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アリス・アライズ ~ALICE・ARISE~  作者: アイザック・ゴーマ
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1-1:不思議の国の有宮涼葉

   1-1:不思議の国の有宮涼葉




 有宮ありみや 涼葉すずは

 スズハが目を覚ましたのは、暗い暗いどこかであった。

 上体だけを起こして、ぼんやりと辺りを見渡す。

 どうやら。

 かすかに見える木々のシルエットから、森の中にいるみたいだ。

 見上げれば。

 木々の形のわずかな隙間から星空が見えた。

 見下ろすと。

 地面に、森の草木をうっすらと照らし出しているものがあることに気づいた。

 まるで星空を地面に写し取ったように、地面には光るものが散らばっていた。

 その星の一つを拾い上げる。

 ほのかに発光をしているが、熱はなく、むしろ、ひやっとしている。

 光を放っていることを除けば2~3センチほどのただの石である。

 赤や青、紫、緑、橙……色とりどりの光が周りには見て取れる。

 拾い上げた石で、スズハの姿が闇夜に浮かびだされた。

 活発そうな大きな瞳。

 肩ほどまでのばした髪には一部に三つ編みが施されている。

 どこかの学校の、紺のブレザータイプの制服姿。

 見た目でいうなら、年のころは16~18歳くらいだろうか。

 しかし、スズハはそんな自分の姿に興味はなく、ただただ、その光る石に目を奪われていた。

 ところが、突然ハッとして、勢いよく立ち上がった。

 驚きや不安、恐怖や混乱、表情を次々と変える。

 ぎゅっと、さっき拾った光る石を握りしめた。

 


(なんなのココ!?

 私、なんで?!

 か、考えて、私!

 落ち着けば! 落ち着く時! 落ち着いて!!)



 スズハはおおげさに深呼吸した。



「……よし!」



 ささっと周りを見渡す。

 すると、地面に転がっている光る石がこころなしか道のようになっていることに気づく。

 恐る恐る、スズハはその道に沿って歩き始めた。

 不安を打ち消すために、転がっている光る石をいくつか拾い集めながら歩いた。

 


「……あれ? この石。」



 ふと、石の微妙な変化に気づいた。

 オレンジ色の光の石だけ光が強い。

 拾った他の色の石を上着の両ポケットに入れ、オレンジ色の石を二つだけ、両の手にそれぞれ持った。

 二つの石はお互い反応するように、近づけると輝きを増した。

 その輝き方もやや奇妙なものだ。

 スズハがまるでオレンジ色の板状のものを持っているかのように光は形状をなした。

 近づけたり離したりしてみる。

 板状の形はおよそ石が1メートルくらいの距離のところで発生するようだ。

 それ以上では発生しない。

 形状も、石と石を結ぶ光と、石から天に向かって伸びる光が板を形成して、地面と垂直にしか形作れない。

 1メートルくらい離した石で、その2倍の2メートルくらいの高さの板を構成した。

 それは地面においても形状を維持したままだった。

 不思議な石である。

  


「っは!

 私ってば、こんな時に!!」



 スズハは頭を振って、再び歩き始めた。

 また石を拾い集めながら。

 感覚が過敏になっているせいか、気づいたことがあった。

 匂いがしない。

 これだけ草木が生い茂っていれば、特有の匂いがありそうだが、まったく匂いがしない。

 鼻がおかしくなってるのかもしれない。

 スズハは先の石と同じように、今は考えるべきではないと思考を切り替えた。

 やがて、森が開けているのが見えた。

 思わず、スズハの足が早くなる。

 いくらか距離はあったはずだが、スズハの体感としてあっという間に森をぬけた。

 眼前に現れたのは、広大な砂浜で、その砂浜にも光る石がたくさん散っていた。

 そして、その向こうには海が広がっているようである。

 夜の闇で視覚的に捉えることはできなかったが、波の音が聞こえていた。

 だが、海辺特有の潮の匂いは感じなかった。

 空気も、張り付くような、ぬめりのあるようなものが海辺にはあるんじゃないかとスズハは思ったが、それもなかった。

 しかし、そんなことを考えている場合ではない。

 スズハは砂浜を注意深く見渡した。

 右側方向に、人が幾人かいる。

 薄く光る石のおかげで人のシルエットが見て取れた。

 皆、それぞれ石を集め持っているのだろうか、小さなランタンのような輝きにも見える。

 30~40人くらいはいるようだ。

 集合しているというにはまばらで、まとまりのない集団だった。

 200メートルほど距離はある。

 躊躇いはあったが、スズハはその集団に向かって進んだ。

 それは、集団から風に乗って聞こえてきた声が女性のものばかりで、おそらく、スズハと同じような困惑をもったもののように感じたからだ。

 足早に進んだ。

 そうして、やっと5メートルほどまで近づいた。

 スズハもランタンのように右手に石を集め持っていたから、集団からもスズハは認識される距離にいた。

 だが、集団の者たち一瞥したぐらいで誰もスズハには言葉をかけなかった。

 近づいて改めて、集団の人間はみな、スズハと同じくらい、またはそれより少し年上か年下の少女で構成されているのが見て取れた。

 色々な学校の制服だったり、私服だったり。

 コスプレ姿のような人もいた。

 みんなバラバラかと思えば、同じ学校の制服を着て集まっている者たちもいる。

 スズハは一番近くにいた、一人でいる少女に声をかけた。



「……あの、すみません。

 私、ええ~っと……」



 スズハはこの時に初めて、自分を説明する情報が名前以外にはないことに気づいた。

 記憶を失っていたのだ。

 その様子をみて、声をかけられて少女も察したように返した。



「みんな、そうよ。

 ここにいる人。

 名前以外覚えていないわ。

 だから、安心しろっていっても無理だろうけど。

 ……私は染谷そめや 七流ななる

 あなたは?」



 ナナルという少女。

 髪は首にかかるくらい。

 眼鏡をしていて、きりっとした聡明そうな眼をしている。

 何処かの学校の制服。

 白いセーラーっぽい服であった。

 身長はスズハよりほんの少し高いくらいである。



「私は有宮ありみや 涼葉すずは

 えっと、よろしく、ナナちゃん!」



「! はは!

 いきなりフランクなのね!

 まぁ、いいわ。

 よろしく、スズ」



「え、えへへ!?」



 スズハはよほど自分が心細かったのを思い知った。

 それほどナナルとのこの会話はスズハの心を安堵させたのだった。

 しかし、状況はいまだ不明。

 加えて、名前以外は記憶喪失。

 誘拐・拉致では説明できないこの状況。

 その場の皆が皆、ただただ、困惑している。

 その中で一人。

 


「やぁ、みなさん、よい夜ですね」



 タキシードのようなコスプレ衣装のような姿の少女。

 その少女が陽気な声を、舞台の緞帳が開いたかのようにあげたのであった。

アイザック・ゴーマの小説挑戦作だぜ。

誤字、脱字は随時修正していくぜ。

特に見ても面白いことはやりませんが、Twitter、チャンネル登録もよろしくだぜ。

リンク貼っていいかわからないので、興味がある方は検索してみてだぜ。

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