あるある052 「隠し子を連れていがち」
4日目の朝になってエレンはふらっと戻って来た。
しかも幼い子供を二人も連れて。
その内のひとりは乳飲み子だ。
もしかしてエレンの隠し子じゃないだろうな。
俺は疑いの眼差しでエレンを見やる。
「おい、エレン。これはどう言うことなんだ?」
「紹介するよ。こいつはキル。この赤ん坊がニムだ」
「俺はそんなことを聞いているんじゃない。どうして子供といっしょにいるんだ?」
「奴隷商人に捕まったところをキル達に助けてもらったんだ」
俺の不安が的中した。
またもめ事を持ち込んで来るのだから、おばさんの自由奔放さには呆れる。
もっと静かにしていることは出来ないのかとツッコミを入れたくなる。
俺達は今コロセウムに出場しているのだから、もっと行動を慎んでもらいたい。
「で、そいつらをどうするつもりなんだ?」
「もちろん保護するんだよ」
「保護ってな。俺達はボランティアをやっている訳じゃないんだぞ。それに今はコロセウム中だ。余計な揉め事は困る」
俺がきっぱりと断るとキルの顔色が暗く沈む。
「カイトさん、何も頭ごなしに否定しなくてもいいのではないでしょうか。キルさん達もまだ子供ですし」
「そう言うけどな、セリーヌ。俺達は冒険者なんだぞ。子供を連れて冒険なんか出来ると思っているのか?」
「それはそうですけれど……」
俺がまっとうな答えを示すとセリーヌも口を噤んだ。
ここで甘やかしてはおばさん達の身にもならない。
ダメなものはダメとはっきり示さないとつけあがるだけだからな。
すると、エレンが話に割って入って来た。
「カイトも玉の小さい奴だな。ガキの一人や二人いたって構わないだろう」
「ガキの一人や二人って言ったってな一人は乳飲み子なんだぞ。赤ん坊の世話でもするつもりか?」
「もちろんそうだ」
「おいおい、はっきり言うんじゃねーよ。赤ん坊の面倒をみることがどんなに大変なことかわかって言っているのか。おむつは変えなくちゃいけないし、おっぱいもあげなくちゃいけない。それに夜泣きだってするんだぞ」
「そんなの私は経験済みだ」
「経験済みだって言っても、それが原因で旦那と別れたんだろ」
俺の鋭いツッコミにあたふたしながらエレンが言い返す。
「ラルツと別れたのはソリが合わなかったたけだ。けっしてニケの面倒をみるのが嫌になった訳じゃない」
どうだかな。
エレンは根っからの冒険者体質だ。
それが子供の面倒をみるなんて信じられない。
一度逃げ出した人間はまた逃げ出すものだ。
ここでこいつらを引き取っても後で困るのは目に見えている。
ここは甘やかさずにきっぱりと断るべきだ。
「子供は教会に預けに行くぞ」
「教会に預けたってキル達が幸せになれるとは限らないだろう」
「幸せになるかなれるかの問題じゃない。俺達には荷が重いって言っているんだ」
俺が怖い形相でエレンを睨みつけるとニムがぐずり出す。
「おい、お前。そんな怖い顔をするなよ。ニムが怖がるだろう」
「年上の俺に向かってお前とは何だ。最近のガキは躾がなっていないな」
「それはカイトだって同じだろう。いつも私達のことをお前呼ばわりしているじゃないか」
「俺はいいんだ。なんて言ったってリーダーだからな」
勝ち誇ったように俺が前に出るとニムが泣きだした。
「カイトさん、ニムさんを怖がらせないでください。泣き出しちゃったじゃありませんか」
「泣くのは赤ん坊の仕事だから別にいいんだ」
「ニムさん泣かないでください。お姉さんがついていますからね」
セリーヌはニムを抱きかかえてあやしながら泣き止ませる。
お姉さんって玉かよ。
おばさんじゃないか。
しかも、子供を抱えていると親子のように見える。
普通ならセリーヌにこれくらいの赤ん坊がいても不思議ではないのだから。
「なかなか泣き止みませんね」
「ニムはお腹が空いているんだよ」
「おっぱいが欲しいんですか。でも、私は出ませんわね」
「そんなに大きなおっぱいをしていてもか?」て言うぐらいにキルがセリーヌの胸を見つめる。
その視線に気づいたセリーヌは顔を赤らめながら胸を覆い隠した。
