あるある072 「あらぬ誤解を招くことを言いがち」
シーボルトは出港の準備を終えて俺達を待っていた。
今度の船旅は1週間ほどかかるため多めに食料と水を用意している。
それだけではない。
エレンのことも考えて大量の酒を用意していたのだ。
それに対応にエレンも官服していた。
「ふわ~。おはよ、シーボルト」
「ようやくお出ましかい。こっちの準備は出来ているぞ」
「俺達も準備は出来ているよ」
「そうか。それにしても随分とすっきりした顔をしているじゃないか?」
「そう見えるか?カイトは大人になったんだよ、昨夜な」
エレンは上機嫌で俺の肩を激しく叩く。
その様子で察したのかシーボルトはニヤリと笑う。
「そうかい。それはよかったな。男子たるもの一度は通る道だ。自慢していいことだぞ」
「なっ。誤解を招くことをいうな、エレン。俺達は何もなかったんだ」
「そうだったっけな。カイトは随分とご満悦だったと思ったのだがな」
確かにご満悦とまでは行かなかったが気持ち良かった。
とりわけセリーヌの胸は柔らかくて昇天してしまいそうだった。
あんな経験を積めるのならば混浴も悪くはない。
今度からは風呂に入る時は混浴のルールでも設けようか。
「カイトさん。鼻の下が伸びてますよ」
「はっ。いかんいかん。よからぬ妄想を描いていた」
「カイト達は賑やかな奴らだな」
「そう見えるか。なんて言ったって私達は裸を見せ合った仲だからな」
「おう、それは羨ましい。今度、俺も加えてくれ」
シーボルトの言葉がどこまで本気だったのかはわからない。
けれど、俺を見つめる眼差しは鋭かった。
まあ、船乗りと言う仕事をしていたら出会いも限られてくるだろう。
月のほとんどは船の上で過ごすのだから出会いもへったくれもない。
唯一の楽しみは酒くらいなものだろうか。
エレンほどに飲兵衛ではないようだが積んでいた酒の量はんぱなかった。
「さあ、出港するぞ。船に乗れ」
「おう」
俺達は荷物を持ってシーボルトの船に乗り込んだ。
荷物といても食料と水、酒はシーボルトが用意してくれたのでそれは持って行かない。
代わりに着替えとタオルと水着と地図だけだ。
1週間も船の上で生活することになるのだから着替えは必要だ。
それに長旅を忘れられるリラクゼーションも必要になって来る。
水着はそのためのアイテムのひとつだ。
エレン達は既に水着を持っているのだが、このために新しく新調した。
流行りがどうのこうのと言いながら俺にねだって来たのだ。
おばさんが流行に乗ったところで何も変わらないのにも関わらず。
「早く新着の水着が着たいですわ」
「今年、流行の新色を取り入れたものだからな。楽しみだ」
「お楽しみは後にしてくれ。まずは出航だ」
そう言ってシーボルトは船のエンジンに火をつけて舵をとり出港をした。
こうして出港ともなると後ろ髪引かれるものがある。
滞在した期間は短かったがヤナックの街ではいろんなことがあった。
孤児を助けているマーベル達と出会い、キル達を預けた。
キルとの冒険は冷や汗ものだったがいい経験になったと思う。
後はキル達が立派な少年に成長してくれれば問題ない。
きっとマーベルのことだから安心してもいいだろう。
ふと、教会のある高台を見やると子供達が大きく手を振っている姿が見えた。
「あいつら……」
「カイトさん。キルさん達なら大丈夫ですわ」
「そうだな。成長をしたキル達に出会うことを楽しみにしておこう」
俺がしっくりと別れに浸っているそばからエレンは気分を壊すようなことを言う。
「さて。船も出港したことだし一杯やるか」
「朝からお酒ですか?」
「長い旅になるんだ。まずは景気をつけないとな」
そんなエレンの提案はすぐさま却下する。
朝から酒を飲むのは飲んだくれとゴロツキだけだ。
