あるある089 「共同戦線を張りがち」
カイト達が立ち去ってからしばらくするとレオナルドの軍勢がやって来た。
警備兵達は重い鎧意を着て駆けて来たので激しく息を切らせている。
そんな中、ひとり馬に乗って来たレオナルドは澄ました顔をしていた。
「レオナルド様、お待ちしておりました」
「何用だ?」
人質になっていた神父はレオナルドのところへ駆け寄り縋りつくように伝える。
「あいつらは北の海岸へ向かいました。そこに仲間がいるようです」
「ほう、それはいいことを聞いた」
「で、私を助けてくれるんですよね?」
そう神父が呟いた瞬間、神父の頭は地面に転がり落ちる。
首から溢れるほどの鮮血を撒き散らしながら無残にも散った。
レオナルドは剣についた血を振り払うと何事もなかったかのように鞘に納める。
そして手綱を握ると北の海岸を目指してひとり駆けて行った。
その場に残された警備兵達はあたり前のように死体を片づける。
レオナルドのこう言う行動は普段から見慣れているので動揺をする者は誰ひとりいない。
苦しまずに殺されたことが何よりの救いとも言えるのだ。
そして警備兵達もレオナルドの後を追って北の海岸へ進軍した。
一足早く北の海岸へ辿り着いた俺達はさっそく出港の準備に取りかかる。
準備と言ってもセリーヌを運び出すだけで他の準備は既に整っている。
マシューがいつでも出港出来るように予め準備をしてくれていたのだ。
「随分、遅かったな?」
「セリーヌが土壇場で迷うから強行手段をとった」
マリーナはエレンに担がれていたセリーヌを見て状況を察する。
そしてセリーヌを抱きとめるとエレンといっしょにシーボルトの船に運び出す。
そこへレオナルドがひとりで駆けつけた。
「こんな所にいたのですか。探しましたよ」
「ちぃ。随分と早く見つかってしまったじゃないか」
「あなた方の行方の情報を伝えた協力者がいましから」
「あの野郎、助けてやったのに裏切りやがったな」
「今頃、天国でのんびりお茶でも飲んでいる頃でしょう」
レオナルドのその言葉に人質になっていた神父が殺されたことを察する。
あの神父がレオナルドは失敗を消すと言っていた意味が今頃になってわかる。
そもそも人質になること自体、レオナルドからしたら失敗なのだ。
だから、殺した。
ただ、それだけなのだ。
「さあ、セリーヌを返してもらいましょう」
「渡すかよ」
「ならばあなた方にも死んでいただくだけです」
「お前ひとりで何が出来るって言うんだ?」
「ひとりじゃありませんよ」
レオナルドは勝ち誇ったような顔で右手を小さく翳す。
すると、俺の横腹に激痛が走った。
生温かい感触が横腹を伝い地面に流れ出す。
地面はすっかり真っ赤に染まって血の海を作っていた。
「グハッ」
「「カイト!」」
何が起こったのかわからなかった。
ただ激しい痛みが体中を駆け巡っていた。
そして横腹を突きさしていた槍を手にとり状況を理解する。
その槍は間違いなくマリーナの槍だったからだ。
「野郎、裏切りやがったな」
「裏切った訳ではない。私ははじめから仲間でないからな」
「マリーナ。よくやった」
レオナルドは満足気な顔をしながら拍手をして褒め称える。
作戦を成功させた者には心から激励を与えるのがレオナルドのやり方だ。
「マリーナさん、止めてください。僕たちはいっしょに冒険して来た仲間じゃないですか。ここでカイトさんを殺して何になるんです」
「何にもならないが金にはなる」
「お金のために人を殺すんですか。そんなのあんまりじゃないですか」
「これも仕事だ」
マリーナは顔色ひとつ変えることなくマシューの質問に淡々と答える。
その顔は今までの血の通ったマリーナでなく、殺人鬼と化した冷淡なマリーナを映し出していた。
