自身に驚いた。
少女たちが記憶を失い、不思議な怪人と不思議な石のある、この場所。
この【世界】といってもいいのだろうか、この場所には……。
……匂いがなかった。
海辺に特有の潮の香り。
森の匂い。
他にも普通はものに不随する匂いがなかった。
海辺であの変な奴らに襲われ、あれだけ汗をかき、風呂にも入らずに寝て、体臭すらしていない。
エリナも同時に気づいたようで、驚きを隠せなかった。
それが意味するところ、それは……。
そんな思考を掻き消すように、レネの大きな声が少女たちを包んだ。
「おはようございまーす!
あ、いや、こんにちはだね!
皆さん、パンですよー!
美味しい美味しい、パンですよー!
焼きたてですごく美味しいんですよー!!」
レネと、その後ろからカガミとチヅルも、お盆にたくさんのパンを載せ運んできた。
座っていた少女たちは待ちきれんとばかりに立ち上がり、そのパンをもらいに群がった。
スズハはララミィを支えていたので動けずにいた。
レネはあまりの少女たちの勢いに、
「ちょっと、わあ、まってください!!?
いっぱいありますから!
まだいっぱいいっぱいパンはありますから!
座っててくださーい!
ああもう!」
と、どうにも止まらない。
パンは一瞬でお盆から消え去った。
あたかも獣のようにパンを貪る少女たちの姿がそこにはあった。
エリナはパン一つを口にくわえ、更に二つ持っていたが、パンを獲得できていなかったヤヤと、もう一人別の班の子に渡した。
エリナは最初、先の件で自分を救ってくれたスズハにあげるつもりだったが、それはやめた。
「はい」
指をくわえるスズハにナナルがパンを持ってきてくれた。
スズハは目を輝かせ、
「ナナちゃあああん!!!!」
言うが早いがパンを口に含み、至福の表情を見せた。
そんな少女たちの様子を微笑みながらハナ、レネ、カガミ、チヅル、ミユナは見ていた。
ある程度落ち着いてきた様子を見てハナが、
「さて、お腹もふくれたところで話を始めましょうか。
これからする話は大まかに3つ。
①、今の私たちの現状。
②、ここでの生活のルール。
③、石の使い方。
……です。
その話の後、ここでの生活を希望する人たちには、私たちと一緒に石を集めるのを手伝ってもらいます」
おなか一杯にパンをたいらげ、落ち着きを取り戻した。
再び着席した少女たちは、その話にざわめいた。
気にせず、ハナは話を続ける。
「まず、①の今の私たちの現状。
正直に言って、私たち、ここの村の人間もみんなあなた方と同じです。
気づいたらこの場所にいて、みんな名前以外の記憶はない。
何とか生き残ってここにいます。
私たちの前からずっとそのようです。
この村も、私たちより以前に来た人が作りました。
色々な理由でその人たちは今はもうこの村にはいません」
寂しそうな表情をこの村の住民たちは見せた。
少女たちのざわめきはより大きくなった。
ハナはより大きな声をあげる。
「これは、推理にすぎませんが、
私たちがここにいるのは、拉致ではありません。
まず、誘拐犯がいない。
拉致とすると、定期的に少女が連れてこられて、下手をすればあの黒ウサギたちに襲われる意味が分からない。
……あ、はい、黒ウサギ。
あなた方を襲ったあの黒い奴らです。
私たちより前の代からそう呼ばれているらしいです。
……あの黒ウサギも、そうだし、石に関してもそう。
この場所は私たちが元いた場所からは理屈がかけ離れている。
実際、何もわかってないに近いのが実状です。
ただ……」
ハナは地図を指さし、現在地を書かれている場所を示した。
弓場の広い砂浜が二つ、ωの形になっている中央部分に現在地と書かれてあった。
そこから下に、またとんでもなく広い森が描かれていた。
森の中にいくつか赤で円が描かれ、文字がいろいろと書いてあった。
「ここが私たちのいる場所。
この森の先、いろいろ書かれていますね。
『花園』、『蟲』、『男』、『鏡』。
……これらは先達や私たちが聞いたエリアの名前です。
何があるかわかりませんが、その名に近い何かしらの環境らしいです。
それよりも、この一番下の『ハートの城』。
ここにたどり着くことさえ出来れば、それさえ出来れば、私たちは元の場所に戻れるらしいのです。
これは、シャムという女の子。
……その様子だと、皆さんも会ったようですね。
彼女から聞いた情報で、多分、これは信じられる。
カガミは、皆さんも自身の目で見たように……こういうと変な感じもしますが、空を飛ぶことができます。
ただ、長距離の移動はできないのですが、それでも高高度から、この城の存在は確認できました」
段々と、少女たちの雑談が多くなってきた。
きちんとハナが話す情報を聞いているのは、スズハ、ナナル、エリナ、レイリ、あと数人くらいか。
「はい、しつもーん」と、手を挙げていう少女もいたが、ハナは、
「質問はあとで。
次は②、ここでの生活のルールについて。
皆さんにはここでこのまま生活をしていただいてもかまいません。
けれども、共同で生活する以上、ルールはなければいけません。
勿論、村を出てもらっても自由です。
先にそのことをいいます。
この場所には黒ウサギをいう明らかな敵がいます。
奴らは日の光が弱点で、逆に夕方の日の沈んだ後から朝方の日が出る前までは活動します。
もしも、村を出る場合はその事を忘れないように。
あ、いや、出なくても忘れないでください。
大事なことです」
そうして、ハナは更に村でのルールを述べた。
ルール①、班で週に一定量の石を回収し、村に収める。
ルール②、村での暴力、犯罪行為は禁止とし、行われた場合は村全体で裁判を行う。
(村からの追放、または、制裁を科すこともあり得る)
ルール③、村での商い、建築は禁止でないまでも、無断で行うのは禁止であり、まず、村長に相談の上、村長の判断、または村全体の判定のもと行われるものとする。
ルール④、村の破壊につながる一切の行いを禁止する。
ルール⑤、一切の決断権は村長にあり、ルールに準じない問題も村長にすべての裁定権があるものとする。
(ただし、村民8割の反対がある場合、これを覆すことができ、同時に村長の地位を返還、村長選挙を行うものとする)
ほとんどの少女たちが最後まで聞いてられなかった。
ハナが言ったことをいちいちどういう意味かと話し合ってたりしていた。
最後まで聞いていられたのは、ナナルとエリナだけだった。
アイザック・ゴーマの小説挑戦作だぜ。
誤字、脱字は随時修正していくぜ。
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リンク貼っていいかわからないので、興味がある方は検索してみてだぜ。