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おばさんクエスト~あるあるだらけの冒険記~  作者: ぱんちゅう
第一章 邪魔するおばさん編
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あるある020 「余計な仕事は断りがち」

ラビトリス王都までは馬車で5日の道のり。

アインの街で騎士団と俺達用の馬車を用意した。

途中、中継する街はないのでノンストップでラビトリス王都へ向かう。


「馬車でよかったわね」

「さすがにラビトリス王都まで歩きは辛いでしょう」

「着いたら起こしてくれ。私は寝る」


さっそくエレンは荷台で横になり居眠りをはじめた。


「いい気なものだな」

「エレンはどこでも寝られるのよ」

「羨ましいですちゅね、トイプーちゃん。トイプーちゃんもお休みしまちゅか?」

「ワン!」


トイプーはセリーヌの腕に抱かれながら目を閉じる。

セリーヌは子守唄を歌いながらトイプーを優しく撫でる。

そしてしばらくするとトイプーの寝息が聞こえて来た。


「セリーヌ達はラビトリス王都へ行ったことはあるのか?」

「立ち寄ったぐらいですから詳しいことはわかりません。けれど、大きな街ですよ。セントルースの3倍はあるでしょうか」

「そんなにデカいのか!」

「王都なんだから当然じゃない」


セントルースの3倍だなんて想像もできないな。

住んでいる人達は迷子にならないのだろうか。

俺はセントルースの街から出たことがないから外の世界に関心がある。

とりわけ王都だなんてどんな建造物があるのだろう。

想像するだけでもワクワクする。

ラビトリス城は一見したいな。


「ラビトリス王都へ行ったら観光をしようぜ」

「それ、いいわね。名物料理を食べて、ショッピングをして。ついでにラビトリス城も見学しよう」

「いいですわね。ついでにセリア姫の結婚式にも参加できればいいのですけど」

「それは無理だろう。俺達は王族でもないし」

「わからないわよ。ブラム伯爵に頼めば何とかなるんじゃない?」

「その手があったか。後で頼んでみよう」


俺達がラビトリス王都の話題で盛り上がっている横でミゼルはひとり難しい顔をしていた。


「おい、どうしたんだよ、ミゼル。さっきから黙り込んで」

「いや、少し考え事をしていただけだ」

「考え事って。このところ変だぞ。アトスのことを疑るし」


すると、ミゼルが得意気な様子で俺達を見やる。


「何だよ、その顔は?」

「いや、何。面白いネタを仕入れてな」

「ネタって?」


ミゼルはニンマリと笑みを浮かべて勿体ぶる。


「聞きたいか?」

「聞きたい」

「ここだけの話だぞ」


急にミゼルは小声になりコソコソ話をして来た。


「アトスとあの侍女はデキている」

「そんなのわかってるよ」

「まあ聞け。話の続きがあるんだ」

「何だよ?」

「アトスはこの仕事の最中に侍女と駆け落ちするんだ」

「駆け落ちだって!」


俺は驚いで大きな声を出す。

すると、ミゼルが口に指をあててシーと呟く。


「大声を出すな」

「つい」

「それにしてもミゼル。アトスが駆け落ちするって本当なの?」

「昨夜、アトスと侍女が密会をしてる現場を見たんだ。そしたら二人で何やら話をしていた」


アンナがミゼルに聞き返す。


「話って何を?」

「そこまでは聞き取れなかった」

「何よ。それじゃあわからないじゃない」

「だが、あの差し迫った様子を見れば間違いなく駆け落ちの算段をしていたはずだ」


アトスが駆け落ちだって。

しかも、この任務の最中に。

ありえないな。

アトスは正義感が強く律儀だ。

そんなやつが仕事をほっぽって侍女と駆け落ちだなんて。


「ミゼル、考え過ぎじゃないのか?」

「いや、間違いないよ。身分の差がある恋なんだ。周りから反対されるのは目に見えている。だから、二人で駆け落ちして逃亡するんだ」

「それが本当だとすると見逃せないわね」

