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おばさんクエスト~あるあるだらけの冒険記~  作者: ぱんちゅう
第三章 帰郷するおばさん編
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あるある084 「緊張感の欠片をなくしがち」

朝霧が立ち込める港は静寂に包まれていた。

太陽はまだ登っておらず東の空がほんのりと明るい。

俺達はシーボルトの船に集合し、出航の準備を整えていた。


「こんなに朝早く出航だなんて」

「ロコゴンドル王国の領海まで行くには距離が離れているからな。朝早く出ないと陽が沈む前に戻って来れなくなる」


大欠伸をしている俺の横でエレンは気持ちよさそうに居眠りをしている。

昨晩もひとりで飲んでいたようだから、まだ酒が回っているのだろう。

それとはうって変わってマリーナはすっきりした顔をしている。

早朝から軽快にストレッチをして準備万端な様子。

同じおばさんでもこうも違うものなのか。

少しはマリーナを見習ってほしいものだ。

エレンにはもっと健康的な生活を送らせた方がいいのだろう。


「おいでなすったぞ」


シーボルトの視線の先を見やると出入港管理者が検閲官達を連れてやって来るところだった。


「おい、お前達。こんな朝早く出港か?出港書を見せろ」

「はいよ」


シーボルトは素直に従い出港書を差し出す。

出入港管理者はシーボルトの手から出港書をはぎ取ると目を通した。

どの国の港もそうだが出入港に関しては出入港管理事務局が管理している。

時間から船のサイズ、積荷に至るまで船あらゆる情報をを管理することで港をスムーズに運営しているのだ。

とりわけ密輸に目を光らせているセレスティア王国では検閲は厳しい。

わざわざ積荷の箱を開けさせて中身を確認するほど徹底している。

あいにくシーボルトの船には積荷がないので検閲はさっさとすむはずだったが――。


「おい、お前。これは何に使うものだ?」

「こいつは海釣り用の仕掛けだ。見ればわかるだろう」

「こいつは武器になるな」


検閲官が大きな釣り針を持ち上げながらシーボルトを睨みつける。


「おいおい、言いがかりはよしてくれ。それはただの釣り針だ」

「ふん。まあいいだろう。で、出港の目的は何だ?」

「見ればわかるだろう。漁だよ」

「漁だと?そいつの格好は何だ?それが漁に出掛ける格好か?」


検閲官は居眠りしていたエレンを指さして指摘する。

あちゃー。

またエレンの格好で捕まったよ。

これで何度目だ。

エレンには悪いが今後はもっとまともな格好をしてもらう必要があるな。

ビキニアーマーじゃただの露出狂だ。


「そ、そいつは泳ぎ専門の漁師だ。動きやすい格好をしているだけだ」

「泳ぎ専門の漁師なんて初めて聞くな」


それもそうだろう。

シーボルトもやむなく言った言葉なのだから。

いっそうのこと娼婦にしてしまうのも手だが、それだとそれで問題が残る。

セレスティア王国では表向き娼婦は処罰の対象となっているからだ。

まあ、表向きなのだけどな。

夜になるとどこからともなく娼婦たちが集まって来るのが現状だ。


「そいつも漁師か?」

「俺は護衛の剣士だ」

「護衛だと?笑わせるな。そんなちっぽけな剣士になにが出来るって言うんだ」


検閲官は馬鹿にしながら大笑いをして俺を見下す。

確かに見た目はしょぼいかもしれない。

だけど、俺だってこれまでに戦闘経験を重ねて来たんだぞ。

それなりに強くなっている。

まあ、エレンほどではないけれどな。

すると、マリーナが間に割って入った。


「カイトは私の連れだ。何か文句でもあるのか?」

「お、お前は……マリーナ。何でこんなところにいるんだ?」

「仕事さ」


マリーナを見るなり検閲官の目が止まる。

口をわなわなさせながら顔が青ざめて行った。

名前を聞いただけで相手を怯ませるなんてマリーナの実力が伺える。

きっと俺の考えも及ばないような経験を積んで来たのだろう。

それに比べてエレンと来たら、だらしのない顔をしながら涎を垂らして居眠りしている。

こういう状況で居眠り出来る、その根性はさすがだが威厳がまるでない。

マリーナの爪の垢でも飲ませようか。


「検閲はこれまでだ。せいぜい漁を楽しんできてくれ」


出入港管理者は嫌味そうにと呟くと他の検閲官達を連れて次の船へ向かった。


「マリーナ。ありがとうな、庇ってくれて」

「ああいう奴らは無視をするに限る。いちいち相手にしていても疲れるだけだからな」

「それにしても検閲が厳し過ぎやしないか?船を出すだけでこんなに厳しいチェックを受けるなんて」

「噂で聞いた話ですが、検閲官達が武器の密輸が行われるとの情報を掴んだらしいですよ」

「まさか、俺達が護衛をする船じゃないよな?」

「詳しくはわかりません。僕もちょろっと聞いただけですから」


マシューの聞いた噂話が本当だとするとかなりヤバい状況になって来た。

シーボルトの船には武器は積んでないが護衛する船には武器がたんまりと積んである。

いちおうゴルドランド王国へ輸出することにしてあるが疑いをもたれることは間違いないだろう。

今も船の周りに検閲官達が取り囲んで積荷の検査をしている。

今の俺達に出来ることは無事に検閲が終わるのを見守ることしか出来ない。

ここで口を挟もうとしたのならば余計な火の粉を浴びることになるだけだからな。


「だいぶ時間をとっているな。あいつらバレたんじゃないのか?」

「まあ、武器を積んでいるんだ。疑いをかけられても不思議でないだろう」

「やっぱりマズかったんですよ。密輸船の護衛なんて。今からでも遅くありません。止めましょう」

「マシュー、これは決まったことなんだ。今さら止めるなんてことはしないよな、カイト?」


本音を言わせてもらえば中止にしたい。

密輸なんて手を汚すことをわざわざするなんて正気の沙汰ではない。

ただこれは裏の世界を知るための糧にするつもりだ。

表と裏、光と闇。

どちらをとっても世界の真実の姿なのだ。

ならば勇者を目指す者として知っておく必要がある。


「マシュー、心配するな。捕まるようなことはしないから安心しろ」

「僕は安心できません。密輸の手伝いで捕まったとなったら田舎の両親に合わせる顔がありません。僕が立派な船乗りになるために快く送り出してくれたんですよ。それを裏切る形になるなんて」

