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おばさんクエスト~あるあるだらけの冒険記~  作者: ぱんちゅう
第三章 帰郷するおばさん編
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あるある065 「しょうもないいたずらをしがち」

その夜。

俺達はカジキの料理を満喫しながら今後のことを話し合った。

議題はキルをこの後どうするのかと言うこと。

いっしょに調査に連れて行くのは危険だし、ひとり残しておくのも危険だ。

とりわけひとりで残したおいた日には何をするのかわからない。

だから、キルを見張っている人物が必要になるのだ。

そうなると必然と誰なのかは決まって来る。


「俺か?勘弁してくれよ。子守なんて柄じゃない」

「そう言わずに頼むよ、シーボルト。お前しか頼る人間はいなんだ」

「そう簡単に言うけどな。子守がどんなに大変なことなのかわかっているのか?」

「もちろんだとも。俺達もキルには手を焼いて来たからわかる。だから頼むよ」

「特別報酬がないとやれないな」


俺が頭を下げて頼み込むとシーボルトは足元を見て吹っ掛けて来た。

さすがは船乗り。

ただでは転ばないって訳か。

しかし、特別報酬を払う余裕は俺達にはない。

ならばエレン達に体で払ってもらおうか。


「よし。報酬はエレン達だ。好きなだけ抱いて構わないぞ」

「なっ!何を言ってるんですかカイトさん。私達を売るつもりですか?」

「減るもんじゃないしちょっとくらいいいじゃないか」

「こう言うのは減るものなんです!」


俺の非情な提案にセリーヌはそっぽを向いて青筋を立てていた。


「もう、いいよ。俺が邪魔なんだろう。カイト達で好きな所へ行けばいいじゃないか」

「どこへ行くつもりだ?」

「どこだっていいだろう。カイトには関係ないよ!」


キルは目に涙を溜めて、その場から立ち去ろうとする。

その手をシーボルトが掴んだ。


「わかったよ。俺の負けだ。こいつの面倒は俺がみる」

「本当か?」

「ああ。子供とは相性が悪いが何とかなるだろう」

「助かるよ」


結局、シーボルトは特別報酬なしで引き受けてくれた。

チャーター料を銀貨1枚に値切られて、子守もすることになったことは少しだけ心苦しい。

せめてエレン達でも抱かせて少しでも気分でもまぎらせられればいいと思ったのだが。

それはセリーヌが納得しないだろう。

今も目をカッと開いて俺のことを敵を見るように睨んでいる。

純情なおばさんにはちょっと過ぎた提案だったようだ。


「で、最初はどこから調査するつもりだ?」

「俺達がいるのはマビジョガ島の北西側の海岸だ。まずは海岸沿いに進んで島の全景を把握しようかと思っている」

「それは止めといた方がいいな」

「なぜだ?」

「地図で見たら小さいように見えるが、島の全周囲はだいたい50キロはあるだろう。しかも砂浜から離れたら険しい岩場を越えなければならないのだぞ。1日で回り切れるとは思えない」