「私達、現場を目撃できるんでるだなんて興奮して来ますわね」

「アトスは今頃、ドキドキだろう」


アンナ達は俺を除いて三人で盛り上がりはじめる。

この手の話はおばさんの大好物だ。

恋とか愛とかにはめっぽう目がない。

人のことなんだからほっておけばいいと思うが。

蜜を啜るクマのように根こそぎ食らい尽くす。

これじゃあ死肉を食らうハイエナと同じだ。


「アトス達の賭け落ち、成功するかな」

「どうだろう。今は任務中だからな。侍女を連れ出すのにも苦労するだろう」

「夜を待って逃げ出すつもりではありませんか?夜ならば人目も付きませんし」

「それはあり得るな。闇に隠れれば簡単に逃げ出せるはずだ」


本人がいないから好き勝手言ってやがる。

アトスは恋に目が眩むほど愚か者ではないさ。

なんて言ったってラビトリス王国の第一騎士団長なんだからな。

俺は恋バナに盛り上がっているおばさん達をほっておいて外の様子を確かめた。

俺達がくだらない話で盛り上がっている間に部隊はナミラ渓谷までやって来ていた。

と、急に馬車が止まる。


「おい、どうしたんだ?」


俺は馬車から降りてアトスの所へ向かう。

アトスは望遠鏡を覗きナミラ渓谷の崖上を確かめていた。


「アトス、どうしたんだよ?」

「ここからは渓谷を通り抜ける。奇襲を受けやすい場所だからな安全を確認していたんだ」

「何か見えたのか?」

「いいや。しかし油断は禁物だ。念のためカイト達も戦闘準備はしておいてくれ」

「わかったよ」


俺は自分の馬車に戻りセリーヌ達にも伝える。

すると、馬車に緊張感が走った。


「いよいよね」

「奇襲をかけて来るのは盗賊でしょうか?」

「そう見て間違いないだろう。ブラム伯爵を浚い身代金を要求するのかもしれない」

「盗賊の考えそうなことだな」


俺達は武器を手に取り奇襲に備える。

同時に馬車が動き出しナミラ渓谷を通過しはじめた。

先ほどよりも馬車のスピードはゆっくりだ。

アトスが頻りに崖上を確認しながら進んでいるためだ。





そしてナミラ渓谷の中間まで来たところでアトスが部隊を止めた。

見ると崖崩れがあったのか大岩が道を塞いでいたのだ。

部隊にキーンとした緊張感が走る。

すると、崖上に盗賊団が姿を現した。


「来たぞ!皆の者、戦闘体制をとれ!」


アトスの指示を受けて馬車から騎士団が次々に降りて来る。

そして剣を引き抜いて戦闘態勢をとった。

俺達も武器を手にとり馬車から降りる。

と、緊張感の欠片もないエレンの寝言が聞える。


「もっとよこせ。私はまだ飲める……むにゃむにゃ」

「おい、エレン!いつまで寝ているんだ。敵だ!」


ひとり夢の中の世界に入っているエレンを叩き起こす。


「もう、着いたのか?」

「何言っているんだ!敵襲だ!」


俺の言葉にエレンは飛び起きて馬車から降りた。

エレンは大剣を握りしめて崖上の敵を確認する。


「やっと私の出番が来たか。いつでもいいぞ。かかって来やがれ!」


すると、アトスが馬に乗って俺達の所へやって来た。


「カイト達はブラム伯爵の馬車を守ってくれ。盗賊団は私達が引き受ける」

「わかった」

「何だよ。馬車の護衛だけか?つまらない」


エレンは急にやる気をなくして馬車の中へ戻って行く。


「おい、エレン。どこへ行くつもりだ?」

「護衛はお前達だけでやってくれ。私はもうひと眠りする」

「何を勝手なことを言っているんだ。護衛は俺達の仕事だろ!」

「護衛なんてかったるいことやってられるかよ」


今さら何を言っているんだ。

ブラム伯爵を護衛するために、この仕事を受けたのだろう。

ならば最後まで責任を持てよ。


「エレン、勝手なことは許さないぞ。お前もブラム伯爵を護衛するんだ」

「あんなオッサンひとりいなくなったところで国は困らないさ」

「そう言う問題じゃない。お前の責任感の問題だ」

「カイト。それ以上何を言っても無駄よ。エレンはほっておきましょう」