「おっぱいは子供を産まないと出ないものなんです。大きいからと言って出るものではありません」
「なら、私の出番だな」
エレンはセリーヌからニムを預かるといきなりブラを外して胸を出す。
俺とキルは放心状態になりながら、その様子を眺めていた。
「カイトさんとキルさんはあっちへ行っていてください」
「何でだよ?」
「エレンさんがおっぱいをあげるんですよ。男の人が見ていいものじゃありません」
「別に私は構わないぞ。カイトも欲しいならやるぞ」
「な、何を言っていやがる。俺はそんなにガキじゃない!」
エレンの羞恥心のない言葉に顔を真っ赤にさせながらそっぽを向く、俺。
赤ん坊がおっぱいを飲むところなんて見ても仕方がない。
だけど、ちょっとだけ気になる。
俺がひとりスケベそうな顔をしているとキルがツッコんで来た。
「おい、お前。外に行くぞ」
「お前じゃねえ。カイトさまと呼べ」
「なら、カイト。外に行くぞ」
「それならお二人でトイプーちゃんを散歩させて来てください」
トイプーは久しぶりの登場だな。
すっかり忘れていたよ。
俺達がコロセウムで観戦していた時もトイプーはちゃんといた。
セリーヌがいつも抱きかかえているから登場のチャンスはなかっただけだ。
トイプーはこれみとがしに尻尾を激しく振って嬉しそうにする。
俺とキルはセリーヌの言うままトイプーを散歩させに出掛けた。
奴隷商人に出くわしたことを考えて俺達は大通りを歩いていた。
人目が多ければ奴隷商人達も迂闊に手は出せないだろうから。
いわば市民を監視カメラ代わりにしたのだ。
「で、お前は何で奴隷商人なんかに捕まったんだ?」
「俺が生まれた時は両親はいっしょだった。だけど喧嘩が絶えなくてさ。ニムが生まれたことをきっかけに両親が分かれて俺達は放り出されたのさ」
「普通、どちらかの親が引き取るだろう」
「家は貧しかったからな。子供を食わせて行くだけのお金がなかったんだ」
薄情な連中だ。
普通ならば自分の子供がかわいくて仕方ないはずだろう。
俺の両親も俺のことを大切に育ててくれた。
けっして裕福と言った訳でもないけれど。
それが子供を奴隷商人に売り渡すなんて普通の神経じゃない。
「両親のことを恨んでいるのか?」
「恨んだってお腹は膨れないよ。けれど、ちょっぴり寂しい」
それが子供の正直な本音だろう。
親がどんなにも非情な人物であっても子供は親を求めるものなのだ。
この世界では奴隷になっている子供はたくさんいる。
死ぬまでこき使われて使えなくなったら放り捨てられる。
まるで子犬を捨てるかのようにな。
奴隷問題はどの国でも問題となっている。
だけれど決め手の欠ける方針ばかりで役に立っていない。
それは政策を決めている政治家達が奴隷をこき使っているからだ。
子供は働き手として、女は娼婦として、男は兵士として。
国の下支えをしているのは奴隷と言っても他ならないのだ。
「お前も苦労をして来たんだな」
「それよりも俺達を連れて行ってくれよ。役に立つからさ」
「それは出来ないお願いだな。冒険ってのは危険なんだ。いつ命を落としてもおかしくはない危険なことなんだ」
「そんな覚悟ぐらい当の昔に出来ているよ。お願いだから連れて行ってくれ。でないと俺達はまた奴隷にさせられる」
キルは泣きすがるように俺に懇願をして来る。
ここできっぱりと断ることが正解なのだろうけれど、背景を知った今となっては答えが憚られる。
突き放すことは簡単だけれど、俺の中の良心がそうはさせてくれない。
「少しだけ考える時間をくれ」
「どれだけ待てばいいんだ?」
「コロセウムが終わるまでだ」
コロセウムが終われば俺達は旅に出る。
その時までに答えを出せばいい。
今は決断よりも考えることが必要だ。
じっくりと向き合って明確な答えを出すんだ。
それが俺達の未来にとって必要なことだから。
「なら、それまではいっしょにいてもいいんだな?」
「ああ、飯の心配もしなくていいぞ」
「やったー!」
こんなに素直な反応を返してくれるなんて新鮮だ。
いつもおばさんの相手をして来たから余計に実感する。