「なら、マシューはここに残れ。俺達だけでやるから」


シーボルトがなだめるように言うとマシューが口を噤んだ。

マシュー外しは妥当な提案だろう。

迷っている人間を連れて行くほど危険なことはない。

ちょっとの判断ミスがきっかけで失敗することもあるからだ。

ならば意思統一が出来ている連中だけで仕事をする方がいい。


「船長。僕は……」

「これは船長命令だ。マシューは留守番だ」

「心配するな。マシューの取り分も残してやるから」

「話はまとまったようだな。あちらにも動きがあったようだぞ」


密輸船を見やるとひとりの騎士が出入港管理者に何やら話をしているところだった。

持っていた伝令書を見せながら出入港管理者に説明をしていた。

ここからでは何の書類かはわからないが重要なものと言うことだけはわかった。

それは書類に目を通した出入港管理者の急に顔色を変えたからだ。

騎士がわざわざ伝令書を運んで来るなんて緊急の報せなのだろう。


「何の話をしているんだ?」

「わからない。だけどただ事じゃなさそうだ」

「やっぱりバレてしまったのではないでしょうか」


それはあり得ない話でもない。

密輸の情報が漏れていると考えれば何かしら対策を打たれるもの。

騎士が来たと言うことは既にセレスティア王国が把握していると見た方が妥当だろう。

これ以上の追従は危険かもしれない。

残念だが今回の仕事はこれで終わりだ。

そんな決断をしていると出入港管理者が検閲官達を引き上げさせた。


「おい、カイト。あいつら帰って行くぞ」

「どういう事だ。バレたんじゃないのか」

「よくはわからないが、これはチャンスだぞ」

「チャンスってどういう事だよ、マリーナ」

「一度、検閲をパスした船をわざわざ捕まえることはないからな」


確かに言われてみれば、そうだ。

検閲をパス出来れば、その後は自由だ。

セレスティア王国もわざわざ二度手間になることはしないだろうからな。

すると、密輸船の船員がこちらに向かって手を大きく振って合図をして来た。


「さっそく出港のようだ。俺達は密輸船の後を追う形で航行する。マシュー、留守を頼んだぞ」

「気おつけてくださいね、船長」

「任せておけ」


シーボルトは舵を握るとゆっくりと船を出す。

密輸船とは1㎞の距離を保ちながら後を着いて行く。

目線を逸らすためにまずはじめに目指すのはゴルドランド王国。

その後で進路を北に向けてロコゴンドル王国を目指す航路をとる。

少し遠回りになるが仕事を成功させるためには必要なことなのだ。





密輸船はトラブルもなく順調に東に向かって進んで行く。

周りに警備船も見当たらず今のところ何の問題もない。

立ち込めていた朝霧も晴れて朝陽が差し込んでいる。

太陽と海の取り合わせはこの上なく良い。

空には雲一つなく青空が広がっている。

空と海を隔てる水平線をなぞるように朝陽が照りつけて指輪のような形を作っている。

海では当たり前の光景なのだが、はじめて見る俺にはとても神秘的に映った。


「カイト。警備船は見えるか?」

「大丈夫だ。どこにも船影は見えない」

「よし。作戦は上々のようだな。ここいらで朝食にしよう」

「飯か!」


飯の言葉にすぐさま反応してエレンが目を覚ます。

あたりをキョロキョロと見回しながら飯を探していた。


「随分と御大層な身分じゃないか」

「それより飯はどこだ?」

「そこのバスケットの中に入っている」


シーボルトが机の上のバスケットを指さすとエレンが食らいつくかのようにはぎ取る。

そして中身を確認するとシケた面を浮かべた。


「それはマシューが用意したサンドイッチだ。人数分あるから安心しろ」

「これっぽっちしかないのかよ」

