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おばさんクエスト~あるあるだらけの冒険記~  作者: ぱんちゅう
第六章 集合するおばさん編
162/361

あるある161 「期待に応えがち」

集計作業は30分を要しようやく集計結果が出た。

かなり接戦を極めていたので正確な集計が必要だったからだ。

どの挑戦者もかなりの高得点を得ている。

もちろん論外な挑戦者もいたが、この結果が全てを物語っている。


ステージ上には挑戦者達が一列に並び結果を待っている。

その顔には緊張が窺えてぎこちない笑みを浮かべていた。


ダニエルは集計スタッフが持って来た資料に目を通しながら司会を進行する。


「それでは皆様。ようやく集計結果が出たようです。素晴らしい戦いを見せてくれたおかげでかなりの接戦状態です。ですが、これで勝負は決まります」


会場の期待を一身に集めてからダニエルはお馴染みの文句を叫ぶ。


「結果発表!」


ダニエルの言葉に合わせてステージ上部に隠れていた電工掲示板が露出される。

会場のどこから見てもわかるような巨大なもので、ここに総合獲得ポイントが表示される仕組みだ。


俺達、審査員は審査員席から結果を見届けることになる。

もちろん俺達も結果は知らされていないので楽しみである。


「それではトップバッターのカスミさんの獲得ポイントからはじめたいと思います」


スタッフに誘導されてカスミがステージの中央へ移動するとダニエルの質問が入った。


「結果発表を前にして今のカスミさんの心境をお聞かせください」

「やれることはやりましたから後は神に祈るばかりです」

「カスミさんはやりました。惜しげもなくTバッグの水着を着て十分にアピールしました。この結果が全てを物語っています。それでは結果発表です」


少しはにかみながら小声で呟くカスミは祈るように目を閉じて結果発表を待つ。

その様子を確認しながら頑張ったカスミを称えながらニエルは結果発表へと移行する。

効果音であるドラムの音が鳴り響くと同時にステージ上にスポットライトが走り出してカスミのところで集まる。

瞬間、巨大な電光掲示板の数字が回転をしはじめる。


最初は一の桁の数字が9で止まると会場から期待の吐息が零れる。

続くように十の桁の数字が6、7へと回転して8で止まった。


「さあ89ポイントと二桁が決まりました。残るは百の桁。どの数字を示すのか!」


百の桁の数字がゆっくりと回転しながら2、3、4へと続いて行く。

その度に「もっと」と言う言葉が会場から湧き起り最後に示す数字に期待を込める。

そしてさらにゆっくりとしたスピードに落ちながら数字が5、6へと続くと7で止まった。

巨大な電光掲示板には「789」と言う数字が表示されて点滅しながらアピールする。


「おっと。これは最高得点まで11ポイント足らず。ですが高得点をはじき出しました。カスミさんの獲得ポイントは789ポイントです!」


ダニエルが興奮しながら叫ぶと緊張していたカスミの顔に笑みが浮かぶ。

そして飛び上がるように喜びながら応援してくれたスケベおやじ達に頭を下げていた。


「やるな、カスミのやつ。まあ、あれだけエロスを出したのだから納得の結果だけど」

「優勝候補で間違いないわね。この後の結果発表が楽しみだわ」


ただ一つ問題がある。

それはカスミもおばさんと言うことだ。

実年齢はわからないがアラサーであることは間違いない。

あのたわわなおっぱいと張りがなくなって柔らかになった胸肌を見ればおばさんであることが一目瞭然だ。


もしカスミが優勝することになったとしたらカイト軍団へ入団が決まる。

