0:幻想の、少女の庭園
0:幻想の、少女の庭園
星の瞬く夜空の下。
海辺。
なだらかな砂浜がだだっ広く、蛇行しながらも長く続いている。
砂浜から陸地の方面。
そこには海に対して闇のかたまりのような森が広がっていた。
電灯の明かりのない場所だ。
それでも周りをそれだけ把握できる理由は砂浜にあった。
小さく光る石が広く散らばっていたのである。
まるで夜空の星が落ちてきたかのような風景だった。
赤や青、緑や紫。
けっして強くはないが蛍の光のように輝いている。
その仄かな明かりの集まりが、あたりの輪郭を浮かび上がらせていたのだった。
そして、その砂浜の一か所。
人が集まっている場所があった。
どういう集まりなのか。
その全てが若い少女たちでその姿も一様ではなかった。
様々な学校の制服であったり、ラフな私服であったり、ドレスのような衣装であったり。
ただ、皆、困惑の表情を浮かべているのは共通していた。
おおむね40人くらいの集団であった。
そして、その集団に対峙するように、まるでそこのリーダーかのように一人、いた。
その者もまた少女。
これまた場に似合わない、カジノのディーラーを思わせるような不思議な衣装を纏っていた。
余裕のある雰囲気。
猫のような丸みのある緑色の瞳が特徴的な少女だった。
少女は張り上げず、かといって、全員に聞こえるような声の強さで言った。
「やぁ、皆さん、改めましてこんばんは。
やっと集まってもらえましたね。
私はシャムといいます。
『ここ』の案内人みたいなことをしてますね。
え?
『ここ』はどこかって?
まぁ、お待ちください。
すごく説明が難しいんですよ。
それに長々説明する時間は実は今はないんですね。
はい、皆さん、ざわざわしないで。
生き残りたければ私の話をちゃんと聴いてください。
今はとにかく安全なところに避難しましょう。
ああもう、聴いてない人は死んじゃいますよ?
まぁ、いいか。
聴いてる方々、あちらの森のほうがざわめき始めているのがわかりますか?
『ここ』には普通はいない、あなたがたの『敵』がいるんです。
触られただけで死につながる特別なやつらです。
超危険です。
そこで、この海岸線に沿って行ったところに小さな集落があります。
ひとまずはそこに向かってください。
あと、もう一つ。
皆さん、地面に小さく光る石が散らばっているのにお気づきですね。
それはやつらの弱点になってます。
赤とか青の、そう、それらです。
ただ、白い石と黒い石はダメです。
やつらに投げつけてやりましょう。
効果は絶大です。
よし、そんなところです。
はいはい、皆さん、あっちです。
あっちに行ってください。
出来たら走って。
はい、行った行ったぁ。
お、やつらが来ましたね。
うぞうぞとしてるアレすべてが『敵』です。
ここらでは【黒ウサギ】って呼ばれてますね。
わぁ、皆さん、素敵な悲鳴です!
お、判断が早い人はもう走ってますね。
がんばれー。
あ、ふふふ、ころんだ。
おやおや、足のひっぱりあい。
あ、死んだー。
あははは。
お、そうです、石を使って。
あー、間に合わなかったぁ。
ふふふふふ。
……さてさて、少しばかりは助けてあげますか。
全員に死なれると……私もつまらなくなりますからね。
ふふふ。」
『ここ』にまだ名前はない。
幻想の、少女の庭園である。
アイザック・ゴーマの小説挑戦作だぜ。
誤字、脱字は随時修正していくぜ。
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リンク貼っていいかわからないので、興味がある方は検索してみてだぜ。