あるある081 「責任追及の手は絞りがち」
気がつくと俺は酒場のテーブルに突っ伏していた。
「お前が着いていながらこの様はなんだ!カイトはあと少しのところで死ぬとことだったんだぞ!」
「それはすまないと思っている。本当に申し訳ない」
エレンに糾弾されてマリーナは平謝りをしている。
もっと前から言い合いをしていたようでエレンはヒートアップしていた。
「頭を下げれば何でも許されるなんてことはないからな。私は許さないぞ!」
「なら、どうすれば許してもらえるんだ?」
「そんなの自分で考えろ!」
おまけに酒が入っているから余計に熱くなっているようだ。
マシューはしどろもどろしながらエレン達の言い合いを見守っている。
止めさせた方がいいのか続けさせた方がいいのかわからないようだ。
おばさん同士の喧嘩なんて犬も食わない。
他人の振りをしてやり過ごす方がマシだろう。
すると、シビレを切らせたシーボルトが間に割って入った。
「お前ら、いい加減にしろ!今はカイトが無事だったことを喜ぶべきじゃないのか?」
「そんなのわかってる。でもな、こいつの失態には目をつぶれないだろう。まがりなりにも海中戦の専門家なんだぞ。そんな奴がカイトを危険な目に合わせるなんて」
「あれは事故だったんだ。まさかあんなところに釣り糸が落ちているなんて思いもしなかった」
「それならはじめに調べるべきじゃなかったのか?」
エレンの指摘は最もだ。
まずはじめに安全を確認するべきだったのだ。
はじめての海中戦だ。
もっと慎重になるべきだった。
俺達が事前調査を怠ったのが全ての原因だ。
誰のせいでもない。
俺達、みんなの責任だ。
「エレン、もういいよ。俺は無事だったんだしな。それに助けてくれたのはマリーナだ。そんなにマリーナを責めるものじゃない」
「カイト!お前、大丈夫なのか?」
「おかげ様でな」
「気分はどうだ?」
「少し頭がクラクラするが問題ない」
頭がクラクラするのは寝過ぎていたからだろう。
血圧が急に下がって貧血のような状態になったのだ。
でも、もう大丈夫。
体に痛みはないし、意識もはっきしている。
「なら、いっぱいやれ。元気が出るぞ」
俺はエレンに薦められるまま酒をひと煽りする。
すると、カァーと胸が焼けるように熱くなり虚ろな目も一気に覚めた。
「こいつは効くな」
「だろう。この酒場で一番のいい酒なんだ。がっぽり稼げたからな」
「で、全部でどのくらい稼げたんだ?」
「お化けイソギンチャクは全部で50匹。緑色の魔石も50個手に入れた」
「とするとお化けイソギンチャク1匹あたり銅貨5枚だから、金貨2枚と銀貨5枚か。緑色の魔石も1個あたり銅貨5枚だから魔石の分もあわせれば全部で金貨5枚。上々じゃないか」
この調子で稼いで行けばすぐにレオナルドの借金も返済できる。
危険が伴うが海中戦も悪いものではない。
しばらくの間はお化けイソギンチャクの討伐に専念するか。
「それじゃあ報酬を山分けしよう。これはシーボルトの分だ」
「金貨2枚もくれるのか?」
「船のチャーター料と酸素生成器の分だ。少なかったか?」
「少ないも何も、十分元が取れているよ」
「やりましたね、船長」
シーボルトは嬉しそうに金貨2枚を眺めながらマシュー何やら話をしていた。
おそらくまたエルフの酒場へ行く算段だろう。
この前は酔いつぶれて眠てしまっていたからな。
せっかく羽を伸ばせるのだ。
心行くまで満喫した方がいいだろう。
何せエルフは美人でナイスバディーな人ばかりだからな。
「これはマリーナの分だ」
「私にもくれるのか?」
「もちろんだ。マリーナがいなかったらお化けイソギンチャクを狩れなかったからな」
「カイト。そんなやつに報酬をやる必要はないぞ」
「そう言う訳には行かないだろう。マリーナもお化けイソギンチャクを狩ったんだからな。それ相応の報酬を受け取る資格がある」
