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アリス・アライズ ~ALICE・ARISE~  作者: アイザック・ゴーマ
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9-6:崩壊Ⅱ

   9-6:崩壊Ⅱ




 止めるべきか、任せるべきか。

 その答えをナナルは出せなかった。

 スズハの手から漏れる、普通とは違う輝き。

 虹色に光は色を変えている。

 それが何を起こすのか、想像ができない。

 先の時間もどしもしかり、この世界は何が起こるのかわからない。

 ……何ができるのかわからない。

 ナナルはただ、スズハを見守った。

 

 スズハのその光に傍にいたララミィも気づいていた。

 ララミィは不思議そうにその光を見ていた。

 

 


「え?」




 しかし、スズハがその石を使う前に事態は進行した。

 その声を上げたのも、必然空を見上げていたスズハが先だった。

 続いて、何人かも声に反応しその変化に気づいた。

 黒ウサギ・チョベリーバ、一見夜の空に浮かぶ漆黒のソレの視覚的変化はわからない。

 それでも、確かにソレから感じる圧力みたいなものが高まっていると感じられた。

 チョベリーバがその行動を選ぶ可能性は極めて少ないと、ナナルをはじめハナもカガミもエリナも考えていた。

 誰もがこの絶対防壁を前にチョベリーバは攻撃を一度はあきらめ、今日のところは去ってくれるという希望的思考を優先していたのだ。

 だが、チョベリーバはそうはしなかった。

 コップに水を注ぐかのように、オレンジの防壁で守られた村のただ中にチョベリーバはその身を突撃させた。

 少女の中にはサラのように身をかがめるもの、ミユナやチヅルのようにその光景を見ながら立ち尽くすものがいた。

 刹那に、ナナルやエリナはチャンスのようなものを考えなかったわけではない。

 このバリア内なら少女たちは安全なのである。

 ならば、チョベリーバが村を崩壊させたとしても、このまま村の防壁内に留められるなら、朝が来れば少女たちの勝利なのである。

 そして同時に、別のある可能性がひらめき、そのチャンスという考えは一気に吹き飛ばされた。

 黒ウサギはオレンジの壁を通れないのであって触れないわけではない。

 ならば。

 理論上、その可能性は至るに難くはなかった。

 チョベリーバの何処に目がついていたかはわからない。

 それでも、ミナコがなんなくバリアから出てきたことはおそらく目撃していたであろう。

 そう、少女はこのオレンジの防壁を抜けるのである。

 チョベリーバの知恵がどれくらいのものかわからない。

 しかし、私ならとカガミは考える。

 ナナルやエリナ、ハナも同様に考えた。

 土台こと掘り起こされてしまったら。

 このバリアを45度でも傾けられたら。

 なす術もなく少女たちはたいらげられてしまうのだ。


 瞬間にして村の防壁の半分ほどまでチョバリーバが入ってきたあたり。

 カガミが反射で迎撃をおこなった。

 投げられた赤い石はチョベリーバを穿ち、かすか星空をのぞかせる。

 しかし、圧倒的な物量の前に、その攻撃は意味をなさない。

 カガミの開けた穴はすぐにふさがり、カガミが2投目を準備する頃には村に建てられた家のつぶれる音が聞こえてきていた。


 


   *




 その光景を遠くから眺める者がいた。

 村を囲うほの光るオレンジの壁が普通の人間ならほぼ肉眼でオレンジに見えないほどの遠い距離。

 足元に来ては帰る波を浴びながら、シャムは眺めていた。

 【願望】が『纏まって』きている。

 シャムは快楽にも似た背筋のうずきを感じた。

 『ここ』においてシャムは役目を担っている。

 『ここ』を維持するために『ここ』の仕組みを最大限発揮し、『ここ』に貢献すること。

 そのために生み落とされたのがシャムだ。

 そのために生きるのを悦びとし、それ以上を欲しないように作られた。

 だから、先の『時間戻し』はいささか想定外だった。

 可能性でいえば、なんでもありなので無いとはいえない。

 だが、その性能上、『時間戻し』は【徴収】ができない。

 なんなら他の【徴収】までなかったことにされる。

 それを防ぐために、シャムはカガミと【エンゲージ】して村に介入できるようにしたかったが、それは叶わず遠くから眺めるしかなかった。

 シャムは願望のその性質を感じ取ることができる。

 集団になれば尚のことその性質を強く読み取ることができる。

 『時間戻し』は少なくとも起きない。

 それを求めないものがあの集団に1人でもいるのか知らないが、その方向性の願望は村のあの中にはない。

 まぁ、それもそうだ。

 『時間戻し』は便利なようで、それから受ける影響は小さくない。

 助かる命もあるだろうが、(いや、もともとあってないような命だが、)やり直さなければいけないという心理的な負担は決して軽いものではないはずだ。

 ことシャムでさえ時間戻しによる精神的なショックはそうであったのだ。

 そうであれば、願望の方向性は負担の少ないほうにむかうだろう。

 例えば、現状打破するスーパーパワーや、完全な防護領域。

 となれば、今度こそ破格の【徴収】が見込めるというものだ。

 シャムはニヤケ顔を抑えることをしなかった。

 

アイザック・ゴーマの小説挑戦作だぜ。

誤字、脱字は随時修正していくぜ。

特に見ても面白いことはやりませんが、Twitter、チャンネル登録もよろしくだぜ。

リンク貼っていいかわからないので、興味がある方は検索してみてだぜ。

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