少しでも甘い顔をしたらクセになるからきっぱりと断る。
これはエレンのためを思って言っていることなのだ。
酒に頼る者はつまずいたら酒に逃げるようになる。
それは何の解決にもならないし人間を堕落させるだけだ。
だから心を鬼にしてかからなければならない。
「酒は夜までお預けだ」
「そんな殺生なことを言うな、カイト。そこに酒があるんだぞ」
「それでもダメだ。これは俺達カイト軍団のルールなんだ」
「エレンさん、諦めてください。これもカイトさんが決めたことなんですから」
エレンはシケた面をしながらしょんぼりと項垂れる。
そして気の抜けた風船のようにしぼむと船室へ戻って行った。
「それで今日はどこまで進む予定だ?」
「ヤナックの港町から沖合300㎞あたりだ。この辺りは潮の流れが緩いので順調に進める」
「沖合300㎞と言うとこのあたりか」
俺は海洋地図を広げて予定ポイントを確認する。
周辺を見ても島らしきものは何も記されていない。
ただ海が広がっているだけだった。
「あとは俺に任せて、カイト達は休んでくれ」
「そうさせてもらうよ。朝が早かったから眠くて。ふわ~」
俺は船室に戻るとさっそくベッドに横になった。
船室は狭くて人が眠るスペースしか確保されていない。
なので休憩をとる時は変わりばんこにする必要がある。
まあ、船の動かしているのはシーボルトだけだから必然的に入れ替わるのだけれど。
「私も少し休ませてもらいますね」
「ゆっくり休んでくれ」
セリーヌも船室へ戻りベッドに横になった。
俺が眠りについてからどのくらい経っただろうか。
目を覚ますと太陽が天上に登ってる時間だった。
いつの間にか熟睡してしまいお昼になっていたようだ。
俺は甲板に出て大きく伸び上がる。
同じ体制で眠っていたので体が悲鳴を上げていた。
「ワン!ワン!」
「トイプー。お前も起きたのか?」
「カイト、遅かったな。先に一杯やっているぞ」
そう言ってエレンはチェアに横になりながらカクテルを楽しむ。
「おい、エレン。誰が飲んでいいと言った?」
「そう目くじらを立てるものじゃないぜ。こんなキレイどころに相応しいカクテルを俺が用意したんだ」
シーボルトの「キレイどころ」と言う言葉にエレン達を見やると新着の水着に着替えていた。
セリーヌは白地に紫色のラインが入ったセクシーなビキニ。
横紐を腰までねじり上げてハイレグを強調させている。
それだけでも十分にセクシーなのだが、エレンは度が過ぎていた。
ほぼヒモとよべる大胆なワンピースの水着を恥ずかしげもなく着ている。
普段のビキニアーマーでも十分にエロいのだが今日のは増しに増している。
これならば裸でいいじゃないかと思えるほどだ。
シーボルトも鼻の下を伸ばしながら上機嫌になっていた。
「カイトさんもどうです?美味しいですよ」
「なら、一杯もらう」
シーボルトが用意したカクテルはマリンブルーとホワイトのマーブル模様が鮮やかなカクテルだった。
ベースはウォッカでサクランボが上に添えられている。
その青と赤のコントラストが見事にマッチしていて華やかだ。
まるで海に浮かぶ太陽を表しているかのようだった。
一口飲むとカーァッと胸が熱くなる。
口当たりは軽いのだがアルコール度数が半端ない。
すぐに酔いが回って来てしまった。
「こいつは俺にはキツイな」
「まあ、お子様のカイトにはまだ早かったか」
「言ってろ。それにしてもこんなところで休んでいてもいいのか?」
「船は走らせたらその分休ませないとな。でないとすぐにエンジンがダメになってしまう」
「船も馬みたいなものなのだな」
大型船になればそうでもないらしい。
ずっとエンジンをつけたままでも長時間航行できるらしい。
シーボルトの船は古いし、小型船を大きくしたものだから厳しいようだ。