制止しようとするエレンを振り切ってマリーナに金貨1枚を渡す。
これはカイト軍団として当然のルールなのだ。
協力してくれた者にはそれ相応の対価を支払う。
そうしなければ奴隷のような扱いになってしまうからな。
俺達は冒険者なんだ。
だから冒険者らしい対応をする必要があるのだ。
マリーナは金貨を握りしめると俺に提案して来た。
「カイト。しばらくの間、私も同行させてほしい。報酬は半額でも構わないから頼む」
「それは願ったり叶ったりだ。マリーナがいてくれたら心強い。報酬もちゃんと払う」
「私は反対だ。こいつは信用できない」
エレンは頑なに反対している。
その根拠は言わなかったが自身の直感がそうさせているらしい。
エレンはただ単に報酬が減るからマリーナを拒否しているのだろう。
チームのリーダーは俺なんだ。
だから決めるのも俺だ。
「マリーナ。改めて頼むよ」
「こちらこそ」
俺とマリーナは握手を交わして契約を成立させた。
これでマリーナの元できっちり海中戦のノウハウを学べる。
それはカイト軍団の戦力アップも出来るし、俺個人のレベルアップも狙えるのだ。
何だからワクワクして来たぜ。
明日からのクエストが楽しみだ。
喜ぶ俺とは違ってエレンは終始、不機嫌だった。
けれど、そこは酒の力で何とか誤魔化したのだった。
次の日。
俺達は今後の海中戦のため道具を買い揃えることにした。
まず必要になるのは酸素生成器。
こいつをなくしては海中戦は語れない。
以前、シーボルトが用意してくれたのは使い捨てのものだったが、マリーナが選んだのは何度でも使えるタイプのものだった。
「こいつは酸素生成器でも繰り返し使えるタイプだ。値は張るが後々のことを考えるとこっちの方が断然お得だ」
「金貨3枚か。高いな……」
昨日の報酬で得られたのは金貨2枚。
エレンの大剣の分を差し引けば金貨1枚しかないのだ。
これじゃあいくら欲しくても手が出ない。
すると、マリーナが道具屋の店主と交渉をはじめた。
「あいつに任せていていいのか、カイト。値を釣り上げてくるかもしれないぞ」
「エレンは疑い過ぎだ。もっと、マリーナを信用してもいいだろう」
「フン。あいつとはソリが合わないんだ」
ソリが合わないと言うよりも目の敵にしているだろう。
自分と似ているタイプだから余計に目に付くようだ。
見た目も似ているし、年も近い。
ただ違うところはマリーナの方が品があると言うことだけだろうか。
だから余計に腹立たしいのだろう。
エレンも大人げない奴だ。
「カイト。話はまとまった。金貨1枚で譲ってくれるそうだ」
「金貨1枚!本当なのか?」
「ああ。その代りツインヘッドシャークの牙を譲ってほしいそうだ」
「条件付きか。まあ、そんなところだろう」
それでも金貨1枚に値を下げられたところは大きい。
また、レオナルドにツケをしなくてもいいのだからな。
「なら、次の獲物はツインヘッドシャークになるな」
「また、船長の出番ですね」
「ツインヘッドシャークは沖合にいるから、これまでの戦い方とは違って来る。海中戦でも難しい部類に入る獲物だ」
「いきなりレベルをあげても大丈夫なのか?」
「今のカイト達のレベルからしたら難しそうだが、やってみるだけやってみてもいいだろう」
「随分、いい加減な判断だな。また、カイトを犠牲にするつもりだろう」
エレンは冷ややかに言葉を吐き出しながらマリーナを睨みつける。
確かに話だけを聞いていたら難しいレベルの獲物であることは間違いない。
ただ、マリーナがそう判断したのだからやってやれないこともないのだろう。
ならば、俺としてはレベルアップのためにも挑戦してみたい。
「エレン。いい加減、マリーナに突っかかるのはよせ。決めるのは俺だ」
「フン。なら、好きにすればいいだろう。あとでどうなっても知らないからな」
