あるある022 「とことん突っ走りがち」
パサッ。
宿屋の部屋の扉から紙状のものが放り投げられた。
見ると文字が書かれた書物のよう。
俺はそれを手に取りテーブルに着いた。
「何だこれ?」
「それは新聞と呼ばれるものですわ」
「新聞?」
「ラビトリス王国が発行している町民向けの情報誌のことです」
へぇ~。
ラビトリス王都にはそんなものがあるのか。
セントルースの街には本しかなかったけどな。
俺は新聞を広げて記事に目を通す。
「結婚式まであと1ヶ月。この結婚でラビトリス王国は豊かになれるのだろうか、か」
「ラビトリス王国は資源の乏しい国です。ですから資源豊富なサイセルス王国と関係を持つことで資源を確保したいのですわ」
「それならセリア姫の結婚は政略結婚と言うことか」
「難しい言葉を知っているのですね」
セリーヌは関心しながら紅茶を啜る。
テーブルの上にはセリーヌが淹れた紅茶が並んでいる。
朝はコーヒー派なのだが紅茶も悪くはない。
と、向かいに座っていたアンナが覗き込むように新聞を見やった。
「何々。”セリア姫、無事に帰還”……ちょっとカイト。その新聞を見せて」
「おい、それは俺が読んでいるんだぞ」
アンナは俺から新聞を奪い取って新聞の記事に目を通す。
「”騎士団長のアトスの機転でセリア姫を侍女に変装させてセントルースから帰還させた。さすがはラビトリス王国の第一騎士団長。グラン国王もこの働きに官服したとのこと”」
「ってことはあの侍女はセリア姫だってことか!」
「アトスさんもやりますわね。普通、お姫さまが侍女に扮しているなんて誰も思いもしませんものね」
俺が感じていた違和感はそれだったのか。
でも、セリア姫が侍女だったってことは……アトスの恋の相手はセリア姫と言うことになる。
って、それは禁断の恋じゃないか!
「面白くなって来たわね。アトスとセリア姫の禁じられた恋。セリア姫は1ヶ月後に結婚を控えている身。アトスはどうするのか」
「これはほってはおけないな。アトスとセリア姫の恋を実らせるにはもう一押し必要だ」
「アトスさんが覚悟を決めないとマーカス王子にセリア姫をとられてしまいますからね」
「おいおい、お前達。またロクなことを考えているんじゃないだろうな」
盛り上がっているアンナ達の熱気を冷ますように俺は言葉をかける。
ここでおばさん達に釘を打っておかないと何をしでかすかわからない。
侍女がセリア姫だってわかったからには、もうアンナ達に干渉はさせてはならない。
判断を誤れば処刑されるかもしれなくなるのだ。
「もう、アトス達は手の届かない所へ行ったんだ。俺達にやることはない」
「セリア姫にはもうアドバイスを伝えてあるから大丈夫ね」
「後はアトスだけってことになるな」
「でも、難しいでしょうね。アトスさんがセリア姫を奪ったら反逆罪にもなりかねませんし」
アンナ達は俺の言葉を無視して話合いを続ける。
って、セリア姫にアドバイスをしたっていつしたんだ!