「仕方ないだろう。船の上の朝飯なんだからな。軽めにすませておくのが丁度いいんだ」

「エレン。贅沢を言うな。仕事が終わったらたんまりと食べればいいだろう。報酬は金貨10枚なんだからな」


それもそうだと言わんばかりに頷くとエレンはサンドイッチに食らいつく。

寝起きでこれだけの食欲なんだから二日酔いもなく絶好調なのだろう。

俺達もサンドイッチをほうばる。

今回のサンドイッチの具材は牛肉のローストビーフに卵とレタスをあしらったもの。

牛肉のローストビーフは昨日から仕込んでいたもので、とてもジューシーだった。

レタスも朝採れのものをつかっていてシャキシャキで新鮮。

マシューの料理にかける情熱は人一倍ある。

その上、ワントレッド号で料理を担当していただけあって腕も確かだ。

『解体術』に加えてクオリティの高い料理の腕を持っているなんてすでに立派なコックだ。


「マシューはどうした?」

「マシューは事情があって留守番を頼んだ」

「なら、マシューの分が余っているな。これは私がもらう」


何の心配をしているかと思ったら、それか。

お前は飲むか食うかしかないのか。

あー、頭が痛い。

剣の腕は確かだけれど一般常識ってものが全くない。

普通、マシューが外れたのならマシューのことを心配するだろう。

俺達は大事な仲間なんだし。

それを飯の食いぶちの心配をしているなんて、さすがはエレンだ。

どこか人とズレた感覚は、ある意味最強と言っても過言でないだろう。

これもおばさんならではの特徴なのかもしれない。


「しかし、こうも順調に進むと返って怖くなるな」

「怖いことを言うなよ、マリーナ。何もないことの方がありがたいのだから」

「確かに俺達は密輸船の警護をしているだけだが変な緊張感があるな」


表立って大手を振れないことをしているから余計にそう感じるのだろう。

実際に密輸をしている訳ではないが、その手助けをしているのだ。

いつ捕まるかもわからない緊張感でいっぱい。

これはある意味、店で商品をくすねた時と同じような緊張感だ。

実際に商品をくすねたことなどないけれど、そんな感じだと思う。

そんなことを考えていると密輸船が大きく舵を切り進行方向を北に変えた。


「ここからはロコゴンドル王国を目指す航路をとる」


セレスティア王国の港を出てから東に300㎞進んで来た。

ここから北に5000㎞行ったところが目的地のロコゴンドル王国の領海だ。

セレスティア王国とロコゴンドル王国の境界線にあたるから、ときどき警備艇が航行している。

なので実際の目的地は北に4500㎞行った場所にしてある。

これも安全に密輸を行うための重要な作戦なのだ。


「後、どれくらい走ればいいんだ?」

「順調に進んだとして9時間か」

「長いな」

「まあ、海流に乗れるからもっと時間は短く出来る。そうだな、6時間を見れば大丈夫だろう」


それでも長いことには変わりない。

何せ4500㎞も進むのだから。

本来であれば2日かけて進むような距離だ。

しかし密輸ともなると時間をかけるのは返って危険だ。

すみやかに商品を受け渡して戻って来た方が、その分リスクも少なく出来るのだ。

それにモチベーション的にもその方がいいだろう。

何せ後ろに手が回ることをしているのだから。


俺の心配もさることながら船は順調に進み目的地のポイントまでやって来た。

密輸品を受け取るロコゴンドル王国から来た密輸船も停泊している。

シーボルトの船も密輸船に合流して積荷の運搬にあたった。


「積荷はこれだけだ」

「剣が30本に盾が10個……」


ロコゴンドル王国から来た密輸船の船員が積荷をひとつずつチェックして行く。

箱の蓋を開けて中身を確認しながら徹底された検査する。