金で人を殺せるほどマリーナは冷酷な人間だったのか。
いっしょに冒険をして来た俺にはそうは思えない。
これもレオナルドの『知略設計』によって洗脳されているからなのだろう。
「マシュー、何を言っても無駄だ。あいつははじめから私達を騙していたんだ」
「見かけによらずに理解が早いのですね。さあ、マリーナ。とどめを刺しなさい」
「言われるまでもない」
マリーナは槍を引き抜くと纏わりついていた血を振り払う。
そして倒れ込んでいる俺を目掛けて槍を振り上げる。
「迷わずに逝け!」
マリーナは槍を勢いよく振り下ろした。
その瞬間、カキーンと激しい音がしてマリーナの槍が弾かれる。
見ると目の前にエレンが立ちはだかって大剣を構えていた。
「そう簡単にやらせるかよ」
「エレン……」
「カイト、下がっていろ。こいつは私がやる」
俺は横腹を押えながらおもむろに立ち上がる。
すると、素早くマシューが駆け寄って来て肩を貸してくれた。
「マシュー。悪いな……」
「カイトさん、喋らないでください。傷口が広がります」
「グハッ。俺はもうダメのようだ……」
動く度に傷口から溢れんばかりの鮮血が流れ出す。
それも無理はない。
刺された横腹が抉れて風穴が空いていたのだ。
吹き抜けるそよ風でも激痛が走るほど。
このままでいたら間違いなく死ぬだろう。
ここまで来たのに――。
「シーボルト。セリーヌを叩き起こせ。回復魔法でカイトを助けるんだ!」
「わかった」
エレンの指示を受けてシーボルトが慌ててセリーヌのところへ駆け寄る。
そして頬を軽く叩いてセリーヌの意識を確かめた。
「おい、セリーヌ。いつまで寝ているつもりだ。カイトがやばいんだ。目を覚ませ!」
「んん……」
「セリーヌ。しっかりしろ!」
「あっ……シーボルトさん」
「ようやく気がついたか。カイトがやばいんだ。回復魔法を頼む」
シーボルトは倒れ込んでいる俺を指さしてセリーヌに訴える。
しかし、セリーヌはまだ要領を得ていないようでポカンとしていた。
さっきまで結婚式場で口論をしていたのだから仕方ない。
だけど、俺の痛みは待ってはくれない。
時間が経つ度に意識が遠のいて行っておぼろげになって来た。
「カイトさん、しっかりしてください!」
「……」
「セリーヌさん、早くしてください。このままだとカイトさんが死んでしまいます!」
マシューの腕の中で横になっている俺は静かに目を閉じた。
瞼が重くなって目も開けていられないほど力が抜けたからだ。
この時、俺ははじめて『死』を自覚した。
人が死ぬのは大きなことだと思っていたが意外とあっけない。
虫が踏みつぶされて死ぬように人の死も軽いのだ。
重く感じるのは死んだ人間に対する想いがあるからだろう。
俺の死を悼んでくれるここにいる仲間達も苦しみを覚えるはず。
俺は仲間達にそんな思いをさせながら死んでいくのか。
カイト軍団のリーダーとして受け入れがたい事実だ。
リーダーであるならばもっとあっさりと死にたいものだ。
そんなことを考えている間に俺は意識を失っていた。
その後、どうなったのかはわからない。
ただ、エレンとマリーナとの戦いが行われていただけだ。
エレンは大剣を中段に構えながらマリーナに向き合う。
マリーナも上段に槍を構えながら攻撃のタイミングを推し量る。
大剣と槍ではリーチの長い槍に分があるように見えるが懐に入れば大剣の方が勝る。
だからこそエレンはマリーナの懐に入るタイミングを探っていた。
「お前と剣を合わせることが来るなんてな」
「私達を裏切ったことを後悔させてやる」
「裏切られる奴の方が悪いんだよ」
「言っておけ!」
エレンは一歩踏み出して一気に間合いを詰める。
その動きにすぐさま反応してマリーナは槍でけん制攻撃をしかけた。
マリーナの鋭い刺突がエレンに襲いかかる。
