あるある039 「ハッタリをかましがち」
リーガルの街の駅舎へ馬車を返却しに向かう道中。
俺達はどのように交渉を進めるか考えていた。
普通に返却すれば馬の弁償代を請求される。
だから最もな理由をつけて仕方がなかったことにする方がいい。
例えば盗賊の襲撃に合って馬を奪われたとか言う風にだ。
ただ、その場合、矛盾が生じる。
なんで盗賊は馬を一頭だけ奪って行ったのかと。
「ああああっ!うまい理由が思いつかない」
「やっぱり正直に言うべきではないでしょうか」
「そんなことを言っても弁償代は払うことになるんだぞ」
馬車は盗賊の襲撃に会うことも予想されるため保険がかけられてある。
それは馬車をレンタルする時の料金に上乗せされている。
馬車の1週間のレンタル料が銀貨5枚もするのはそのせいだ。
盗賊の襲撃にあったことにすれば弁償代を払わずにすむことも出来る。
しかし、確実に盗賊に襲撃されたと言う証拠が必要だ。
証拠がないと嘘を言っているととられてしまう。
中には馬車を搾取して盗賊に襲撃されたことにしようとする輩もいるからだ。
「なら、馬車を傷つけておけばいいんじゃないか?盗賊に襲撃された風に装って」
「それもありだな」
馬車を傷つけておけば盗賊の襲撃にあったことは装える。
それに加えて荷物も全て盗られたことにすればなおのこといい。
よりリアルにするためにも俺達の服もボロボロにしておいた方がいいだろう。
着の身着のまま逃げて来たことにすれば大丈夫だ。
「よし。エレンの案を採用しよう。盗賊に襲撃されたことにするんだ」
「本当に大丈夫なんですか?」
「心配はいらないさ。きっとうまくいく。後は俺達の演技力だけだ」
俺とエレンはさっそく馬車に剣で傷跡をつける。
如何にも盗賊に襲撃されたかのように装って。
幌にも穴を開けてそれらしくする。
さすがに馬は傷つけられないのでそのままだけれど。
後は俺達の服をボロボロにするだけだ。
「バレたら捕まりますわよ」
「セリーヌは心配症だな。バレなきゃいいんだよ」
セリーヌの心配は最もだが一番の優先事項は新しい馬車を手に入れること。
ゴルドランド王都まで行くには新しい馬車が不可欠だ。
今の馬車でも行けないこともないが馬の負担が大き過ぎる。
馬1頭では出来ることも限られてくるからだ。
「まずは入り方からそれらしくしよう。盗賊の襲撃にあって命からがら逃げて来た体にするんだ。おい、エレン。肩を落として、もっと疲れたような格好をしろ」
「こうか?」
エレンは俺の指示通り肩を落として疲れ切った格好をとる。
「いい感じだ。エレンは剣士だから一番疲れた風じゃないとそれらしく見えない。セリーヌの服はもっと汚した方がいいな」
「これは私の一張羅なんですよ。そんなこと出来ませんわ」
「セリーヌはプリ―ストだから一番狙われやすいんだ。盗賊から逃げて来た風を装わないとダメなんだ」
セリーヌはいやいや自分の服に土をつけて汚す。
次いでに顔にも土をつけて髪もかき乱して、それらしく装った。
「おっ、セリーヌ。いいじゃないか。臨場感が出て来たぞ」
「これで交渉が失敗したらカイトさんを恨みますからね」
「大丈夫だ。俺に任せておけ」
そう言い切ったものの格たる自信はない。
人を欺くことをするなんてはじめてのことだからな。
これまでにも嘘はついて来たことはあるが小さな嘘だ。
バレれば間違いなく逮捕されてしまうだろう。
そうならないためにも必死で演技をするのだ。
「それじゃあ、駅舎へ行くぞ」
俺達は盗賊の襲撃から逃れて来た体を装いながら駅舎へ向かう。
道行く街の人達は俺達の様子を見て悲壮感を浮かべている。
信じられないというか同情の眼差しを向けて来る。
中には小銭を放り投げる人もいたくらい。
いい感じだ。