シーボルト曰く、ここを拠点にして動いた方がいいと言う話だ。

その方が迷うことも少なくなるし、何より調査しやすいのだ。

となると島の中央に聳え立っている小高い山を目指して調査をする方が良さそうだ。


「森の中はどんな危険が待っているのかはわからない。気をつけるんだぞ」

「ああ。任せておけ」

「後は保存食を持って行け。万が一のことを考えて多めに持っておいた方がいい」

「それなら燻したカジキを持って行くよ」


俺はリュックに保存食と水を仕舞った。


「俺達はここで狼煙を上げて目印を作っておく。カイト達はそれを頼りに調査を続けてくれ」

「何から何まで悪いな」

「これも仕事のうちだ」


シーボルトは思っている以上によく働いてくれる。

航海の知識もさることながら冒険の知恵も惜しみもなく教えてくれる。

これで銀貨1枚だなんて報酬が少なすぎるくらいだ。

やっぱりエレン達を抱かせようか。

そんなことを考えながらセリーヌを見やると鋭い視線で睨み返された。


「それじゃあ明日に控えて今日は休むぞ」

「なら、俺が見張りをやるよ」

「わかった。1時間経ったら教えてくれ」


俺はトイプーといっしょに見張りについた。

夜の無人島は静寂に包まれて波の音がこだまする。

空を見上げると星々が所狭しと輝いていた。

はるか沖合に停泊させたシーボルトの船の影が見える。

波に揺られながら海の上を漂っていた。


「ロマンチックな夜だな。お前もそう思うだろう?」

「クーン」


トイプーは顔を俺に擦りつけながら小さく鳴いてみせる。

これもトイプーなりの甘えなのだろうか。

犬なりにロマンチックな気分になっているようだ。

すると、キルがひとり起きて来て俺の向かいに座った。


「何だよ、眠れないのか?」

「そう言う訳じゃないけど」

「ひっぱたかれたことを気にしているのか?」

「カイトは俺のことが嫌いなんだろう。だからブッたんだよな」


そんなことを心配していたのか。


「そんなことある訳ないだろう。あれはお前がマーベルに生意気な口を聞いたから叩いたんだ」

「だって俺のことを知っているようなことを言うから」

「みんなお前のことを心配しているだけだ。お前は無鉄砲なところがあるからな」


キルはシュンとして顔を膝に埋める。

俺の言葉が届いたようで少し安心をした。

確かに叩いたことは過ぎていたかもしれない。

俺も少し反省しないといけないな。

キルも馬鹿じゃないんだ。

話せばきっとわかってくれる。


「俺のことを嫌いになったか?」

「ブタれた時はそう思ったけれど、今はそうでもない」

「そうか。ならよかった」


俺とキルの間を静寂が包み込む。

言葉にも出来ない何とも言えない雰囲気が漂いはじめる。


「明日はちゃんと留守番は出来るか?」

「……」

「俺達といっしょに行きたいのか?」


俺の質問にキルは小さく頷いて応えた。

やっぱりキルに留守番は無理か。

だけど、いっしょに連れて行くことはもっと危険。

残念だけど、ここは心を鬼にして伝えないといけない。


「キルには任務を与えよう。それは後方支援の任務だ。俺達が迷わないように狼煙を絶やさずに炊いていてくれ。そうすれば俺達は安心して調査出来る」

「それだけか?」

「そうだな。後は食事の準備と食料の見張り番だ。やることはいっぱいだぞ」

「……わかったよ。カイトの指示に従うよ」


キルは少し不満そうだったが俺の提案を了承してくれた。

これで迷うことなく調査に専念できる。


「明日を控えているんだ。ゆっくりと休め」


キルは寝床に戻ると静かに目を閉じた。





翌朝。

俺とエレン、セリーヌの三人はマビジョガ島の調査をはじめた。

まず目指したのはマビジョガ島の大半を占めている森の中。

樹々や草花が生い茂り行く手を阻んでいる。

俺達は剣で捌きながら奥へ奥へと進んで行った。


「これじゃあ調査どころじゃないな」

「人の手が入っていない証拠ですわ」

「虫にでもなった気分だ」


だが裏を返せばモンスターもいないってことだろう。

普通、モンスターがいれば獣道が出来ているはずだ。

何もないってことはこの島にはモンスターや獣の類は生息していないってことになる。

少なくともこの森の中にはと言うことだが。


「生き物の気配がまるでないな」

「それならよかったですわ。こんな所で戦闘なんて考えられませんもの」

「しかし、何もないところだな。これじゃあ調査と言うより散歩だ」

「何もないってことがちゃんと証明されたんだ。これも立派な調査だ」


エレンはやる気のなさそうな顔で愚痴をこぼす。

まあ、戦い好きのエレンからしたら物足りないだろう。

無人島の調査なんて地味なクエストは。

もし、仮にモンスターが生息していれば話は変わって来るが。

それはそれで俺達が大変になって来る。

銀貨5枚と言う報酬に見合うだけのクエストにはならなくなるからな。

何もないことが一番いいのだ。