若返りを果たすことは叶わずにますますおばさん密度が高まってしまうことになる。

それは大問題だ。


ひとり頭を抱えながら悶えているとナッシュの結果発表に移っていた。


「一発目で高得点が出てしまいましたが追い越す自信はありますか?」

「あたり前じゃない。私を誰だと思っているのよ。プリティーでキュートなナッシュちゃんなのよ」


真面目に質問をして来るダニエルに対してどこから湧き出して来たのかない胸を大きく逸らしながら余裕を見せる。

会場からはナッシュ推しのファン達からナッシュコールが巻き起こる。


スケベおやじほどロリっ子が好きだからナッシュ推しのファンはほぼスケベおやじで構成されている。

ナッシュのヘアスタイルに合わせたオレンジ色のウィッグを被り、売店で買ったであろうナッシュの顔写真が印刷されたTシャツを着ている。

ナッシュのシンボルカラーはオレンジ色だから手に持っている団扇もメガホンもオレンジ色だ。

これもみんなアンナが企画して販売している応援グッズなのだ。


それぞれの挑戦者ごとにシンボルカラーを決めて応援グッズに反映させている。

そうした方が誰推しなのかパッと見でわかりやすく区別もしやすいから混乱を防げるのだ。

まあ、アンナの頭の中には金儲けのことしかないから、そこまで配慮したとは言い切れないが。


「さあ、得点は!」


ダニエルが巨大な電光掲示板に手を翳すと数字が回転をしはじめる。


数字はゆっくりと回転しながら一桁の数字が9で止まるとナッシュファン達の期待まじりの吐息が零れた。

それに続くように十の桁の数字が7、8と回転して9で止まる。


「さあ、99ポイントと二桁の数字が決まりました。これで百の桁が7であればナッシュさんが単独一位となります。果たして!」


興奮しながら言葉を発するダニエルにまんざらでもない顔をしながらナッシュは巨大な電光掲示板に視線を向ける。


最高得点は800満点だから、もし799点をとれば単独一位となる。

もちろん俺はナッシュに100ポイントを入れようと思っていたが90ポイントにした。

厳正な審査を行わないと後々問題が残るから徹底したのだ。


巨大な電光掲示板の百の桁の数字がゆっくりと回転しはじめて数字が目に見えるようになって来る。

2、3、4と数字が回転するたびに「もっと」コールが巻き起こりナッシュファン達が騒ぎ出す。

当のナッシュも両手を組みながら祈るように結果を見守る。

そして、百の桁の数字が6を表示したところで6と7の数字が交互に点滅して焦らせる。


「お願い、7で止まって!」


しかし、ナッシュの祈りは届くことなく百の桁の数字は6で止まった。


「一歩及ばず。ナッシュさんの獲得ポイントは699ポイントです。現時点で2位!」

「2位じゃダメなのよ。あーあ、負けちゃった」


ガックリと大きく肩を落としながら背を向けるナッシュの背中には悔しさが滲み出ている。

ナッシュ推しのファン達も大きなため息を吐いて残念がるが会場からは拍手が巻き起こった。


ロリっ子で699ポイントも獲得したことに会場の観客達も感心したのだろう。

ロリっ子にしては頑張った方だがナッシュにかけていたのは間違いなくエロスだ。

可愛いだけじゃスケベおやじ達のハートは打ち落とせないことを身に染みてわかったことだろう。

次があることはないのだが、もしあったとしたらセクシー路線で攻めるべきだ。


「では、次と……」


そこまで言いかけてたダニエルは目の前に立っていたドスコイを見てあんぐりと口を開けて立ち止まる。

ドスコイこと緑山はムスッとした顔をしながらダニエルを下目に見やる。

そして親指を立てて巨大な電光掲示板へ向けると進行を促して来た。