こうして嬉しそうにしているキルを見ていると情が湧いて来るな。
俺はひとりっ子だったから兄弟がいることに憧れた。
その夢が今、叶っているかのようだ。
弟を持つと言うことはこんな感じなのだろう。
歯がゆいと言うかくすぐったいと言うか。
俺はいつになくキル達との出会いに嬉しさを覚えていた。
宿屋へ戻るとエレンは授乳を終えた後だった。
ニムはベッドに寝かしつけられてスヤスヤと小さな寝息を立てている。
その寝顔に癒されるのは俺だけじゃないだろう。
「カイトさん、そんなに近寄らないでください。今、眠ったところなんですから」
「悪い悪い。あまりにカワイイ寝顔だからつい」
「ニムは一度眠ったら中々起きないよ。夜泣きも少ない方だし面倒をみるのが楽だよ」
キルはニムの頭をそっと撫でながら褒める。
「それで話はまとまったのか?」
「話って?」
「キル達をいっしょに連れて行くことだよ」
「それはコロセウムが終わるまで待ってもらうことにした」
「まだ迷っているのか、カイト。キル達を見捨てるつもりなのか?」
「見捨てるだなんて人聞きの悪いことを言うな。俺はリーダーとしてキル達が一番幸せになれる方法を考えているんだ」
一番、優先しなければならないことはキル達の安全だ。
確かに俺達といっしょにいれば守ってやることも出来る。
だが、それはキル達を危険な冒険に連れて行くことを意味する。
今はまだ、エレン達より強いモンスターに出会っていないが、これから先はわからない。
世の中にはエレン達よりも強いモンスターが溢れているのだ。
「一番幸せになれる方法ね。カイトは結局のところ自分を優先しているだけだろう」
「それはどう言う意味だ!」
「カイトは勇者になりたいから少しでも早くレベルを上げたいのだろう。だけど、キル達がいたままじゃ足手まといになる。だから、キル達を追い出そうとしているだけだ」
そのエレンの指摘は全く的を射ていなかったとは言えない。
確かに俺は勇者を志望している。
しかし、これまでに旅を続けて来たが一向にレベルが上がらない。
それは自分よりも強いモンスターとばかり出会うからだ。
エレン達の強さにかこつけて戦って来なかったから今があるのだ。
その反省は今後に生かさなければならない。
「反論も出来ないことがいい証拠だ」
「エレンさん、何もそんな言い方をしなくても。カイトさんは私達のリーダーとして頑張って来ましたわ。少しは認めてあげませんと」
「いいんだよ、セリーヌ。エレンの言っていることは間違いじゃない」
「やけに素直じゃないか」
言い返してこない俺を見てエレンは驚きの顔を浮かべる。
「でもな、こうしてここにいられるもの俺のおかげだと言うことは間違いない。お前達だったらこうもまとまっていないはずだ。今頃バラバラになって一人寂しく冒険をしていたはずだ」
「そ、それは……」
俺の鋭い指摘にエレンは口籠る。
助け舟を渡してもらうようにセリーヌに視線を向ける。
すると、キルが間に割って入った。
「仲間割れをするならいいよ。俺とニムは二人で行くから」
「何を言っているんだ、キル。ニムと二人でいたらまた奴隷商人に捕まるだけだぞ」
「だってしょうがないじゃないか。お前達が仲間割れをしてるんだから」
「キルさんに一本とられましたね。カイトさんもエレンさんも仲直りをしてください」
俺とエレンはバツが悪そうな顔をしながらお互いに見やる。
そしてセリーヌにせかされるまま握手をして仲直りをした。
「これで二人は仲直り出来ました。キルさんも心配しなくて大丈夫ですわ」
キルはいぶかし気な様子で俺とエレンの顔色を窺う。
こう言うところが子供らしいと言えば子供らしい。
子供と言うものは大人の顔色を窺うものだ。
大人が怒っているのか笑っているのかで自分の気持ちを確かめる。
それが故に大人達は子供のことを考えた行動をしなければならない。
大人達がどうあるかによって子供達は大きく影響を受けるのだから。
「それじゃあ飯にでもするか」
「おとといからロクなものを食べて来なかったからな。今日はたらふく食べるぞ」
