あるある054 「人の試合に文句をつけがち」
トーナメント戦も第八試合ともなると客の入り具合が半端でない。
コロセウムの外には抽選で漏れてしまった観客で溢れかえっていた。
何せ今日は優勝候補のひとりであるジーザスの試合が行われるのだ。
ジーザスに賭けている者はもちろんのこと隠れジーザスファンも集まっている。
あんな冷酷非道なジーザスを好きになる奴の気は知れないが人気もあるのも事実。
エレンもなんやかんやでファンがいるくらい。
そのほとんどがスケベおやじなのだけど。
動機はともかくとして応援してくれるのだから、ありがたく受け取っておこう。
「エレンはこの試合をどう見る?」
「どっちが勝っても私の敵じゃないな」
「そんな強気なことを言っていいのか?ジーザスは優勝候補者のひとりだぞ」
「どんな奴が目の前に立ちはだかろうともぶちのめすだけだからな」
聞くだけ無駄だったか。
脳筋なだけに思慮する頭もないのだろう。
今もジャンクフードをつまみながら尻を掻いている。
「カイトさんはどう見てるんですか?」
「パワーファイターのダイドがどこまでジーザスに食らいつけるかにかかっているだろう。ジーザスの強さは今だによくわからない。特殊能力もスキルも必殺技も何一つ見せていないからな。ジーザスに関する情報はどうだ?」
「全くありませんわ。私の調査力を使ってもこれですから」
セリーヌはまっさらな手帳を見せながら残念そうな顔を浮かべる。
冷酷非道なジーザスを相手にはご自慢の色仕掛けも意味をなさなかったのだろう。
セリーヌの色香に惑わない人間がいるなんて驚きだ。
普通の人間ならばイチコロで落ちてしまうほどセリーヌは女性として魅力的なのだ。
まあ、ただおばさんであることを除いて言えばの話だけれども。
「あの包帯をグルグルに巻いているのがジーザスなのか?」
「そうだ。あいつが首狩りのジーザスだ」
「気持ち悪いな。ニムが怯えている」
お化けでも見たかのようにニムはセリーヌの腕の中で小刻みに震えている。
こんな赤ん坊でさえジーザスの恐ろしさがわかるなんて、それだけジーザスの放つ禍々しい気がそうさせているのだろう。
隣で見ていたキルも膝をガクガクさせながらセリーヌの服を握っていた。
「さあ、トーナメント戦もいよいよ大詰め。トーナメント戦第八試合は首狩りのジーザスVS戦士ダイド戦だ。ジーザスは紛れもない優勝候補者のひとり。それに対するのは剣士フレッグと死闘を繰り広げた戦士ダイド。パワーファイターであるダイドがどこまでジーザスに食らいつけるかが見どころとなるでしょう」
司会者が饒舌な挨拶をすると観客席のムードが高まる。
その声援を受けるようにジーザスとダイドがステージ上で睨みあう。
ジーザスは相変わらず不敵な笑みを浮かべながら大鎌の刃を舌でなめずる。
一方でダイドは腕をグルグル回しながら準備運動をしていた。
「では、トーナメント戦第八試合を行いたいと思います。それでは試合開始!」
会場に銅鑼が響き渡ると観客席から歓声が巻き起こる。
「お前の強さは第三試合で見せてもらった。冷酷非道さは噂通り違わぬようだ。だが、勝ちあがるのは俺だ。お前にはここで負けてもらう」
「キョヒョヒョヒョ。それは面白い。私を楽しませてみろ」
「ぬかせ!」
ダイドは大槌を掲げながらジーザスに向かって突進して行く。
その姿はまるで赤い布に突き進む闘牛のように激しく。
そして大きく大槌を振りかざすと力任せに振り下ろした。
「キョヒョヒョヒョ。遅い遅い」
ジーザスはあっさりと横に移動してダイドの攻撃をかわす。
しかし、ダイドの一撃はステージを粉砕しジーザスの足元も揺るがせていた。
ジーザスはバランスを崩してよろめく。
そこを狙ってダイドの大槌が襲いかかる。
「これでも食らいやがれ!」