「そ、そうでしたね。では、緑山さんの得点を発表したいと思います!」


ダニエルが慌てて合図を送ると巨大な電光掲示板の数字が回転をはじめる。


一の桁の数字がスピードを緩めると6、7、8へとスロー回転して行き9のところで停止した。

それを確認するなり会場から驚きの声が沸き上がり静かな喧騒を生み出す。


会場にいた誰もがドスコイこと緑山にポイントが入るなど思ってもいなかったからだ。

それは審査をした俺も同じで緑山には1ポイントも入れずに流していた。

まあ、ドスコイファンもいるくらいだから少しくらいポイントが入っても理解できる。

ただ、この後が問題だ。


十の桁がどれほどの数字をつけるかでドスコイの人気度も変わって来る。

恐らくだが百の桁の数字は0であることは間違いないだろう。


「一の桁の数字が9と出た。これは高得点狙いか!」


心にもないことを言うダニエルは会場を盛り上げるため言葉を振り絞って叫ぶ。

その言葉に気持ちが籠っていないことは会場にいた誰もが知るところだった。


巨大な電光掲示板の十の桁の数字がスローダウンをはじめるといっしょに百の桁の数字もスピードを落とす。

そして十の桁の数字が9、0、1とスロー回転すると3のところで停止した。

もちろん百の桁の数字は0を表示していた。


「緑山さんの獲得ポイントは39ポイントです!現在、3位」

「あたり前だ。まだ3人しか発表していないんだから。それよりも39ポイントも獲得するなんて」

「だから言ったでしょう。どの世界にもマニアな人達がいるのよ」


ひとりノリツッコミをしながら俺が驚愕の顔を浮かべていると窘めるようにアンナが言葉を添えた。


世の中にはふくよかな女性を好む人達がいるってことは知っている。

ただ、ドスコイはふくよかさを通り越してデブやかなおばさんなのだ。

もしかしてドスコイにポイントを入れた奴は超デブ専でマザコンなのかもしれない。

そう考えればとりあえず納得は出来る。

だが、俺としてはこの現実は受け入れがたいものがあった。


ドスコイは大きな溜息を吐きながら肩を落としていたがその顔には達成感で満たされる。

それは会場からドスコイを励ます言葉が投げかけられたからだ。


「緑山、よくやった!また、次があるさ。頑張れ!」


ドスコイ推しのファンがドスコイの健闘を称えると会場から拍手が湧き立つ。

水面に波紋が広がるように拍手の波が広がって行くと会場は一体感に包まれた。


「それでは次の結果発表に移りたいと思います!エマさん前へどうぞ!」


ダニエルに促されてエマがステージの中央に立つと会場のスケベおやじ達が色めき立つ。

エマコールを叫びながら割れんばかりの声援と拍手で迎えた。


エマは当然であるかのごとく仁王立ちしながら結果発表を待つ。


「カスミさんが最高得点を出しましたが、今の心境をお聞かせください」

「ワシが優勝するに決まっておる。さっさと結果を発表するのじゃ!」

「さすがはロリっ子代表エマさんでしょうか。自信しかないと言い切れるのはエマさんしかいないでしょう。では、エマさんの獲得ポイントは!」


会場をひと睨みしながら啖呵を切るエマの迫力に押されてダニエルも頷きながら合図を送る。

すると、巨大な電光掲示板の数字が回転をはじめて早くも一の桁の数字がスローダウンする。


「カイトはどう見てるの?」

「ナッシュとは違うエロスたっぷりのロリっ子だからな高得点は期待できるだろう」

「実は私も彼女に目をつけていたのよ。彼女なら優勝争いを盛り上げてくれるだろうとね」


いやらしい目で白スク姿のエマを見つめながら感想を述べるとアンナも同意して来た。

もちろんアンナのことだから金儲けの視点から見てエマがやってくれると期待しているだけだが。