「それじゃあ大衆食堂へ行きましょう。キルさんはここでトイプーちゃんといっしょにお留守番をしていてください。私達が料理をテイクアウトして来ますから」
「わかったよ」
そう言ってキルはトイプーを抱きかかえる。
人懐っこいトイプーの性格なのか尻尾を振って喜んでいた。
そしていつものようにメニュー表の一ページ分をまるまる注文する。
料金はツケにしてあるので宿屋のミト婆さんが立て替えてくれる。
まあ、そのツケも後で払わなければならないのだけれど。
「戻ったぞ」
大量の料理を持って来た俺達を見てキルは目を丸くしている。
それも無理はない。
持って来た料理は10人前もあるのだから。
そのほとんどがエレンのお腹に消えて行く。
キルはこれから信じられない光景を目にすることだろう。
料理をテーブルの上に並べるが全ては乗り切らない。
それでもキルは目を輝かせながら涎を垂らしていた。
「これを本当に食べていいのか?」
「ああ、いいぞ。好きなだけ食べろ」
「俺、こんな料理を見るのははじめてだ」
ただの大衆食堂の料理にさえ驚くのは、それまでキルがお粗末な食事しかとって来なかったからだろう。
奴隷の食事だ。
野良犬が貪るようなお粗末な物しか与えられない。
それは奴隷が人間ではなく野良犬と同等だと思われているからだ。
キルはがっつくように鶏肉に貪りつく。
その姿はまるで腹を空かせた野良犬が死肉に貪りつくかのような様。
食べ方に品がないのは奴隷として育って来たからだろう。
俺達といっしょにいる間にちゃんとしたマナーは身に着けさせておきたいところだ。
いつ社会に出ても恥ずかしくないようにな。
「じゃ、俺達も食べるか」
「いただきます」
エレンはキルと同じように鶏肉に被りつく。
腹が減っているのはわかるが、これではお手本にならない。
エレンにもちゃんと後で説明しておこう。
「それで試合の方はどうだったんだ?」
「白熱した試合が展開されていましたわ。みなさん持てる力を出し切って戦っていましたわ」
「ふ~ん。そうか。モグモグ」
「あまり興味なさそうだな」
「私は自分よりも強い奴のことしか興味ないからな。で、あの黒騎士はどうだった?」
「圧倒的な力の差を見せつけましたわ。槍使いのランスさんが全力でぶつかって行っても敵いませんでした」
「ふ~ん。モグモグ」
エレンは手を止めることなく料理を口に運ぶ。
「なら、決勝戦が面白くなりそうだな」
「それよりも前にシドを倒さなくちゃいけないんだぞ。勝てる見込みがあるのか?」
「シドってあのジイさんか。あいつも確かに強いが私の敵じゃないな」
「本気で言っているのか?シドには『颯刃』があるんだぞ」
エレンは興味なさそうに俺を見やる。
その余裕がどこから出て来るのか不思議だ。
シドは老人と言えども達人クラスの戦士だ。
そう簡単に勝ち上がれる相手じゃない。
ここは作戦を練っておく必要がある。
「シドは常に『颯刃』を使って来るタイプの戦士だ。それは自分の特殊能力に絶対的な自信があるからだろう。だが、裏を返せばそれしか使って来ないとも言える。だからあの『颯刃』さえ攻略すればこちらにも勝機が生まれる」
「何だよ、またカイトお得意の作戦か。作戦なんてものはな必要でないんだよ。戦いってのは体で覚えるものだ」
「それが通じるのは自分より弱い奴が相手の時だけだ。シドは明らかに強いんだぞ」
「強い?本当に強いってのは私みたいな人間のことを言うんだよ」
ここまで言ってもきかないエレンにはお手上げだ。
自分の強さに自信があるからなのだろうが、それは自惚れでもある。
強さの背景には、それを裏付ける経験があるものだ。
確かにエレンはこれまでに出会った敵と戦って来た。
だがそれはあくまでエレンよりも圧倒的に弱かった。
それは経験としては勘定出来ないだろう。
それにモンスターの強さと人間の強さには隔たりがあるものだ。
モンスターと言えば自分の持っている力に頼る戦い方をする。
例えば鋭い牙を持っていれば牙を、猛毒を持っていれば毒をと言う具合にだ。
しかし、人間は心・技・体を中心にした戦い方を好むものだ。