エレンなしでやれるとでも思っているのか、アンナは。

いくら無詠唱で魔法が放てるからと言って近接戦闘のエレンは必要だろう。

もしかして俺に頼るつもりか。

いやいやいや。

俺には荷が重い。

恥ずかしながらゴーレムに一撃も加えられなかったのだからな。

剣の腕はほとんどないと言っていいだろう。


「要はあいつらを近づけさせなければいいのでしょう。簡単だわ」

「セリーヌは後方支援に回ってくれ。盗賊は私とアンナで引き受ける」

「わかりましたわ。二人とも気をつけてください」


アンナとミゼルが前に進み戦闘体制をとる。

セリーヌはその後ろで構えて、俺はブラム伯爵の馬車の前に着いた。

するとブラム伯爵が馬車の小窓から俺に尋ねて来る。


「本当に大丈夫なのですか?」

「心配しなくても大丈夫ですよ。あいつらの腕は確かですから」

「そうではなくお主のことを言っているんだ。一番ひ弱そうじゃないか」


ハッキリ言うな、オッサン。

はっ倒してやろうか。

それはもとより俺は勇者を目指しているんだ。

盗賊ぐらいで怯む訳にはいかない。

俺は剣を握りしめて構えた。


こちらの兵力は騎士団30名とアトス。

に対して盗賊団は50名ほどいる。

数では圧倒的に盗賊団が有利だ。

どう戦うのだアトスは。


アトスは前線に立つと剣を掲げて騎士達を鼓舞する。


「皆の者、ラビトリス王国騎士団の誇りを見せる時だ!ブラム伯爵を必ず守り王都へ帰還するんだ!」


アトスの言葉に答えるようにビトリス王国の騎士団は雄たけびを上げる。

それに対抗するかのように盗賊団が剣を掲げて雄たけびを上げた。

両者の雄たけびがナミラ渓谷に響きわたると盗賊団が一斉に駆け下りて来た。


「来たぞ!」


ラビトリス騎士団と盗賊団が激しくぶつかり合う。

そしてお互いに剣を振り回しながら戦闘をはじめる。

アトスは盗賊団の攻撃を剣で受け流しながら盗賊団を捌いて行く。


「この程度で私は落とせん!」


さすがはラビトリス王国の第一騎士団長だ。

盗賊団の攻撃をもろともしない。

圧倒的に有利と思われた盗賊団だったが、ラビトリス騎士団の猛攻で押されはじめている。

すると、盗賊団の一部がこちらに向かって駆けて来た。


「カイト!任せたぞ!」

「おうよ、任せておけ。アンナ、ミゼル、頼んだぞ!」


アンナとミゼルはこちらに向かって来た盗賊団を迎え撃つ。


「さあ、来なさい。私の業火で灰にしてやるわ」


盗賊団のひとりがアンナに向かって剣を振り下ろす。

すかさずアンナは身を翻して右手を盗賊の前に翳す。

そして。


「フレアランス!」


業火に包まれた炎の槍で盗賊の体を貫いた。

盗賊は業火に焼かれ悶え苦しむ。

そして瞬く間に灰と化して行った。

その様子を見ていた他の盗賊達の動きが止まる。

無理もない。

仲間が灰になったのだ。

恐怖を抱かない方がおかしいだろう。

すると、その隙をついてミゼルが矢を構える。


「どこを見ている。私はここだ!」


ミゼルの放った銀の矢は閃光となりて盗賊の頭を吹き飛ばした。

一撃でサクリと人間の首を刎ねるなんて、どれだけの破壊力があるんだ。

ミゼルは間髪入れずに次の矢を放つ。

そして一矢も外すこともなく盗賊団の首を狩って行った。


「あいつらやるじゃないか。これなら楽勝だ」


すると盗賊のひとりがアンナ達を交わしてこちらに向かって来た。


「カイト、行ったぞ!」

「えっ?」


盗賊が剣を掲げて俺に向かって振り下ろして来た。

殺られる。

そう思った時、盗賊の振り下ろした剣が目の前で止まった。

と言うより白色の鎖が絡みついて盗賊を縛りあげていた。


「カイトさん。大丈夫ですか?」


セリーヌが予めシールズの魔法を放っていたのだ。

シールズは攻撃補助魔法のひとつ。

白色の鎖で相手を縛り上げる魔法だ。

俺は小剣を喉元に突き立てる。


「助かったよ、セリーヌ」


盗賊は諦めたのか剣を投げ捨てて両手を上にあげた。

アトス達の攻防で盗賊団を半数まで減らすことに成功した。