エレンは呆れ顔で俺に忠告すると道具屋を出て行った。
「気を悪くしないでくれよ。エレンはエレンなりに俺を心配しくれているだけだから」
「カイトはいい仲間を持ったな。羨ましいよ」
「そう言えばマリーナは仲間はいないのか?」
「海中戦を専門にしていると仲間が出来ないんだ。魔法使いもプリ―ストも海中戦には向かないからな」
確かに魔法使いが海中で魔法を使っていたら滑稽だ。
わざわざ地上で出来ることを海中でするなんて。
無駄も無駄。
話にならない。
剣士や戦士達もしかりだ。
マリーナ曰く、一番海中戦に向ているのは槍使いなのだそうだ。
「それで後は何を揃えたらいい?」
「あとは撒き餌と釣り針、それに釣り糸だ。リールはシーボルトの船のやつが使えるだろう」
「ツインヘッドシャークを釣り上げるつもりか?」
「そうだ。その方が仕留めやすい」
ツインヘッドシャークがいるのは沖合の海中。
深海100メートルあたりを回遊しているので釣り上げないと仕留めることが出来ない。
マグロやカジキを釣り上げたことのあるシーボルトだが全長5メートルもあるツインヘッドシャークを釣り上げることは自信がないとのこと。
何より船が耐えられるかわからないそうだ。
「もっと大型の船を用意した方がいいか?」
「あの船で十分だ。釣り上げると言っても海面上まで引き上げるだけだからな。仕留めるまでの間、もってくれれば大丈夫だ」
「船長、そろそろ船の買い替え時なんじゃないですか?」
「まだまだあいつはやれる。心配するな」
シーボルトは胸を叩いて得意気に振る舞うが強く叩き過ぎで咳き込んでいた。
「撒き餌はマグロとカジキでいいだろう」
「釣り針は?」
「モンスター用の大型の針を使う」
「釣り糸は?」
「それもモンスター対応の釣り糸を使う」
「これか。まるでロープだな」
マリーナが選び取った釣り糸は直径1㎝もある太いものだった。
耐久性も伸縮性も最高のクラスのものでモンスターに対応しているらしい。
釣り針に至っては30㎝ほどある大きなものだった。
軽く5㎏ぐらいはあるだろうか。
この仕掛けだけ見てもツインヘッドシャークの巨大さがわかる。
情報では全長5メートルとなっているがそれよりも大きいものもいるようだ。
「全部でいくらだ?」
「銀貨5枚になりますが、おまけです。ただでいいですよ」
「本当か?」
「その代りツインヘッドシャークの鰭を分けてください」
「鰭なんか何に使うんだ?」
「鰭からはいい釣り糸が出来るんですよ」
「お前も商売上手だな」
「へへへ。これくらいはあたり前ですよ」
道具屋の店主は手もみをしながらマリーナに媚びを売る。
商売人になるにもいろいろと苦労するものなのだな。
冒険者になったことを改めて良いと思った瞬間だった。
「それじゃあこれはもらっていくぞ」
「ツインヘッドシャークの牙と鰭をお忘れなく」
俺達は金貨1枚を払って酸素生成器、撒き餌、釣り針、釣り糸を交換した。
「それじゃあツインヘッドシャークを狩りに行こう」
「その前にやることがある」
「やること?」
「仕掛けの準備と仕留め方の訓練だ」
「なら、仕掛けの方は俺達に任せてくれ。こう見えても漁師もやっているからな」
「それはシーボルト達に任せるよ。カイト、私達は仕留め方の訓練をする」
「わかった」
シーボルトとマシューは船に戻り、さっそく仕掛けの準備をはじめる。
俺とエレンとマリーナは場所を移動してツインヘッドシャークの仕留め方の訓練をはじめた。
「ツインヘッドシャークの特徴は頭が二つあることだ。その為、泳ぐスピードは遅いがパワーは桁違いだ。気性が荒い性格で怒らせたら最後まで追いかけて来る」
「そんな奴をどうやって仕留めるんだ?」
「まずは泳ぐだけ泳がせて疲れさせることからはじめる。その間は私達にやることはない。シーボルトの船とツインヘッドシャークの戦いになる」