それは希に中身を偽って金だけ奪い取る輩もいるからだ。

密輸は正規の取引ではないから信用が保証されている訳でもない。

なので偽装をしようと思えばいくらでも偽装できるのだ。


「間違いなく品は揃っているようだ。お前達、積荷を運び出せ」

「それじゃあ報酬を頂こうか」

「約束の金貨50枚だ」


ロコゴンドル王国から来た密輸船の船長が懐から金貨の入った袋を差し出す。

それを受け取りセレスティア王国から来た密輸船の船長が中身を確認する。

中身は確かに本物の金貨50枚が揃っていた。

すると、すぐさまエレンが報酬に関して食いつく。


「おい、金貨50枚と言うことはどういう事だ」

「お前達には別口に報酬を用意してあるだろう」

「私が言っているのはそう言うことじゃない。取り分が少なすぎるって言っているんだ」

「密輸船の護衛なんて金貨10枚で十分だろう。いや、金貨10枚でも多すぎるくらいだ」


確かに密輸船の護衛の相場なんてわからない。

依頼者が値をつけたら、それに従うしかないのだ。

ただエレンの指摘通り金貨50枚のうちの金貨10枚なんて取り分が少なすぎる。

俺達だって危険を冒して護衛をして来たのだから、それなりのものを要求したいところが本音だ。

せめて金貨20枚は欲しいところだ。


「ぐだぐだ文句を言っていないで積荷を運び出せ。長居しているとこっちまで危険だからな」

「エレン。仕方ないさ。報酬がもらえるだけでもよしとしておこう」

「カイトは安く買いたたかれるタイプだな。セレスティア王国に戻ったら武具屋の店主に文句を言ってやる」


エレンは最後まで納得せずにブツクサ文句を言いながら積荷の運搬に手を貸した。

すると、急にけたたましい警笛が鳴り響く。

辺りを見回すとセレスティア王国の警備船が5艘周りを取り囲んでいた。

こちらに気がつかれないようにするためあえて警笛を鳴らさずに近づいて来たようだ。


「マズい。見つかった!積荷を海に捨てろ!」

「おいおい、マジかよ。せっかく運んで来たんだろう」

「捕まったら元もこうもないからな。証拠を隠滅するんだ」


俺達は言われるまま積荷を海に放り投げる。

少しもったいない気もしたが背に腹は代えられない。

すぐさま警備船から警告がなされる。


「全員、両手を上げて姿を見せろ。指示に従わなければ発砲をする」


セレスティア王国の警備船は機関砲をこちらに向けたまま構える。


「おい、ここで捕まったら命がないぞ」

「だけど指示に従わないと発砲してくるんだぞ」

「そんなの脅しに決まっている。それよりも証拠隠滅の方が先だ」


セレスティア王国の警備船の警告を無視して密輸船の船員達が積荷を海に放りなげると威嚇射撃をして来た。

銃弾は船の10m先に着弾して無数の波飛沫を立てた。


「マジかよ!本気で撃って来るなんて。俺達を殺すつもりか」

「そうしたとしてもやむを得ないことなんだろう。お前達、指示に従え」


密輸船の船長は堪忍したようで他の船員達に指示を出した。

俺達も指示に従い両手を上げて警備船から見えるように並んだ。


「これで俺達も終わったな」

「しかし、何であいつらは取引場所がここだとわかったんだ?」

「わからない。ただマシューが言っていたように情報が漏れていたとしか考えられないだろう」


情報の出所は全くわからない。

俺達でないことは確かだから恐らく武器屋の店主がミスったのだろう。

やっぱりマシューの言うように密輸の護衛なんか止めておけばよかったのだ。

今さら、後悔しても仕方ないが悔やんでも悔やみきれない。

これで俺達も立派な犯罪者だ。

これから先は罪を背負いながら生きなければならない。

もう、セリーヌとは会えないかもしれないな。


