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おばさんクエスト~あるあるだらけの冒険記~  作者: ぱんちゅう
第三章 帰郷するおばさん編
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あるある069 「仲間の敵をとりがち」

ゴゴゴ……ズシン。


俺達が逃げる間もなく入口の石の扉は締まってしまった。


「ちくしょう。あとちょっとだったのに」

「これは侵入者を閉じ込めるための罠だったのでしょうね」

「今頃、気づいても遅いがな」


石の扉をこじ開けようと力を込めるがビクともしない。

石の扉は3メートルの高さがあり幅は50㎝ほどある。

怪力の持ち主が束になっても開かないだろう。


「これじゃあかごの中の鳥じゃないか。他に出口はないのか?」


辺りを見回してみるが出口は見当たらない。

フラットな壁が競り立っているだけで他に何もない。

台座に置かれている大きな棺の中も調べてみるが中は空っぽだった。


「これじゃあ手の打ちようがないじゃないか」

「待ってください、カイトさん。罠があるってことは解除する方法もあるってことですよ。でなければ罠を作った意味がありませんから」

「言われてみればそうだな。冴えているじゃないか、セリーヌ」


しかし、問題は罠の解除方法がどう言ったものなのかと言うこと。

盗賊避けのシンプルな罠だから解除方法も簡単な仕組みになっているのかもしれない。

俺はフラットな壁を触りながらスイッチがないか調べはじめる。

出口があるとすれば壁面にあるはずだからだ。

けれども全ての壁面を調べてみたが何も見つからなかった。


「何もないじゃないか」

「おかしいですわね。必ず解除方法があるのですが」

「ったく。役に立たないな、カイトは。これじゃあ朝になっちまうぞ」


エレンは台座にもたれかかりながらやる気のなさそうに大きな欠伸をする。


「そんなことを言っている暇があるなら、お前も手伝え。このままだと飢え死にするぞ」

「私は宝探しは藩中じゃないからな。カイト達でやってくれ」


まったく自分勝手な奴だ。

普通、チームがピンチに陥ったらみんなで力を合わせて乗り越えるものだ。

そうすることでより結束感が生まれてチームとして強くなれる。

しかし、おばさんともなればチームなんて概念は理解できないのだろう。

お互いに協力することよりも張り合うことが優先されてしまうから。

つくづくおばさんは使えない生き物だ。


「壁に何もないってことは出口は他にあるってことかになる」

「入口が出口って言うことはありますでしょうか?」

「ないこともないな。ここがダンジョンの最深部ならばな」


この部屋は斎場のようだから最深部である可能性が高い。

だとするならば出口は入口なのかもしれない。

俺は再び入口の周りを徹底的に調べた。


「ダメだ。何もない」

「これでは八方塞がりですわね」


いよいよ状況が怪しくなって来た。

本当に出口がないならば、ここで飢え死にするだけだ。

食料もあと1日分しかないし、水も僅かだ。

長く持ったとしても3日が限界だろう。

それまでにはシーボルトが異変に気づいて助けに来るかもしれない。

しかし、大蚯蚓のいる地下一階と火炎百足のいる地下二階を通らなければならない。

これといった装備を持っていないシーボルト達には無理だろう。


「やっぱりここで死ぬのか俺達……」


俺の頭の中にこれまでの人生が走馬灯のように流れはじめる。

ごくありふれた両親の元に生まれたごく普通の男の子。

両親の愛情をたっぷり受けながらすくすくと成長をする。

そして子供の頃に憧れていた勇者ゲリオダスに近づくためセントルース騎士団学校へ入学する。

そこで知り合ったガッシュ、エミル、マルクと言う仲間と共に学園生活を満喫した。

そこまではよかった。

俺の人生は煌びやかに輝いていた。

しかし、運命が変わったのは特殊能力が開花してからだ。

『おばさんを惹きつける』と言うハズレ能力を開花させてから人生は一変してしまった。

俺の周りには常におばさん達がつきまとい他の冒険者達を遠ざけてしまう。

おばさん達のお守り役に回されて冒険らしい冒険は出来ないでいる。


(こんなはずじゃなかった……)