「ラビトリス王国を敵に回すことになるわね」
「なんとかアトスとセリア姫をくっつける方法があるといいのだが」
「グラン国王に伝えるのはどうでしょう?グラン国王も実の娘の幸せを一番に考えるでしょうし」
「けれど、この結婚を決めたのはグラン国王なんだぞ。無理じゃないか」
話は膠着状態に陥る。
どうせ答えの出ない問題なんだ。
考えるだけ無駄と言うこと。
「もう十分だろう。俺達にやることはないんだ」
俺は新聞を畳んでテーブルの上に放り投げた。
するとトイプーがかけて来て新聞を口に咥える。
そしてセリーヌの所まで行って新聞を差し出した。
「どうしたのトイプーちゃん?新聞なんて持ってきて」
トイプーはセリーヌの足の上に新聞を置いてワンと吠えた。
「この新聞を見ろってこと?」
「ワン!」
セリーヌはトイプーに言われるまま新聞に目を通す。
そして、急に大きな声を出した。
「これです!これですよ!」
「どうしたんだよ、セリーヌ。何がこれなんだよ?」
「明日、セリア姫のパーティーがラビトリス城で開かれるんですよ」
「何ですって!」
アンナとミゼルは勢いよく立ち上がってセリーヌの隣に寄る。
「これはチャンスだわ!アトスに脅しをかけるための」
「アトスとてセリア姫を失うくらいならばいやでも覚悟を決めるだろう」
「アトスさんさえ落とせばこっちのものですわね」
「よし。さっそく準備をするのよ」
「準備をするって俺達は招待されていないだろう」
盛り上がるアンナ達に水を差すようにツッコミを入れる。
いくら城でパーティーが開かれるからと言って関係ない俺達が参加できるはずもない。
俺達はただブラム伯爵を警護しただけの間柄なのだから。
すると、アンナが思わぬことを提案して来た。
「ブラム伯爵に頼むのよ。私達のおかげで無事にラビトリス王都まで来たのだから貸しがあるわ」
「そうだな。あのオッサン、気の良さそうな顔をしていたから頼めば何とかしてくれるだろう」
「では、さっそくブラム伯爵に手紙を出しましょう」
セリーヌはペンをとり手紙を認める。
そして宿屋の主人に頼んで手紙をラビトリス城まで届けさせた。
もちろん手紙を運んだのは郵便屋だけれど。
新聞や手紙を配達しているのはラビトリス王都にある郵便屋だ。
ラビトリス王国の認可を受けて仕事をしているので顔がきくのだ。
「お前達も懲りないな。パーティーに参加するってドレスはどうするつもりだ?」
「ドレスならセントルースで買ったものがあるわ」
「アクセサリーもあるからちょうどいいな」
「お前達はいいけど俺は持っていないぞ」
「カイトはエレンと留守番よ」
「何だよ、それ」
アンナ達をほっておいたら何をするかわからない。
なので俺は急きょ、ラビトリス王都の服飾店へ行ってレンタル衣装を借りて来た。
もちろんエレンの分も揃えてだ。
エレンはドレスって柄じゃないが、そのままの格好では城に入ることも出来ないだろう。
なんて言ったってビキニアーマーなのだ。
パーティーに集まった貴族達が驚いてしまう。
俺が同行することにアンナ達は快く思っていなかったのだが速やかに了承した。
それは何か策があったからだろう。
そして俺達はブラム伯爵の連れとしてパーティーに参加することになったのだ。
ラビトリス城のパーティー会場は1階にある大広間。
丸テーブルが周囲に設置されていて、その上に料理や酒が並んでいる。
招待客はボーイが運んで来た酒を嗜みながら立ったままおしゃべりを楽しんでいる。
知り合いの貴族に挨拶する人、仕事の話を持ちかける人、様々だ。
俺達はブルム伯爵の連れとしてブルム伯爵の傍にいた。
「しかし、すごい人の数だな」
「セリア姫のパーティーですからね。ラビトリス王国の各地から貴族たちが集まります」
ブラム伯爵は酒を運んで来たボーイから酒を受け取ると。
「私はこれから挨拶周りをして来ますから、みなさんも好き好きに楽しんでください」