「海が見えて来たぞ」

「島の北側に出たようですね」


島の北側は険しい岩礁で覆われてた。

下に降りようにも岩礁を伝って行かなければならない。

それはそれで大変なので下に降りることは断念した。


「狼煙は見えるか?」

「樹々が邪魔をしてよく見えませんが右手に立ち昇っているのが見えますわ」


俺はマビジョガ島の地図を開いて現在地を確かめる。

狼煙の上がっている位置から北へ直線を伸ばした先が現在地だ。

距離にして5キロメートルはあるだろう。

思っていたよりも進んでいないことに気づく。


「今度はこの山を目指して森の奥へ進むぞ」

「カイト。もうこんなつまらないことは止めようぜ。マビジョガ島には何もなかったってことで報告をあげよう」

「何を言っているんだ。そんなインチキを出来る訳ないだろう。俺達は正式にクエストを受けたんだ。ならば最後までちゃんと調査をする必要があるんだ」

「誰も見ていないんだ。ちょっとぐらい誤魔化してもばれないさ」


根も葉もないことを言うな、エレン。

それがまかり通るならばどんなクエストでもチョロまかせてしまうじゃないか。

まあ、でもモンスター討伐だけは魔石があるから誤魔化しは効かないのだが。

それにしたって恐れ多いことを考えるものだ。

冒険者としては絶対に受け入れられない非道だ。


「帰りたければエレンひとりで帰れ。調査は俺とセリーヌでするから」

「戻ったって何もやることがない。せめて酒でもあればな」

「酒のことは忘れろ。ヤナックへ戻ったらたらふく飲ませてやる」

「本当か!絶対だぞ。約束をしたからな」


エレンは目の色を変えてやる気を漲らせる。

酒で釣れるなんてチョロイ奴だ。

でも、本当のところ旅費も少ないから大した酒は飲ませられないのだけど。

まあ、エレンのことだからアルコールの入っている水なら何でも大丈夫だろう。


「それじゃあ奥へ進むぞ」


俺達は樹々を掻き分けながら森の奥へ奥へと進んで行った。

先ほど通って来た道とは違って森の奥へ行くたびに樹々の丈が高くなってる。

空を覆い隠すように枝葉が広がり、森の中にはほとんど明かりが届かない。

そのため足元は苔がむしていていて非常に滑りやすくなっていた。


「滑るから足元に気をつけて進めよ……って」


言っている傍から俺が尻もちをつく。


「大丈夫ですか、カイトさん」

「草がクッションになったから大丈夫だ」

「それにしてもジメジメしたところだな。こう言うところにはお化けが出るものだが」

「お化けなんて物騒なことを言うんじゃない」


エレンの言う通り森の中はお化けが出そうな雰囲気だ。

薄暗くジメジメしていて空気もひんやりとしている。

シチュエーションだけ見ればお化けが出る条件が揃っている。

しかし、ここは無人島だぞ。

どんなお化けが出るって言うんだ。

そもそもお化けって言うのは人間の魂だろう。

人間が死んで魂になるからお化けが見えるんだ。

無人島なんだから人間はいない。

ならばお化けも出ないってことになる。

俺が頭の中でひとり納得しているとエレンが俺の首筋を葉っぱでなぞった。


「ひぇー!」

「ひぇー!だってよ。ウケる。カイト、マジでビビっているのか?」

「ビビっているも何もいきなりそんなことをされたら驚くだろう」

「カイトはビビりだな」


エレンはお腹を抱えながら大笑いをしている。

こいつ、本気で殴ってやろうか。

いや、殴るよりも酒を取りあげた方がエレンには効果的だ。

さっきの約束はなかったことにしよう。

後で泣きついて来ても絶対に許さないからな。

俺がひとり納得しているとセリーヌが叫んだ。


「カイトさん、あそこを見てください」

「何だ?」

「あそこに大きな石らしきものがありますわ」


セリーヌの指さした方を見やると樹々の隙間から大きな石が見えた。

森の中に大きな石があるなんて不自然過ぎる。

自然に石が転がっているのならば、その周りにも他の石があるのが普通だ。

俺達はさっそくその場所へ向かい石を確かめた。


「これは人の手が加えられているな」

「そうですわね。何か文字のようなものが刻まれています」

「何て書いてあるかわかるか?」

「残念ですが私には読めません。おそらく古代文字の類かと思われます」


文字は大きな石の壁面に記されていた。


「この窪みは何だろう?」

「おそらく鍵のような役割をしているのではないかと思われますわ。ここにピタリと嵌る鍵のようなものがあって」

「と言うことはこの石は扉と言うことになるな」

「間違いないでしょう」


文字が記されている中心にZ型の窪みが出来ていた。

明らかに人の手が加えられていることは間違いない。

だとするならばマビジョガ島にはかつて人間が住んでいたことになる。

しかし、住居跡が残っていないのが不思議でもある。

普通、人間が住んでいたのなら住居跡が残るものだ。

それが全く見当たらないってことはどう言うことなのか。