釣り方としては他の魚と同じようだ。
魚の疲れさせてから釣り上げるのは釣りのセオリー。
ただ、釣り上げようとしているのはモンスターであることを忘れてはならない。
魚の時のようにうまく行くとは限らないのだ。
「釣り糸が噛み切られることはないのか?」
「それは十分にある。ツインヘッドシャークの牙は鋭いからな。まあ、でもそれを想定して釣り糸は用意してある」
「それは戦いってよりも釣りだな。私には向かない」
エレンは呆れ顔で投げやりな態度をとる。
確かにここまで聞いただけでは釣りと同じだ。
ツインヘッドシャークが巨大なサメのモンスターだから仕方ないのだろうけど。
すると、マリーナが本題に入った。
「ツインヘッドシャークが弱って海面上に上がって来たら私達の出番だ。まずはツインヘッドシャークと平行するように泳いで接近する。その後でツインヘッドシャークの鰓を目掛けて剣を突き立てるんだ」
「鰓じゃなきゃダメなのか?」
「ツインヘッドシャークの肌は分厚い肉で覆われているからな。ナイフの刃が毀れるほど堅牢だ。剣を突き立てたとしても弾かれてしまうだろう」
そんな奴を相手にするのか。
レベルが高過ぎやしないか。
それに並行して泳ぐって言ったって相手は魚のモンスターなんだぞ。
追いつける訳ないだろう。
「他に方法はないのか?」
「残念だがない」
無情にもマリーナは完全否定をする。
いくらなんでもこれでは先が見えない。
俺達はまだお化けイソギンチャクを討伐した経験値しかないのだから。
やっぱりまだ早すぎるのではないのか。
すると、エレンが間に割り込んで来る。
「そんなちまちました作戦なんか出来るものか。私が本来の戦い方を見せてやるよ」
「ほう。本来の戦い方ね。面白いじゃないか。見せてもらおう」
「後で吠え面をかくなよ」
エレンとマリーナはおでこをつけて睨みあう。
これじゃあまるで子供の喧嘩だ。
どこまで張り合えば気がすむのだろうか。
「お前ら、いい加減にしろ。今は作戦会議中なんだぞ」
「これはすまなかった。少し熱くなってしまった」
「作戦なんて私には必要でない。お前らだけでやってろ」
「おい、エレン。どこへ行くつもりだ?」
「飲み直して来るんだよ」
エレンは俺達をおいてさっさと酒場へ行ってしまった。
「悪かったな、マリーナ。エレンは体で覚えるタイプだから作戦なんてないんだよ」
「だろうな。ああいうタイプには何を言っても無駄だろうからな」
俺はバツが悪そうにマリーナに頭を下げた。
これもそれも俺が普段から躾が出来ていない証拠。
リーダーとして恥かしい。
まあ、今からおばさんにマナーを身に着けさせることの方が無謀なのだろうけれど。
おばさんは学習しないからな。
「それじゃあ作戦の再確認をしよう」
俺とマリーナは念入りに作戦の確認を行った。
プランAがうまく行かなかった時はプランBに変更するなど徹底的に作戦を練り込んだ。
今ここで作戦を十分に練っておかないと命取りになるだけだから。
そして具体的な海中戦での動作までマリーナに叩き込んでもらった。
おかげで頭でシュミレーション出来るまでになっていた。
「後は実戦だけだな」
「この調子ならうまく行くはずだ」
「それじゃあギルドへ行って受付をすませて来よう」
「ついでに情報も集めよう。情報が更新されているかもしれないからな」
ギルドの情報は定期的に更新されている。
モンスターの出没する場所が変わったり、被害状況が変わったりするからだ。
とりわけ海のモンスターは常に移動しているから場所の特定が重要なのだ。
場所の特定には目撃情報や被害状況が主な判断材料となっている。
いくら海のモンスターだからと言って狩場を見つけないことはあり得ないからだ。
生きている限りエサを食わなければならない。
それが魚なのか人間なのかは区別されないが。