にこやかに笑って会場へ消えて行った。
「好きにやってくれって言われてもな。パーティーなんてはじめてなんだ。どれをどうすれば」
「せっかくブルム伯爵が自由をくれたのよ。楽しまなくちゃ」
アンナは慣れた手つきでボーイから酒を取ると一口煽る。
そして満足そうな顔を浮かべるとエレンに酒を薦めた。
「エレン。このお酒、美味しいわよ。飲んでみたら?」
「どれどれ……うん、イケるな」
「でしょう。さすがはラビトリス王国のお酒よね。一級品ばかりだわ」
今度はミゼルが料理と酒を持ってやって来た。
「おい、エレン。こいつも食べてみろ」
「モグモグ。随分塩気のある食い物だな」
「これを少し口に含んでから酒を飲むんだ」
エレンはミゼルのお手本を見ながら真似をしてみる。
「どうだ。美味いだろう?」
「ああ。塩気と酒が口の中で絡まって、絶妙なハーモニーを奏でているな。これならば酒が進む」
「まだまだあるから遠慮なく楽しめ」
ミゼルはおつまみとお酒を取りに戻る。
入れ替わるように今度はセリーヌがお酒を持ってやって来た。
「エレンさん。美味しいお酒が見つかりましたわ」
「今度は何だ?」
「このお酒はラビトリス城へ献上された一級品のお酒です。一口飲んでみましたがとても美味しくて」
「一級品か。どれ」
「どうです?」
エレンは水を飲むように酒を煽るとぷはーと吐息を零す。
「これはうまい!口当たりが軽くて、これなら何倍でもイケそうだ」
「それはよろしかったですわ。まだまだおかわりがありますから」
「おい、お前ら。そんなにエレンに酒を薦めるな。介抱させられるこっちの身にもなってみろ」
エレンは飲兵衛だが、すぐに出来上がるタイプ。
もともとアルコールには強くはない方だからあまり飲ませるのはよくない。
どうせ俺が介抱することになるのだから余計に心配になる。
「いいじゃない。そんなこと。今日はセリア姫のパーティーなのよ。もっと楽しまないと」
「楽しんでいるのはエレンだけだろう」
「そんなことありませんわ。私達も楽しんでいますもの」
そう言ってセリーヌは手に持っていたお酒を一口煽る。
すると急に会場がざわつきはじめる。
そしてグラン国王がセリア姫をエスコートして会場にやって来た。
グラン国王とセリア姫は壇上に上がると挨拶をする。
「今日はセリアのために集まってくれてありがとう。セリアはアトスの働きによって無事にセントルースから戻って来ることができた。それはみなの支えがあったからだと心得ている。今宵は思う存分楽しんで行ってくれ」
会場から割れんばかりの拍手と歓声が湧き起る。
そして会場にいたオーケストラが音楽を奏ではじめる。
すると会場にいた貴族たちは男女で手に取りダンスを踊りはじめた。
アトスはセリア姫の前に跪きそっと手を差し伸べる。
セリア姫はその手をとるとダンスを踊りはじめた。
グラン国王は嬉しそうな顔を浮かべながらダンスを眺めている。
その目は優しく娘の成長を見守っているかのようだった。
「私達もダンスを踊りましょう」
「俺はダンスなんて踊れないよ」
「私が手とり足とし教えてあげますわ」
セリーヌは俺の肩に手を回すと俺の手を腰にあてさせる。
そしてリズムに合わせてステップを踏みはじめた。
すると俺は足がもつれてセリーヌの足を踏んでしまう。
「ごめん」
「気になさらないでください。はじめはみんなそんなものです」
セリーヌは俺をリードしながらリズムに合わせてステップを踏む。
俺もそれに習うように足を運んだ。
アンナとミゼルもダンスを踊る相手を見つけてダンスを楽しんでいる。
しかし、エレンだけはどっかりと腰を下ろしてひとり酒を飲んでいた。
そこへ背の高いイケメンの髭を生やした紳士がグラスを持ってやって来た。
「随分とお飲みになられているようですね。私にも頂けますか?」
「何だよ、お前。これは私の酒だぞ」