ダイドは両足を踏ん張って大槌の軌道を変えると大槌を大きくスイングさせた。
そこには遠心力と大槌の重さが加わりパワーとスピードが加速されて行く。
当たれば快心の一撃となるがジーザスのスピードを持ってすれば避けるのは簡単。
ジーザスはいとも簡単にダイドの攻撃をかわしてみせた。
「キョヒョヒョヒョ。つまらない。まったくつまらないぞ」
「けっ。やっぱり普通の攻撃じゃダメってことだな」
ダイドはすぐさま思考を巡らせる。
自分のスピードとジーザスのスピードには明らかに大きな差がある。
いくら自分が強力な攻撃を放ってもかわされてしまえば意味がない。
だから確実にジーザスに一撃を加える戦術が必要なのだ。
そのためにはまずジーザスの足元を崩すことが必要だ。
いくらジーザスのスピードが速いと言っても空を飛べる訳でもない。
移動するにはステージを蹴らなければならないのだ。
ダイドの特殊能力である『心骨粉砕』を使えばステージは簡単に破壊出来る。
『心骨粉砕』は、対象を粉々に粉砕する能力だ。
それが堅牢な岩だろうが分厚い鉄だろうか粉々に出来る。
しかし、ステージを破壊することは自分の首を絞めることにも繋がる。
ただでさえ大きい体なうえ武器まで重いのだ。
あいにく予選とは違いトーナメント戦はステージ上から落ちても負けにならない。
ならば『心骨粉砕』でステージを破壊する戦術が最善だ。
「お前に見せてやるよ、俺の力を」
「キョヒョヒョヒョ。それは楽しみだ」
「余裕ぶっていられるのも今のうちだ」
ダイドは大槌を振り上げて精神を集中させて行く。
するとダイドの体から覇気がオーラとなって溢れ出す。
その覇気を大槌の一点に集めながらダイドは力を込める。
すべてをこの一撃に賭けるべくして。
そして猪突猛進の如く、ジーザスに向かって突進して行くと『心骨粉砕』を発動させた。
「砕け散れ!」
ダイドの大槌が勢いよく振り下ろされる。
例のごとくジーザスはあっさりと攻撃をかわす。
しかし、ダイドの大槌がステージと接すると接点を中心に無数の亀裂が走る。
そして砂埃を舞い上げるかのようにステージを粉砕して行った。
一瞬にして10メートルほどの大穴がステージ上に出来上がる。
そこはまるで無の空間でもあるかのようにポッカリと抉れていて。
狙い通りジーザスはバランスを崩して倒れ込む。
その隙を狙って次の攻撃をしかける、ダイド。
「これで終わりではないぞ!」
ダイドはジーザスの頭上に飛び上がると大槌を振り上げる。
そして落下するスピードと大槌の重さを合わせて力いっぱい振り下ろす。
同時に『三連打』のスキルを発動させた。
ジーザスは大鎌で攻撃を受け止めるが地面に打ちつけられる。
「キョヒョヒョヒョ。面白い。面白いぞ」
「俺の『三連打』を食らっても、この余裕ぶりかよ。どこまで強いんだ、こいつは」
ダイドに焦りの表情が滲み出す。
計算ではジーザスに大ダメージを与える予定だったからだ。
しかし、実際はジーザスにほとんどダメージはみられない。
そればかりかステージが一部なくなったことで地の利を得たかのような余裕ぶりだ。
身軽なジーザスにとってはステージの有無などさほどの問題でもない。
たとえステージが10㎝四方であってもバランスを崩すことはないのだ。
ダイドの決死の戦術が裏目に出てしまったようだ。
だがわかったこともある。
ジーザスのバランスを崩せば攻撃を受け止めると言うことだ。
一件普通のように聞えるがダイドにとっては大きなことだ。
『心骨粉砕』を操るダイドにとっては大ダメージを与える機会が生まれると言うことを意味する。
一撃目の『心骨粉砕』でジーザスの足元を崩し、二撃目の『心骨粉砕』でジーザスに大ダメージを与える。
そうすれば確実に仕留められるはずだ。
