3-4:スキル&ジュース
tips
*村長グループ
ハナ(村長)
カガミ
レネ
チヅル:明るめの色のショートカットヘアー
体が大きく高く、鍛えられた様子
制服は緑のセーラー
ミユナ:中肉中背
肩ほどまでの暗めの髪はその目も隠している
そわそわと落ち着きない。
制服は水色のワンピースタイプ。
3-4:スキル&ジュース
交流会の前。
自分の適性能力の調べ方についてはどのグループも各々で見つけ出していた。
記憶を失っている少女たちにとって、必然的に石の話題になりやすかったのが理由であった。
それを知ってハナをはじめ、村長側はおおいに焦った。
村長側はゆっくりと教えていくつもりであった。
知識の広まり方、共有の仕方が想定以上に早かったのだ。
焦ったのは、石の価値が暴騰することと、能力による人の価値の暴騰が抑えられないレベルで起きてしまうことだった。
石の分配はもう少し先にしておけば良かったと、村長側は後悔していた。
しかし、予期もせず多くの村民が急に増えたこと、その対応に後手になったこと、それらを考えればやむをえなかったというしかない。
逆に、この機を利用するほうに村長側はすぐさま舵をきった。
村の中央、広場。
空はほぼ闇の帳がかかり、森の側にかすか空の赤みが見えるくらいだ。
広場のさらに中央には、白い石が山のように積まれた台車が10台ほど置かれ、それが広場にじゅうぶんな明かりを与えていた。
それを囲うように村長側も含めた少女たちが集まっていた。
先だってカガミが言った。
「やぁ、お疲れ様。
今日はいきなりの肉体労働で大変だったと思う。
そのうえで、この交流会にもよく参加してくれた。
今回、本当はみんなで自由におしゃべりして、親睦を深める会にしようというところだった。
……のだが、石で出来る能力について、既に各々で見出してしまったようだな。
なので、親睦会としておしゃべりは自由に行ってもらうつもりだが、その間に能力毎に人を分けさせてもらおうと思う。
……。
ここで、まず先に言っておくが、村としてはこのままずっと村に引きこもってるつもりはない。
可能性があれば、『ハートの城』を目指すつもりでいる。
そのための分別だ。
それによって、待遇で著しく差をつけることはない。
しかし、作業はいくらか偏りが生じるのは許してほしい。
能力の有無によっては、石の回収ノルマは少し大変になる。
それでも、石を使った能力にはエネルギーを要するので理解をお願いしたい」
少女たちの間でざわめきが起こった。
ハナが続いた。
「皆様、おつかれさまです。
今、カガミが言ったとおり。
村としてはあくまでも、このよく分からない場所からの脱出を目指します。
そのため、極力の配慮はしますが、人によってはいくらか不利益を感じることもあるかもしれません。
その都度、話し合いは持ちたいとは思います。
ですが、今はご理解のほどよろしくお願いします。
……では、これより紙と鉛筆を配ります。
グループのリーダーはそこにメンバーと、それぞれの石での適正を記入してください。
まだわからない、どうやら能力がないかもしれないという方には〇を記入してください」
かくして、紙と鉛筆が配られた。
加えて、書くための画板というか、薄い木の板。
紙は藁半紙、鉛筆は使いかけのような中途半端の長さのもの。
どうやら、適正のない人が生み出したもののようであった。
カガミが補足のように、
「ああ、そうだ。
その紙と鉛筆は私が作った。
適性が見いだせなかったとしても、こんくらいに物を生み出すことができる。
あくまで、適正は適正だ。
まぁ、私みたいに戦闘に特化するやつもいるだろうし、変に気を落としたりしなくていい。
それだけ言っておく。
ああ、そうだ。
レネ! そろそろパンを振舞おう!
手の空いた奴は、交流会の開始だ。
色んな種類のパンがたくさんあるから好きに食べながらおしゃべりしよう。
飲み物は水しかねーけどな、ははは!」
レネが、ミユナとチヅルとともにパンと水を台車で数台、代わる代わる運んできた。
パンはそれこそ、ないものがないくらい色んな種類のもの。
水は樽にビニール袋が入っていて、そこにたっぷり入っている。
隣に紙コップがたくさん積まれていた。
飲み物は適性が無い者が作ると、食物より劣性がひどいらしく無理して作ることはしなかったという。
早々、それぞれの班は能力を書き出し、ハナに提出された。
スズハグループ。
スズハ:〇
ナナル:ほぼ何でも・各種対応石。
サクラコ:金属の小物(スプーン、フォーク等)・黄色の石。電子機器小物(電卓、レコーダー等)・青色の石。
ミラン:肉各種(パック詰め、スーパーで売られている状態のもの)・赤色の石。
ララミィ:〇
エリナグループ。
エリナ:〇
マユル:バギー等乗り物(?)・青い石。
レイリ:文房具(鉛筆、消しゴム、ハサミ、接着剤等全般)・黄色い石。
メアリ:アクセサリー類・黄色い石。
ヤヤ:布類(+枕や布団等)・黄色い石(+青い石)。
ミナコグループ。
ミナコ:建築全般・青い石。
アンリ:包丁、まな板等の調理器具・黄色い石。
ミハル:野菜・果物類・赤い石。
タツコ:〇
ルキ:電気(?)