ただ、その期待を裏切らないような結果をエマが叩き出した。


巨大な電光掲示板に示された数字はカスミと同じ789ポイントだった。


「おおっと。最高得点のカスミさんと同率の得点が出たぞ!エマさん789ポイント獲得です!」


その結果を見てエマは唇を噛み締めて悔しそうな顔を浮かべる。

それとは逆に会場のボルテージが上がりエマ推しのファン達からは歓声と拍手が巻き起こった。


「同率一位なんてことがあるのか!」

「ポイント形式にしているからあって当然よ。それよりますます面白くなって来たわね」


ニンマリといやらしい笑みを浮かべながら指折り金の勘定をしているアンナの顔は満足気。

同率一位で優勝決定戦を行えばますます観客達は色めき出し金儲けが出来る。

ただ優勝決定戦はジャンケン大会になっていたから勝負は一瞬で決まるだろう。


「優勝決定戦はジャンケンか?」

「その予定だったけれど変更しようかしら。カスミもエマもファンがたくさんいるからまた水着審査もいいかもね」

「お前の頭には金儲けしかないのか?」

「あたり前じゃない。稼げる時に稼いでおかないとお金はなくなるものなのよ。また、借金暮らしに戻りたいわけ?」


呆れ顔を浮かべる俺を相手にすることもなくアンナは借金地獄のことを持ち出して俺を攻めて来る。

しかし、そもそも借金を作ったのはエレンがコロセウムで敗退したからであって俺のせいではない。


「俺を攻めるなよ。あれはエレンのせいなんだから」

「エレンでも誰でもいいのよ。私は貧乏暮しはしたくないの。わかる、この気持ち?」

「わかってますとも。せいぜいたんまりと稼いでくださいな」

「わかればいいのよ」


俺が妥協して歩み寄るとアンナは納得したような顔を浮かべて髪を掻き分けた。


俺達がそうこうしている間にライレイの結果発表が行われていた。

会場はライレイファン達の雄たけびと歓声が湧き起り騒がしい喧騒に包まれている。

巨大な電光掲示板に目を向ければ789ポイントの数字が目に飛び込む。

ライレイもまたカスミやエマと同率一位で789ポイント獲得していたのだ。


ライレイは満足そうな顔を浮かべながらファン達に手を振って応えている。


「またしても最高得点が出ました!これで同率一位はカスミさん、エマさん、ライレイさんの3名です。果たしてこの記録を破れる者は現れるのか!」


目をカッと見開きながら興奮気味に解説をするダニエルは次の挑戦者を見て呆然とした。

目の前に立っていたのは色気のない補正水着を着ている大根おばさんだったからだ。

大根おばさんは優勝者気分でステップを踏みながらステージの中央に立つ。

そして大根を手に持つと大根を向けながらダニエルに向けて催促して来た。


「ちょっと早くしてちょうだい。待ちくたびれて疲れちゃったわ」

「は、は、は……」


ポカンと呆気にとられながらダニエルは声にもならない声を発する。

それは言葉にすらなっていなくため息のような呆れてものが言えない時に飛び出る吐息だった。


苦笑いを浮かべながら引きつった顔でダニエルは進行をはじめてスタッフに合図を送った。


「それでは大根おばさんの結果発表に移ります。どうぞ!」


スタッフもダニエルの意図を感じたようで焦らせる結果発表でなく即数字が出るように調整した。

巨大な電光掲示板の数字が回転をはじめるとすぐにオール0の数字をはじき出してピタリと止まった。


「大根おばさんの獲得ポイントは0ポイントです!」

「何よ。どう言うわけ?1ポイントも入らないなんて機械の故障じゃないの?」

「機械は壊れていません。これが現実です」


現実をつきつけられて納得のいっていない大根おばさんは不機嫌になりながら機械にケチをつけ出す。