ダイドは大槌の柄を握りしめ上段の構えをとる。
「お前の強さはわかった。だが、俺の強さはそれ以上だ」
ダイドは再び精神を集中させて覇気を練り上げて行く。
今度こそ確実に仕留めるためにより力を込める。
その様子を観察しながらジーザスは余裕気な笑みを浮かべる。
「キョヒョヒョヒョ。もっと私を楽しませろ」
そのジーザスの余裕気な態度が余計に癪に触っていた。
端から相手にされていないような敵として認めていないような、その態度が。
ダイドは正々堂々と戦うファイターだ。
だからこそ相手に誠意を見せるため全力で戦う。
それが戦いにおいてのマナーだと心得ている。
故に今のジーザスの態度は許せないものがあった。
だが、その程度で心を乱すほどダイドは愚かではない。
ジーザスにわからせるためにも、この勝負は勝つ必要があるのだ。
「行くぞ!」
ダイドは再び猪突猛進の如く、ジーザスに向かって行く。
一撃目はフェイントで二撃目で仕留める。
そのことを念頭に大槌を振り下ろした。
ステージは砂埃を巻き上げながら粉砕されて行く。
その砂埃を避けるようにジーザスが大きく横に飛びのく。
それを追撃するように大槌を大きくスイングさせる、ダイド。
しかし、ジーザスはバランスを崩すことなくステージ上に立っていた。
「それでも!」
ダイドは二撃めの『心骨粉砕』を発動させてジーザスを追撃する。
すると、何を考えたのかジーザスは大鎌でダイドの攻撃を受け止めた。
空気を振動させるような細かな衝撃波が波となってジーザスに襲いかかる。
「グハッ」
思わず吐血をする、ジーザス。
それでも膝を折ることなく仁王立ちしていた。
「何てやつだ。俺の『心骨粉砕』を受けても立っていられるとは……」
今の攻撃は直撃と言ってもいいほど確実に入った。
ならば確実にジーザスの体の内部は粉砕されているはず。
それなのに立っていられるのは驚き以外、何ものでもない。
『心骨粉砕』は確実に対象を粉々に出来る能力だ。
それを越えて来るなんて人間技じゃない。
「キョヒョヒョヒョ。面白い。実に面白いぞ」
ジーザスは口から溢れ出した血を手で拭うと血をぺろりと舐めた。
その様子に身震いを覚えたのはダイドだけでない。
観客席にいる観戦客も試合を見守っている俺達もだ。
キルに至っては青い顔をしながら油汗を流している。
「おい、キル。大丈夫か?」
「う、うん。なんとか」
それでもキルの膝はガクガクと震えている。
「それにしてもジーザスの奴、ダイドの攻撃をまともに食らったはずなのにあの余裕ぶりはどうなんだ」
「あんなのぜんぜん攻撃のうちに入らない。茶番を見せられているかのようだ。もっと真面目にやれ!」
「随分と余裕があるじゃないか、エレン。決勝戦ではどちらかと戦うことになるんだぞ」
「誰が上がって来ても勝つのは私だ」
この自信がどこから湧いて来るのかわからない。
シド戦でも苦労していた癖にも関わらず。
今だ自惚れていることが信じられないくらいだ。
「お前の性格が羨ましいよ」
エレンは鼻を高くして得意気な態度を見せる。
この余裕がどこまで続くのか見物だ。
決勝戦でコテンパンにやられてしまうことを期待しながら。
これで一気にジーザスの流れとなる。
ダイドの決死の戦術が功を奏さなかったのは痛い誤算だ。
『心骨粉砕』を持ってしてもジーザスの膝を折ることができないとは予想もしていなかったことだ。
「これでは打つ手がないじゃないか……」
再びダイドが焦りの表情を浮かべる。
『心骨粉砕』はダイドの奥の手でもあった。
それがまったく効かないなんて普通ではある訳がないのだ。
残された手段は特殊能力とスキル、必殺技の合わせ技。
しかし、普通に攻撃してもジーザスのスピードには着いて行かれない。