エレンはテーブルの上に置いてあった酒を手繰り寄せる。
「ハハハ。これは嫌われてしまいましたか」
イケメンの髭の生やした紳士は苦笑いしながら頭を掻く。
すると、何を思ったのかエレンをダンスに誘って来た。
「私といっしょに踊りませんか?」
「私は酒を飲んでいるんだ。踊りたければひとりでやれ」
「それは頂けませんね」
「お、おい。何をする!」
イケメンの髭の生やした紳士は強引にエレンの手をとり立ち上がらせる。
そしてエレンの腰に手を回してステップを踏みはじめた。
エレンもつられるように足を運ぶ。
「強引な奴は嫌いじゃないぜ」
「それは光栄です。私はランドール」
「私はエレンだ」
ランドールとエレンは心行くまでダンスを楽しんだ。
他の客の目を奪っていたのはアトスとセリア姫のダンス。
まるで心が通じ合っているかのように乱れもなく軽やかに舞う。
その姿はまるで天使達が楽園でダンスを踊っているかのようだった。
「お似合いの二人ですわね」
「その発言は無粋だぞ。セリア姫は結婚を控えているのだ」
「それでも政略結婚でしょ?セリア姫は承知しているの?」
「セリア姫がどう思っていようが関係ない。これはラビトリス王国の命運がかかっているんだからな」
「あなたも冷たい人ですわね」
貴族達が話していた言葉はアトス達には届かなかった。
それでも結婚に対する国民の期待は嫌と言うほどわかっていた。
セリア姫がマーカス王子と結婚をすればラビトリス王国の行く末も安泰になる。
何せ資源の乏しいラビトリス王国にとって資源を入手できるルートが築けるのはこの上ないことなのだ。
結婚は1ヶ月後。
それまでに二人は覚悟を決めなければならない。
すると、オーケストラの演奏が終わり間奏に入る。
招待客達はダンスを止めてしばしの休憩をとる。
その機会を伺っていたアンナとミゼル、セリーヌの3人は動き出す。
「おい、お前ら。どこへ行くんだ?」
「野暮用ですわ」
「まさか。アトス達の所へ行くんじゃないだろうな?」
俺の指摘にアンナ達は急に足を止める。
そしてゆっくりと振り返るとエレンを探しはじめた。
「あれ?エレンがいないじゃない。どこへ行ったの?」
「さっきまで酒を飲んでいたんだけど」
「これでは計画が台無しですわね。エレンさんにお酒を飲ませてカイトさんに介抱させる作戦を立てていたのですけど」
「おい、聞こえているぞ」
セリーヌはしまったと言わんばかりに顔をしかめた。
「お前達もいい加減に諦めろ。あの二人は結ばれない運命なんだよ」
「運命なんて受け入れるものじゃないわ。変えるものなのよ」
「セリア姫はもう覚悟が決まっている。後はアトスだけなんだ」
「カイトさんはあの二人が幸せになることを望んでいなのですか?」
「そ、そんなことはないけどよ」
セリーヌのツッコんだ質問に俺は返す言葉も見つからない。
確かに政略結婚なんてしてもセリア姫は幸せになれない。
一生好きでもない相手と暮らさなければならないのだ。
それは拷問以外、何ものでもないだろう。
だからと言って結婚を放棄できる立場でもない。
セリア姫の肩にはラビトリス王国の命運がかかっているのだから。
「カイトが止めても私達は行くわ」
「これはセリア姫のためなんだ」
「カイトさん、お叱りならば後でいくらでも受けます。私達を行かせてください」
「勝手にしろ!もう俺は知らん」
俺はアンナ達に背を向けて諦める。
それを見たアンナ達はニコリと笑うと会場へ消えて行った。
どうせ俺が立ちはだかってもアンナ達は止まらないのだ。
一度決めたことは貫き通すと言うよりも好奇心の方が優っているのだろう。
アトスとセリア姫のためだと言っていたが禁断の恋の行方を知りたいだけだ。
アンナ達的に言えばアトスとセリア姫が結ばれるほうがいいのだろう。
それが真実の愛を掴めるとか言ってな。
だけどアトスがその選択を選ぶとは限らない。