それを制するかのようにダニエルが淡々と言葉を発すると大根おばさんはブー垂れながらステージに座り込む。

すると、会場から「帰れ」コールが巻き起こり会場が騒がしい喧騒に包まれた。


「さすがは大根おばさんだな。あんなふてぶてしい態度がとれるのはおばさんぐらいだろう」

「現実を受け入れられないなんて憐れね。ああなってしまったらお終いだわ」


憐みの眼差しを向ける俺の横でアンナは右手を振り上げてスタッフに合図を送る。

すかさずスタッフがステージの袖から飛び出て来て居座る大根おばさんを強制退去させる。

大根おばさんは必死に抵抗していたがスタッフに捕らわれてステージを後にした。


「後はメリルだけだな」

「そうね。高得点を期待できるのはメリルぐらいなものね」

「あれだけ過激なエロスを醸し出していたんだ。優勝を狙えるはず」


いやらしい視線をメリルに向け俺が顔を緩ませているとアンナの鋭いツッコみが入る。


「あら、カイトはああいうお子様が好みなわけ?」

「好みって言うか若さが好きなんだ。ピチピチしていて意気がいいし純粋なところがもっといい」

「全く、カイトはお子様ね。女の旬は30からよ。もっと目を見開いて現実を見なさい」


若さに勝る武器などありはしない。

とりわけ色気ともなればなおのこと。

たしかに熟女のエロスもあるけれどやっぱり若いエロスの方がいい。

果物も腐る寸前は甘いけれど歯ごたえがなくて旨味も欠ける。

それに比べ色付きはじめた果物は適度な酸味と確かな歯ごたえがある。

若さも同じで熟女よりもエロスは高いのだ。


「若さに勝るエロスなんてないさ。お前ももっと現実を見ろ」

「これだからロリコンは困るのよ」

「言ってろ」


これでもかと言うぐらいに胸元を強調しながらアピールしてくるアンナだが全く相手にしないと諦めて肩を竦めてみせた。


「それではメリルさんの結果は!」


巨大な電光掲示板の数字が回転しはじめるとメリルは目を閉じて祈りながら結果を待つ。

その期待に応えるように一の桁の数字が8で止まると続けて十の桁の数字が8で止まる。


「電光掲示板は88を示した!」


巨大な電光掲示板が数字を示した時に会場から残念そうな吐息が零れるがメリルファン達は祈るように結果を待つ」。

メリルも同じように小さなため息を零すが最後まで自分を信じた。


そして百の桁の数字は4、5、6とスロー回転して7できっかりと止まった。


「メリルさんの獲得ポイントは788ポイントです!暫定2位です!最高得点の壁は高かった。それでも頑張った。みなさんメリルさんに盛大な拍手を!」


ガックリと項垂れているメリルを励ますようにダニエルが意気ばりながら会場に投げかけると会場から拍手と歓声が沸き起こった。


メリルはそれに応えるように顔をムクリと上げると手を振ってファン達の声に応えながらステージを後にした。


「やっぱり若いっていいよな。負けてもさっぱりしていて後がいい。それに比べておばさんと来たら」

「何よ。大根おばさんと一緒にしないでよ。私はあんな無様な行動はしないわよ」


俺のツッコんだ質問にアンナは知らぬ顔をしながら顔の前で手を振って応える。

そう言うところがおばさんだと言うことにまだ気がついていないようだ。

まあ、知らぬが華と言う言葉があるくらいだから知らない方がいいのだろう。


その後のおばさん達の結果もとりわけ大したものではなくすんなりと結果発表が終わった。


「さて、同率一位の中から優勝者を決めることになるのですがジャンケンで決めることになっています。ルールはジャンケン大会と同じで最初はグーです。ジャンケンに勝った人が優勝者となります」