「カイト。そんなにシケた面をするな。まだ処刑されたって訳じゃないからな」

「怖いことを言うんじゃねえ。処刑だなんて。俺はまだ16歳なんだぞ。こんなところで殺されてたまるかよ」

「そうだ。俺達は生きなければならない。密輸船の護衛をしていただけだから、そんなに罪が重くなることもないはずだ」

「しかし、セレスティア王国は密輸に関しては徹底しているからな。死刑は免れても一生牢獄暮らしになるかもな」


そんなに澄ました顔で言われると逆に恐怖が湧いて来たぞ、マリーナ。

マリーナ達は俺の倍も生きているからあまりピンと来ないのかもしれないけれど一生牢獄暮らしだなんて恐怖でしかない。

牢獄だなんて世の中の悪い奴がひとところに集まっている危険な場所だ。

俺なんて小僧が入り込めば間違いなくボコられて下僕にされる。

一生マズい飯を食いながら囚人たちにいたぶられるなんて考えただけでも地獄だ。


「俺はまだ死にたくはない」

「心配するな、カイト。セレスティア王国は法治国家だ。裁判が行われるから一方的に処罰されることはない」

「でも、裁判があると言ったって俺達が不利であることには変わりないだろう」

「まあな。俺達の身元が証明できる訳でもないし、身分が高い訳でもないからな」

「誰かのコネでもあればいいんだけどな」


マリーナが思わぬことを呟く。

ふとセリーヌの顔が思い浮かんだ。

セリーヌはいいところのお嬢様のようだから何とかしてくれるかもしれない。

しかし、それはレオナルドに借りを作ることにも繋がるだろう。

レオナルドのことだ、話を聞けば横槍を入れて来るはずだ。

また、レオナルドに借りを作るなんてことは避けたいのが本音。

ならば俺達だけで何とかするしかない。


「隙を見て脱出をしよう。それしか俺達の助かる道はない」

「しかし、逃げる隙なんてないぞ」

「隙がないのならば作ればいいだけさ」


俺は期待を込めながらエレンを見つめるとエレンは訳も分からずにきょとんとしていた。

エレンは伊達にエロスを振り撒いている訳じゃない。

こういう時のために色香を漂わせているのだ。

エレンの姿を見れば男共の鼻の下は伸びる。

色香で迫れば隙が作れるだろう。

エレンには悪いがここは娼婦役を買ってもらおう。


「エレン。期待をしているぞ」

「何のことだ、カイト?」


今はまだ知らなくていい。

その時が来たら活躍してくれればいいのだから。


俺達はセレスティア王国の警備兵達に拘束される。

武器は全部取り上げられて数珠つなぎに後ろ手にされる。

シーボルトは船長と言うこともあり拘束は免れた。

しかし、シーボルトの船には警備兵が乗船しシーボルトを見張っている。

積荷は証拠品として警備兵達に回収された。

ロコゴンドル王国から来た密輸船の船員達も捕まった。

国籍がロコゴンドル王国になっているからこれからが大変だろう。

裁判の結果によっては処刑も免れない。

ただ交渉の手札にはなるだろうから。

価値のある限りは殺されないはずだ。


問題は俺達の処遇だ。

セレスティア王国に戻れば投獄されることは間違いない。

身元を保証する人物もいないし金もないから釈放はされないだろう。

ただセリーヌは助け舟を出して来る予想される。

自分が身元を保証するからと掛け合うかもしれない。

しかし、その行為はレオナルドに絶好の機会を創ることを示している。

レオナルドはセレスティア王国に顔の聞く立場にある。

だから間違いなく口を挟んで来るはずだ。

俺達のとった行動は間違いなくセリーヌの立場を危うくした。


「結局、俺は何も出来なかったな」


拭いきれない後悔が俺の中で溢れていた。


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