街の人達には俺達が盗賊の襲撃から逃れて来たと言うことが伝わったらしい。
ここまでは狙い通りだ。
後は駅舎の管理者を騙せるかだな。
「おい、管理者はいるか?」
「お前達、どうしたんだ。その格好は?盗賊にでも襲撃されたのか?」
「そうだ。命からがら逃げて来たがな」
俺が馬使いに話をしていると人だかりが出来はじめた。
馬車が盗賊の襲撃に会うことは日常茶飯事。
盗賊に襲撃されるなんて運が悪いと思われているくらい。
だから、誰も驚きはしないが同情の眼差しは向けて来た。
「命が無事だっただけでも喜ばないとな」
「運がよかったのさ。あいつら荷物を奪って行っただけだから」
俺の嘘を周りの馬使い達は信じたようだ。
まあ、俺達の格好や馬車の傷を見れば誰でもそう思うだろう。
ハッタリは美味い具合に進んでいる。
すると、そこへ駅舎の管理人がやって来た。
「何の騒ぎだ?」
「ワナックさん。盗賊の襲撃にあった者達が戻って来たんです」
「盗賊の襲撃だと?」
ワナックと呼ばれた管理者は疑いの眼差しを向けながら俺達を見やる。
そして一通り馬車の様子を確認すると疑問を投げかけて来た。
「傷跡が鮮やかだな。剣でわざと傷をつけたみたいに。本当に盗賊の襲撃にあったのか?」
その問いかけに俺はビクッと震える。
まるで俺達の所業を見抜いているかの如く、鋭くツッコんで来るので。
さすがに駅舎の管理者だけあって簡単には騙せそうにもない。
「本当だ。ついさっき襲撃を受けて来たのだからな。傷跡も新しいさ」
「ふ~ん。そうかい。で、何を運んでいたんだ?」
そこまでは考えていなかった。
馬車で運ぶと言えば何だろう。
食料か装飾品か。
まあ、どっちでもいい。
この場を乗り切れれば。
俺はとっさに思いついた嘘を言った。
「ゴルドランド王国へ献上する酒を運んでいたんだ」
「酒ねぇ。その酒はリーガル産かい?」
「そ、そうだ」
「それはおかしいな。帳簿にはリーガル産の酒を運ぶ記録がないがな」
俺のついた嘘を見抜いているのかワナックは帳簿を確認しながら呟く。
しまった!
嘘が裏目に出てしまった。
駅舎では荷物の運搬の管理も行っている。
だから、誰が、いつ、どこへ、何を運んだのかも把握している。
「この馬車はナンバー369か。となると、ラビトリス王都でレンタルされた馬車になっているようだが……」
そこまでわかるのか。
これでは俺が嘘を言っていることがバレバレじゃないか。
どうする……。
俺が返事に迷っているとエレンが大胆にハッタリをかました。
「私達はラビトリス王国の命を受けて献上品をゴルドランド王国へ運ぶためにやって来たのだ」
「ラビトリス王国の命を受けただと?さっきはリーガル産の酒を運んでいたと言っていたじゃないか」
「こいつは新人でまだよくわかっていないんだ」
ますます疑いの眼差しを向けて来る、ワナック。
ラビトリス王国の命はともかく舌も乾かない内から別のことを言い出したのだ、疑うのも無理はない。
するとワナックが証明書を見せろと催促して来た。
「お前さんの話が本当ならばラビトリス王国が発行している証明書があるはずだ。見せてみろ?」
おいおい、不味いぞ。
証明書なんてどこにもないぞ。
エレン、どうやって切り抜けるつもりだ。
「盗賊の襲撃を受けた時に紛失してしまった。だから、今は持っていない」
「随分と都合のいいいい訳だな。証明書がないんじゃ認められないな」
もう、無理だ。
セリーヌの言う通り素直に事情を話していた方がよかった。
そうすればこんなピンチに立たされることもなかったはず。
やっぱり嘘はイケないな。
人間正直でいる方がお得だ。
すると、エレンがさらに嘘を上塗りする。
「証明書はないが、ラビトリス王国の親衛隊長アトスに聞けばわかる。私達が本当のことを言っているとな」