後悔しても後悔しきれない。

おばさんが俺の人生を支配しているなんて。

そんなことはあってはならない。

俺は勇者になる男だ。

優者ゲリオダスのように強くなって勇者になるのだ。

それが俺が目指した道。


(こうなったらおばさんを使いこなしてやる。とことん使いこなして勇者になるための糧にするのだ)


俺は気を持ち直してエレン達に指示を出す。


「おい、エレン。出口を探すぞ」

「何だよ、急にやる気を出して。諦めたんじゃなかったのか?」

「誰が諦めるかよ。俺は勇者になる男だぞ。こんなところでくたばってたまるかよ」

「そうですわね。諦めたらそれでお終いですから。私達が諦めなければ希望の灯かりは消えません」

「そう言うことだ。お前も手伝え」


エレンは仕方なさそうな顔をしながらおもむろに立ち上がる。

すると、急に血圧が下がって足元がふらついてしまう。

たまらずに大剣を支え俸代わりにして床に突き刺した。


ガチャ。


偶然にもエレンの大剣がスイッチを押して床に大きな出口が現れた。


「やった!出口だぞ」

「こんなところに出口があったんですね」

「さすがは私だな。感謝しろよ、カイト」

「ああ、感謝でも何でもしてやる。これで望が繋がった」


出口には地下四階へ通じる階段が伸びている。

壁に5メートル間隔で魔光石が設置されてあり中は明るい。

俺達は期待を膨らませながら階段を降りて行った。





どのくらい階段を降りただろうか。

階段の下には例の如く第四の扉があった。

俺達は辺りを警戒しながら恐る恐る扉を開ける。

中は巨大な空間が広がっていてゴツゴツとした岩が出来ていた。

さきほどの地下三階のような人の手が加えられた形跡はない。

自然の力で出来上がった巨大な空洞が広がっていた。


「さっきと全然、雰囲気が違うな」

「モンスターがいそうな気配がしますわ。慎重に進みましょう」

「ここなら好き放題、暴れられそうだ」


エレンは大剣を振り回しながら意気揚々とする。

大蚯蚓に続いて火炎百足にマミーと来た。

普通のダンジョンならば先に進むほどモンスターが強くなるものだ。

ならば、さっきのマミーよりも強いモンスターがここにいることになる。


「おい、エレン。気張るのもいいが警戒は怠るなよ」

「相変わらずだな、カイト。私は楽しくて仕方ないぞ。どんな強敵が待っているかと思うと涎が出て来るぜ」


その緊張感のなさがエレンの最大の問題点だ。

戦いは遊びではないのだから適度の緊張感は必要だ。

でないと不意を突かれてピンチに陥る。

とりわけダンジョンの調査は危険が伴う。

先ほどのように罠が仕掛けられていることが多いからだ。

そんな俺の心配も知ることなくエレンはぐんぐんと前に進む。

そしてひときわ大きな岩山に腰を下ろすと休憩をはじめた。


「ふー。疲れた」

「今のところモンスターはいないようだな」

「そのようですわね。だけど、気を抜かない方がいいですわよ」

「カイト達は警戒し過ぎなんだよ。そんなカチコチじゃ遅れをとるぞ」


エレンは胡坐をかきながら水筒で喉を潤す。

さすがに水筒の水も残り少なくなって来たようで一口が小さい。

このダンジョンがどこまで続いているのかわからないから、どこかで水の補給はしたいところだ。

しかし、辺りを見回しても水辺らしきものは見えない。

ただ岩肌がむき出しになっている大地が広がっていた。


「残りの水も少なくなって来た。あと少ししか進めそうにないからそのつもりでいろよ」

「ここまで来て引き返すつもりか?」

「仕方ないだろう。水がなくなったら終わりだからな」

「あーあ。これならもっと水を持って来ておくべきだったな」


エレンは力なさげに伸び上がりながら岩に背を預ける。

すると、急に岩が動き出して中から巨大なアイアンゴーレムが姿を現した。

アイアンゴーレムはゴーレムの強化バージョンで鉄鉱石出て来ている。

そのため倒すと高い確率で鉄鉱石が採取できる。

性格はゴーレムと違って勇ましく好戦的だ。