ギルドへ向かうとちょっとしたいざこざが起こっていた。
屈強な冒険者達が報酬をめぐって受付嬢に文句を言っていたのだ。
「何かあったのか?」
「あいつら1週間前に、人食いクラゲを狩りに行ったんだが、狩っている間に相場が下がってしまってな。割に合わないって言って文句を言っているんだ」
前にも言ったかもしれないが報酬には相場と言うものがある。
モンスターからの被害が多発している場合は相場が上がり報酬も増える。
しかし、モンスターからの被害が減ると相場は下がり報酬も減るのだ。
相場の変動は被害状況の数だけではない。
モンスターが大量発生した場合も相場が変動する。
なのでモンスターがたくさん狩られてしまうと自然と相場もさがるのだ。
この取り決めは冒険者とギルドの間では常識と言っても過言でない。
それを今さら文句をつけるなんてあいつらの行為は横暴だ。
「俺、行って来る」
「構うな、カイト。ああ言う奴らはただ絡みたいだけなんだよ」
「だけど、ギルドの受付嬢が困っているじゃないか」
「これも仕事だ。私達には関係ない」
意外と冷たいのだな、マリーナは。
困っている人がいたら手を差し伸べるのが勇者だ。
俺は勇者を目指すひとりとして黙っている訳には行かない。
制止するマリーナを振り切って屈強な冒険者達に声をかけた。
「おい、お前ら。いい加減に大人になれ。報酬が下がったのはお前達が情報収集を怠ったからだ」
「何だ?ガキの癖に知ったような口を聞くな」
「俺はおっさん達に比べたらガキかもしれないが、勇者になる男だ」
「聞いたか?勇者だってよ」
「そんなちんけな勇者がいるものか」
「ガキは家へ帰ってママのおっぱいでも吸っていろ」
屈強な冒険者達は俺のことを嘲り笑いながら蔑む。
エレンがこの場にいたらすぐに喧嘩になっていただろう。
ただ、俺はエレンと違って出来た人間だ。
これくらいのことで腹を立てたりはしない。
「俺に対する暴言は許してやろう。その代りとっとと報酬を受け取って立ち去れ」
「何を!ガキが生意気な口を聞くんじゃねえ」
屈強な冒険者のパンチが俺の右頬を捉える。
俺は壁まで吹き飛ばされて床に転げ落ちた。
「くぅ……効いたぜ」
「大丈夫か、カイト?」
「ああ、俺は大丈夫だ」
心配して駆け寄るマリーナを安心させるように強がって見せる。
本音の言えば泣き出したいほど痛かったのだが。
伊達に屈強な体をしている訳ではないようだ。
これまでのいく千にも及ぶ戦いの中で磨き上げて来たのだろう。
腰が入っていて動きに無駄がなかった。
すると、マリーナが屈強な冒険者達の前に立ちはだかった。
「お前ら、よくも私の仲間に手を上げてくれたな。許さんぞ」
「何だ、この女は。俺とやりたいのか?やってやってもいいぞ。金を払うのならな。ガハハハ」
品のない言葉だ。
おっさんともなればそれしか頭にないのか。
「おい、あいつ。女戦士マリーナじゃないか?」
「マリーナだって!」
「マリーナって言えば泣く子も黙る海中戦専門の戦士じゃないか。なんでこんなガキと一緒にいるんだ」
「わからねー。だけどマズいぞ。マリーナを敵に回したら狩りが出来なくなる」
屈強な冒険者達はマリーナを見るなり酷く怯えはじめる。
それは蛇に睨まれた蛙のように顔から血の気が引いて行く。
そして受付嬢から報酬を剥ぎ取ると走ってギルドを後にした。
「マリーナって有名なんだな」
「有名って程でもないさ。ただ噂が勝手に流れているだけだ」
それでもあんな屈強な冒険者達を退けるなんて凄い。
俺がいくらハッタリをかましても敵わないぐらい強い。
思っている以上にマリーナの実力は高そうだ。
今度、ゆっくりとマリーナの話を聞かせてもらおう。
きっと想像を超えるような武勇伝が聞けるはずだ。
俺達は受付と情報を収集をすませてギルドを後にした。