「ラビトリス王国の親衛隊長だと?」
「そうだ。私達はアトスの命で献上品を運んでいたのだ」
エレンのハッタリにワナックはしばし考え込む。
ワナックにそれを確かめる方法はない。
だからエレンはそこをついたのだ。
エレンにしてはやる。
ただの胸のデカい露出狂のおばさんだと思っていたが一応考えているのだな。
「それが本当だとしても記録にないと言うことはどう言うことだ?全ての運行管理は駅舎で行っているんだぞ」
「そ、それは……」
エレンが返事に詰まると今度はセリーヌが助け舟を渡した。
「それは極秘の命だからですわ。ラビトリス王国とサイセルス王国はセリア姫とマーカス王子の結婚で蜜月の関係になっています。ゴルドランド王国はそのことを煙たく思っています。それはラビトリス王国も承知しています。だから、極秘にゴルドランド王国へ配慮することで両国の関係を修復したいのですわ」
さすがはセリーヌだ。
博学と言うか要点を抑えていると言うか。
セリーヌの言葉でぐっと本当らしくなって来た。
ワナックも難しい顔をしながら考え込んでしまった。
「わかった。お前達の言うことを信じようじゃないか。だけどな、馬の弁償代は払ってもらうぞ」
「どういう事だ?盗賊に襲撃された場合は免除されるはずじゃ」
「一般的にはそう言うことになっているが時と場合によって変わるんだ。お前達は胡散臭いからな」
これじゃあ何のためのハッタリだったのかわからない。
馬の弁償代を払えば新しい馬車はレンタル出来なくなる。
「わかりましたわ。馬の弁償代の銀貨1枚は払いますわ。その代り新しい馬車を銀貨4枚で用立ててください」
「金が足りないな」
「これはお願いではありませんわ。交渉しているんです」
「交渉ならお互いにメリットがないと結べない。お前達の要求通り銀貨4枚で新しい馬車を用立てたとして俺に何の得があるんだ?」
「それは……」
ワナックの全うな言葉にセリーヌは返事を迷う。
すると、エレンがワナックに胸を押しつけながら色仕掛けをする。
「私を抱かせてやるよ」
「なっ!」
おいおい、エレン。
お前はそんなに安い女だったのか。
抱かせてやるなんて普通の人じゃ言えない言葉だぞ。
羞恥心のないおばさんだと思っていたが、ここまで踏ん切りがいいと逆にすっきりする。
エレン、俺達のために人肌脱いでくれ。
「どうだ。私じゃ不服か?」
「そ、そんな取引出来る訳ないだろう。俺はこう見えても全うな商売をしているんだ」
ワナックは顔を真っ赤にさせながら動揺を浮かべる。
反論はしているがワナックの目はエレンの胸に釘づけだ。
これはもう一押しだな。
「それならセリーヌも抱かせてやるよ」
「エ、エレンさん。何を言っているのですか!私はそんなことはしません!」
「堅いことを言うな、セリーヌ。これも私達のためなんだ」
エレンの想いもかけない提案にセリーヌは狼狽をする。
私を巻き込まないでよと言わんばかりにエレンを睨みつけながら。
ワナックは目の前の巨乳に手をワナワナさせながら迷っている。
銀貨1枚で二人の女性を抱けるならば安い買い物と言えよう。
駅舎の管理者としてはあってはならない選択肢だが、たまには例外があってもと。
すると、スケベ心を丸出しにしたワナックが決断をした。
「よし、お前達の要求はわかった。銀貨4枚で馬車を用立てようじゃないか」
「マジか!やったな、エレン」
「その代り約束は守ってくれよな」
これで交渉成立。
禁じ手だったが、うまく行ったのだからそれは目を伏せておこう。
約束の方はエレンとセリーヌはうまくやってくれるはずだ。
本当にワナックに抱かれるのかわらかないが、そこは大人の事情と言うもの。
まだ、若者の俺には関係ない。
後は食料と水の確保だけだが。
すると、そこへぶどう畑の持ち主であるヨゼフがワインを持ってやって来た。
