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おばさんクエスト~あるあるだらけの冒険記~  作者: ぱんちゅう
第二章 激闘するおばさん編
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あるある047 「大事な時に遅刻しがち」

トーナメント戦第二試合のエレンVSゲルト戦は午後に組まれた。

第二試合目と言うこともあり会場のボルテージが上がっている。

割れんばかりの歓声の中、司会者が進行をはじめる。


「さあ、お待たせしました。いよいよトーナメント戦第二試合のはじまりです。それでは入場してもらいましょう!」


司会者の合図で東と西の登場門が開かれる。

すると、西門からゲルトが歓声に応えながら入場して来た。

素行の悪いゲルトだったがオッズは高いようで、それなりに人気がある。

ゲルトを応援している観客のほとんどは賭けをした者達ばかりだ。


「何で、あんな人に歓声を送るのでしょうね。気が知れませんわ」

「みんな金のために応援しているだけさ」


でなきゃ、あのハゲおやじに人気が集まるなんてあり得ないからな。


「それにしてもエレンはどうしたんだ?ぜんぜん入場して来ないじゃないか?」


東の登場門に視線を向けるが人影すら見えない。


「道にでも迷ってしまったのでしょうか?」

「迷うほどの複雑な建物じゃないぞ、コロセウムは」


コロセウムの造りは至って簡素。

中央にステージがありそれを取り囲むように観客席が並ぶ。

その下に通路が走っていて各登場門に繋がっている。

だから迷うなんてことはあり得ないのだ。


「エレンの奴。まだ二日酔いで寝ているんじゃないだろうな」

「それはあるかもしれませんね。あれから3時間しか経っていませんし」


二日酔いの薬は30分ほどで効果が出るタイプ。

なので薬を飲む前よりも良くなっているはずなのだが。

もしかして、薬が効き過ぎて眠ってしまったんじゃないだろうな。

大抵の薬には睡眠作用があるものが含まれているらしいから。


ステージ上では歓声に応えるゲルトが大手を振っている。

そして東の登場口を睨みつけながらエレンの入場を待った。

しかし、一向にエレンが姿を現さない。

すると、会場がざわつきはじめる。


「これはどう言うことでしょうか。戦士ゲルトの対戦相手になる剣士エレンが出て来ません。これはゲルトを怒らせるための演出でしょうか」

「俺に怖気づいて逃げやがったのか。だろうな。俺ははっきり言って強いからな。ガハハハ」


ゲルトはエレンを馬鹿にしてひとり大笑いをする。


「こういう場合、どうなるんだ?エレンは失格になるのか?」

「そう言うことになるでしょうね。エレンさんは失格であの方の勝ちとなるはずです」

「それはマズイ。何としてでもエレンに出場させなくては。俺、エレンを呼びに行って来る。セリーヌは司会者に事情を説明して出来るだけ時間を引っ張ってくれ」

「わかりましたわ」


俺は急いでエレンのいる宿屋へ向かう。

セリーヌは事情を説明するためステージへ向かった。


だから言ったんだ。

明日は試合があるから飲むなって。

だけど、エレンの奴、グスタフが用意してくれた酒をたらふく飲みやがって。

いくらタダだからと言って浴びるように飲むなんて無茶もいいところだ。

グスタフもグスタフだ。

エレンが大の酒好きだからと知って上物の酒ばかりよこした。

上物の酒はアルコール度数が高いからすぐに酔っ払ってしまう。

いつもそれで二日酔いになっているだろから。

少しは学習しろってんだ。


「おい、エレン!いつまで寝ているんだ!試合だぞ!試合!」

「うぅぅん……何だよ、カイトか」

「カイトかじゃねぇ。試合だよ、試合!トーナメント戦第二試合がはじまるんだぞ!とっとと起きて支度をしろ!」

「試合?明日にしてくれ。まだ、少しだるいんだ。もう少し休ませてくれ」


俺はベッドに飛び乗ってエレンから布団をはぎ取る。

エレンは気怠そうな顔をしながらベッドの上で小さく丸まった。


「休むなら試合が終わってからにしろ!このままだと失格になるんだぞ!」

