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おばさんクエスト~あるあるだらけの冒険記~  作者: ぱんちゅう
第一章 邪魔するおばさん編
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あるある029 「詰めが甘くなりがち」

俺達はその足でラビトリス城へ駆け込む。

もちろんアトスとコンタクトをとるためだ。

門番にアトスを呼んでもらうように伝えるが中々、執りあってもらえない。


「俺はアトスに用事があるんだ。第一騎士団長のアトスを呼んでくれ」

「アトス様はお前のような奴らを相手にはしない。忙しい方だからな」

「忙しいのはわかっているよ。ただ、こっちも急用なんだ」

「ええい。煩い奴らめ。とっとと立ち去らないと捕らえるぞ」


門番はむさ苦しそうに俺達を追い払う。


「カイト、こいつらではダメだ。ただの門番だからな」

「じゃあ、どうするんだよ」

「アトスに掛け合うのは後回しだ。まずはランドールの所へ行くぞ」

「ランドールの所へ行ってどうするつもりだ?」

「もちろん捕まえるんだよ」


それなら文句はない。

俺達をいいように使った借りは返さないと寝目覚めが悪い。

しかし、ランドールがそう簡単に捕まるものだろうか。

用意周到さは群を抜いて秀でている。

もしかしたら、俺達が来ることを計算して何かしら対策を打っているかもしれない。

まあ、考えてもはじまらない。

まずはランドールの所へ向かうのが一番だ。


「よし、ランドールを捕まえに行くぞ」


俺達はラビトリス城を後にしてランドールの貿易会社へ向かった。

ランドールは隠れることもなく普段通り仕事をしていた。

俺達が尋ねても驚いた様子もなく淡々と迎え入れた。


「これはどうしましたか、みなさんお揃いで」

「俺達をハメやがったな」

「何のことです?」

「とぼけるな。密輸のことだよ」


俺が机を叩いて問い詰めるがランドールは飄々とした態度をとる。


「密輸とは人聞きが悪いですね。私はサイセルス王国への献上品を運んでもらったんですよ」

「じゃあ、何で魔石が入っていたんだ」

「箱の中身を見たのですか。魔石も立派な献上品ですよ。公式には認められていませんが」


ランドールは悪びれる様子もなく強かに笑った。


「ランドール、お前は私をハメるために私に近づいたのか?」

「そんなつれないことは言わないでください。私はエレンさんを気に入ったのですから」

「それは私の剣の腕を気に入っただけだろう」

「まあ、大きく言えばそうなりますがね」


認めた。

やはりミゼルが思っていた通りだ。

エレンに言い寄って来るなんておかしいとは思っていたんだ。

それがまさか密輸させるためのものだとは予想もしなかったが。


「お前は許せない。人の心を弄んで」

「弄ぶだなんて。私だって本気だったのですよ。あなたは他にない魅力を持った女性だったからね」


ランドールの思わぬひと言にエレンは動揺する。


「エレン、何を動揺しているのよ。こいつは私達を騙したのよ」

「ど、動揺なんかしていないさ」

「捕まえて警備兵に引き渡すのが一番だ」


ミゼルがランドールに手を伸ばすと後ろに一歩下がる。

そして、両手を広げながら挑発をして来た。


「おっと、私が密輸をしていたと言う証拠はないのですよ。どうやって捕まえるつもりです?」

「証拠は私達の証言で十分だ」

「証言?あなた達は罪人でしょう?誰が罪人の言葉を信じるのです」


確かに今の状況では俺達は不利だ。

今の俺達は脱獄して来たうえランドールに詰め寄っているのだ。

傍から見れば罪人が一般人を脅しているかのように見えるかもしれない。


「私がここで警備兵を呼べばあなた達は捕まってしまうのですよ。それでもいいのですか?」


ランドールは余裕気な態度で捲くし立てて来る。

打つ手がない。

それが正直な感想だ。

ランドールを捕まえるにしても密輸をしていた物的証拠が必要だ。

でなければただの戯言になってしまう。


「俺達の負けだ。密輸の件は忘れてやる。だが、また俺達の目の前に現れた時は許さないからな」

「賢明な判断です。私もあなたがたのことは忘れましょう。ただ、エレンさんの答えは聞かせてください」


藪から棒に何を言っているんだ、こいつは。

お前は俺達を騙していたんだぞ。

そんな奴のプロポーズに応じるほどエレンは愚かでない。

言い返してやれ、エレン。

