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おばさんクエスト~あるあるだらけの冒険記~  作者: ぱんちゅう
第一章 邪魔するおばさん編
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あるある018 「人のアラを探しがち」

目が覚めてすぐに出発の準備をはじめる。

ヨークシャホテルの前には既にラビトリス騎士団達が馬車を準備していた。

要人であるブラム伯爵の乗る馬車は他の馬車よりも豪華な造り。

ブラム伯爵と侍女、そして護衛の騎士が一緒に乗る。

アトスは部隊を指揮するため先頭の騎馬に乗っている。

俺達は後方の警護を任された。


「皆の者、準備はいいか。まずは隣街のアインを目指す。カイト達は部隊の後方からついて来てくれ」


アトスが騎馬に鞭を入れると部隊が動き出す。

全ての騎士が騎馬に乗っているのではなく、騎馬は先頭の3頭だけ。

他の騎士は徒歩でその後に着いて行く。

もちろん俺達も徒歩だ。

なのでアインの街に着くまでは丸々1日かかるだろう。


「何で私達に馬車がないんだ。歩きで行ったら時間ばかりかかるだろう」

「文句を言うな、エレン。これも仕事なんだ」

「お散歩と思えば気にはなりませんわ」


セリーヌはトイプーを連れながら歩ている。

傍から見たらただの犬の散歩と同じだな。

荷物は馬に乗せているので楽と言えば楽なのだけど。


「アインの街まで50キロでしょ。一日で着くかしら」

「ゴンドリア峠を越えないとならないからな。順調に行ければ夜までには着くだろう」


はるか先を見やるとゴンドリア峠が目に入る。

最短でアインの街へ辿り着けるが峠道は険しい。

エレンと出会った場所もゴンドリア峠だったが、まだデットウルフはいるのだろうか。

例え出会ったとしても今の戦力なら問題ない。

なんて言ったってラビトリス王国の第一騎士団がいるのだからな。


「それにしても要人警護なのに騎士達はやたらと重装備じゃないか?まるで奇襲に備えているかのようだ」

「怖いことを言うなよ、ミゼル。本当に誰かが奇襲をかけて来たらどうするんだ」

「そんなもの、もちろんブチのめすに決まっているだろう」

「エレン達は強いからいいけどな、俺は初心者なんだぞ」

「心配ありませんわ、カイトさん。私達が守りますから」


心強い言葉だ。

もし、ピンチになったら俺はブラム伯爵の馬車に逃げ込もう。

それは俺が助かるためではない。

エレン達の足手まといにならないように戦場から離れるのだ。

その時はトイプーも連れて行くことを忘れないでおこう。


「それにしても解せない。あのオッサンにそれだけの価値があるとは思えない」

「まだ言っているのか、ミゼル。お前は考え過ぎなんだよ」

「まあ、そんなことどうだっていいじゃない。私は報酬がもらえればそれでいいのよ」


お前は金以外に興味はないのか。


「ふわ~ぁ。眠い。護衛ってのも暇だな」

「お前はシャキッとしろ!」

「それだけ警護がしっかりしてるってことですわ」

「まあ、これだけの部隊に突っ込んで来る人はそうはいないわよ」

「だといいけどな」


ミゼルはひとり浮かない顔をしていた。

これと言って襲撃を受けることもなく部隊はゴンドリア峠までやって来た。


「ここからはゴンドリア峠だ。モンスターが出没しやすい場所だ。皆の者、警戒をして進め」


アトスは騎士団に気合を入れ直すとゴンドリア峠に入る。

俺達もその後に着いて行った。

さすがに峠道だけあってモンスターの気配が茂みの中にする。

おそらくデッドウルフだろうが。

しかし、こちらが大人数と言うこともあってか襲撃して来ない。

茂みの中からこちらの様子を伺っているだけでやり過ごすつもりだ。


「おい、カイト。茂みの中にモンスターがいるぞ。やってもいいか?」