「失格でもいいよ。また次にチャレンジすればいいんだからな」

「何を勝手なことを言っているんだ。賞金の金貨100枚がかかっているんだぞ。それに宿屋の婆さんとの賭けもあるんだ。嫌でも連れて行くぞ!」

「カイトも強引だな。嫌いではないぞ。ほれ」


エレンは頬を赤らめながらビキニアーマーを肌蹴て挑発して来る。

不意を突かれた俺はドキリとしながら顔を真っ赤にさせて視線を逸らす。


「そんな冗談している暇があるならとっとと起きろ!試合に行くぞ!」

「わかったよ。行けばいいんだろう」


エレンは気怠そうに起き上がると大剣を背に携える。

まだ、酒が抜けきっていないのか少し足元がふらつていた。


「セリーヌが時間を稼いでくれているから、それまでにコロセウムに行くぞ」


俺とエレンは宿屋を飛び出すと急いでコロセウムに向かった。





その頃、コロセウムのステージではセリーヌが司会者に事情を説明していた。


「ですから、エレンさんは手違いで遅れているだけです。すぐに来ますから、もう少し待ってください」

「しかしね。試合は時間厳守がルールなんです。ひとりだけ例外を認めることはできません」

「それはわかっています。けれど、故意で遅れている訳ではありません。ですからお願いします」


セリーヌは機転を利かせて二日酔いのことは伏せておいた。

ここで”二日酔いで遅れています”なんて言ったらすぐに却下されてしまうと予想したからだ。

あくまでエレンが到着するまでの時間を稼げればいい。

たとえ嘘を言ったとしても、それはそれでいいことなのだ。

すると、ゲルトが近づいて来て司会者に詰め寄った。


「おい、司会者。いつまで待たせる気だ。相手が出て来ないなら俺の勝ちだろ」

「それはそうですけれど、まだ来ないって訳ではありませんから。もう少しだけ」

「はっきりしない野郎だな。俺は暇じゃないんだ。とっとと俺の勝ちを認めろ!」

「エレンさんは来ます!だからもう少しだけ待ってください!」


セリーヌが声を振り絞って叫ぶとゲルトが横目にセリーヌを見た。


「何だよ。お前はあの時の姉ちゃんじゃないか。もしかして、俺の対戦相手はお前の連れか?」

「そうですけれど」

「なら、こうしよう。対戦相手が来るまで待ってやることにする。その代りお前を抱かせてくれ」


ゲルトは恥ずかしげもなくスケベ顔をしながらセリーヌに提案をする。

それを聞いたセリーヌはゲルトを睨みつけて怒りを爆発させた。


「あなたの頭の中にはそれしかないんですか!女の人を見れば言い寄ったり抱かせろだなんて言ったり。あなたのような人に抱かれるくらいなら死んだ方がマシですわ!」

「ほう、言ってくれるじゃねぇか、姉ちゃん。だが、嫌いじゃないぜ。そう言うタイプ」


ゲルトはますますスケベ顔をしながら涎を垂らす。

見かねた司会者はセリーヌとゲルトの間に割って入った。


「二人とも冷静になってください。今は試合のことを決めなくてはならないんですから」


そこへ遅れてやって来たエレンが東の登場門に姿を現した。


「エレンさん!」

「何だよ。もう来やがったのか。これから面白くなるところだったのに」


ゲルトはボソリと愚痴をこぼしてステージに登る。


「セリーヌ。何とか間に合ったようだな」

「カイトさん!」

「エレンの奴、まだ酔いが覚めていないようだ」

「それでもエレンさんなら大丈夫ですわ。あんな奴、けちょんけちょんにしてくれますわ」

「何かあったのか?」


俺の問いにセリーヌは何も応えなかったが、その様子から何かあったことは察した。

おそらくゲルトが性懲りもなくセリーヌに迫ったのだろう。

ゲルトの頭の中には女を弄ぶことしかないようだ。


「ゴホン。それではお待たせしました!トーナメント戦第二試合のはじまりです。東門より登場したのは剣士エレン。予選では縦横無尽な活躍を見せました。この試合ではどんな戦いを見せてくれるのでしょうか。かたや西門から登場したのは戦士ゲルト。予選では首狩りのジーザスと良い勝負を見せてくれました。どちらが勝ってもおかしくないこの勝負。果たして勝つのはどっちなのか!それでははじめ!」