それは土砂降りの雨の如く無数の連撃となって放たれた。
エレンはすぐさま反応して大剣で薙ぎ払いながら間合いを計る。
「やるじゃないか」
「まだまだこれだけじゃない。私の凄さを思い知らせてやる」
マリーナは槍を一回転させると柄を右脇に挟んで切っ先をエレンに向ける。
その構えからしても次に繰り出して来る攻撃はただの攻撃でないことはわかった。
だからエレンも後ろの飛びのいて間合をとる。
ある程度、間合いを開けておけば瞬時の時に対応できる。
軽い槍を武器にしているマリーナの動きは思うほど素早いのだ。
マリーナは深くて長い呼吸をしながら意識を槍の切っ先に集中させる。
すると、マリーナの槍を中心に気の渦が出来はじめた。
その気の渦は次第に姿を変えて水の渦へと変化して行く。
瞬く間にマリーナの槍は水の渦の槍へと姿を変えた。
「お前に見せてやる。我が奥義、『水渦衝』を!」
「へっ。何でも来やがれってんだ」
「その減らず口をへし折ってやる。食らえ『水渦衝!』」
マリーナの槍から放たれた水は激しい渦となってエレンに襲いかかる。
エレンは大剣で水の渦を払いのけようとするが空を切るばかりで止められない。
液体である水にいくら攻撃を仕掛けた所で打ち消すことなど出来ないのだ。
ある意味、『水渦衝』は無敵の攻撃とも言える。
鉄砲魚のように水鉄砲で虫をピンポイントで打ち落とす原理と同じ。
水の渦は衝撃波となってエレンの体にダメージを与えて行った。
「グハッ。野郎、やるじゃねえか」
「まだまだこれだけではないぞ。我が『水渦衝』の恐ろしさを教えてやる」
マリーナが力を込めると水の流れが変わりはじめる。
それまで槍を囲うように流れていた水の流れが先端へと移動する。
そして高速で回転しながら水の縄のように姿を変えた。
これは『水渦衝』を極めたものにしか使えない技のひとつだ。
水を操るのは思うよりも難しい。
剣技ならば鍛錬によって技術を習得できるが、水を操るのはそうではないのだ。
厳しい鍛錬も必要だが何よりも特殊能力の存在が欠かせない。
マリーナの特殊能力は『水閃流技』なのだ。
『水閃流技』は特殊能力の中でも特別な能力で自らの体を水と同化させることが出来るのだ。
ただし同化できるのは部分的に限るが。
「食らえ、『水渦衝!』」
マリーナの槍から放たれた水の渦は蛇のようにうねりながらエレンの周りを取り囲む。
そしてクリームを重ねるようにグルグルと回転しながらエレンを覆い隠して行く。
しばらくするとエレンを取り囲むようにドーム状に水の渦が出来上がった。
「こんな子供だましが通じるものか」
「そう言っていられるのも今のうちだ」
マリーナが槍をくいっと捻るとドーム状の水の渦がエレンを中心に収縮して行く。
それはエレンの動きを止めるだけでなく、ドームの中にあった酸素も奪う恐ろしい攻撃だ。
しだいにエレンは酸欠状態に陥って苦しみはじめた。
「くぅ。息が……」
「これが『水渦衝』を極めた者のなせる技だ」
「ち、ちくしょう。こんな所で」
エレンは喉を掻きむしりながら必死に酸素を探す。
しかし既にエレンの周りは水で覆われていてどこにも呼吸を出来る場所はなかった。
「グハッ」
たまらずに大きく口を開けて息を吐き出す、エレン。
口の中にも大量に水が流れ込んで来て溺れてしまう。
そしてガクリと膝を折ってその場に崩れ落ちた。
「勝負あったようですね」
誰の目から見ても勝負はマリーナに軍配があがった。
しかし、エレンは飲み込んだ大量の水を吐き出しながら息を吹き返したのだ。
マリーナが手を抜いた訳ではない。
ただ、エレンの生命力が勝っていたのだ。
マリーナ自身、一番驚いている。
この技で仕留められなかった者などいなかったからだ。
ましてや人間でそれが出来るなんてあるはずがない。
