あるある064 「子供のいたずらに目くじらを立てがち」
シーボルトの船は小型船を一回り大きくしたような船だった。
見た目はボロいが最新鋭の機材を備えてある。
魔導羅針盤にレーダー探知機、魚群探知機までついている。
普段は荷物や人の輸送をしているのだが、仕事がないときは漁師もしていると言う。
どの商売も一本でやっていけるのはほんの一握りの人間だけなそうだ。
「本当にこんなオンボロで海を渡れるのか?」
「見た目はボロいがちゃんと働くぞ。何せ、こいつとは10年来の付き合いだからな」
シーボルトが船乗りをはじめたのは23歳の時。
16歳で『航海術』の特殊能力を開花させてから7年間定職にもつかずほっつき歩いていた。
『航海術』は海の潮の流れを読み取れる能力だそうだ。
機材を使わずに潮の流れを読めることは船乗りだったら手が伸びるほど欲しい能力のひとつ。
シーボルトは特殊能力に恵まれていたのだった。
しかし、当初は船乗りになろうとは思っていなかったらしい。
理由は船乗りがしごく大変な仕事だからだ。
海がどんなに時化ていようが嵐が来ようが航海は中止出来ない。
それに朝も夜もないし肉体的にも精神的にもキツイ仕事なのだ。
だけど、師匠とも呼べる船乗りに出会ったことがきっかけで状況は一変する。
師匠は自分の船を持っている船乗りでひとりで世界の海を股にかけていたのだ。
その生きざまに惚れこんだシーボルトは師匠を見習って自分の船を持ち船乗りとなったのだ。
「まあ、無事にマビジョガ島まで辿りつければいいよ」
「それなら任しておけ。何せ俺は世界一の船乗りだからな」
「おい、カイト。荷物を運ぶのを手伝え」
エレンは食料の入った袋を運びながら催促をする。
「荷物はそれだけか?」
「とりあえず5日分の食料と水を確保した。3日で調査を終える予定だからな」
「随分とハードなスケジュールを組んだな。普通なら1週間はかけるぞ」
「予算と時間の問題だよ」
俺の言葉に苦笑いをして納得する、シーボルト。
自分の報酬も銀貨1枚なのだから仕方ないのだけれど。
「おい、シーボルト。この樽は何だ?」
「そいつは酒樽だ。航海に酒は付き物だからな」
「わかっているじゃないか。これで禁酒からはおさらばだな」
エレンは嬉しそうに酒樽をぺチぺチと叩く。
すると、中身が詰まったような音がした。
「それじゃあ準備はいいな」
「おう」
「マビジョガ島へ向けて出航だ!」
シーボルトのボロ船は俺達を乗せてマビジョガ島を目指した。
あいにく今日は天気に恵まれて波も小さくとびきりの航海日和。
こんなに平和ならばのんびりとクルージングをしたい気分だ。
俺は甲板に立って望遠鏡で辺りの海を見渡す。
「海しか見えないぞ」
「まだ、港を出てからたいして進んでいないからな。あと5時間は同じ景色だ」
「5時間もか。長いな」
「それが航海ってやつさ。暇を持て余しているのならば釣りでもしてみるか?」
シーボルトが差し出して来たのは釣り糸に釣り針と重りがついた手釣り用の仕掛け。
竿で釣る方法もあるのだが、今回は釣りが目的ではないので港に置いて来たと言う。
まあ、暇つぶしが出来るなら何でも歓迎だ。
「ここにイカをつけるのか?」
「そうだ。釣りははじめてか?」
「ああ。川でそれっぽいことをしたくらいだ」
「要領は大して変わりがない。魚が食いついたらしばらく泳がせて、疲れさせてから釣り上げるんだ」
俺はシーボルトに言われるままエサをつけた釣り針を海の中に放り込む。
すると、釣り糸がぐんぐん引っ張られて海の中へ沈んで行った。
「後は魚が食いつくまで待つだけだ。魚が食いついたらピクンと手に感触が伝わるから、そしたら釣り糸を少し引いて針を引っかけるんだ」