饒舌な司会者の説明が終わると銅鑼が会場に響きわたる。


「エレンさん、頑張ってください!あんな奴、けちょんけちょんにのしてください!」

「セリーヌは、この戦いをどう見る?」

「エレンさんの圧勝で決まりですわ」

「その根拠は?」

「エレンさんは、そう言う人なんです」


いつものセリーヌからしたら思いもかけない答えだ。

エレンに期待をしていると言うよりかはエレンにそうしてもらいたいような風。

それだけゲルトが嫌いだと言うことは伝わって来た。

しかし、ゲルトも予選から勝ち上がって来た人間だ。

そう簡単には行かないだろう。

それにまだどんな特殊能力を持っているのかはわかっていない。

油断は禁物だ。


「お前はあの姉ちゃんの連れだってな。よく見ると、いい体をしているじゃねぇか。俺に抱かれてみるか。ガハハハ」

「うるせぇ野郎だな。この薄らハゲ」

「薄らハゲだと?これはスキンヘッドって言うんだ。単なるハゲとは違う」


何の説明をしているんだ、ゲルトは。

スキンヘッドもハゲも同じだろう。

どちらも髪の毛がないんだから。


「ハゲはハゲだ。そこでおとなしくしていろ」

「この野郎、言わせておけばつけあがりやがって。手を抜いてやろうかと思ったが止めておく。ぶっ倒れるまでのして、それから遊んでやるぜ」

「やれるものならやってみろ」

「ぬかせ!」


最初に動いたのはゲルト。

一気に間合いを詰めると巨大な戦斧を掲げてエレンに切りかかる。

すかさずエレンは横に飛びのいてゲルトの攻撃をかわす。


「遅い遅い」

「野郎!」


ゲルトは右足を踏ん張って堪えると、その勢いで戦斧を横に振り払う。

しかし、動きが鈍いので簡単にエレンに避けられてしまった。


「お前。本気を出せよ。そんなのじゃ日が暮れちまうぞ」


エレンは左手を前に突き出してゲルトを挑発した。


「エレンの奴。随分と余裕があるじゃないか。二日酔いが覚めたのか」

「エレンさんなら二日酔いでも負けませんわ」


ただ単にゲルトの動きが鈍いから攻撃をかわせたのだろう。

よく見るとエレンの足元はフラついている。

これが裏目に出ない事だけを祈ろう。


「この野郎、調子に乗りがやって。これは決勝戦までとっておこうかと思ったが見せてやるよ。俺の本気を!」


そう言うとゲルトは両手を握りしめて意識を体に集中させる。

すると、ゲルトの腕に血管が浮かび上がり、汗が体を伝う。

体の全エネルギーを臍に集束させているようでゲルトは必死の形相をしていた。


「うぉぉぉぉー!」


ゲルトが雄たけびを上げると筋肉が膨張し体を覆い尽くして行く。

それは腕を中心に上半身の筋肉が倍以上に盛り上がった。


「これが俺の特殊能力『筋肉増量』だ。増えたのは筋肉だけじゃない。パワーも数段に上がっているんだ」

「そんな子供だましが私に通用するものか」

「その減らず口をへし折ってやる!」


ゲルトは巨大な戦斧を軽々と持ち上げエレンに切りかかる。

まるで包丁を持っているかのように軽々と戦斧を振り回しながら。

エレンは大剣の腹でゲルトの攻撃を受け止める。

しかし、ゲルトのパワーに押されて大きく後ろまで吹き飛ばされた。


「見たか、俺の力を」

「やるじゃないか。でも、それでは私に勝てない」

「言っておけ!」


ゲルトはすかさず一気に間合いを詰めてエレンに連撃を加える。

それはまるでキャベツの千切りの如く、素早い連撃がエレンを襲う。

エレンは大剣の腹で攻撃を打ち払いながらジリジリと後退して行く。


「まだまだ」

「オラオラオラ!」


エレンはステージの端まで追いつめられながら必死で攻撃を弾いている。

それでもゲルトの攻撃の手は緩まずにエレンを追い詰めて行く。

すると、エレンにかけられていた呪印が今頃になって発動する。


「うっ!」


呪印はエレンの右足を燃やすかのように熱を帯びて赤く腫れあがる。