「ちょっと待って!」


ダニエルがジャンケンのルールを説明しているとアンナが右手を上げて立ち上がる。


「いかがされましたか?」


アンナはステージ上に駆け上がるとダニエルからマイクをはぎ取って叫んだ。


「このオーディションの優勝者はこの3人に決まりにするわ!この者達がエレンとの挑戦権と優勝賞金を得るの。もちろん3頭分になるけどね」

「そ、それはいったい?」

「何?文句があるわけ?私が優勝って言ったんだから優勝よ。文句は言わせないわ」


アンナの宣言を受けて会場からどよめきが湧き起り観客達はお互いの顔を見合わせる。

それは挑戦者達も同じだったようでカスミもエマもライレイもきょとんとしていた。


「おい、アンナ。金儲けするんじゃなかったのか?」

「気が変わったわ。優勝はこの3人で決まりよ」

「でもな、どの世界に3人の優勝者がいるんだよ。せめて順位くらい決めろよ」


周りのざわつきを制するように断言するアンナは一歩も引かず、提案する俺に睨みを利かせて黙り込ませる。


優勝者が必然とカイト軍団に入団することになるのだから出来れば若い人がいい。

でないと、平均年齢だけ上がるだけで若返りなど果たせなくなってしまう。

カスミやライレイのエロスは歓迎したいとことだが、エロスだけでは……。


「せめて3人を勝負させて優勝者を決めた方がいいんじゃないか?その方が強さもわかるし一石二鳥だろう?」

「3人の強さなんて見ただけでわかるでしょう?カイトの目は節穴?」


まるで俺を子ども扱いしながら挑発して来るアンナの目には3人の強さがわかっているようだ。

エロス意外、俺にはさっぱりわからないが同じ戦士として感じるものがあるのだろう。


「ミゼルはどう思うんだよ?」

「私もアンナの意見に賛成だ。出来れば1人と言わず3人をカイト軍団に迎え入れたい」

「仲間が多い方が楽しいですしね。私もアンナさんの意見に賛成です」


ミゼルもセリーヌも嬉しそうな顔をしながら優勝者3人へ期待の視線を向ける。

カスミもエマもライレイも戸惑いながらお互いの顔を見合わせて結果を待っていた。


ミゼルが言う通りこの3人がカイト軍団に入団してくれれば戦術の幅は広がるのは間違いない。

ただ、エマを抜かした他の2人がどう言った戦士なのかでも変わって来るが。


エマは銃使いだから中遠距離攻撃要員として動かせる。

ミゼルのカバーできない範囲もカバーできるようになるから戦闘を有利に進められるだろう。

問題は残りの2人だ。

エレンの代わりとなる近接攻撃タイプの戦士ならば歓迎したいが、それ以外だとあまり好ましくない。

今は水着姿なので見た目からは全く判断が出来ない。


「話しはまとまったでしょうか?そろそろ結果発表に移りたいのですが」

「3人同時優勝にするわ。それで問題ないわね?」

「「異議なし」」


こちらの顔色を窺うように尋ねて来るダニエルにアンナはきっぱりと答え俺達に問いかけて来た。

ミゼルとセリーヌは納得した様子で声を揃えて回答するが俺の中には何か煮え切らないものが残った。


「まあ、アンナがそこまで言うなら反対はしないけれど、しっくりこないよな。優勝者が3人だなんて」

「常識に囚われていてばかりではダメなのよ。新時代を生きるには新しいことをしなくちゃね」


アンナはカスミ達の前に進み出ると確かめるように3人に問いかける。


「あなた達は問題ないわよね?」

「アンナさんが決めたことなら私は従います」

「無論じゃ。ワシに反対の意志はない」

「結果がそうなっているんだから受け入れるしかないわ。私も意義はなしよ」

「じゃあ、決まりね」


カスミもエマもライレイも反論することなく納得した顔を浮かべながら返答する。

それを確認するとアンナがツカツカと歩いて行きダニエルからマイクをはぎ取る。


「優勝宣言は私がするわ。あなたは下がっていて」

「は、はあ……」


司会のお株を奪われて戸惑いを見せているダニエルはすごすごと下がって行く。

入れ替わるようにアンナがステージの中央に踊り出ると会場を見渡す。

そして静かに深呼吸をして心を落ち着けると観客達に向かって優勝宣言をした。


「審議の結果を発表するわ。このオーディションの優勝者はカスミ、エマ、ライレイの3人よ!」


アンナの言葉を聞いた観客達は驚きを隠せず一瞬言葉を飲んで静寂を見せる。

しかし、すぐに状況を理解したファン達の間からパラパラと拍手が湧き起る。

その拍手は徐々に広がって行き会場を占めると歓声と共に会場に鳴り響いた。


オーディションの優勝者はカスミ、エマ、ライレイの3人に決まり3人ともエレンとの挑戦権を得た。

優勝賞金は3分の1の金貨30枚ずつに分配され残りの金貨10枚は企画演出料となってアンナの懐に入った。

はじめからアンナはこれを狙っていたのではないかと思うぐらい鮮やかな決断に疑問が生じてしまう。

いずれにせよアンナが儲かることはカイト軍団の懐も温かくなることだから歓迎しないといけないだろう。


そしてオーディションの最終のイベントである後夜祭を迎えることになるのだった。


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