「ダメに決まっているだろう。俺達はブラム伯爵の護衛をしているんだ。余計なことはするな」

「ちょっと遊んで来るだけだよ」

「おい、エレン!勝手なことをするな!」


エレンは隊列から離れるとひとり茂みの中に入って行った。

そしてすぐにエレンの掛け声が聞える。

それに交じってデッドウルフの悲鳴が茂みの中にこだました。

全部で五匹の悲鳴が聞えただろうか。

エレンは紫色の魔石を持って戻って来た。


「しけてやがるぜ。5匹しかいなかった」

「デッドウルフは仲間を呼ぶ習性があるんだぞ。もし、仲間を呼んでいたらどうするつもりだったんだ」

「もちろん全部狩ってやるさ」

「はぁ~」


俺は大きな溜息を吐いてガックリと肩を落とした。

エレンなら間違いなくやるだろう。

どんなにモンスターが多くても全部相手にするはずだ。

だけど、こっちにとばっちりが来たらどう責任をとるつもりだ。

エレンの身勝手な行動で仕事が失敗することもあるんだ。

もし、ブラム伯爵が怪我でもしたら取り返しがつかなくなる。

俺達みんな処罰されてしまうかもしれないのだ。


「エレン、自分勝手な行動は慎め。今はブラム伯爵の警護をしているんだ」

「だってよ。暇なんだよ。私達が警護しなくてもあれだけ騎士団がいれば大丈夫だろう」

「大丈夫かもしれないが、俺達は仕事を受けたんだ。責任がある」

「カイトも責任を感じていたんだ。私はてっきり報酬のためだと思っていたわ」


それはお前だけだろ、アンナ。

今は大事な話をしているんだから茶々を入れるな。


「エレン、俺達は……」


俺がしゃべりかけようとした時、セリーヌが俺の肩を叩いた。


「カイトさん。お昼の休憩をとるみたいですわよ」

「もう、そんな時間か」


アトスは部隊を止めて辺りの様子を確認しに行く。

ちょうど峠の頂上あたりで開けた大地が広がっていた。

しばらくするとアトスが戻って来てブラム伯爵の馬車へ近づく。


「ブラム伯爵。ここで休憩をとります。馬車から降りてきてください」

「承知した」


馬車の扉が開くと侍女が先に降りて来る。

そして辺りの様子を確認してからブラム伯爵を呼ぶ。


「ブラム伯爵さま」


ブラム伯爵は重い腰を上げて馬車から降りて来る。

あんなにでっぷりとしていたら馬車から降りるのも一苦労だ。

侍女とアトスの手を借りて降りて来た。


「これから食事の準備をはじめます。ブラム伯爵はこちらへ」


アトスの先導でブラム伯爵は腰を下ろせる場所へ向かう。

侍女はすかさずブラム伯爵の座る椅子を準備する。

そして馬車から少し離れた所に椅子を置いてブラム伯爵を座らせた。


「それでは食事の準備が整うまでここでお待ちください」

「食事の準備なら私がしますわ」

「しかし」

「私は侍女ですから」


食事の準備にとりかかろうとするアトスを制止して侍女は食事の準備をはじめる。

その様子を見ていたミゼルは難しい顔を浮かべていた。


「……」

「おい、ミゼル。そんなところで突っ立っていないでこっちへ来い」


俺が声をかけるがミゼルには届かなかったようでアトスと侍女の様子を見守っていた。


「ミゼルの野郎。俺を無視しやがって」


俺はひとり苛々しながら愚痴をこぼす。

まったくどいつもこいつも自分勝手過ぎる。

リーダーは俺なんだ。

俺の言うことは絶対なんだぞ。

これじゃあトイプーの方がマシだ。


「クン、ク~ン」


トイプーが俺の所へやって来て体をこすりつける。


「トイプーだけだな。俺の言うことを聞くのは。よし、よ~し」


俺はトイプーの体を撫でながら褒めてあげる。

そこへセリーヌがおやつを持ってやって来た。


「トイプーちゃん、おやつですよ」

「ワン、ワン!」

「たくさん食べてくうだちゃいね」


おやつを頬張るトイプーを撫でながらセリーヌが優しく笑う。

相変らず赤ちゃん言葉だけれど。

まあ、トイプーの飼い主なんだから大目にみるか。