マツリグループ。
マツリ:キャンプ用品・黄色い石。
カザキ:ペットボトル等プラスチック製品・黄色い石。
サラ:電化製品・黄色い石(+青い石)。
アキ:衣服・黄色い石。
カナタ:〇
カエデグループ。
カエデ:〇
スミレ:〇
エミリー:銃火器・青い石。
カナメ:剣等武器・青い石。
ハナとカガミはそれを見て、喜んでいいのか恐れていいのか複雑な気持ちでいた。
ハナは言った。
「これは……銃火器とか剣とかってのは本当……なのよね?
でも、あの森を抜けることを考えれば力強いかもしれないのか。
まぁ、それにしても、この村の生活はだいぶ良くなりそうね、カガミ」
「ああ。
にしても、ナナルか?
ほぼ何でもってなんだよ?
特化よりはきっと劣るだろうが、チートだな」
レネが聞いた。
「ちーと?
ちーとって何?
カガミ」
「あ?
えーと、強すぎてずるいってこと。
しかし、レネのようにパン特化みたいのはいないか。
まぁ、肉や野菜が出せるだけでもすごいが。
カエデってのは、アレだな。
多分、私やチヅルと同じ方面で戦闘特化な感じがするな。
筋肉すげーし。
あとは……まぁ、【センパイ】みたいな例もあるし。
生み出すのに必要なものが石以外にあるケースもあるだろうからな。
〇のうち、いくらかはそういう可能性もあるかもな」
話すカガミ、ハナ、レネ達。
そこに、少女たちにパンと水を配っていたチヅルとミユナが慌てるように駆け寄ってきた。
チヅルが満面の笑みでいう。
「おい、見ろ!
ジュースだ、ジュース!!」
チヅルとミユナの手には大きなガラスジョッキがいくつか握られ、その中にはジュースと思しきものが注がれていた。
カガミが驚いて、
「何!?
作ったのか?!
まぁ、これだけ能力があれば作れるだろうが
いや、動きが早いな」
カガミたちはチヅルとミユナからジョッキを受け取る。
まず、香りを嗅ぐと、紛れもない甘いフルーツの香りがした。
そのまま、飲む。
さっぱりとした美味しさが口に広がった。
レネが言った。
「おいしぃーい!!
ここに来て、初めて!
ねぇ、他にも何か作ったりしてた?」
チズルが答える。
「いや、今はジュースだけ作ってみてもいいって聞かれたから許した。
他のはハナにまず許可を取るようにって言ってある。
まずかったか? ハナ」
「いいえ、ありがとう、チヅル。
そうね、武器みたいな危険なものは許可制にして、こう言ったジュースのようなものはどんどん挑戦してもらいましょう。
私から言ってくるわね」
ハナはそう言うと、ジョッキを片手に盛り上がっている少女たちの輪に入っていった。
レネとミユナもジョッキを抱きしめるようについていった。
カガミとチヅルはその背中を見送った。
カガミが、
「ありゃあ、おかわりもらいにいったな、ははは。
まぁ、水しかなかったもんな」
「……カガミ。
どうだ?
行けそうか?」
「あ?
ああ、能力か。
豊作っちゃ、豊作だ。
とりあえず、食事に関しては……バッテリーと食用油が欲しいところかな。
あと、調味料」
「脱出に関して、だよ」
「はは、どうだろな。
今ある石の在庫をフルに使って、一回挑戦できるかもな」
チヅルは肩をすくめ、ジョッキに口をつけた。
カガミはそんな姿を眺めて、次に少女たちに視線を移し、そして空を見あげた。
空には既に満点の星。
天に近づくほど薄っすらとしているオレンジの壁の上辺からそれらが見えた。
月はない。
この場所に長くいるカガミ達、村長側。
彼女たちですら、ここにきて一度すら見たことがなかった。
アイザック・ゴーマの小説挑戦作だぜ。
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