中でも心の強化は欠くことが出来ない。
恐怖で心を折られてしまえば本来の力を発揮できなくなるからだ。
逆を言えば相手の心さえ折ることが出来ると勝利は掴めると言うこと。
だから戦士達は圧倒的な力の差を示して戦いたがるのだ。
「エレンに足りないのは戦術だな」
「ふん。そんなものがなくったっていくらでも戦えるんだよ」
「そこまで言うならシド戦でそれを証明してみせろよ」
「いいだろう。5分で決着をつけてやる」
「言ったな。今のはメモしておくからな。もし、5分以上かかったら俺の作戦を取り入れろよ」
「あんなジイさん。5分で十分だ」
これで俺の思惑通りになった。
エレンは単純な奴だからふっかければ乗って来ると思ったのだ。
俺の見る限りシドを5分で倒すことは無理だろう。
手のうちが明らかになっているが、あの『颯刃』は強力だ。
瞬間的に衝撃波を発動させることが出来るし、遠近両方に対応できている。
それはある意味、死角がないとも言える。
さすがのエレンでも苦戦を強いられるはずだ。
「お前って本当に強かったんだな」
「あったり前だろ。私が負ける訳ないのだからな」
「でも、コロセウムって世界の名だたる戦士が集まるところだろう。そんな強気で大丈夫なのか?」
「戦いってのはな。心の持ちようなんだよ。だから、絶対、勝つって思っていれば勝てるんだ」
「ふ~ん。そんなものなのか」
キルは感心したような顔でエレンを羨望する。
「キル。話は半分で聞いておけよ。エレンのはただの自惚れなんだから」
「言っておけ」
「それよりもこの料理を全部食べたことの方が驚きだな。そんな細いお腹にどれだけ入ったんだ?」
「このくらい食べないと強くはなれないからな。カイトを見てみろ。ほっそい腕をしているだろう」
「俺を引き合いに出すんじゃねー。お前の食欲は異常なだけだ」
エレンのお腹はぷっくりと丸く膨れている。
いつもながら関心するばかりである。
食欲だけ見れば像といい勝負だ。
まあ、それだけの働きをすれば目をつぶることも出来るのだが。
ツケを払う上でも何としてもエレンに優勝してもらわなければならない。
でなければ俺達は借金まみれに陥ってしまう。
もう、既に金貨4枚分は消費しているのだから。
あと残りの日数を考えると目を塞ぎたくなる。
メンバーも増えたことだし出費がかさむ。
俺がひとり予想を立てながら震えているとキルが声をかけて来た。
「カイト、随分と顔色が悪いじゃないか。変な物でも食ったのか?」
「そんな訳あるか。それと言っておくが俺のことはカイトさまと呼べ」
「何でさまをつけなければならないんだよ、カイト」
「それは俺がリーダーだからだ」
リーダーと言うものはみんなから尊敬されていなければならない。
リーダーシップを発揮してチームを引っ張って行くのが仕事だから余計にな。
ただ、ここにいる面々はまるでそのことがわかっていない。
自分勝手な行動をするし、言うことを聞かないしで。
それはキル達のお手本としては不十分だ。
キル達に道理を教える意味でもお手本になるような行動をとってもらわないといけない。
「俺がリーダーなんだ。そのことをわきまえておけよ。とりわけエレンはちゃんと聞いておけ」
「また、カイトの説教かよ。これがはじまると長いんだよな」
「仕方ありませんわ。カイトさんはカイトさんなりにみなさんのことを考えているのですから」
俺はブツクサ文句を垂れるおばさんを相手に説教をした。
キルはすぐに興味をなくしたようでニムと一緒に先に休んだ。
エレンも飽きれた様子で欠伸をしながら説教を聞いている。
そもそも、そう言う態度がイケないんだ。
人が真面目に話をしているのに聞く耳を持たない姿勢が人としてダメだ。
おばさんという生き物は反省もしなければ人の話も聞かない。
だからいつまで経っても成長出来ないのだ。
人間としての成熟は自ら望まないと達成できない。
だからいつも謙虚な姿勢でいることが大切なのだ。
なのにおばさんはわかろうとはしない。
俺はエレンの耳にタコが出来るまで延々と説教を垂れたのだった。