俺達がトイプーに構っている間にエレンは侍女に飯の催促をしていた。


「おい、お前。飯はまだか?」

「今、準備しているところです。もう少しお待ちください」

「早くしてくれよな。腹が空き過ぎで背中とお腹がくっついてしまいそうだ」


エレンはどかりと腰を下ろすと今度はブラム伯爵に絡み出す。


「お前、伯爵らしいけど、どれだけ金を持っているんだ?」

「ほっほっほ。街が買えるくらいですよ」

「マジか!それは凄い金持ちじゃないか」


エレンは目を丸くさせて馴れ馴れしくブラム伯爵の肩を叩く。

それを見ていたアトスが慌てて駆けて来てエレンに注意した。


「おい、エレン。ブラム伯爵に無礼な真似はするな!」

「無礼って。私達はおしゃべりしていただけだ」

「そうですよ、アトス殿。私達はおしゃべりをしていただけです」

「言ったろ。お前は辺りの警戒でもしていろ」


アトスは浮かない顔を浮かべながら侍女の元へ向かう。


「あら、アトスさま。あと少しで出来ますからもうしばらくお待ち……キャッ!」

「大丈夫ですか、セ……」

「油が跳ねただけですわ」


アトスはすぐさま白い布を取り出して侍女の指に巻き付ける。

それを嬉しそうに眺めながら侍女が頬を赤らめていた。


「これでもう大丈夫です」

「ありがとう。アトスさま」


見つめ合う二人。

互いに頬を赤らめながらしばらくそのままでいた。

その様子を影から眺めるミゼルの姿があった。


ものの数分が過ぎると食事の準備は整った。

騎士団30名とアトス、ブラム伯爵、侍女、そして俺達5人分だ。

さすがに豪勢な食事とはいかなかったが野菜スープとサンドイッチが用意された。

エレンは料理が運ばれてくるなりかぶりつくように食事をはじめる。

その様子を呆れたように見やりながら、俺はブラム伯爵が口をつけるまで待った。

こういう場合は、まず偉い人から食事をはじめるのがマナーだ。

下々の者はその後で食事をする。

ブラム伯爵はまず野菜スープに口をつける。

そして満足そうな顔を浮かべながらひと言呟いた。


「うまい!」


と。

それを見て俺達も食事に手をつける。

野菜スープはブラム伯爵が評価したように美味かった。

野菜の甘味がスープに染み出していていい出汁が出ていた。

サンドイッチも食べごたえがあってそれだけでお腹がいっぱいになった。


アトスは侍女の隣に腰を下ろして食事をはじめる。

そして「うまい」と一言呟いて侍女の料理を褒めた。

その言葉を聞いた侍女は頬を赤らめながら優しい笑みを浮かべる。

二人はこの短時間で心を通わせたのか仲良さそうに談笑していた。


「怪しい……」

「何が怪しいんだ、ミゼル」

「不自然だとは思わないのか、カイトは」

「何が不自然なんだ?」

「ラビトリス王国の第一騎士団長ともあろう者が侍女に心を寄せるなんて」


ミゼルは疑いの眼差しをアトス達に向けている。


「お似合いじゃないか。年も近そうだし惹かれあっても不思議じゃないよ」

「カイトはわかっていないな。第一騎士団長と言えば各上の存在だぞ。侍女とは身分が違い過ぎる」

「そもそも恋愛に身分なんて関係ないんだよ。好きあったらそこからはじまるんだ」

「カイトにしてはわかったような口を聞くじゃない」


アンナがニヤニヤしながら話に割って入って来る。


「俺だって、そのくらいわかるよ」

「へ~ぇ、意外ね。カイトはまだお子様だと思っていたわ」


アンナから見たら俺はまだお子様だよ。

何せアンナ達は俺の倍は生きているんだからな。


「何よ、その目は?」

「別に」


ただおばさんなんだと思っていただけだ。


「アンナはどう思う?」

「あの二人?」

「そうだ」

「お似合いだと思うわ」

「ほら、俺の言った通りじゃないか」


ミゼルは勘ぐり過ぎなんだよ。

まるで小姑のようだ。

もしかして妬いているのか?