お前の顔を見るだけで反吐が出るとな。


「もちろん答えはノーだ。ただ、お前とは別の形で会いたかったけどな」


エレンはボソリと本音をこぼした。

久しぶりに男から言い寄られて本気になってしまったのだろうか。

別の形で会ってもランドールの性格は変わらない。

甘い言葉を囁いてつけ入られるのがオチだ。


「そうですか。残念です。あなたとならうまくやって行けそうに思っていたのですが」


それは密輸のパートナーとしてだろう。

そんな犯罪に加担するほどエレンは愚かじゃない。

エレンは純粋にランドールを気に入っていただけなのだ。

その気持ちを無視して飄々としているランドールは許せない。

男としても風上に置けぬ奴だ。


「みんな、帰るぞ」

「また、縁があったら会いましょう」

「誰が会うかよ!」


結局、俺達はランドールを捕まえることが出来なかった。

そればかりかいいように言い返されておめおめと逃げて来たのだ。

胸糞が悪い。

ランドールを捕まえるにしても密輸の証拠が必要だ。

だけど、それをどこでどう見つけるかが問題となる。


「ランドールを捕まえるのは無理なようだな」

「仕方がないさ。証拠がないんだから」

「だけど、私達の罪状は晴れないぞ」

「もう一度、アトスに掛け合ってみよう」

「でも、会ってもらえるかしら?」


アンナの不安は最もだ。

ラビトリス城へ行ってもまた追い返されるのがオチだ。

しかし、アトスの力を借りないと俺達の罪状は晴れないだろう。

どうするかだ。

と、セリーヌが思わぬことを提案して来た。


「手紙はどうでしょう?手紙ならアトスさんのところへ届きますし、説明もしやすいですからね」

「それは良いアイデアだな。さっそく手紙を書こう」


俺達は近くの喫茶店でアトス宛ての手紙を認めた。

内容はランドールの密輸に関することと俺達の今の状況だ。

俺達は今、脱獄犯として追われている身。

アトスの協力を得なければまた捕まってしまうだろう。

捕まったら処罰は免れない。

だから早急な対応が必要なのだ。


「後はこの手紙がアトスの所に届くのを待つだけだな」

「それまでは表立って行動しない方がいいでしょう」

「それなら俺に心当たりがある」


グレリオについて行った先はラビトリス王都の外れにあるスラム街。

仕事にもありつけない貧困層が住んでいるところで街は汚れている。

そのため逃亡者にとっては誰も近寄らない安全地帯となっていた。


「ここなら見つからずに身を隠せる」

「ラビトリス王都にもこんな場所があったなんてな」

「光あるところに影があるものさ。ラビトリス王都も繁栄している背景で問題を抱えているのさ」


それは目を防ぐことのできない現実だ。

ランドールのように密輸をやって儲けている者もいれば、明日食べるご飯の心配をしている者達もいる。

うまく均等にお金が分けられれば貧困もなくなるのだが、そうは行かないのも現実だ。

もっと国には貧困層のことも考えた政策を立ててもらいたい。

でなければラビトリスの明日もないだろう。


「しかし、汚いところね。もっとましな場所はなかったの?」

「贅沢を言うな、アンナ。身を隠せるだけでもありがたいことだ」

「ミゼルの言う通りだ。俺達は追われている身なんだからな。贅沢は言えないさ」


俺達が身を隠した家は2階建てのボロ屋。

窓ガラスは割れているし壁にヒビも入っている。

しいていいところをあげればベッドがあるくらいだろう。

しかし、ほこりを被っていて眠るところじゃない。


「こんなところにいたら腐ってしまうわ」

「アトスさんに手紙が届く間だけですから我慢しましょう」

「せめて酒でもあれば我慢できるんだけどな」


エレンはエアーで酒を飲む仕草をして気持ちを紛らす。

武器も荷物も取り上げられて今は無一文だ。

食物も買えなければ酒すら飲めない。

まあ、そんなに時間もかかることでもないし今は我慢だ。

そして俺達は空腹を抑えて夜を明かした。





翌朝、俺達は手紙に記した公園までやって来た。

もちろんアトスが来ることを望んで。

アトスは約束通り公園までやって来た。


「カイト、一体どういうことだ?」

「どうもこうもない。手紙の通りだ」

「ランドールのことは私達も気にかけていたが、まさか密輸をやっているとはな」

「灯台下暗しってやつだよ」


アトス達もこのところ売り上げを上げているランドール貿易会社のことは把握していた。

しかし、表向きは健全な取引をしている会社なのでラビトリス王国でも信頼を買っている。

