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アリス・アライズ ~ALICE・ARISE~  作者: アイザック・ゴーマ
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8-2:トウソウ

   8-2:トウソウ




 暗く暗く、幽かな光すら見えない。

 粘りつく泥のような、闇の塊の中。

 カザキはいた。

 いや。

 カザキの欠片ほど残っているわずかな意識がそこにあったというのが正しい。

 カザキは黒ウサギに捕まり、食われた。

 その後、その黒ウサギもまた別の巨大な黒ウサギに食われた。

 カザキの体はすでに咀嚼され、思考もままならない。

 それでも、どういう仕組みかはわからないが、ただ、朦朧とした意識がその黒ウサギの中に漂っていた。

 ……もはや方向性としか呼べないようなもののみがかろうじてあったのだ。

 その方向性が働きかけた。

 超巨大黒ウサギに。

 村へと帰るという方向性であり、それは村への強襲へと転化した。

 そして、その方向性すらも超巨大黒ウサギの行動指針を決めたのち、その体内で霧散していった。




   *


 


 作戦は改められた。

 天板とバギーでの脱出。

 そのどちらもがあの圧倒的な巨体の強襲には通用しない。

 天板は有効の可能性はあるにしても、とても間に合わない。

 新たな作戦、その一つは天板の縮小版の制作。

 今度は村を覆うということはやめ、最低限で少女たちを守れる空間を作る。

 おおよそ、中央広場に直径で10mくらいの正方形で壁を作り、その範囲内の床にできるだけオレンジの石を敷き詰める。

 ぎっしり詰めることで、隙間の見えないくらいには完全な防御空間を作り上げた。

 しかし、これは賭けでもある。

 村のオレンジの石をほとんど消費してしまった。

 この大事を切り抜けた後、この村を囲いつづける壁を作る余裕はなくなった。

 今回、あの超巨大黒ウサギを倒して、いくらか補充はされるだろうがそれがどれくらいとも補償はない。

 また、その防衛空間の中には少女たち全員が入るのと共に、壁の中から超巨大黒ウサギを迎え撃つべく大量の石が用意された。

 2つ、今の段階の懸念として。

 1つ目はあの超巨大黒ウサギが何らかの理由で来なかった場合。

 もとより、少女たちには何故自分たちがあのタイミングで襲われたのかがわからなかった。

 それを知る手がかりが全くない。

 すると、気だけ張って、疲労して集中力が切れたときに襲われる可能性を考慮する必要が出てくる。

 2つ目はあの超巨大を利用して自傷覚悟で襲われた場合だ。

 あの超巨大がどれほどの体積を持っているのかはわからない。

 しかし、太陽の日を浴びたところでそうそう死ぬ大きさではない。

 今回の始まりとなった黒ウサギはそういう個体であった。

 自分の身が傷つくのも恐れない黒ウサギにカザキは襲われたのだ。

 何が起こるかわからない故に、あの超巨大黒ウサギが森を纏うという発想がないとも限らないのだ。

 森をマントのように纏い、影を作ればアレは無限に少女たちが作った防衛空間を覆いつづけられる。

 中から幾らか攻撃はできたとして、その状態から抜け出せるに至るか。

 加えて、オレンジの石の発動から効力を失うまで少女たちが平気でその中で時間を過ごせるか。

 だが、その考えは一部の少女たちの胸の内にしまわれた。

 ナナル、エリナ、ミナコ、、カガミ、チヅルの6人は具体的にその可能性を考えてはいた。

 他にもいまだ意識を失っている少女の中にも、発想が難くないものはいただろう。

 また、その他の少女も思考自体をする余裕を失っている者がいるのが現状でもある。

 もはや、他に選べる道がなかったのである。

 


「隙間の無いようにね!

 あと、壁が消えないように!

 石と石の距離が短い分には構わないから!」

 


 チヅルが指示を出しながら、オレンジの石で壁を作り並べている。

 防衛空間を作る作業をしているのは、

 スズハ、ナナル、ララミィ、サクラコ、ミラン。

 エリナ、マユル、レイリ。

 ミハル。

 マツリ、サラ、アキ

 エミリー、カナメ。



 まだ意識を失っている者。

 ハナ、レネ。

 メアリ、ヤヤ。

 ルキ。

 カナタ。 

 

 

 その者たちを介護している者。

 ミユナ、タツコ。 



 石を倉庫から運搬している者。

 カガミ。

 ミナコ、アンリ。

 カエデ、スミレ。



 石を貯蔵している倉庫の前。

 カガミが台車を運びながら、同作業をしているミナコに声をかけた。



「ミナコさん、すまないが、数分……5分くらいかココを任せていいか?」



「……ええ。

 大丈夫ですけど。

 なんの用事か聞いてもよろしいかしら?」

 

 

 カガミは森のほうに目をやった。



「ちょっと、見てくる。

 前と何かが違うのか、同じなのか」



「わかりました。

 むしろお願いします」



 カガミは目をやったわけではないが、視界の端でカエデがコクリと頷いて合図を送ったのを確認した。

 カガミは運び終えた空の台車を置き、すぐに村の入り口へと文字通り跳んだ。

 その後ろ姿をミナコとアンリ、カエデが見送った。

 石を運んで、帰ってきたばかりのスミレもその様子を見て言った。



「え!

 先輩どこいったんです?!

 かっけぇ!!」 


 

 カガミの跳躍はそれこそ飛んでいるのと違いはなかった。

 なにかあれば足を地について軌道を変えられるが、その必要がなければずっと宙にその体は浮いている状態だ。

 すぐに村の広場に着き、作業しているチヅルに向かって、

 


「チヅル!

 ちょっと偵察してくる!」



 と、すれ違いざまに言葉を残してすぐに飛び去ってしまった。

 カガミが広場を横目にしたのも一瞬。

 すぐに広場の光が届かなくなり、闇に包まれたような感覚に包まれた。

 だが、それもオレンジの壁の光や夜空の星の輝きにいくらか明るさを取り戻した。

 村の入り口についた。

 カガミは着地し、砂を盛大に巻き上げた。

 何事もないかのようにバギーのそばを歩いて横切る。

 


「なぁ、お前も記憶は残っているのか?」

 


 カガミは尋ねた。

 村の入り口。

 そのオレンジの壁の境の外側。

 影があった。

 その影がうっすらと、ニヤリと笑うのが見えた。

 カガミはその影に近づきながら言った。 



「お前の仕業なのか?

 この巻き戻しは?

 ええ、シャム!!」



 その影は、シャムは、静かに答えた。



「……いえ、私にはできませんね、こんなこと。

 すさまじい能力です。

 余計、失うには惜しい。

 どうです?

 ここにいる、あなた方全員を確実にこの難局から生き延びさせましょう。

 その代わり、私と契約しませんか?

 カガミさん?」

アイザック・ゴーマの小説挑戦作だぜ。

誤字、脱字は随時修正していくぜ。

特に見ても面白いことはやりませんが、Twitter、チャンネル登録もよろしくだぜ。

リンク貼っていいかわからないので、興味がある方は検索してみてだぜ。

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