とりわけダイドのスキルや必殺技はパワータイプの攻撃なのでスピードには弱い欠点がある。
それを補うための新たな戦術が必要だ。
まずは基本に立ち返りジーザスの動きを止めることから考える。
それには『心骨粉砕』で足元のステージを破壊することが一番だが、その手は既に読まれてしまっている。
再び同じ作戦をとったところで逆に先手をとられてしまうのがオチだ。
ならば下手な小細工はせずに正々堂々と立ち向かうのがいいだろう。
と言うよりも、その戦い方がダイドには合っているのだ。
ゴルドランドの戦士になった以上、真っ向勝負を挑む。
それが戦士として誉と言うべきものだと考えているからだ。
ダイドは気持ちを取り直して大槌を構える。
「下手な小細工はしない。力でお前をねじ伏せてやるぜ」
「キョヒョヒョヒョ。もっと私を楽しませろ」
「思う存分、楽しませてやるよ!」
ダイドは大槌を振り上げジーザスの頭上高く飛び上がる。
そして落下のスピードを合わせながら大槌を勢いよく振り下ろした。
「食らいやがれ!『岩石落とし!』」
ジーザスは素早く横に移動して攻撃をかわす。
「キョヒョヒョヒョ。当たらなければどうと言うこともない」
ダイドはすかさず大槌をスイングさせて次の攻撃に転じる。
ジーザスの横腹を掠め取るように大槌を振り払い、同時に『三連打』を発動させる。
ジーザスは上空高く舞い上がりダイドの攻撃をさらりとかわす。
そして上空で一回転してダイドの背後に回り込んだ。
「キョヒョヒョヒョ。つまらない。実につまらないぞ」
「ちぃ」
ダイドは振り向きざまに。
ジーザスの振り回した大鎌の直撃を受ける。
そしてダイドの体に十字の傷口が広がり。
真っ赤な鮮血を吹き出しながらステージ上に投げ出された。
「くぅぅぅ……この程度で」
ダイドは大槌を杖代わりにしながら立ち上がる。
さすがに簡単には勝たしてはくれないようだ。
だが、ジーザスの動きが一呼吸遅れていることに気づけた。
おそらく『心骨粉砕』のダメージが効いているからだろう。
平然を保っていて何事もないように振る舞っているが、体は正直だ。
これならダイドにもまだ勝機は残されている。
それがたとえ1割だとしても勝機があるならば戦うまで。
「行くぞ!」
そんなダイドの決死の覚悟が功を奏することはなかった。
ジーザスの追撃を受けてズタボロなまでに打ち倒されてしまう。
体中にはジーザスの斬撃の痕が残り、血まみれになっていた。
そしてジーザスは例のごとくダイドの半殺しにしてから拷問を加える。
大鎌の柄でダイドの傷口を広げて抉り出す。
「ぐわぁぁぁぁぁ!」
ダイドの空を割るようなうめき声が会場を包み込む。
その度に観客先から悲鳴とどよめきが湧き起った。
その光景は死神が死体を貪るかのような凄惨さ。
見ているこっちが嗚咽を覚えるぐらいだ。
「キルさん。見てはいけません」
セリーヌは慌ててキルを後ろに隠す。
しかし、キルは意外にも冷静な目でその光景を眺めていた。
それは自分達がこれまで奴隷商人に暴行を振るわれて来たからだろう。
「止めて」と叫んでも止めてはくれない。
そればかりか暴行が激しくなるばかりだった。
暴行を加えている者はキル達の叫び声に興奮して、さらに加速させる。
そんな酷い仕打ちを幼いころから味わって来たのだ。
「このくらい大丈夫だよ。それよりもニムは泣いていない?」
「ニムさんはお休みになられていますわ」
この環境の中で眠れるニムの心も座っている。
普通なら大人達の不安を敏感に感じ取って泣き叫ぶものなのだが。
これもこれまでの苦労がそうさせてしまったのだろう。
「これは私の趣味じゃないな」
「誰の趣味でもないさ。ただの拷問だしな」
「これであいつの勝ちが決まったな」
予想はしていたが厄介な相手が勝ち上がったものだ。