「ようやくお出ましか。待ちくたびれたぞ」


すでにやる気になっているエレンは大剣の切っ先をアイアンゴーレムに向ける。

そして俺の指示を待つことなく切りかかって行った。


「見せてみろ、お前の力を!」


エレンの一撃がアイアンゴーレムの肩を捉える。

しかし、アイアンゴーレムの堅牢な装甲に阻まれて弾き返された。


「こいつ。思っているよりも固いぞ」


間髪入れずにアイアンゴーレムのパンチがエレンに襲いかかる。

すかさず後ろに大きく飛びのいてアイアンゴーレムの攻撃をかわす、エレン。

アイアンゴーレムのパンチは大地を大きく抉り地肌がむき出しになった。


「パワーまで段違いだ。こいつはゴーレムと次元が違う」


ゴーレムは内服する鉱石の種類によって呼ばれ方が変わって来る。

ただの岩を内服しているのは通常のゴーレム。

鉄鉱石を内服しているのがアイアンゴーレム。

青銅石を内服しているのがブロンズゴーレムと言う具合にだ。

その上、性格も強さも堅牢さも種類によって変わって来る。

比較的、貴重な鉱石を内服しているゴーレムほど強力なのだ。

だから戦い方も自ずと変わって来る。

見る限りマミーにあったような魔石は見てとれない。

なので魔石を破壊する倒し方が出来ない。

どこを見ても鉄鉱石で覆われている。

ならば力押しで倒すしかないようだ。


「よし、エレン。思う存分暴れ回ってくれ」

「何だよ、カイトにしては珍しいな。いつもなら作戦がどうのこうのって騒ぐのだが」

「そんなことはどうだっていい。それより前を見ろ!」


エレンの不意を突いてアイアンゴーレムのパンチがさく裂する。

すかさず大剣でガードをするが大きく吹き飛ばされてしまった。


「くぅ……やるじゃねえか。この貸は高くつくぜ」


エレンは大剣を杖代わりにしておもむろに立ち上がる。

そして再び切っ先をアイアンゴーレムに向けると切りかかって行った。

エレンの連続攻撃がアイアンゴーレムを捉える。

しかし、堅牢な装甲に阻まれて弾き返されてしまう。

それでもエレンは攻撃の手を緩めることなく斬撃を与え続けた。


俺は戦況を見守りながら次の一手を考える。

エレンの攻撃でも傷つくことないアイアンゴーレムの装甲はハンパない。

ただ単に斬撃を与え続けてもその装甲は破れないだろう。

ならば『チャクラ』を使ってエレンの身体能力を一時的にあげるべきか。

ただ、それだと武器が耐えられるのかは限定的だ。

もともとエレンが持っていた大剣ならば大丈夫だろうが、今は仮の大剣なのだ。

鋼製で堅牢さは売りになっているがエレンとの相性まではわからない。

『チャクラ』による最大限の力を発揮するためには武器も肝心なのだ。


「ここは賭けだ。セリーヌ、エレンに『チャクラ』をかけてくれ」

「わかりましたわ」


俺の指示を受けてセリーヌは魔法の詠唱に入る。

この判断がどう転ぶのかはわからないが、何もしないよりマシだ。

ごり押しして戦ってもこちらが消耗して行くだけ。

アイアンゴーレムはもろともしないのだ。

相変らずエレンは間髪入れずに攻撃を繰り返している。

それはアイアンゴーレムの反撃を防ぎ防戦一方にさせていた。

そしてセリーヌの詠唱が終わり『チャクラ』を発動させる。


「深淵の種子より芽吹きし力。流れる血潮となりて、かの者に力を与えよ『チャクラ!』」


エレンの足元に金色の巨大な魔法陣が浮かび上がると細かな粒子が立ち昇る。

その粒子は溶け込むようにエレンの体に浸透して行き、エレンの運動神経を刺激した。


「うぉぉぉぉ!力が漲って来る!」


エレンは湧き上がるエネルギーを感じながらパワーを漲らせる。

そしてアイアンゴーレムに向かって大剣を振り下ろした。

その攻撃はこれまでとは打って変わって強力な一撃となる。

ただの斬撃も覇気を纏い裂傷力が飛躍的にアップしている。

そのため堅牢だったアイアンゴーレムの装甲に亀裂が生じていた。


「このままならイケる。よし、エレン。そのままごり押しで行け!」

「言われるまでもない。オラオラオラ―!」