ラビトリス王国の第一騎士団長としての誇りを汚す訳には行かないだろう。
そんな答えの出ないことを考えているとエレンが戻って来た。
「おっ、カイト。やってるか?」
「何だよ、エレン。どこへ行っていたんだ?」
「ちょっとな」
エレンは柄にもなく頬を赤らめてはにかむ。
なんだよ、もう出来上がっているのか。
はー。この後が大変だ。
その頃、アンナ達はアトスとセリア姫を連れてテラスにいた。
アトスは予想もしていなかった出来事に動揺している。
セリア姫の方は覚悟を決めているのか落ち着いていた。
「これが最後よ。アトス、セリア姫をとるの、それともラビトリス王国をとるの?」
「そんなの決められる訳ないだろう」
「アトスが覚悟を決めないとだめなんだ。わかっているのか!」
「アトスさんの幸せもセリア姫の幸せもアトスさんの決断にかかっているのです」
アトスはアンナ達に攻められて言葉を失う。
ラビトリス王国の騎士団長として考えれば、既に答えが出ている。
しかし、それはアトスの本心からの答えではない。
アトスとてセリア姫を選べるのならばそうしたい。
だが、常に目の前に第一騎士団長としてのアトスが立ちはだかるのだ。
アトスはガックリと膝を折って両手を投げ出した。
「私には決められない。セリア姫を選ぶかもラビトリス王国を選ぶかも。私はまがってもラビトリス王国の第一騎士団長なのだ」
「第一騎士団長としての地位を捨てるのが怖いの?」
「そんなことはない」
「なら、何がアトスを迷わせているんだ」
「私がセリア姫を連れて逃げればセリア姫ともども国家反逆罪に問われるのだ。セリア姫まで巻き込むわけにはいかない」
「そんな覚悟、セリア姫はとっくに出来ていますわ。そうでしょ、セリア姫?」
セリーヌの問いかけに静かに頷くとセリア姫が口を開いた。
「私は覚悟が出来ています。アトスさまと行けるのならば地獄の果てまで行ってみせますよ」
「セリア姫……」
セリア姫の言葉を受けてアンナがアトスを捲くし立てる。
「女にここまで言わせたのだから答えを出しなさい」
「私は……」
アトスは拳を強く握りしめて激しく床を叩いた。
「くぅ、ちくしょう。俺は何で」
「アトスさま……」
「これはダメね」
アンナ達はガックリと肩を落としてお互いを見やった。
アトスがここまで頑なだともう手の打ちようがない。
真面目と言うか馬鹿真面目な人だ。
騎士団長としては正しいのだろうけどひとりの男としては失格だ。
けれど最後の手段が残されている。
アンナ達はセリア姫を見つめてコクリと頷く。
すると、セリア姫がナイフを首に突き立ててテラスから身を乗り出した。
「セリア姫?」
「アトスさまといっしょになれないのならば、ここで命を絶ちます。本気です」
「セリア姫!」
「こっちへ来ないで。アトスさまのいない人生なんていらないわ。私は結婚なんてしたくはありません。アトスさまと……アトスさまといっしょにいたいだけなの」
「……」
セリア姫の手に力が入る。
すると一滴の赤い血が首筋を伝う。
その鮮血は純粋なぐらいまで赤くセリアの気持ちを表しているようだった。
「さあ、決めなさいアトス。セリア姫をとるのかラビトリス王国をとるのか?」
「セリア姫は覚悟を決めたのだ。今度はアトスが覚悟を決める番だ」
「アトスさんが正しい選択をすることを祈っていますわ」
「私は……」
アトスは自分に言い聞かせるように自分の中から答えを探す。
と、そこへグラン国王がおもむろにやって来た。
「お父様!」
「話は聞かせてもらったよ。苦労をかけたね、セリア」
「お父様」
セリア姫はナイフを捨ててグラン国王に抱き着く。
それに応えるように優しくセリア姫を抱きしめるグラン国王。
その温かな目はアトスに向けられる。
「アトス。後で話をしよう」
その一言を残してグラン国王はセリア姫と会場へ戻って行った。