「ゲホゲホゲホ。まだ、終わりじゃねえ」
「こ、こいつ」
エレンは大剣を杖代わりにしながらおもむろに立ち上がる。
さすがにダメージは大きいようで大きく肩で息をしていた。
「これは面白くなりましたね。エレンさんが勝つかマリーナが勝つか。さあ、マリーナ。とどめをさしなさい」
「確かに私の技に耐えたことは褒めてやろう。しかし、次の攻撃で仕留めてやる」
「こいよ。どっちが強いのか教えてやる」
再び『水渦衝』の構えをとる、マリーナ。
それに合わせるようにエレンも同じ構えをとる。
もちろんエレンの特殊能力『再現』を発動させるためだ。
先ほどの攻撃でマリーナの技は見極めていた。
後は『水渦衝』を放ちマリーナを仕留めるだけ。
それがエレンの横道な戦い方なのだ。
「どう言うつもりだ、貴様。私をおちょくっているのか」
「おちょくっているんじゃない。お前を称えているんだよ。お前の『水渦衝』と『水閃流技』はこの上なく相性がいい。無敵と言っても過言でないだろう。だからこそお前のお得意の技で仕留める必要があるんだ」
「『水渦衝』で私を仕留めるだと。一度見ただけで習得出来るほど簡単な技ではないぞ」
「御託はいい。打ち込んでみればわかるさ」
「ならばお望み通りぶち込んでやる」
次の瞬間、マリーナは一気に間合いを詰めて射程圏内に入る。
そして水の渦を纏った槍でエレンを串刺しにする。
同時にエレンも反応して『再現』を発動させ『水渦衝』を放った。
マリーナの水の衝撃波とエレンの水の衝撃波が激しくぶつかり合い飛沫となって消える。
その光景に一番驚いたのはマリーナ自身だった。
「私の『水渦衝』を真似ただと」
マリーナはすぐさま第二撃を放つ。
しかし、エレンの『水渦衝』で弾かれてしまう。
こんなことはあり得ないはずだ。
マリーナが何年もかけて築き上げて来た必殺技が、こうも簡単に習得されるなんて。
常識では考えられない。
あるとするならば特殊能力の存在だけだろう。
「お前の特殊能力は?」
「『再現』だよ」
「ならば理解できる。一度見た技を瞬時に習得できる『再現』ならば真似られても当然だ」
しかし、『水渦衝』は真似られても『水閃流技』まで真似られることはない。
ならばマリーナにもまだまだ勝機はある。
マリーナは『水閃流技』を発動させて左手を水に変えるとエレンの首根っこを掴んだ。
「これで終わりだ。死ね!」
マリーナの左手は変形しながらエレンの顔を覆い尽くして行く。
そして再びエレンを窒息させる攻撃に転じた。
しかし、一枚上手だったのはエレンの方だった。
マリーナに首根っこを掴まれたと同時に酸素生成器を口に加えていたのだ。
これではいくらマリーナが『水閃流技』を発動させたところで意味がない。
「詰めが甘いんだよ」
エレンはマリーナを引き寄せて腹に膝蹴りを食らわせる。
すると、マリーナの技が解けてエレンは解放された。
マリーナは腹を抱えたままその場に崩れ落ちる。
海中戦では、あれだけ自分勝手に振る舞っていたエレンが酸素生成器を持ちだして来るなんて。
マリーナの教えが逆に首を絞めてしまったようだ。
エレンは大剣をマリーナの頸椎にあてると終了を告げた。
「これで私の勝ちだ」
「まさかお前に負けるとはな。私も落ちぶれたものだ」
「首を洗って出直して来い」
マリーナの完敗は決まった。
機転を利かせたエレンの勝ちだ。
戦いは人を強くさせると言うがエレンの学習能力は思っている以上に高いようだ。
「エレンさんの勝ちですか。残念です。私はマリーナを押していたんですけどね」
「もう、諦めろ。お前に勝機はない」
「何を戯言を言っているのです。用済みには消えてもらいましょうか」
「私を殺すつもりか?」
「はじめからあなたは捨て駒に過ぎません。周りを見てください。優秀なセレスティア王国の警備兵達が揃っていますから」