その上、ラビトリス王都では知らない者はいないくらい有名な会社だ。

誰も密輸をしているなんて考える者はいないだろう。


「しかし、密輸の証拠が掴めていませんわ」

「そうなると国としても手の打ちようがない」

「このまま野放しになるってことか?」

「今はしばらく我慢の時だな」


アトスは顔を曇らせて奥歯を噛み締めた。


「それより私達の罪状はどうなる訳?」

「それはこちらで手配をしておく。冤罪であったことにするつもりだ」

「それならよかったわ。もう、逃げ回るのは嫌だったらからね」


アンナは安堵の顔を浮かべてほっと溜息をこぼした。


「それよりセリア姫とはどうなったんだ?」

「どうもこうもないさ。ただの騎士団長がセリア姫の相手を出来る訳もない」

「グラン国王にも知られたのだろう?」

「それがいけなかったのさ。あの後、セリア姫とは会わせてもらえていない」


アトスはがっくりと肩を落として項垂れた。

まあ、それも仕方ないと言えば仕方ない。

何せセリア姫はマーカス王子と政略結婚をするのだから。

グラン国王としても国の行く末がかかっているのだ。

引くに引けないだろう。

アトスには残念だがセリア姫といい関係になることはないだろう。

もしかしたら第一騎士団長の座も追われることになるかもしれない。


「何と言っていいか言葉が見つからない」

「気にするな、カイト。これははじめからわかっていたことなんだ。私は第一騎士団長としてセリア姫をお守りする」


アトスの決意は固いようだ。

しかし、好意を抱いている女性を目の前にして何も出来ないのも歯がゆい。

セリア姫が王族でなかったのならばいっしょになることも出来たはず。

それを思うとやるせない気持ちになる。


「荷物や武器は後で届けさせる。それまではしばらく我慢してくれ」

「気長に待っているよ。ありがとうな、アトス」

「私達の仲に遠慮はいらないぞ」


アトスはそう言うとラビトリス城へ戻って行った。

そしてすぐにラビトリスの兵士が武器と荷物を持ってやって来る。

荷物も武器も手をつけられた形跡もなく何も盗られていない。

そればかりかアトスが僅かばかりの身銭を渡して来たのだ。

袋の中を見ると金貨が10枚入っている。

俺達はグレリオと半分に分けた。


「カイト、短い間だってけど世話になったな」

「これからどうするつもりだ?」

「冒険者に戻るつもりだ。またどこかで会った時はよろしくな」


そう言ってグレリオはラビトリス王都を後にした。

残された俺達は今後の話をするため酒場へ向かう。

もちろん目当ては酒だけれども。


「くぅー。久しぶりの酒は骨身に染みるな」

「本当。喉がからっからだったから余計にね」

「こんなにお酒が美味しいだなんて思いませんでしたわ」

「これもアトスさまさまだな」


俺達はグラスの酒を煽りながら感想を述べる。

そしてすぐに今後の予定を話すことにしたのだ。


「で、これからどうするつもりだ?」

「密輸の件もあったからな。ラビトリス王都から離れようかと思っている」

「そうですわね。冤罪とは言え寝目覚めが悪いものですものね」

「ラビトリス警備兵には面が割れているし、またあらぬ疑いをかけられるかもしれないからな」


満場一致でラビトリス王都を離れることが決まる。

で、次の目的地なのだがサイセルス王国とゴルドランド王国で意見が割れてしまった。

サイセルス王国と言えばセリア姫が嫁ぐ先となる国だ。

資源が豊富で繁栄を極めている国でもある。

一方でゴルドランド王国は近代文明が発達した技巧都市。

ドワーフの技術で築かれた陸の要塞とも呼ばれている。

面白そうなのはゴルドランド王国なのだがサイセルス王国も魅力的だ。


「私は俄然、サイセルス王国だわ。セリア姫のその後も知りたいしね」

「私はゴルドランド王国だ。ここにはコロセウムがあるらしいからな」


アンナとエレンの意見が対立する。


「ミゼルはどうなんだ?」

「私もサイセルス王国だ」

「セリーヌは?」

「私はゴルドランド王国がいいですわ」

「2対2か」


みんなの視線が俺に集まる。


「俺は冒険が出来ればどっちでも構わない」

「それじゃあ答えになっていないじゃない。リーダーなんだからどちらかに決めてよ」


そうは言われると答えに迷ってしまう。

サイセルス王国は魅力的だし、ゴルドランド王国も捨てがたい。

こういう場合はコインで決めるのがいいだろう。