エレンはたまらずに体制を崩して右足を庇った。

それがゲルトに隙を与えることに繋がりゲルトの一撃を食らってしまう。

エレンは空高く舞い上げられてステージの中央に転げ落ちた。


「どうしたんだ、エレンの奴。急に動きが止まったぞ」

「二日酔いが抜けていないのでしょうか?」


二日酔いが残っているって動きじゃない。

酔いが残っていたらフラついたり頭を抑えたりするはずだ。

しかし、エレンは右足を庇う動作を見せた。

何かしらの攻撃を受けたのか、はたまた古傷が疼いたのかだろう。

いずれにせよ試合に支障を来すほどではないようだ。

エレンはすぐさま起き上がると大剣を構えた。


「こんなところでこいつが発動するなんてな」

「まだ、眠っていてもいいんだぞ」

「お遊びはここまでだ。一気にケリをつける」


エレンは一気に間合いを詰めようと左足を踏ん張る。

すると、再び左足の呪印が発動しエレンに襲いかかった。

焼けるような熱さがエレンの左足を溶かして行く。

それはドロドロに溶けた鉄を足にかけられているかのような激しい痛みだ。

エレンは大剣を離して左足を庇いながら転げ回る。


「うゎぁぁぁ!」

「何だ、こいつ。急に痛み出しやがった」


呪印は連鎖するように発動して行きエレンの体に襲いかかる。

エレンの全身にあった呪印は全て発動して激しい痛みとなってエレンを苦しめる。

たまらずにのた打ち回りながらエレンは痛みに耐えていた。


「あれってまさか呪印じゃないだろうな」

「私は何ともありませんけれど」


セリーヌはスカートを肌蹴て呪印を見せる。

呪印は時限式のものでほっておいても問題ないとベルツのジイさんは言っていたけど問題ありじゃないか。

エレンの苦しみようからしたらただごとではないぞ。


「これは雲行きが怪しくなって来ましたわね。このままエレンさんが呪印に苦しめられてしまっていては勝てるものも勝てません」

「おい、エレン!そんなものに負けるんじゃねぇ!お前の手には金貨100枚がかかっているんだぞ!立って戦え!」


俺の言葉が聞えたのかエレンはムクリと顔を上げる。


「カイトの野郎、好き勝って言ってくれやがる。まあ、だが、これで目が覚めたってところかな。あとでセリーヌに回復してもらおう」

「何をブツブツ言ってやがる。立ち上がれないなら負けを認めろ」

「誰が負けだって。この程度で私が負けるものか」


エレンは気合を入れ直しておもむろに立ち上がる。

そして大剣の切っ先をゲルトに向けて宣言した。


「次で決める!」

「ぬかせ!」


最初に動いたのはエレンの方。

呪印の痛みを堪えながらゲルトの懐に入る。

すると、すかさずゲルトが戦斧を振り回しながら対抗して来た。


「オラオラオラ!」


ゲルトの連撃がエレンに襲いかかる。

すかさずエレンは大剣の腹で攻撃を弾きながら間合いを計る。

筋肉増量でパワーが上がっている分、簡単には懐に入らせてもらえない。

一撃の強さもそうだが、何よりもスピードが上がっている。

ゲルトは普通に戦斧を振り回しているのだが、それが連撃のようになってエレンを襲う。

エレンは一旦、懐に入るのは諦めて後ろに大きく飛びのく。

そして痛む右足を踏ん張ってゲルトの横に回り込んだ。


「お前は確かにパワーはあるが遅いんだよ」


エレンは一気に間合いを詰めて大剣を振り払う。

すると、ゲルトが寸のところで反応し戦斧で大剣を打ち払った。


「ふん。その程度で俺が殺れるものか!」


エレンは後ろに大きく飛びのいて体制を整える。

確かにゲルトは筋肉増量で各段とパワーを挙げた。

しかし、それは上半身だけで下半身は元のままだ。

上半身の動きは早いが下半身がついて来れていない。

上半身と下半身のバランスが崩れていれば本来の力を発揮できない。

そのことにゲルトは全く気ついていないようだ。