「ワナックさん。ワインの輸送を頼みたいんだが」
「ゴルドランド王都へかい?」
「そうだ。今回はいい酒が仕込めたからな」
ヨゼフは得意気にワインの箱を見せる。
ワインの箱は全部で10箱もある。
中にはワインのボトルが所狭しと並べてあった。
「で、いつまでに届ければいいんだ?」
「ゴルドランド王国の祝酒祭に間に合えばいい」
「なら、2週間の余裕がある訳か。わかった、任せておけ」
祝酒祭と言うのはゴルドランド王都で行わている行事のひとつ。
その名の通り各地で製造されたお酒の品評会を行う。
品評会で上位になったお酒には星がつけられてブランド品となる。
それのため生産者はこぞってお酒の開発に勤しむのだ。
すると、お酒のボトルのラベルを見た、セリーヌボソリと呟いた。
「このお酒ってギルドで頂いたものと同じじゃありませんか」
「本当だ。昨日、飲んだお酒と一緒だ」
「もしかしてお主らが穴土竜を駆除してくれた冒険者達か?」
「そうだ」
「そうか。それは知らなんだ。お主らのおかげでぶどう畑は守られたんだからな。感謝してもしきれないぐらいだ」
ヨゼフは満面の笑みを浮かべて俺達に感謝を伝える。
「ヨゼフ爺さんはこいつらの知り合いなのか?」
「知り合いと言うか恩人だ」
恩人と言われるとさすがに照れるが、間違ってもいない。
俺達の活躍のおかげでぶどう畑は守られたのだから。
しかし、この爺さんがぶどう畑の持ち主だったとは驚きだ。
ここで会ったのも何かの縁だ。
もうひと働きしてやろうか。
「爺さん。酒を運ぶのは俺達に任せてもらえないか?」
「それは構わないが、何か目あてでもあるのか?」
「生憎、今の俺達には金がなくてね。酒を運ぶ代わりに食料と水を用意して欲しいんだ」
「そう言う事情があるのか。いいだろう。食料と水は用意してやる。その代り確実に酒をゴルドランド王都に運んでくれよ」
俺とヨゼフ爺さんの交渉がまとまるとワナックが口を出して来る。
「おいおい、ヨゼフ爺さん。勝手に話を進めないでくれ。仕事を請け負ったのは俺だ。この案件は駅舎で管理する」
「管理するのは構わないが運搬はこの者達に任せておくれよ。せっかく話がまとまったんだからな」
「それを決めるのも俺だ」
ワナックは嫌な顔をしながら不満げに俺を睨みつける。
すると、エレンが胸を揺らせながらワナックを挑発する。
「ゴホン。この案件は俺が責任を持って取りまとめる。今日はここまでだ」
ワナックは仕事をお開きにすると他の馬使い達を追い払った。
とりあえずヨゼフから預かったお酒は駅舎の倉庫で管理する。
明日にでも輸送をはじめる予定だと言う。
「じゃあ、俺は先に宿に戻っているから、後は任せたぞ、エレン」
「任せておけ。あいつの首を縦に振らせて来る」
「私も行くんですか?」
「もちろんだとも。セリーヌがいないとはじまらないだろう」
「私は娼婦みたいなことをしたくありません」
セリーヌは唇を噛み締めてきっとエレンを睨みつける。
「減るもんじゃないし、たまにはいいじゃないか」
「減るものなんです。私は嫌ですからね」
セリーヌは意外に初心なのか。
エレンよりもまともな感性を持っているようだが、未経験ってことはないだろう。
これまでにも何人もの男に抱かれて来たはずだ。
でなければ、そんなに胸がたわわに実ることもない。
まあ、抱かれるのか抱かれないのかはエレン達の手腕にかかっている。
俺としては新しい馬車を用意できればそれでいいのだ。
「セリーヌ、任せたぞ」
「勝手なことを言わないでください、カイトさん。私は嫌ですからね」
エレンは嫌がるセリーヌを引きづりながら酒場へと消えて行く。
俺はそれを見送るとひとり宿屋へ戻った。
俺が宿屋に戻ってからどのくらい経っただろうか。