すると盗賊団は踵を返して撤退をはじめる。

すかさずアトスは追撃の指示を出す。


「カイト。ひとりも逃すな!」

「わかった。おい、アンナ、ミゼルあいつ等を捕まえろ!」

「いやよ。私達の仕事は護衛だけなんだから」


アンナは嫌そうな顔をしながら背中を向ける。


「そんな勝手なことを言うな。これは命令なんだぞ」

「私達は軍人じゃないからな。そんな命令に従う言われはない」

「ミゼルまで何を言うんだ。あいつらを逃したらまた来るんだぞ」

「それなら別途料金が必要だ。報酬のない仕事はしない」


ミゼルもはっきりと断って背を向けた。

どいつもこいつも現金なやつばかりだ。

確かに報酬のない仕事はしたくないものだ。

俺だってただ働きをするほど愚かじゃない。

だが、ここで盗賊を逃したら仲間を連れてまた襲って来るのだ。

そんな危険を見逃すなんて普通はしない。

アトスもあえて俺達に指示を出したのだ。

ならば俺達はそれに応える必要がある。


「お前達が行かないなら俺だけでも行く」

「カイト、止めておきなさい。あなたは弱いんだから」

「追い駆けて行ったって帰り討ちに合うのがオチだ」

「アンナさん達の言う通りです。カイトさん止めてください」


セリーヌまでそんなことを言うのか。

確かに俺は弱い。

それは認めよう。

だが、敵を見逃すほど愚かじゃない。

俺は馬車に戻るとエレンを叩き起こす。


「エレン、起きろ!敵を追撃に行くぞ!」

「追撃?私は眠いんだ。ひとりで行け」

「俺ひとりでどうにかできるとでも思っているのか。好きなだけ戦わせてやるから起きろ!」

「盗賊と戦っても歯ごたえがないから止めておく」


なんだよ。

どいつもこいつも使えないな。

こうなったら俺ひとりでも行くしかない。

俺は馬車から飛び降りて外に出た。

すると、アトス達が戻って来たところだった。


「盗賊はどうした?」

「10人ほど取り逃がしてしまった」


アトスは生き残っていた盗賊のところへ行くと尋問をはじめる。


「お前達は誰の手先だ?」

「知るか!」

「素直に話してくれれば手荒なことはしない」

「そんな話を信じるとでも思うのか!どうせ俺を拷問するのだろう」


拷問って。

聞き捨てならない言葉だな。

まさかアトスはこいつを拷問するつもりなのか。


「そこまでわかっているなら話は早い。おい!」


アトスが騎士に合図を送ると騎士が盗賊の右腕にロープを絡ませる。

そして左腕にもロープを絡ませて馬に縛り付けた。


「アトス、本当に拷問をするつもりなのか?」

「それはこいつ次第だ」

「くぅ……」


盗賊は両腕を縛られて地面に大の字に寝ころばせられる。

そしてアトスが馬に鞭を入れた。


「うわぁぁぁっ!」


盗賊は馬に両腕を引っ張られて悲鳴を上げる。

その乾いた悲鳴はナミル渓谷に響きわたった。


「どうだ。話す気になったか?」

「誰が話すかよ」


再びアトスは馬に鞭を入れる。


「うわぁぁぁっ!」


盗賊の悲鳴がナミル渓谷に響きわたる。


「おい、アトス。やり過ぎじゃないか?」

「カイトにはわからないかもしれないが、これは必要なことなのだ」

「しかし、このままだと死んじまうだろう」


アトスは馬を止めて盗賊に尋ねる。


「誰に指示された?」

「ゲ、ゲーテル国王だ」

「やはり噂は本当だったのか」

「話したのだから俺を解放させてくれ」


するとアトスが剣を掲げて盗賊の首を刎ねた。

アトス、曰く、罪を犯した者は捌かれなければならない

裁判と言う方法もあるが、盗賊には剣で十分だとのこと。

俺は初めて目の前で人が死ぬところを見た。

それは何とも言えないいたたまれない気持ちになった。

この先、旅を続ければまた人が死ぬところを目撃するかもしれない。

それでも俺は歩みを止めることはないのだ。

それが勇者を目指す上で必要なことならば。


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