「セリーヌはどう考える?」

「住居跡は島の東側にあるのではないでしょうか。住人がいたのに住居跡が残っていなってことはあり得ませんし、まだ私達は島の西側しか調査してませんから」

「俺も同じ意見だ」


それはいいとして問題はこの扉が何なのかと言うこと。

貯蔵庫にしては大きすぎるし、住居跡から離れすぎている。

地図で確認するとこの場所は西側の山の麓に位置している。


「考えているよりも手っ取り早い方法がある」


そう言ってエレンが力任せに扉を開こうとする。

しかし、扉は一ミリも動かずに立ち尽していた。


「何て重い扉なんだ。ビクともしない」

「力任せて開くような扉ではありませんわ」

「この扉を開けるにはカギが必要だ」


辺りを見回しても鍵らしきものは落ちていない。

膝丈ほどの草が生い茂っているばかりで周りは緑で覆われていた。


「とりあえず今日の調査はここまでにしよう」

「まだ明るいぞ」

「陽が落ちる前に戻らないと迷ってしまうからな」

「せっかく面白そうなものを見つけたのにここで終わりだなんて」

「また、明日がありますわ」


俺達は狼煙を頼りに樹々に印をつけながら海岸へ戻って行った。





その頃、キルは夕食の食材を集めるため西側の岩礁にいた。

シーボルトの目の届く範囲で食材集めをしろと言うことなのでこの場所にしたのだ。


「どいつもこいつも俺をガキ扱いしやがって。俺だって戦えるんだぞ」


キルはブツクサ文句を言いながら岩場に張り付いている貝をナイフではぎ取る。

さすがに毎食カジキでは飽きてしまうので貝を集めさせていたのだ。

貝ならば浅瀬で見つけられるし、キルにでも獲りやすい。

キルにはちょうどいい仕事だった。


「こんなの誰でも出来るじゃないか」


カイトの奴もうまいように説得したみたいだが全然、納得はしていない。

危険だからと言って遠ざけただけだからだ。

そんなことは自分で覚悟していればすむ話だ。


「ちくしょう。何とか調査に加わることが出来なかな」


キルは思考を巡らせて作戦を考える。

常にシーボルトの目があるので抜け出すことは出来そうにもない。

ならばシーボルトが目を光らせないようにすればいいのだ。

今みたいに食材探しに行くからと理由をつければ離れられる。

けれど、キルの姿が見えなければ不審に思うだろう。

そこで考えられるのが案山子作戦だ。

岩場に案山子を立てておいて自分がいるように装えばいい。

案山子の材料はそこらへんにある流木とゴミで何とかなる。

さっそくキルは案山子を作るために材料を集めはじめた。


「これでうまく行くはずだ」


流木は枝があるものを選ぶ。

そこに布を巻いて人間らしくする。

頭には小さな樽をハメておく。

後は風に靡くように固定するだけだ。

全く動かないと返って怪しまれる。

だから風で靡くようにしておくのだ。


「この辺がいいかな」


キルは案山子を固定する岩を探す。

石で固定しても風で倒れてしまったら意味がないので流木が刺さりそうな隙間を探す。

すると、岩と岩の間にちょうどよい隙間を見つけた。


「ここなら大丈夫そうだな」


キルは隙間の中にある石を拾い上げる。

そして試しに案山子を立ててみた。

思っていたように案山子は風に靡き、あたかもキルが動いているように見える。


「よし、これならイケそうだ」


これでシーボルトの目は誤魔化せるな。

シーボルトは子供が苦手だから好んで関わろうとはして来ない。

そこがつけ入る隙となるのだ。

キルは案山子を近くの森の中に隠す。

後は明日を待つだけだ。

キルは鼻歌を歌いながら戻ろうとした時、海の中に光輝く石を見つけた。


「何だアレ?」


石は太陽の光を浴びて青色に輝いている。

キルは海に手を伸ばして青い石を拾い上げた。


「これって」


見るとZ型をした人工的に手を加えられた石だった。

重さは見た目よりも軽い。

子供の手でも片手で持ち上げられるほど。

表面は綺麗に研磨されていて滑らかだ。


「もしかしてこれって海賊のお宝じゃないのか」


この海域を根城にしている海賊がマビジョガ島にアジトを造っていてもおかしくない。

”死の島”と言う噂を流して誰も近づかないようにしたのかもしれない。

そう考えると島の奥には海賊たちの隠したお宝が眠っているはずだ。


「こいつはいい物を見つけた。あとでカイトに自慢してやろう」


カイトのやつ驚くだろうな。

キルのことを見直すかもしれない。

キルは青い石を翳して太陽の光にあてる。

すると、青い石はより深い青色の光を放ちながら輝いた。


「こいつは俺のモノだ。ヤナックの街へ戻ったら売って金に換えよう」


きっと高く売れるはずだ。

なんて言ったって海賊のお宝なんだからな。

キルは青い石を懐に仕舞うとシーボルトの待つ海岸へ戻った。


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