エレンの強力な連続攻撃がアイアンゴーレムを捉える。

その度にアイアンゴーレムの装甲に亀裂が入る。

その亀裂はやがて大きな亀裂となってアイアンゴーレムの装甲を破壊した。

アイアンゴーレムの腕は肉が削げたように細くなっている。

それでも体を支えている骨は堅牢で姿形を保っていた。

さすがはゴーレムの強化版だけのことはある。

そう簡単には倒せないようだ。


「エレン。一点に絞り込んで攻撃を加えるんだ!」


攻撃を一点に集中させることが出来ればどんな堅牢なものでも破壊出来る。

それは軒先の雨水が石に窪みをつくるように攻撃を一点に集中させれば強力な一撃となるのだ。

今のところアイアンゴーレムには弱点は見られない。

ならば一点集中でパーツを破壊して動けなくするのが効果的だ。


「そうは簡単に言ってくれるけどな、こっちはこっちで大変なんだ」


いつの間にかエレンの攻撃に対応したアイアンゴーレムは反撃を繰り出している。

その手数は少ないが強力な一撃となってエレンに襲いかかる。

エレンはその攻撃を受け流しながら連続攻撃で沈めようとしていた。

予想以上にアイアンゴーレムの対応力は高いようだ。

『チャクラ』をかけたエレンに対応するなんて普通はあり得ないことなのだ。

このままでは戦局は悪くなる一方だ。

次の一手が必要になる。


セリーヌの『ホーリーランス』で追撃したいところだが戦いの邪魔になる。

エレンとアイアンゴーレムは間髪入れずに近接戦闘を繰り返しているのだ。

ならば『シールズ』でアイアンゴーレムの動きを止めるのが効果的か。

動きを封じこめることが出来れはこちらの流れに持って行ける。


「よし、セリーヌ。『シールズ』でアイアンゴーレムの動きを封じこめてくれ!」

「『シールズ』ですね。待っていてください、エレンさん。今、加勢しますわ」


セリーヌはすぐさま魔法の詠唱に入った。

その間もエレンは連続攻撃をアイアンゴーレムに打ち込む。

しかし、その手数は少なくなって行き状況が悪くなりはじめる。

アイアンゴーレムの反撃が多くなって今度はエレンが防戦一方になっていた。


「まだか、セリーヌ。これじゃあエレンがやられっちまう」


俺はひとり焦りながら戦局を見守る。

セリーヌはセリーヌで魔法の詠唱中だ。

他に時間を稼げるのは俺しかいない。

だが、『チャクラ』もかけていない素の俺でどこまで出来るのか。

返ってエレンの邪魔になるのではないかとさえ心配してしまう。

だけどやれるのは俺しかいない。


「よし。エレン、待っていろ。俺が加勢する!」

「カイト。お前じゃ無理だ。下がれ!」

「俺を舐めるなよ、エレン。俺だって伊達に戦いを見て来た訳じゃない」


俺は誰よりも近くでエレンの戦いを見守って来た。

だから頭の中では完璧にシュミレーション出来ている。

敵がこう動いた時はこう交わして攻撃を仕掛けるなど。

暗闇で地図を描けるようにありありと映し出せるのだ。

それにさっき火炎百足を倒した時の要領で戦えばいいだけの話。

俺は小剣を構えるとアイアンゴーレムの背後に回り込む。

ここからならばエレンの邪魔になることはない。


「俺の真の力を見せてやる!おりゃぁぁぁ!」


俺はアイアンゴーレムの頭上高く飛び上がり小剣を上段に構える。

そして落下のスピードと合わせて勢いよく小剣を振り下ろした。

俺の放った一撃はアイアンゴーレムの後頭部を捉える。

しかし、堅牢な装甲に阻まれて弾かれてしまった。

こうなるはずではなかった。

俺の中のシュミレーションではアイアンゴーレムに致命傷となる一撃を加えられるはずだった。

けれど、現実はあまりにも違っていた。

俺はアイアンゴーレムに捕らえられて身動きがとれなくなっていた。

アイアンゴーレムは力任せに俺を握り潰そうとする。

その度に俺の声にもならないうめき声が辺りに響き渡った。


「カイト!」

「うぎゃぁぁぁ!」

「ちくしょう。セリーヌ、まだか。このままじゃカイトが死んでしまう」