ミゼルには恋の女神が降りて来ないことに。

まあ、既におばさんなんだ。

おばさんを好んでやって来る男なんてそうそういない。

それは熟女好きなマニアックな男性だけだろう。


「セリーヌはどう思う?」

「そうですね。立場が違えば違うほど燃え上がるものですわ。恋愛に身分の差は関係ありませんもの」

「ほらみろ。ミゼルは人を疑り過ぎなんだよ」

「……」


セリーヌの最もな解答にミゼルは黙り込む。

そして納得していない顔でアトス達を見守っていた。

そんなやり取りをしている俺達を無視するかようにエレンはいびきをかいて寝ていた。

食ってすぐに寝ると太るぞ。

と、ツッコミを入れたくなったが止めておいた。

エレンに何を言っても無駄だからな。


それから小一時間休憩をとったところでアトスが出発の合図を告げた。

それは雲行きが怪しくなりはじめたからだ。

空は鈍色の雲で覆われて今にも雨が降り出しそうだった。


「雨に降られる前にアインの街へ行くぞ」


アトスは合図をするとゴンドリア峠を下って行く。

今いる場所はセントルースとアインの街の中間地点。

順調に進めれば3時間ほどでアインの街へ辿り着けるはずだ。

あいにく下り坂だったので馬車は順調に前に進んで行った。

しかし、天気には恵まれず、道半ばの所で雨が降り出した。


「雨が降って来やがったぜ」

「エレンが自分勝手なことをするから罰が当たったんだ」

「私のせいかよ」


俺のツッコミにエレンは不服そうな顔を浮かべる。


「これじゃあずぶ濡れになっちゃうわ。雨宿りはしないのかしら」

「雨宿りなんかしていたら日が暮れてしまうぞ」

「せめて傘でもあればいいのですけどね」


あいにく雨の準備は何もして来ていない。

そもそも雨が降ることを想定していなかったし警護だから必要ないと思ったからだ。

セリーヌの言う通り傘ぐらいは用意しておけばよかったと後悔している。

すると、ブルム伯爵の乗っている馬車が大きくバウンドした。


「どうした!」

「馬車がぬかるみにハマってしまいました!」


アトスは部隊を止めてブルム伯爵の馬車へ向かう。

そして車輪の様子を確かめながら部下達に指示を出す。


「騎馬で馬車を引くんだ!他の者達は馬車の後ろから押してくれ!」


アトスの指示を受けて騎士達が準備にとりかかる。

騎馬は前から馬車を引き、騎士達は後ろから馬車を押す。

俺達も力を貸すため後ろに着いた。


「よし、私の掛け声に合わせて引くんだ。行くぞ。せーの!せーの!」


アトスの掛け声に合わせて騎士達が後から馬車を押す。

すると、馬車が大きく揺れはじめる。


「よーし。もう、一息だ!せーの!せーの!」


騎馬が一斉に馬車を引き、騎士達が馬車を押す。

すると馬車がガクンと動き出してぬかるみから抜け出した。


「ふ~。抜けたか」


俺は力尽きてその場にどっかりと座り込んだ。

それは騎士達も同じだったようでその場に座り込んでいた。

騎士達はすっかり泥だらけで顔まで真っ黒だ。

アンナ達は自分の姿を見るなり愚痴をこぼす。


「せっかくの一張羅が。これじゃあ台無しだわ」

「これではお洗濯しないと落ちないですわね」


雨でぐっしょりだし、おまけに泥だらけ。

今の状況は最悪と言える。

しかも体が冷えて来てしまった。


「寒いな」

「このままだと風邪を引いちゃうわ」

「早くアインの街へ行って温まらないと」


アトスはブラム伯爵に事情を説明している。

雲で隠れているので太陽がどのあたりにあるのかわからないが。

辺りが少し暗くなりはじめた。

陽が沈むのも時間の問題だろう。


「よし、出発する!日没まであと僅かだから急ぐぞ!騎馬隊は馬車を先導して一足先にアインの街へむかう。残りの者達は後から来てくれ!」

「それじゃあ警護が薄くなるんじゃないのか?」

「この雨だ。敵も襲撃しては来ないだろう。それにアインの街まであと一息だしな」


そう言うとアトスは騎馬に乗り馬車を先導してアインの街へ向かった。


「あいつらだけズルいな」

「仕方ないだろう。俺達は馬に乗っていないんだ」

「私達も馬車にしておけばよかったわね」

「警護が馬車に乗れるとでも思っていたのか」

「そんなの聞いてみないとわからないじゃない」


聞かなくてもわかる。

警護に馬車を出すほどアトスも甘くはないだろう。

俺達はあくまで仕事で警護をしているんだ。

それならばそれなりの働きをしなければならない。

でないと報酬をもらえないからな。


「馬鹿なことを言っていないで行くぞ」


俺達と残りの部隊はアインの街へ向けて出発した。

しかし、次第に雨は激しさを増し土砂降り状態になる。

さすがにこの雨で騎士達も悲鳴を上げる。

なにせ鎧を身につけているうえ、インナーが雨を含んで重くなっている。

それはアンナ達も同じようで服がぐっしょり濡れて重さを増していた。


「これじゃあアイン街へ着く前に倒れちゃうわ」

「私は平気だけどな」


エレンはひとり余裕気な表情をする。

それもそのはず。

エレンの服はビキニアーマーなので雨の心配もない。

濡れても大した重さにもならない。


「私もエレンみたいにビキニアーマーにしようかしら」


おいおい。

これ以上、変態を増やしてどうするのだ。

露出狂はエレンだけで十分だ。

それにどことなしか騎士達もエレンの姿を見て鼻の下を伸ばしている。

まあ、ほぼ裸の女性が目の前にいるのだから無理もない。

それが力となったのかはわからないが騎士達は力を振り絞って前へ進んだ。

そしてアトス達から遅れること1時間でアインの街へ到着したのだった。


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