まあ、急ぐ旅ではないのでのんびりもいいだろう。
「カイト、オイルを塗ってくれないか?」
「そんなの自分でやれよ」
「背中は届かないんだよ」
「ちぃ、仕方ねえな。ほら、うつ伏せになれ」
エレンは言われるがままうつ伏せになる。
すると、ビックサイズの尻がデーンと現れた。
「おい、エレン。ケツが丸出しじゃないか!」
「どこを見ているんだ、カイト。ちゃんと生地があるだろう」
確かに生地はあるが尻に食い込んでいる。
これはある意味、裸よりもエロい光景だ。
俺がエレンの尻に見とれているとセリーヌも色気を出しながら催促して来た。
「カイトさん。エレンさんが終わったら私もお願いしますわ。私のは日焼け止めで」
「ごくり」
エレンほどのエロさはないが白ビキニのセリーヌも色っぽい。
透き通るような白い肌がやけに生々しいのだ。
俺がひとり鼻の下を伸ばしているとシーボルトの視線が突き刺さる。
「カイトは美味しい役どころだな。羨まし過ぎるぜ」
「美味しいって言っても相手はおばさんだぞ」
「私達じゃ不満なのか、カイト?なんなら前も塗らせてやってもいいんだぞ」
エレンは大胆に大股を広げると惜しげもなく胸を前に突き出す。
「ま、前ぐらい自分で塗れ!」
「ハハハ。カイトはお子様だな」
「なら、俺が代わりに塗ってやってもいいぜ」
シーボルトは手を揉み込ましながらエレンに近づいて行く。
するとエレンは背中を向けてそっけなく断った。
「それは遠慮させてもらう。私の体はカイト専用に出来ているからな。他の奴じゃ満足出来ない」
「なっ!カイト、もうそんな所まで進んでいたのか!」
「おい、エレン!誤解を招くようなことを言うな。俺達はただ一緒に温泉に入っただけだろう」
「混浴だと!カイトにしては随分と大胆なことをしたんだな。羨ましいぜ」
シーボルトは目を見開いて鬼のような形相で詰め寄って来た。
混浴って言ったっておばさんとだぞ。
そんなに驚くことなのか。
ただ、あのふにゃふにゃプレイは気持ち良かったけど。
「何だか気分が悪くなって来た。とっとと先へ進むぞ」
「そうしてくれ」
ここで俺とおばさんとのイチャイチャプレイを見ていても溜まるだけだろう。
それならば先へ進んで航海に意識を向けていた方がいい。
でないとシーボルトに刺されそうだからな。
俺はちゃっちゃとエレンとセリーヌの要求に応えるとトイプーを連れて船首に立った。
海はどこまでも広くて青い。
空との境界線が見えなくなるほど透き通っていて深い。
こんな神秘的な空間にいたら心がすっかり洗われてしまう。
俺の中にある邪心も跡形もなく消え去りそうだ。
「海って気持ちいいな」
「ワン!」
「お前にもわかるか」
俺達の横を駆け抜けて行く潮風はほんのりと塩辛い。
海の潮が空気中に溶け込んでいて風の香りも変えてしまったようだ。
トイプーはやたらと舌をペロペロしながら塩を舐めている。
塩の中にはミネラルが豊富だから生き物には必須の要素だ。
自然界に住んでいる動物は岩塩を舐めて養分を補給しているくらいだ。
すると、水平線の向こうに大型の貿易船が見えた。
「おい、シーボルト。船だ。あそこに船がいるぞ!」
「どれ」
シーボルトは望遠鏡を覗きながら貿易船を確かめる。
「ワンドレッド号だ。俺達と同じセレスティア王国行きの貿易船だ」
「船にも名前がついているのか?」
「もちろんだとも。船に名前をつけて貿易を管理しやすくしているんだ。もちろんこの船にも名前がある」
「どんな?」
「フフフ。教えてやろう。この船の名はイエローキャットだ」
ダサー。
黄色の猫って見た目からつけたのか。
シーボルトの船はボロ隠しのために黄色に塗装されている。
海で発見しやすくするためだとシーボルトは言っていたけれどただ目立ちたいだけなのだと思う。