「わかったよ。試してみる」
俺は甲板に腰をかけて、ひとりで釣りをはじめた。
エレン達はと言うとチェアとパラソルを広げて日向ぼっこをしている。
エレンはビキニアーマーなのでその格好でも海が似合うが、セリーヌは少し暑そうな様子をしていた。
「エレンさんはいいですわね。私も水着になろうかしら」
「なれなれ。セリーヌも少しは肌を焼かないと病気になってしまうぞ」
「日焼けをするとシミの原因になりますからね。エレンさんも日焼け止めはしっかりと塗っておいたほうがいいですわよ」
「そんなもの私には関係ない」
「そう言っていられるのは20代までですよ。30代にもなるとお肌の曲がり角になりますから」
セリーヌは水着に着替えてから念入りに日焼け止めを全身に塗りたくる。
そうまでするならば水着にならなければいいのにと思ったのは俺だけだろうか。
おばさんともなると肌ケアに情熱を注ぎたがる。
コラーゲンをたっぷりととったり、保湿に気をつけたりと。
シミや皺が出来ないように食事の面からも徹底的にこだわるのだ。
そんな努力も微々たる変化にとどまっているのが実際だけれど。
「全く、無駄な努力ばかりしたがるよな、おばさんって。お前もそう思うだろう、トイプー」
「ワン!」
「お前はわかっているな。さすがは名犬トイプーだ」
トイプーは意味も分からずはしゃぎ回っている。
俺がトイプーをじゃらしているとトイプーが酒樽のところへ駆け寄って行った。
そして頻りに匂いを嗅ぎながら酒樽の周りをグルグル回りはじめる。
「おい、トイプー。お前には酒は必要ないだろう。こっちへ戻って来い」
俺の問いかけにトイプーは一瞬こっちを見るが酒樽から離れようとはしなかった。
「カイトとは違ってトイプーにも酒の良さがわかるんだよ」
「犬にわかってたまるかよ」
「それよりお三人方。そろそろはじめるかい?」
シーボルトが気を利かせて酒瓶とグラスを3つ持って来た。
「気が利くじゃないか。そろそろ飲みたいと思っていたところだ」
「ありがとうございます、シーボルトさん」
「ご婦人方の期待に応えられて光栄です」
シーボルトは丁寧にお辞儀をすると酒をグラスに注いで行く。
琥珀色の酒が太陽の光を受けて黄金色に輝いていた。
「くぅ。こいつは染みるな」
「本当に美味しいですわ」
ひとくち酒を口に含むと口の中がまったりとする。
少しトロミのあるお酒で舌に感じる味はほろ苦い。
そして酒を飲み干すと喉が焼けるように熱くなった。
シーボルト曰くウイスキーは船乗り達の聖水だと言う。
ウイスキーは保存性が高く管理もしやすいので航海に向いているらしい。
なので船乗り達はこぞってウイスキーを飲みたがるのだ。
それから1時間。
釣果は全くない。
そればかりかアタリさえ来ないのだ。
「おい、シーボルト。本当に魚がいるのか。全然釣れないぞ」
「潮の流れが変わって来ているから釣れないんだよ。魚ってのは潮目に集まるものなんだ。だから、潮と潮が重なるポイントを狙わないといけない。しかも潮目は常に動いでいるからポイントを見つけるのも大変だ。まあ、俺には『航海術』の力があるけどな」
「なら、そこまで行ってくれよ。全然釣れないんじゃ面白くない」
「そうすると少し遠回りをすることになるぞ。それでもいいのか?」
何もないよりマシだ。
急ぐ旅でもないし多少遠回りしても大丈夫だろう。
エレン達も酔っ払って眠っているようだし。
「頼むよ、シーボルト」
「よし、わかった。北周りのコースをとる」
シーボルトが舵を回して船を北へ向ける。
俺達の航路はヤナックの街からマビジョガ島まで直線で結んだ南東の方角を進んで来た。