俺はポケットから銅貨1枚を取り出す。


「それじゃあ公平にコインで決めよう。表が出たらサイセルス王国だ。裏が出たらゴルドランド王国だ。文句はないよな」

「わかったわ」

「それで決めてくれ」

「じゃあ行くぞ」


俺はコインを親指の上に乗せて勢いよく弾く。

コインは回転しながら宙に舞い、そして下へと落ちて来る。

目の前にコインが落下して来た瞬間、左手と右手でコインを挟んだ。

みんなの視線が俺の手に集まる。

そして、静かに手を放してコインを確認した。


「裏だ。次はゴルドランド王国へ向かう」

「よっし!」

「仕方ないわね。ゴルドランド王国でいいわ」


エレンはガッツポーズをして喜ぶ傍らアンナは投げやりに呟く。


「それでゴルドランド王国へ行って何をするつもりだ?」

「もちろんコロセウムに出場するに決まっているだろう」

「エレンも好きだわね。戦いなんてどこでも出来るじゃない」

「コロセウムには世界中の強者達が集まるんだ。そんな面白い場所に参加しないのは勿体ないじゃないか」


以前、セリーヌが言っていたがレベル上げをするならコロセウムが丁度いいらしい。

俺もまだ全然レベルが上がっていないからコロセウムでレベル上げをするものいいかもしれない。

しかし、世界中の強者が集まるのだから、そう簡単ではないだろう。

もしかしたら予選で敗退してしまうかもしれない。


「優勝賞金は何なのよ?」

「金貨100枚と聖杯だ」

「金貨100枚!私も出ようかしら」


急にアンナの目が輝き出してお金に変わる。

口元を緩ませて涎を垂らす。

お金の話はアンナには厳禁のようだ。


「それは魅力的だな。金貨100枚はともかくとして聖杯は欲しい。頂点の象徴だからな」

「まあ、私は戦いを楽しめればいいのだけどな」


ミゼルの目も輝き出す。

こちらはこちらで聖杯に魅了されたようだ。


「カイトさんもコロセウムに参加してみてはどうですか?」

「もちろん参加するつもりさ。俺の腕を確かめてみる」

「カイトはどうせ予選敗退だろ」

「そんな訳あるか。俺だってな予選ぐらい勝ち上がれるさ」

「ゴーレムに一撃を加えられなかった奴が言う台詞か」


それを言ってくれるな、ミゼルさん。

あれはゴーレムが思ってた以上に硬かっただけの話。

他のモンスターならば一撃を加えられていたはずだ。


「だけど、コロセウムに参加するのは人間よ。その辺は大丈夫なの?」

「学校で訓練を積んでいた時も人間を相手にしていたから大丈夫だ」

「訓練とコロセウムではぜんぜん話が違うわよ。中には本気で命を狙って来る人もいるのだから」


マジなのか。

コロセウムは試合じゃないのか。

殺し合いだなんて聞いていないぞ。


「要は勝てばいいんだよ」

「けど、ただで勝てる訳もないけどね」

「それはどう言う意味だ?」

「怪我をするってことよ」


マジか!

痛いのは嫌だな。

もちろん回復してくれるんだろう。

でなければ戦いは続けられないからな。


「安心してください、カイトさん。試合が終われば回復できますから」

「その時は頼んだぞ、セリーヌ」


俺は縋るような視線をセリーヌに送った。


「今からそんなんじゃ負けは見えているけどな」


エレンが最もな言葉を投げかけて来る。

まあ、自由に言うがいいさ。

要はコロセウムで勝てばいいのだから。


「それじゃあ、明日、ゴルドランド王国へ向けて旅立つ。それまでに準備をしておけよ」


俺は一足先に酒場を後にする。

明日の馬車の手配を済ませるためだ。

エレン達はどうせ夜が更けるまで飲み明かすだろうからあてにならない。

だから代わりに俺がやるのだ。

まあ、これもリーダーとしての務め。


俺は駅舎に向かい馬車の手配を済ませる。

馬車は馬力のことを考えて2頭立ての馬車にした。

後は食料と水だが、それは明日にすればいい。


ボロ宿に戻るとトイプーがひとりで留守番をしていた。

自分でエサを食べたらしくエサ入れが空っぽだった。

トイプーも賢くなって来たようだ。

これもそれも俺がちゃんと躾ているおかげだ。


「お前もちゃんと連れて行くから用意はしておけよ」

「ワン!」


トイプーの元気のよい返事が返って来る。

おばさん達もこれくらい素直だといいのだけどな。

そうすればこんなにも苦労をすることもないのだけど。

そんなことを思いながら俺はベッドに潜り込んだ。


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