俺の体の中で骨がギシギシと悲鳴を上げる。

その度に激痛が体中を駆け巡った。

なんてざまだ。

エレンを助けるつもりが逆に足手まといになるなんて。

これもそれもこれまで戦いに参加して来なかったからだ。

作戦を立てるなんて名目を掲げて戦闘を避けて来たからこのざまだ。

次に生まれ変わることが出来たのなら積極的に戦闘をこなす剣士になろう。

半ばあきらめかけているとセリーヌの『シールズ』が発動された。


「カイトさん、諦めないでください。今助けます。時の流れは永劫の調べ、縦横無尽の鎖となりて、かの者を封印せよ『シールズ!』」


アイアンゴーレムの足元に巨大な魔法陣が浮かび上がると緑色の鎖が現れる。

それは蛇のようにアイアンゴーレムに巻きつくとキツク締め上げた。

アイアンゴーレムは力を込めて抵抗するが、その度に鎖は深く締まって行く。

俺はアイアンゴーレムの手から投げ落とされて地面に転がる。

すると、すかさずエレンが俺の所へやって来て抱き起した。


「カイト!しっかりしろ!」

「エレンか……悪い。助けるつもりが足手まといになっちゃって……」

「そんなことは気にするな。それよりも大丈夫なのか?」

「体のあちこちから悲鳴が聞えるよ……。俺、このまま死んじゃうのかな」

「何を馬鹿なことを言っているんだ。いつものお前らしくないじゃないか」

「ふふ。そうだったな。俺はお前達のリーダーだったな」

「そうだ。いつものように命令をしろ」

「よし、エレン。俺の代わりにあいつを倒してくれ」

「わかった」


エレンは固く俺の手を握って祈るように願いを込めた。

そして動きを止められたアイアンゴーレムに向き直ると大剣を構える。


「カイトの敵は私が討つ。私達に手を挙げたことを後悔しろ!」


エレンは大剣の切っ先をアイアンゴーレムに向けながら一気に間合いをつめる。

その手から繰り出された刺突は閃光の如く一筋の光となってアイアンゴーレムを貫いた。

その攻撃が功を奏したのかアイアンゴーレムの胸の中にあった魔石を偶然にも粉々に砕く。

すると、アイアンゴーレムは塵となって消え去った。

代わりに残されたのは一塊の鉄鉱石。

鈍色に輝きながらエレンを映し出していた。


「カイトさん!」

「カイト!」

「ふふ。やったな、エレン。お前の勝ちだ」

「何を言っているんだ。これは私達の勝利だ」

「お前らしくないな。いつものお前はどうしたんだ?」

「何を冗談言っているんだ。セリーヌ、カイトに回復魔法を」

「わかりましたわ」


必死なエレンの剣幕に押されてセリーヌはすぐに魔法の詠唱に入る。

その間もエレンは俺を抱きかかえてたわわな胸を押しつけて来た。

この感触は悪くないな。

おばさんの胸は女子よりも柔らかい。

ほにゃんとしたマシュマロおっぱいに俺のハートもズキュンだ。

最後にこんなご褒美があるなんて。

俺の人生もそう悪くはなかったのかもしれない。

いつの間にか俺は意識を失っていた。


その後、セリーヌの『キュアレスト』で完全回復してもらった。

全身の骨が折れていたようで気づいた時は違和感を感じた。

その間、エレンは俺をしっかりと抱きしめて祈っていたようだ。

エレンにそんな一面があったとは驚きだったが、当の俺は知らない。

意識を失っていたから知る由もないのだ。

ただ、俺が目を覚ました時にエレンは目に涙をいっぱい溜めていた。

そして俺をしっかり抱きしめて熱い抱擁をしたのだった。


「よし。次へ行くぞ」

「カイトさん。もう大丈夫なのですか?」

「お前達のおかげでな」


俺がここで立ち止まっていたらチームの士気も下がる。

少しむず痒さは残っていたが奥へと進んだ。

もちろんアイアンゴーレムが落として行った鉄鉱石を持ってだが。

これはヤナックの街へ戻ったら売りに出すつもりだ。

少しでも稼いでおかないと借金は返せないからな。

そして俺達は最後の扉の前に来た。


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