これで決勝戦の行方はますますわからなくなって来たと言うもの。
ガイアは間違いなく勝ちあがるだろうから決勝戦はエレンVSジーザスVSガイアになることは間違いない。
誰が勝ってもおかしくない面々が揃っているがエレンには勝ってもらわないといけない。
そのためにもジーザス対策は考えておかないと。
ダイドは奥歯を噛み締めて必死に痛みに耐えていた。
ここで白旗を挙げて降参してしまえば拷問から解放される。
しかし、戦士としての意地がそうさせてはくれなかった。
負けとわかっていても力ある限り戦う。
それがダイドの信じて来た戦士道なのだと。
「負けるかよ……」
「キョヒョヒョヒョ。もっと私を楽しませろ」
「ぐわぁぁぁぁ!」
ジーザスは不気味な笑みを浮かべながらダイドの傷口を広げる。
その血の通っていない冷酷な瞳に映るのは痛みに悶え苦しむダイドの姿。
顔をしわくちゃにさせて必死に痛みに耐えている。
その様子にさらに興奮するジーザス。
大鎌の柄を突き立てながら何度もダイドの傷口を抉る。
「お、お前の……望は何だ?」
「キョヒョヒョヒョ。教えてやろう。私は死神になるのだ。これはそのための儀式だ」
「くぅぅぅ……お前は十分に死神だ」
「キョヒョヒョヒョ。嬉しいことを言うじゃないか。褒美をやらねばな」
「ぐわぁぁぁぁぁ!」
ジーザスは手を止めることなくダイドの傷口を抉る。
その度にダイドの傷口から鮮血が溢れ出した。
次第にダイドの意識は遠のいて行く。
出血して血圧が下がったようで体も重く感じはじめる。
その中でも痛みだけは鮮明でダイドを苦しめた。
これで終わる。
そんな絶望感がダイドを覆い尽す。
残された希望も力も残っていない。
ただジーザスの拷問に耐えるだけの意地しかないのだ。
本来であれば笑っているのはダイドだったはず。
それなのにこんなにもこっ酷く負けるなんて戦士としての名折れだ。
力の差は歴然であったがせめて片腕ぐらいは捥ぎ取りたかった。
倒されてもただでは転ばない。
それがダイドの信じる戦士の在り方なのだ。
「お、俺は……負け……ない」
ここに来て血圧が一気に下がりダイドは気を失ってしまった。
すると司会者が審判に促してダイドの様子を確かめさせる。
審判はダイドの脈を測ったり瞳孔を確かめたりしながら状況を確認する。
そして首を大きく横に振り司会者に合図を送った。
「戦士ダイドの戦闘不能を確認しました。よってトーナメント戦第八試合の勝者は首狩りのジーザス!」
司会者が高らかに勝利を宣言すると遅れて会場から歓声が湧き起る。
さっきまでのジーザスの凄惨な拷問を目の当たりにしていたから誰もが固唾を飲んでいたのだ。
その緊張が解けて会場に活気が戻る。
ジーザスは不満げな顔を浮かべながらステージを後にする。
もっと拷問をしていたかったような雰囲気だ。
ダイドは担架に乗せられて救急医療センターへ運ばれて行った。
「しかしつまらない試合だったな。退屈で欠伸が出るよ」
「お前は血も涙もない奴だな。ダイドがあれだけ苦しめられたんだぞ。何も思わないのか」
「強い奴が勝つ。それが試合だ」
エレンにしてはまっとうな答えを言う。
だが、人としてはいかがなものか。
普通の感性を持っている人間ならばジーザスの行為は許せないはずだ。
俺でも怒りが生まれたぐらいだ。
しかし、エレンにはそんなことは関係ないようだ。
勝てば何でも正義になると言わんばかりの態度。
それは戦争を起こす者が考えそうなことでもある。
強者はいつも弱者の上に立つ。
それが世の中の摂理とも言わんばかりに捉えて。
この強気とも思える発言が裏目に出ないことを祈りたい。
次は黒騎士ガイア戦。
じっくり観察して対策を考えよう。
俺は心の中で小さく呟いたのだった。