不意に睡魔に襲われて居眠りをはじめた所へエレン達が戻って来た。
エレンはすっかりと出来上がっていてセリーヌが介抱していた。
「で、取引はうまく行ったのか?」
「カイトさんの期待通り馬車を用立てましたわ」
「そうか。それで抱かれたのか?」
俺が興味本位で尋ねるとセリーヌは顔を真っ赤にさせながら俺を睨みつけた。
「そんなことするとでも思っていたのですか!」
「エレンがやる気満々だったし、てっきり抱かれたと思ってな」
「カイトさんもいやらしい人なんですね。幻滅しましたわ!」
セリーヌはそっぽを向いてふて腐れる。
その様子から見て抱かれなかっただろうと言うことはわかった。
だが、どうやってワナックを落としたのかはわからない。
「でも、どうやってワナックの首を縦に振らせたんだ?」
「エレンさんがワナックさんとお酒の飲み比べをしたのですわ。ワナックさんが勝ったら抱かれると言ってね。私はもちろん反対しましたよ。エレンさんは飲兵衛ですけどお酒には弱いですし。万が一負けたら抱かれてしまうのですからね」
だからか、エレンが出来上がっているのか。
酒の飲み比べで勝負するなんてエレンらしい。
しかし、幸いにもワナックがそれほど酒に強くなかったからよかったのだろう。
もし、負けてでもいたらエレンもセリーヌもワナックに抱かれていたのだ。
まあ、それはそれでマニアにはウケそうだけれども。
「とりあえずよかったじゃないか。エレンもセリーヌも無事だったんだし」
「本気で言っていますか、カイトさん。私達がワナックさんに抱かれないかと想像していたんじゃないですか?」
鋭いじゃないか、セリーヌ。
少しだけだが期待はしていた。
こんなシチュエーションなんて滅多にないから想像は膨らませていた。
欲にまみれたワナックにいいように弄ばれるセリーヌ達。
嫌がるセリーヌ達の服を一枚一枚はぎ取りながら興奮して行って。
そして。
「何を言っているんだ、セリーヌ。リーダーの俺がお前達のことを心配しない訳ないだろう。お前達が無事に戻って来ることを心から祈っていたんだ」
「嘘っぽい」
セリーヌは半目で疑るような眼差しを向ける。
「今日は疲れただろう。もう、寝るぞ。明日は早いんだ」
「そうやって逃げるんだから、いつも。カイトさんにとって私達は何なんですか?」
「何だよ、藪から棒に。仲間に決まっているだろう」
「ただの使いっ走りにしか思っていないのではないのですか」
「くだらないことを言っていないで、もう寝るぞ」
これ以上、質問されたら答えようがない。
確かにセリーヌが言うように俺はセリーヌ達のことをいいように思っている。
仲間と言うことは事実だけれど、俺がレベルを上げるための糧でしかないのだ。
俺は勇者になる人間だ。
そのためにはもっと強くならなければならない。
セリーヌ達と冒険を続けるのは俺が勇者になるためだ。
でなければ、好き好んでおばさんとつるむことはない。
「私は今回の件で何を信じたらいいのかわからなくなりました」
「信じなくてもいいさ。いっしょにいてくれればな」
今はこれしか言いようがない。
セリーヌも酒が入っているようだし愚痴をこぼしたくなっただけだろう。
まあ、でも、セリーヌの本音を聞けたことはよしとしないとな。
普段、セリーヌは本音を言わない。
俺に合わせようとしてくれているのか、我慢しているようにも見える。
そうさせているつもりもないが、我慢していればいずれ爆発する。
だから、適度にガスを吐き出させることも必要なのだ。
「セリーヌ、頼りにしているよ」
俺はひとりごとのように呟きながらセリーヌに優しい言葉をかけた。
おばさんと言えどもたまには優しくしないといけない。
でないとすぐにダメになってしまうからだ。
おばさんとはそう言う生き物なのだ。