それはシーボルトの格好を見てからもわかる。
何せ白シャツにマリンブルー色のネクタイを緩めにつけて。
下は蛍光色をあしらった派手目短パン姿でいる。
見るからに船長とは思えないラフな格好だ。
普段、出会いがないから必死にモテようとしているのだ。
「黄色い猫さんなんて可愛らしいお名前ですね」
「だろう。そこが狙いなんだよ。みんなに親しまれやすいネーミングにすることで俺の船を覚えてもらうのが目的だ。船はただの乗り物ではない。海を渡る馬車だ。だから愛情を持って接すれば船も応えてくれるのさ」
セリーヌの言葉に気をよくしたシーボルトは得意気に語る。
シーボルトの御託は置いておいて、要するに女子ウケを狙ってのことだろう。
見た目や名前を可愛くすることで女子の注目を集める。
そうすることで出会いを獲得しようとしているのだ。
涙ぐましい努力じゃないか。
だけど今は俺達が貸し切っているから出会いのデの字もないけどな。
俺達がくだらない話をしている間にワントレッド号の横まで辿りついた。
「デカい船だな。この船の十倍以上はあるぞ」
「ワントレッド号は貿易船の中では五本の指に入るほどの大きさを誇っているからな。全長は300メートルもある」
「そんなにデカいのか!これじゃあシーボルトの船がゴミのようだ」
「まあ、船はデカければいいってものじゃないがな。要は乗り心地だよ」
負け惜しみを言うな。
シーボルトの船は結構揺れてるぞ。
どう見たってワントレッド号の方が揺れが少なそうに見えるじゃないか。
ただ大型船を動かすには膨大な燃料が必要になることがネックだ。
船の3分の1のスペースは燃料室に奪われているのだから。
「それじゃあ見物もこれまでだ。ワントレッド号の航路を塞がないルートで進むぞ」
「回り道をするのか?」
「そうだ。航海にはルールがあって大型船が一番優先されているんだ。航路を変えるにも大きさがネックになるからな」
シーボルトは大きく舵を切って進路を変更する。
ワントレッド号の航路から大きく逸れるように南側に迂回するルートをとった。
「迂回していたら余計に時間がかかるんじゃないのか?」
「僅かな差だよ。船のスピードは俺達の方があるんだからな」
「それならいいけど」
「何だよ、カイト。俺が信じられないのか?」
「そうじゃない。マジョビガ島の調査の時のようになったら嫌だなって思ってな」
「それなら心配するな。予備の食料も水も積んであるから。2週間は遭難しても大丈夫だ」
そうならないことを祈るよ。
そんなこんなで一日目が終わりを告げる。
夜の航海は危険だと言うことで碇を降ろして停泊させた。
海洋地図で確認するにヤナックの街から直線で300㎞あたりの南寄りの海域にいることがわかった。
この海域は潮の流れが穏やかなので船を停泊させても問題ないらしい。
波も穏やかだし今夜はぐっすり眠れそうだ。
「料理が出来たぞ」
「美味そうな匂いがするな」
「今夜は猪肉のスープとパンだ」
「海で猪肉なんて不釣り合いな料理だな」
「海に出てると陸上の料理が恋しくなるのさ」
それはわからないでもない。
マビジョガ島の調査に行った時もカジキオンリーの食事だったからな。
美味いけれど毎日だと飽きる。
やっぱり陸上に生まれた人間は自然と陸の物を好むようだ。
俺は猪肉のスープに口をつける。
すると、口いっぱいに猪の出汁が広がり幸せ色に変えた。
「こいつは美味い」
「だろう。おかわりもあるからたくさん食べろ」
「ワン!ワン!」
「トイプーも欲しいか。待ってろよ。お前には生肉をやるからな」
俺はシーボルトから猪肉を受け取るとトイプーの前に置く。
そして待ったをしながら焦らせるとトイプーは涎を垂らしはじめる。
「よし、いいぞ!」