すると、エレンが惜しみもなくゲルトの欠点を言ってのけた。


「お前は確かに強くなったが上半身と下半身のバランスが崩れているんだよ。そんなのじゃ本来の力は発揮できない」

「ぬかせ!俺の『筋肉増量』は完璧だ。お前程度の相手ならばこれで十分だ」

「頭の固い野郎だな。私はわざわざ忠告してやったのだぞ。人の忠告は素直に聞くものだ」


お前が言うか。

普段は俺の言うことを全く聞かないくせに。

ゲルトもエレンも頭は脳筋なんだ。

似た者同士じゃないか。


「言って聞かない奴は力で教えるべきだな」

「それは俺の台詞だ!」


ゲルトは一気に間合いを詰めて来る。

しかし、動きが鈍いのでエレンに考える時間を与えた。

今のゲルトの弱点は下半身そのもの。

上半身が異様に膨れ上がっているのでバランス感が悪くなっているから余計に脆いのだ。

ならば狙うのはゲルトの足元。

エレンは向かって来るゲルトの攻撃を大剣で打ち払い身を屈めて懐に入る。

そして右足を軸に左足を大きく回転させて後ろからゲルトの足を払った。

ゲルトの体は宙に舞い上げられてステージ上に転げ落ちる。

そこを狙ってエレンの大剣がゲルトの首元を捉えた。


「勝負あったな」

「くぅ……こんな奴に負けるなんて」


エレンは右手を空に掲げて勝利を宣言する。

すかさず司会者が試合終了の合図を告げる。


「そこまで!トーナメント戦第二試合の勝者は剣士エレンです!」


会場から割れんばかりの歓声と拍手が巻き起こる。

エレンは両手を振って歓声に応えながらステージから降りる。

そしてすぐさまセリーヌに回復魔法をかけてもらうように促した。


「セリーヌ。回復魔法を頼む。呪印で体がボロボロだ」

「やっぱり呪印だったのか」

「あのジイさんも藪医者だったな」

「まあ、スケベそうなジイさんだったから、お前達の体に触りたかったのだろう」


セリーヌはエレンの体に両手を添えて魔力を集中させる。

すると、セリーヌの両手が光りだしエレンの傷を塞いで行った。


「でも、これで準決勝戦に進出だな。優勝まであとちょっとだ」

「まあ、優勝は確定だから安心していろ」

「それよりもエレン。コロセウムが終わるまで酒は禁止だからな」

「勝手なことを言うな!酒を飲まなきゃやってられないだろう」

「今回のようなことがまたあったら失格は免れないからな」


今回はたまたま運がよかっただけなのだ。

普通ならば失格になっていていもおかしくない。

遅刻だなんてコロセウムはじまって以来の出来事なのだ。

もし、セリーヌが司会者を説得していなかったら失格だったのだから。

後でグスタフに言って酒の手配は止めてもらうことにしよう。


「おい、カイト。つれないことを言うな。酒は控え目にするから禁酒だけは止めてくれ!」

「ダメだ。お前は言うことを聞かないからな」

「カイト。この通りだ。禁酒だけは止めてくれ」


エレンは両手を投げ出して頭を地面に擦りつけて懇願する。

ここで甘い顔をすればエレンは間違いなくつけあがる。

おばさんとはそう言う生き物なのだ。

だから、何を言われても答えはノーだ。


「わかったよ、カイト。私も女だ。好きなだけ抱かせてやる。その代り酒は飲ませてくれ」


ここで女を出すな、エレン。

おばさんなんか抱いてもいいことなんかあるものか。

逆に俺の人生に汚点が残るだけだ。

そんなに酒が飲みたいのならば普段から俺の言うことを聞けばいいのだ。

普段は自分勝手に振る舞っていざと言う時に頼って来る。

そう言うおばさん根性がいけないのだ。

少しは反省をして普段の自分の行動を振り返ってもらいたい。


「酒は当分の間、禁止だからな!」


俺の死の宣告を受けてエレンは放心状態になったのだった。


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