片道で6時間もかかる長距離だ。
北へ迂回するルートをとれば余計に30分は時間が伸びるだろう。
まあ、でも、6時間も6時間30分も大した差ではない。
用は無事にマビジョガ島へ辿り着ければいいのだから。
しばらく進むと海の色が変化している場所まで辿り着いた。
北東側は濃い瑠璃色をしていて南西側は薄い紺碧色をしている。
シーボルト曰く、その境目が潮目なのだと言う。
潮目にはプランクトンが多く集まり、プランクトンをエサとする小魚も集まる。
さらに小魚をエサとする大きな魚も集まるので潮目では魚がよく釣れるとのことだ。
シーボルトは潮目をなぞるように船を進めて行く。
潮目も常に動いているので逸れないように舵をとりながら。
「カイト。ここなら大漁間違いなしだ」
「よし、大物を釣るぞ」
俺はエサのつけた釣り糸を海に放り投げる。
すると、すぐにアタリが来た。
「き、来た。アタリだ」
「まだ、引き上げるなよ。しばらく泳がせるんだ」
魚がエサをつついているようで振動が釣り糸を通して伝わって来る。
ビクンと何度も小さなアタリが来て、その度に心臓がドキドキと高鳴っていた。
そして大きなアタリが来る。
「おっ、こいつは大きいアタリだ」
「よし!糸を引いて釣り針を引っかけるんだ」
シーボルトに促されて釣り糸を大きく引っ張る。
すると、ガクンと言う振動が伝わると同時に急に釣り糸が海に引き込まれて行った。
釣り糸はぐんぐんと引っ張られて海中に沈んで行く。
俺は慌てて釣り糸を緩めて魚のするがままにした。
「どんどん釣り糸が引き込まれて行くぞ」
「それでいいんだ。しばらく泳がせて疲れるのを待つんだ」
魚はどんどんと海中の中へ逃げて行く。
魚の方も必死なのだろう。
エサと思って食べたのが釣り針だなんて思ってもみなかったのだから。
釣れるかバレルかは俺と魚の戦いなのだ。
10分ほど経った頃だろうか。
急に釣り糸を引っ張る力が弱まった。
それを確認するなりシーボルトが合図をした。
「よし、カイト。ゆっくりと引き上げろ。あまり強引に引っ張るなよ。釣り糸が切れるかもしれないからな」
「わかった」
俺は綱を引っ張るようにゆっくりと釣り糸を引き上げて行く。
全身の筋力を駆使しながらボートを漕ぐ時のような要領で。
50メートル分は引っ張っただろうか。
海を見やると海中に魚影らしき姿が映った。
大きさで言えば3メートルぐらいになるだろうか。
紺碧の海に銀色の肌が見え隠れしていた。
「カイト、こいつはカジキだ。やったな大物だぞ」
「それより何とかしてくれよ。引きが強くて引っ張り込まれそうだ」
「わかった。俺が銛で仕留めるからもう少し我慢しろ」
「なるべく早く頼むぜ」
シーボルトは銛を掲げて海の中のカジキに狙いを定める。
しかし、カジキはまだ元気がよくて船の周りを行ったり来たりしていた。
「これじゃあ狙えない。カイト、もっと引き上げてくれ」
「そんなの出来るかよ。もうダメだ」
俺は手を緩めて釣り糸を離す。
すると、釣り糸はみるみるうちに海中に引っ張られて行った。
「最初からやり直しだ。5分休憩したらもう一度やるぞ」
「釣りってこんなに大変だったのか」
「だからこそ釣り上げた時の喜びがひとしおなんだよ」
そして5分休憩をとってから再チャレンジをした。
先ほどの要領で釣り糸を引き上げてカジキを海面近くまで追いやる。
一方でシーボルトは銛を掲げてカジキに狙い打つ。
何度目かのトライでお互いの呼吸を合わせることが出来てカジキを仕留めることに成功したのだった。
「ふー。なんとか釣り上げたぞ」
「初めてにしてはよくやった。これでカイトも立派な釣り師だ」