俺の合図を受けてトイプーは猪肉に被りつく。
犬歯で猪肉を引きちぎりながらうまそうに咀嚼していた。
「ぷはー。私は料理よりも酒の方がいいな」
「あんまり飲み過ぎるなよ」
「わかってるって」
エレンはグラスを傾けながら幸せそうな顔を浮かべる。
昼間、さんざんカクテルを飲んだのにも関わらず、まだ足りないようだ。
一度、エレンの体を解剖して中を見てみたいものだ。
アルコールがどう変化をして体に吸収されているかを。
「それよりカイトは何で冒険をはじめたんだ?」
「もちろん、勇者になるためんだ」
「ハハハ。勇者か。いいぞ、いいぞ。男はそれくらいデカい夢を持っていた方がいい」
「シーボルトも夢があるのか?」
俺の質問を受けてシーボルトは胸を張ると得意気に語り出す。
「もちろんだとも。俺は世界の海を股にかける船乗りになることだ。今はまだこんなオンボロ船に乗っているが、金を溜めていつか大型船を手に入れるつもりでいる。そのためにももっと報酬のいい仕事をこなさないとな」
暗に報酬を要求して来るようなシーボルトの視線が俺の胸に突き刺さる。
確かに俺達のような客を相手にしていたら稼げないだろう。
何せ相場よりもはるかに安い報酬を出しているのだから。
だけどそれも仕方ないのだ。
なんて言ったって俺達は借金持ちなのだ。
金のない俺達を客にしたシーボルトの責任でもある。
「で、カイトは何で彼女達を仲間に選んだのだ。普通なら自分と似たようなレベルの者を仲間にするものだが」
「それは……」
俺の『おばさんを惹きつける能力』が原因で他の奴らが逃げて行ったとは口が裂けても言えない。
そんなことを話した日には目もあてられないくらい爆笑されるだろう。
ここはあくまで戦略的にエレン達を仲間にしたことにするのがいい。
そのためにはそれなりの理由が必要だ。
エレン達は俺よりも強い。
だから、”より強い者と旅をした方が早くレベルを上げられる”と考えたことにしよう。
「それはだな……」
俺が口を開きはじめた、その時。
エレンがあらぬことを口にした。
「酔っ払っていた私を解放してくれたのがきっかけだ。カイトはわざわざ馬小屋へ私を連れ込んでスケベそうな顔で私の体を舐め回すように見ていた。あまりに興奮しているようだったから襲われると覚悟をしていたのだが、そこはヘタレのカイト。あそこだけおっ起てて去って行ったよ」
「そんな訳あるかー!介抱してやったのは事実だが、襲おうと思っていたことは断じてない!話を盛るな!」
俺は激高しながらエレンの発言を否定する。
あらぬ疑いをかけられたらまた俺のイメージがダウンしてしまう。
ただでさえ、おばさんと一緒にいるだけでもマイナスイメージなのに、これ以上悪くなったら支障を来す。
シーボルトも半分信じているじゃないか。
俺を見つめる視線が冷ややかだ。
「要はカイトが彼女達に魅せられて仲間になったってことか」
「そうだ」
「違ぁぁぁぁう!」
お前達はバカなのか。
俺が好き好んでおばさんを仲間にする訳ないだろう。
これは仕方なかったのだ。
俺の特殊能力のせいで他の連中が逃げてしまったのだから。
本来であればもっと勇者に必要な特殊能力を開花させているはずだったのだ。
勇者に相応しい仲間を集めて一緒に冒険をして。
今頃は勇者に近づいていたはず。
それがしょうもないおばさん達に置き換わったのだから始末が悪い。
人の言うことを聞かないし、自分勝手に振る舞うし。
おばさんといても何一つ良いことがない。
これで俺の勇者になる夢も尽きてしまったようなものだ。
「ちくしょう……おばさん達を思いのままに操ることが出来れば……」
せめてそれだけでも出来れば話は変わって来る。
俺の手足となって働からせることが出来れば。
呪いでもかけてやろうかな。




