5-2:マイナス1
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その報が村に伝わるのとほぼ同時。
西側で回収作業をしていたスズハ・カエデグループのもとに文字通りカガミとチヅルが飛んできた。
そのただならぬ雰囲気に何事かとスズハ達はどよめいた。
カガミはあくまで冷静な風で言った。
「緊急事態だ!
いますぐ作業をやめて、みんなで村に帰る!
バギーに乗れるだけ乗れ!
乗り切れないなら、私たちが抱えて行く!
急げ!!」
カガミの隠しきれない動揺を感じ取り、少女たちは直ちに行動を起こした。
幸い、西側は2グループ。
バギーにそれぞれのグループの少女は乗り切った。
カガミとチヅルは森側を気にしている。
移動を開始した。
カガミとチヅルを見て、カエデはバギーをギリギリまで海側に寄せた。
それに倣い、その後ろを走っていたスズハも海側に寄せた。
2、3分もなく村にたどり着いた。
そして、そのまま、村の中央広場に集合するよう言われた。
*
村の中央広場。
スズハ達が着いたとき、ものものしい雰囲気がすでに場を支配していた。
泣き崩れている少女は、サラだ。
その周りに、グループリーダーのマツリをはじめ少女たちが慰めていた。
スズハはナナルの姿を認め、
「あ、ナナちゃん。
……何があったの?」
「スズ!
えーと、ね」
ナナルが言葉を濁すと、ハナが皆に聞こえるように声を上げた。
「それでは、人数を確認しましたので、話をさせてもらいます。
……ええ、カザキさんがいません。
まだ、何が起こったのか調査もはじめてない段階です。
端的に。
起こったことを言います。
先ほど、カザキさんが森から現れた黒ウサギに……ヤられました」
皆がざわめいた。
今は昼間なのに?!
本当なの!?
様々な声が聞こえてきたが、ハナはその声をかき消すように続けた。
「一緒にいたサラさんの話では、一瞬の出来事だったそうです。
大きな黒い塊が森から飛んできて、カザキさんを掴んで、森まで引っ張っていったそうです。
サラさんとカザキさんがいたのは海側で、森との距離もだいぶあったそうです。
その跡には黒い石が散らばっていたようです。
あくまで、そこからの推理ですが。
己の身を太陽の光に焼かれながらも、森側から黒ウサギが攻撃する手段を得たと思われます。
単一の、通常の黒ウサギでは行えないことです。
これまで黒ウサギが合体する事例はよく見られましたが、おそらく、そこから更に能力を向上させたようです」
その事実が何を意味するのか。
早々に気づいた何人かも、気づかない何人かも、状況がかなりまずいことは感じ取っていた。
ハナは言った。
「これは、これから石の回収が今まで通り行えないことを意味しています。
石の蓄えは充分ですが、状況は最悪といっていいでしょう。
どうしても、いつかは貯えも尽きるからです。
そこで……。
この事態を打開すべく、討伐隊を編成します。
まだ、状況が、その黒ウサギの能力がどのようなもので、何体いるのかがわかっていません。
その調査も含めての討伐隊となります。
希望者はこの後、広場に残ってください。
希望者でない方は一度、家に戻って待機状態でお願いします」
そうして、早々にその場はお開きとなった。
*
広場に残ったのは、村長側メンバー。
ハナ、カガミ、チヅル、レネ、ミユナ。
加えて。
スズハグループから、スズハ、ララミィ。
エリナグループから、エリナ、マユル。
ミナコグループから、ルキ。
マツリグループから、マツリ。
カエデグループから、カエデ、エミリー、カナメ。
そのメンツを見て、カガミが言った。
「ふむ、まぁ、血気盛んなのと、とりあえずの様子見なやつがいる感じかな。
話を聞いてみてって感じだよな。
ハナ、ちなみに報酬はどうする?」
「報酬は、現段階では討伐チームと補助に分けて与えるカタチにする予定です。
討伐に直接に参加する人に希望の石100個。
道具の生成などで討伐の補助をした人に同様に40個。
あくまで、現段階です。
変動することもありえます」
「だ、そうだ。
それも踏まえて、一回家に帰って話し合ってきてくれ。
もう一度、夕食後に集会を開く。
ハナ、こちらでも一回話し合いが必要だ。
なんせ今までにない事例だからな」
「そうね。
……そうだわ。
では、すみませんが一度解散とします。
能力によっては補助での参加をこちらからお願いする場合がありますのでメンバーの方にお伝えください」
そうして、集まりは一度、解散となった。
アイザック・ゴーマの小説挑戦作だぜ。
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