カジキは甲板の上でバタバタと暴れている。
シーボルトはカジキの頭に銛を突きとどめを刺した。
そして重量計にカジキを引っかけて持ち上げた。
俺とシーボルトはカジキを間に挟んで記念撮影をする。
撮影に使った写光機は魔石を加工して造られたものだ。
これもドワーフの技術によって生み出されたもののひとつ。
あまりに高価なものなので一般に普及はしていないが、ゴルドランド王国ではたまに見かける。
「カジキは新鮮なうちに食べるのが一番うまい。捌いてやるからエレン達を起こして来い」
シーボルトは甲板にカジキを寝かせると包丁で捌いて行く。
その間に俺はエレン達を起こすとエレン達は驚きの顔を浮かべていた。
本当に俺が釣ったのか信じられないようで半信半疑な顔をしていた。
「よし、出来たぞ」
「これは何だ?」
「それは刺身って言う漁師飯だ。少し塩を振って食ってみろ。うまいぞ」
俺達は言われるまま塩を振ってカジキの刺身を口に放り込む。
弾力のある触感で塩と相まってカジキの旨味が口いっぱいに広がった。
「こいつは美味い!」
「本当に美味しいですわ」
「酒のつまみになるな」
「だろう。魚は釣り立てが一番うまいんだ」
シーボルトは少し誇らしげに胸を張ってみせる。
さすがにこの鮮度は釣り立てでなければ味わえない。
港にも刺身はあるらしいのだが鮮度で下回っている。
なので漁師達は港の刺身は食べないのだと言う。
「しかし、こんなにもたくさんあったのじゃ食べきれないな」
「残りの切り身は燻して加工するつもりだ。いったん火を通しておけば腐るのを遅らせることが出来るからな」
魚を加工するのにはいくつか方法がある。
ひとつは燻して燻製にする方法。
これは長期保存が出来るし、ある程度鮮度も保たれる。
もうひとつは燻製してから乾燥させる方法。
これは一番長期保存に向いている加工方法だ。
水分が抜けきっているので食べる時はスープなどにして戻す必要がある。
最後のひとつは塩漬けにする方法。
これは新鮮な切り身をそのまま瓶詰するため身が腐ってしまう。
しかし、食べられない腐り方ではないので保存食として好まれている。
ただ、味が個性的なので好き嫌いは別れるのだが。
「頭や鰭からはいい出汁がとれる。今夜にでもスープにしてみよう」
「こんな美味い魚からとれる出汁だ。すごくうまいんだろうな」
「ほっぺが落ちるようなうまさだよ」
「はやく食べてみたいな」
考えるだけで涎が出て来る。
今夜のカジキ料理は楽しみだ。
「よし。それじゃあマビジョガ島へ向けて出航だ!」
シーボルトが舵を大きく切ると南東へ向けて船を進めた。
目指すはマビジョガ島。
噂通りの死の島なのか確かめるためにも俺達は上陸しなければならない。
うまくクエストをこなすことが出来たら銀貨5枚も手に入る。
シーボルトに銀貨1枚渡したとしても残りは銀貨4枚だ。
もちろん稼いだお金は全て虹の家のために使う予定。
少しでも子供達のためになるように応援しなければならないのだ。
南東に進路を向けてから5時間。
太陽は西に傾き紺碧の海が緋色に染まる。
その時間になると少し風も出て来て波を揺らせていた。
「よし、島が見えて来たぞ」
船の前方を見やると島の影が見てとれた。
俺は望遠鏡を覗いてマビジョガ島を見やる。
はるか1㎞先にマビジョガ島の全景が見えた。
島は緑で覆われていて小高い山が聳え立っている。
辺りは白い砂で覆われていて周りの海はエメラルドグリーンに染まっていた。
「マビジョガ島の周辺は浅瀬で覆われているから船は着艦出来ない。だから、沖合に船を停泊させてボートでマビジョガ島に上陸するぞ」