辺りを見回すと300人ほどの警備兵達が辺りを取り囲んでいた。
これだけの数を相手にするほどエレンには体力が残っていない。
マリーナとの戦いで体力の半分以上を使い果たしていたからだ。
「ちぃ。こいつは分が悪いな」
「私が手を貸そう」
大剣を構えているエレンの前ににじり出す、マリーナ。
槍の切っ先をレオナルドに向けて宣言をした。
「はじめからお前とは金の繋がりだけだ。忠義も何もない。私を捨て駒にしたことを後悔させてやる」
「ハハハ。これは可笑しい。捨て駒、如きが私を倒そうなど思い上がるとは。ならば力で示してあげましょう。誰に忠誠を誓えばいいかをね」
レオナルドは静かに鞘から剣を引き抜くと空へ向けて掲げる。
すると、300人の警備兵達は武器を手にとり攻撃体制をとった。
いくら手練れであるエレンやマリーナが歯向かったところで結果は知れている。
洗練されたセレスティア王国の警備兵300人を相手に出来るなどあり得ないのだ。
だからここはすみやかに身を引くのが肝心だ。
「おい、エレン。時間を稼いでくれ。それまでに船を出港させる。おい、マシュー。カイトとセリーヌを船に運べ」
「わかりました、船長」
マシューは倒れ込んでいた俺を引きずりながら船に運びはじめる。
その様子を見ていたレオナルドはすぐさま攻撃の合図を送った。
「一人たりとも逃すな。セレスティア王国の名に懸けて阻止するんだ!」
「「うぉぉぉぉぉ!」」
地鳴りのように雄たけびをあげながらセレスティア王国の警備兵達が一斉に動きはじめた。
エレンとマリーナは襲いかかって来る警備兵を打ち払いながらじりじりと後退して行く。
あくまで逃げるための時間を稼ぐことが目的なので深追いはしない。
エレンは大剣を振り払いながら警備兵を薙ぎ倒して行く。
その隣ではマリーナが必死に応戦していた。
いつの間にか二人の間には協同戦線が敷かれ防波堤を築いていた。
「何を手こずっている。セレスティア王国の警備兵の力はこれだけではないだろう!部隊を散会させてサイドから回り込め!」
レオナルドの指示に合わせて警備兵達は3つに分かれて散会をしはじめる。
そして両脇から回り込むようにエレンとマリーナに迫った。
それでもエレンとマリーナは激戦を繰り広げて警備兵達を押しのけて行く。
「全く使えない奴らだ。奴らを取り逃したら厳罰に処すぞ!」
「そんなところで高みの見物をしていないでお前も戦ったらどうだ?」
「言わせておけば」
エレンの挑発を受けてレオナルドが動き出す。
手綱を手にとり馬を走らせてエレンに突進して行った。
馬上からレオナルドの一撃がエレンに入る。
すぐさま大剣で振り払って攻撃をかわす、エレン。
力ではエレンの方が上だが馬上からの攻撃ではレオナルドに分がある。
すると、マリーナが代わりに立ちあがった。
「奴との決着は私がつける。お前はあいつらと出港しろ」
「何を言ってやがる。お前ひとりでこれだけの人数を相手に出来る訳ないだろう」
「出来ないのではない。やるだけだ」
「お前……」
「それがお前のやり方だろう?」
マリーナは少し嬉しそうに口元緩ませるとレオナルドの前に立ちはだかった。
「さあ、早く行け!」
「わかった。死ぬなよ」
そんなエレン言葉は虚しく空に消える。
エレン達が立ち去った後、マリーナはレオナルドの剣に貫かれて死んだのだ。
暗殺者のマリーナには相応しい最後だと言える。
しかし、エレンの胸にはやり切れない思いが残った。
同じ剣を交えたからこそ芽生えたモノがある。
短い間であったがエレンはマリーナと心を通わせいたのだ。
引き返せるならば戻ってマリーナを助けたい。
だが今はそれが出来ない。
今は前に進むしかないのだから。




