9-8:崩壊Ⅱ
9-8:崩壊Ⅱ
スズハは眠っている。
そのスズハをエリナが抱えていて、周りにナナルやララミィ、ミラン、サクラコ、マユルをはじめ多くの少女が集まっていた。
白んできた空のもと、少女たちの顔はランタン代わりに使っている石の光がなくてもなんとかわかるくらいになった。
なにはともあれ、スズハのおかげで助かったことには間違いないのだ。
スズハと同期にこの場所に来た少女たちにとってはある種の信仰に近い精神性が芽生えていた。
村長サイドの者たちにとってはカガミのような存在といえる。
少女の輪の中、ハナはその少女たちの様子に少し警戒心を覚えていた。
ミナコのように能動的に村を脅かす存在は目にもつくが、スズハはノーマークであった。
逆に。
御することさえできれば、カガミに次ぐ、否、カガミよりも有能な力が手に入るとも考えた。
ハナは軽く深呼吸をし、周りを見た。
村は当分、その全体を膨大な石の貯蔵庫にせざるを得ないだろう。
しかも、その膨大な石は黒く、日のもとで6時間置かないと使用はできない。
もしも、黒ウサギが現れても、手持ちの石でひとまずは撃退できるだろう。
よもや、あの超巨大黒ウサギはすぐさま2度目は現れまい。
朝が近いのもラッキーといえばラッキーである。
カザキの件もあるので、万が一を備え、村のオレンジの防壁で森を背に陣取ろう。
ハナはそんな思考を巡らせながら、ふと、カガミと目が合った。
ハナはドキっとした。
カガミはなんとか難局を越えられたなという意図で笑顔を送った。
その笑顔にハナは安堵した。
バレていない。
目を合わせなくても、チヅルやレネ、ミユナはハナのしたことを察しているとわかる。
ミナコをあの場面で殺せたのは、アンリを除くと逆に他にいないともいえるからだ。
少女たちの中でハナと同様の、または近似の能力を開花させているものが絶対にいないとはいえない。
それでも、前科からハナは自分が疑われて当然だという自負すらあった。
それでもいいのだ。
チヅル、レネ、ミユナはすでにハナの共犯者である。
カガミにバレさえしなければ……。
*
エリナは不思議に思っていた。
何故、自分はスズハをこんな風に抱えているのであろうか。
チョベリーバを倒した後のスズハの行方をずっと目で追い、あまつさえ、やったこともないような石の使い方でそのスズハをキャッチできたのか。
全くもって、不思議でならなかった。
当の本人、スズハは己がどんな大仕事をやってのけたのかも知らないような無垢な寝顔でエリナの膝を枕にしている。
納得の行く理由を探せば、ここに来た最初の日に、スズハに一度救われたことも考えられるが、それならばマユルにも同様の意識が働く気はするが、そうではない気がする。
記憶がないのがこういう時にもどかしくある。
もしかしたら、スズハとは何かしら知り合いだったのかもしれない。
マユルが笑いながら言った。
「この子、すっごいねぇ!
正義のヒーローみたいだったやん!
女の子だから、魔女っ子とかか?」
エリナは笑って返した。
「ハハ、魔女っ子……?
何それ?
言うなら、プリなんとかとかじゃない?
わからないけど」
「プリ?
プリクラ?
……んん?
まぁ、いいや。
とりあえず、このあとどうする?」
ハナが答えた。
「そうですね。
皆さん!
お疲れだとは思いますが、まだ安全とは言えません。
もう朝日が出てきているので幾らか安全ではあります。
しかし、カザキさんの件もあります。
ひとまず、村の防壁を盾に森から身を隠しましょう。
そして、簡易的な防壁を築いて、一旦休憩とします。
6時間すれば、あの、チョベリーバの出した黒石が色石に変わりますから、そこから新たな村を作ります。
……ミナコさんがいれば早く造ることも可能でしたが……
失ってしまったものは仕方ありません。
石はこれから大量にできるので、いくらか無理してでも村を立て直しましょう」
皆、疲れたような顔をしつつも何とか返事をし、ハナのアイディアに従った。
こうして、村の危機はひとまず終わりを迎えた。
アイザック・ゴーマの小説挑戦作だぜ。
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