3-5:トイレと風呂と白い石
3-5:トイレと風呂と白い石
アンリが搾り機と果物ナイフ。
ミハルが果物。
ジュースは簡単に作ることができた。
作ることになったキッカケは、記憶がないために話す内容が石であったり今いる状況に偏り、その話題の中で「では、やってみよう」となったことからであった。
そこから、少女たちは何ができるか次々と試行しはじめた。
だが、できるのは食器や文房具等の小物ばかり。
大きなものは石を無駄にする可能性もあるので慎重になった。
加えて、危険性のあるものは許可がおりないといけないことになった。
そうすると最初の勢いは減速し、今あるもので楽しむ空間になった。
文房具を各家に渡るように配る。
そんなことで楽し気な交流会となった。
そんな中、メアリはエリナと一つ作戦を行っていた。
作戦というほどのものでもないのだが、エリナはメアリにはそういう悪だくみ的な言い方のほうが効くと考えた。
メアリのアクセサリー生成能力はこれから価値が高くなる。
エリナは今後、少なくとも半年、いや、2週間でもこの村から出れないとした場合を想定した。
衣食住はもちろん大切だが、エリナも含めて少女たちにとって娯楽の価値はさらに計り知れないものとなる。
なので、今は交流会を楽しみながらもその能力を見せないようにと指示したのであった。
その思惑の逆を行ったのがミナコであった。
ミナコは自分のグループのアンリとミハルの能力を見せつけた。
この村において、衣食住の食に関しての影響力を強めるためだ。
更にミナコは、こうやって能力を見せあう流れを作ることで、他のグループの能力を探った。
交流会のはじめに各グループは能力を紙に書き出したものの、それは村長側の手にしかないからだ。
中身を見るチャンスがあれば見たいところだが、恐らく、それは難しいかもしれない。
だからこそ、ミナコは能力をお披露目する流れを欲したのであった。
こと、そういう思惑を知らない少女たちは見せびらかすように能力を明らかにしていった。
ミナコの食に関しての影響力のためには、スズハグループのサクラコとミランとは仲良い関係を築きたいところだ。
サクラコは食器等が作れるし、ミランは肉を生成できるらしい。
今はまだ火がないため、ミランの能力は「らしい」でとどまるが恐らく本当であろう。
そういったことを知れただけでも交流会は成功であった、ミナコにとって。
しかし、ミナコの真の目的は別のところにある。
ミナコの能力は建築。
それを利用して最終的には村の実権を狙っていた。
などと、各所で様々な謀がある。
そんな最中、一つの話題があがった。
それは、トイレについてだった。
この得体の知れない場所に来て、誰一人、一度たりともトイレに行ったものがいなかった。
行きたいと思ったものもいなかった。
ハナが言った。
「ええ、そうです。
いくら水を飲んでも、味の悪いお腹を壊しそうなモノを食べたとしても、この場所ではお手洗いにいく必要はありません。
行きたいとも思えません。
それが何故なのか。
どういった力によるものなのかはわかりません。
この場所はそういった不思議がたくさんあります。
もしも、解明できる・したい方はお時間があるときにどうぞ、ふふ」
少女たちの反応は様々。
スズハは「へぇ、便利だねぇ。おトイレいかなくていいんだ」といった。
ナナルは(ますます、奇妙な世界ね)と思った。
エリナは「ふーん」と興味なさげだった。
ミナコは「あら、じゃあ、ジュースもう一杯いただきましょうか」と周りの笑いを誘った。
その話題の流れから風呂の話になった。
カガミが言った。
「風呂もない。
まぁ、汗はかくが何故か臭くはならないしな。
つっても、風呂自体用意できないからってのが大きな理由だ。
さっき、もらった皆の能力の紙。
これ見ると、作れるかもしれないが期待はするな。
それより、皆もはやくこんな場所から出たいだろ」
メアリは「でも、お風呂は欲しいよねー」と言って、いくらか周りから「そうだよねー」と同意を得ていた。
そうして、交流会の時間は過ぎていった。
はじまって4時間くらいして交流会は終了となった。
広場の明かりとなっていた白い石。
その積まれた台車10台ほど。
それらはそのまま、翌日の朝に片づけるとして置きっぱなしにするとハナは言った。
少女たちは皆、各々の家に帰っていった。
1人。
ミナコグループのタツコが帰っていく少女たちの最後尾にいた。
ふと、タツコは振り返る。
白い石の積まれた台車。
その中に強く、惹かれる感覚があった。
タツコはそっと戻り、白い石の山に手を潜り込ませる。
明るく輝いてはいるが、石に熱はない。
その中で仄かに、温かい熱を持つものに触れた。
タツコはソレを取り出した。
他の白い石と変わりはないように見える一つのソレ。
しかし、確かに、温かく、目を凝らせば小さく明滅しているのがわかった。
白い石は用途不明。
それでも、タツコは恐れることはなかった。
「……アライズ」
小さな声で唱えると、その手の石は一瞬つよい光を放ち、消滅してしまった。
タツコは自分でも気づかないうちに泣いていた。
そうして、帰っていく少女たち見た。
その焦点は、タツコのいるミナコグループの者たち、特にリーダーのミナコ。
タツコのその眼には、強い攻撃性が宿っていた。
アイザック・ゴーマの小説挑戦作だぜ。
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