4-5:ハーツ ガールズ
4-5:ハーツ ガールズ
「あほかあああああああああああああああ!!!!!!!」
カガミの怒号が、村の西側、その砂浜に響いた。
スズハやカエデ達が荒地を生み出して5分もしなかっただろう。
爆音は村のほうまで伝わっていたのだ。
比喩ではなくカガミは飛んできた。
今、カガミの前で西側で作業していた少女皆が横一列に並ばせられている。
その面持ちはバラバラだ。
スズハやカナメ、サクラコやミランは俯いて、カガミの剣幕の前に俯いてやや涙目になっていた。
対してカエデやエミリー、スミレやララミィは悪びれた様子はなく、口笛でも吹きそうな面持ちだ。
カガミは、
「あのなぁ、……まぁ、可能性はほとんどないが、森の中に人がいないなんて保障はないんだ!
こんなわけもわからない場所で人殺しになるなんて嫌だろう?
あと、こういうことする場合は基本的に、許可は得ること!
わかった?」
と言った。
それを聞いて、スズハは自分も確かに、最初にこの地で目を覚ました時は森の中からだったことを思い出した。
今思えば、よく生きていたものだ。
そんなことをスズハが考えていると、カエデが言った。
「……カガミさん。
でもよ、石の力は人体には効かないんじゃないんだったけか?」
「お?
ああ。
例えば、赤の石の爆撃でいうと、だ。
その熱量も衝撃も人には影響しない。
でも、その爆撃によって発生する風、その爆風で飛ばされる自然物。
それは影響する。
カエデ、君たちを私が助けたとき、いくらか砂を被っただろ。
アレでもだいぶ威力は抑えたつもりだけど。
つまり、そういうことだ。
ただ、説明が難しいが、爆撃の場合、その中心から1mくらいからの風が影響する。
中心ほど無風っていうおかしな現象が起こる。
それは余談。
で、戻るけど。
あの森を爆撃して、木の枝がすごい勢いで飛んで来たらそれが刺さることもあり得る。
……うーん。
まぁ、そろそろいいか」
カガミの言葉に、皆が?マークを浮かべる。
「これは……うすうす気づいているやつもいるかもしれない。
この中で、この場所に来てから一回でもケガしたやついないか?
……まぁ、名乗り出たくなかったら別にいいんだが。
そうだな」
カガミは適当に右の手で石を拾うと、それを皆に見せるようにして、次にその石で己の左腕をおもいきり引っ搔いた。
あまりに突然のことに皆が目を背けることもできなかった。
しかし、その左腕から血が吹き出ることはなかった。
またも、皆が不思議そうな顔をする。
カエデが、
「なんですか? カガミさん」
「よく見てみろ」
カガミのその言葉で皆がカガミの左腕を凝視する。
すると、ソコには確かに傷跡があった。
しかも、それは皮膚が厚くめくれ上がるほどの傷だった。
だが、血は出ていない。
その事実を把握すると少女たちは皆ゾッとした。
皆、己の手を見たり、頬を触ってみたりした。
カガミはそれを見ながら、
「そう、ここにいる皆、こういう風になっている。
まるで人形に魂が入れられているかのようだ。
私たちは……私たちは今、普通の状態じゃない。
どうしてこうなっているのかわからない。
それでも、唯一。
唯一の可能性は【ハートの城】に辿り着ければ、私たちは元に戻れるらしいことだ」
スズハはペタンと座り込んでしまった。
スミレが言った。
「先輩。
する気はないですけど、もしも、ここで自殺したらどうなっちゃうんですか?」
カガミは答えた。
「死なないし、死ねない。
仮に脳に穴が開いても、首を切り落としても。
この場所でもしも死ぬとしたら黒ウサギに食われることだけだろうな。
おい、見ろ。
傷は少しするとこうなる」
カガミの左腕、先ほどの切り傷はまるで時間が戻っていくかのように治っていった。
カガミは続けて、
「傷は緑の石でも治せるが、時間さえ経てば自然と元に戻る。
黒ウサギと戦う時とかは緑の石で治さないと間に合わないけどな。
さっきの脳に穴開いたとか首が切れたとかもそう」
すると、当然の質問がスミレから出た。
「先輩。
そういうことが、あったってことですか?」
「バニーガール、そういうことだ。
君たちが来る前。
そういうことがあった。
……いずれは知ることだからな。
ショックだろうが、頭を切り替えて、皆で協力して【ハートの城】を目指そう」
芳しい返事は聞こえなかった。
時間は11時。
午前の作業は終えて、昼食を摂るために村に戻ろうというカガミの意見に促され少女たちは村に戻っていった。
決して、多くは軽い足取りではなかった。
軽い足取りだったのは、ララミィとスミレくらいだった。
アイザック・ゴーマの小説挑戦作だぜ。
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