俺達を乗せた船はマビジョガ島から100メートル離れた沖合に停泊する。
そしてボートに荷物を移動させる。
持って行くのは釣り上げたカジキと食料、水、酒だ。
一度には運べないから2度に分けることにした。
「セリーヌは最初に上陸して寝泊まりできそうな場所を探してくれ」
「わかりましたわ」
ボートにカジキと食料とセリーヌとトイプーを乗せてマビジョガ島へ上陸する。
荷物はその場に下ろしてセリーヌとトイプーには寝泊まりする場所を探してもらった。
「残るは水と酒だな」
「酒は私が運ぶ」
そう言ってエレンが酒樽を持ちあげると中でゴロンと音がした。
「何か入っているのか?」
「入っているのは酒だけだ」
「おかしいな。今、物音がしたんだが」
エレンが酒樽を大きく振るとまたゴロンと音がした。
「やっぱり中に何か入っているぞ」
「そんな訳ないんだがな」
シーボルトがいぶかし気な顔を浮かべながら酒樽の蓋を開ける。
すると、中からキルが出て来た。
「おい、子供がいるぞ!」
「キルじゃないか!何でこんなところにいるんだ?」
「俺だってみんなのためになりたかったんだよ」
「これは遊びじゃないんだぞ。わかっているのか?」
「わかっているさ。そのくらい。じゃなきゃこんなところにいないよ」
キルはムスッとした顔でそっぽを向く。
やっぱりこうなったか。
キルが教会を飛び出した時から嫌な予感がしていたんだ。
勢いのままひっぱたいてしまったから余計に心に引っかかっていた。
キルの気持ちがわからない訳でもない。
強くなりたいのはみんな同じなのだから。
そんなことを思っている一方でエレンはひどく狼狽していた。
「何てことをしてくれたんだ、キル。これじゃあ酒が飲めないじゃないか!」
「酒くらいしばらく飲まなくても大丈夫だろう」
「何を言っているんだ、カイト。酒は私にとって血液と同じなんだぞ」
まあ、エレンの血液の中には紛れもなくアルコールが流れているだろう。
血液だけじゃない。
体中の全ての水分がアルコールで出来ていそうだ。
「この落とし前をどうつけるつもりだ、キル」
「落とし前ってな。子供のしたことにそんなに目くじらを立てることもないだろう」
「子供にもしていいこととしてはいけないことがあるんだ。酒を捨てるなんてもっての外だ」
エレンが凄い剣幕で捲くし立てるとキルはおどおどしながら言い訳をする。
「仕方なかったんだよ。隠れるとこは他になかったから」
「仕方ないではすまされないぞ。これは重罪だ。絶対に許せない」
思わずキルは俺の後ろに身を隠した。
エレンもエレンで大人げない。
たかが酒ぐらいで。
エレンはいつも飲み過ぎなんだから禁酒のいい機会になるだろう。
そのきっかけをキルが作ってくれたと思えばありがたいものだ。
「シーボルト。他に酒はないのか?」
「酒はこれだけだ」
「そんな……」
シーボルトの答えに絶望したエレンはガックリと膝を折って倒れ込んだ。
生気の抜けたような顔をして明後日の方向を見ていた。
これでエレンの禁酒生活が決まったな。
しばらくの間は不機嫌でいるだろう。
「さあ、マビジョガ島へ上陸するぞ。いつまでもこうしていたら夜になってしまうからな」
「明るいうちに火熾しと寝床の準備はしておく必要があるぞ」
「そんなのお前達だけでやってくれ。私は何もする気が起きない」
傷心の様子のエレンは力なくそう呟いた。
「よし、キル。お前も手伝え」
「空の樽も運ぶのか?」
「空樽は薪にする予定だ」
酒の入っていた空樽を残しておくとエレンのショックも消えないだろうからな。
薪にでもしてなくなれば少しは気も紛れるだろう。
俺達は空樽とエレンをボートに乗せてマビジョガ島へ上陸した。




