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アリス・アライズ ~ALICE・ARISE~  作者: アイザック・ゴーマ
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1-2:夜を駆ける

tips


スズハ:肩ほどまでの髪(一部に三つ編み)、ブレザー制服


ナナル:肩までの髪、メガネ、白いセーラー服


シャム:猫のような眼、ディーラーのようなタキシード服

   1-2:夜を駆ける




「どうもどうも、みなさん。

 こんばんは。

 私はシャムという、まぁ、ココの案内人みたいなモノです……」



 シャムという少女は森側を背にし、その場にいた多くの少女たちに向かって語りだした。

 シャムはまるで、いつも同じことをしているような慣れた風に言葉を紡いだ。

 さりとて、この異常な事態において少女たちが静かにその演説を聞いているわけはなかった。

 どういう状況なのか、と。

 家に帰して、と。

 ただ泣きむせび始める者も。

 少女たちから堰を切ったようにそれらが怒号、罵声、悲鳴として放出される。

 スズハにも爆発してしまいそうなほどの不安な気持ちはあった。

 しかし、周りの少女たちの感情的な姿に、逆に冷静な気持ちに戻された。

 スズハはナナルに目をやる。

 ナナルは始めから、どこか達観しているような様子でシャムという少女を注視していた。

 


「……ということでございまして。

 まぁ、聞いてない方がほとんどのようですが、私は全然かまいません。

 もともと、あってないような命ですから。

 さぁ、では、とりあえず。

 皆様の左手側、あの方向に薄く光っている塔みたいなもの。

 皆さん、見えますでしょうか。

 この弓なりの砂浜を海沿いに進めばたどりつけます。

 詳しい話はまた、あそこにたどりついてから聞いてください。

 おっと!?」



 少女の中から、ついにはシャムにつかみかかりに行った者がいた。

 シャムはこともなげに、ひらりとかわした。

 そして、「さぁさ、こっちですよ、いきますよー」と目的の塔への先導をし始めた。

 不思議なもので、怒っている少女も、泣いている少女も、現状でなすすべのない少女たちは皆がシャムの後についていき始めた。

 スズハとナナルは困惑しながらも集団の最後尾でついていった。

 そして、まだ10メートルも歩いてないあたり。

 突如のことであった。

 スズハはビクンと跳ね上がるような素振りを見せた。

 その様子に気づいたナナルは、「どうかしたの?」と聞くが、すぐさま、自分も同じようにビクンと反応してしまう。

 はるか後方の森側をスズハとナナルは……見ざるを得なかった。

 ただ風が吹いただけのような小さな森のざわめき。

 根源的な恐怖とでもいうのだろうか。

 スズハとナナルはソレの正体をきちんと確認する前に、森の闇の中に蠢く何かを視界に捉えた瞬間に走り出していた。

 二人は、前方にいた他の少女たちをどんどん追い抜いていく。

 少女たちも何事かと二人を見たが、事態は呑み込めていない。

 先頭のシャムがそのスズハとナナルに気づき、足を止め、後方の森側を見た。

 少女たちも何事かと足を止めた。

 スズハとナナルはそんなシャムすら追い抜いて走り去っていった。

 シャムは感心したように、



「おやぁ、感のいい子たちがいますね。

 ……みなさーん!」



 シャムの声に、後をついてきていた少女たちは注意を向けた。



「後ろから、ゴキブリのような、汚らわしい男のような、すごく怖いものが来まーす!

 追いつかれないように走ってくださーい!

 もしも、追いつかれそうになったら、この光る石を投げてくださーい!

 あの、薄く光っている塔みたいなとこにつけば安全ですからー!

 とりあえず、そこまで逃げてくださーい!」



 内容が伝わっていないのか、少女たちは足を止めたままだった。

 走っているのはスズハとナナルはすでに15メートルほど先だった。

 シャムがパン! と、手を叩き、



「さあ!

 走った走った!」



 シャムのその声はぴしゃりと少女たちの意識を覚醒させ、少女たちは一斉に走り出した。

 それまで、突然によくわからない状況下におかれ、よくわからないままシャムに従っていたので、思考を放棄し、すべての行動をシャムに委ねていたのである。

 シャムが止まっていれば止まるし、走っていれば走ると具合だった。

 少女たちはシャムを残し、スズハ・ナナルの二人を追って、目的地にむかった。

 残されたシャムは、ついに森から姿を現したそいつらを1キロほどある距離間で眺めていた。

 黒ウサギ。

 体が漆黒で、二つの光る眼が歪についている。

 身長160センチ前後の人型のものであり、頭にウサギのように二本の耳のようなものがついている。

 それが、ざっと50体ほど。

 そして、その足は速い。

 走り方は個々に違い、スプリンターのような走りのものもいれば、四つん這いで獣のように走るもの、両手をあげながら足だけ高速で動かすものもいる。

 それでいて、一様に車のような速度で走っている。

 走る少女たちの中にも黒ウサギの姿を視認したものがいて悲鳴が上がった。

 シャムは余裕のあるようで、



「ん~♪

 この間は、ちょっと間引きしすぎましたしねぇ。」



 そういって、どこからともなくマシンガンと思しき銃をとり出して、それを黒ウサギに向けたのだった。



   *



 少女たちは夜の闇で距離感がつかめない。

 ナナルには目的地の塔までは3キロほどあるのではないかと思われた。

 先頭を走っていた、スズハとナナル。

 しかし、二人とも足の速いほうではなかった。

 むしろ、かなり遅いほうだった。

 最初こそリードがあったものの、すぐに少女たちの集団に追いつかれた。

 最初は、無我夢中で走っていた二人。

 だが、少女たちに追い抜かれ、結局、最後尾になったところで、砂浜を走っていることによる疲労もあって、我に返った。

 後方から何かが爆発する音が聞こえる。

 見ると、虹のような輝きと爆発音が『ドン! ドン!』と鳴り響いており、その中を一際に跳躍する一つのシルエットが確認できる。

 恐らく、そのシルエットはシャムであった。

 どういう手段か戦っているらしい。

 その爆発の中を2~3体の黒ウサギが抜け出た。

 爆発の光の中、巻き上がる砂埃から尋常ならざる速度で少女たちの方に向かっているのがわかる。

 それをスズハもナナルも走りながら視認した。

 どちらともなくまずいと思った、その矢先。

 ドンと、スズハがぶつかって尻もちをついた。

 ぶつかった相手は前を走っていたはずの少女だった。

 少女たちは皆、足を止めている。

 この状況下で立ち止まる理由を、ナナルはすぐに察した。

 前からも現れたのだ……黒ウサギが。

アイザック・ゴーマの小説挑戦作だぜ。

誤字、脱字は随時修正していくぜ。

特に見ても面白いことはやりませんが、Twitter、チャンネル登録もよろしくだぜ。

リンク貼っていいかわからないので、興味がある方は検索してみてだぜ。

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