あるある159 「死闘を繰り広げがち」
クイズ大会はいよいよ第2戦目を迎えた。
ナッシュ、メリルはもちろんのこと予選から勝ち上がって来たおばさん達が並ぶ。
この組にはただのおばさんはいないが平均年齢が高くアラサー世代が中心だ。
「いよいよはじまりました。本戦第二戦目。ルールは第一戦目と同じでクイズで勝敗を決めます。先に10ポイント先取した人から勝ち抜けとなります。3人が勝ち抜けした時点でクイズは終了です。しかし、敗者復活枠があるのでなるべく高得点を狙って頑張ってください」
お馴染みの悠長な口調でダニエルがルールの説明をするとナッシュ達は興奮しはじめる。
鼻息を荒げながらテーブルのボタンを何度も押してちゃんと動作をするか確認したり、落ち着かない様子でキョロキョロと対戦相手を見渡したりと。
クイズには自信があると言っていたが本番になるとやっぱり緊張が抑えられないのだろう。
「あいつら大丈夫かな」
「あの子達と知り合いなの?」
「知り合いってほどでもないけれど知っているかな」
「断っておくけど個人への応援は禁止だからね」
「わかってるよ」
念を押すようにアンナが釘を刺して来るので煙たがるように手を振って応える。
我儘な子供を躾けるように繰り返し言うのは俺のことを信じ切れていないからだろう。
個人的にはおばさん達が勝ちあがるよりもナッシュ達のような若い娘が勝ってくれた方がいい。
カイト軍団の若返りも果たせるし、水着審査でも盛り上がる。
しわがれたおばさんの水着姿を見るよりも若くてピチピチした娘の水着姿の方が客ウケもいいからだ。
この会場にひしめいているオヤジ達もきっと同じことを思っているはずだ。
「それでは第一問。占いの館でエレンに子供がいることを知らされたカイトですがエレンンの子供は何人でしょう?A.ひとり B.ふたり C.さんにん」
ダニエルが問題を読みあげている傍から早押しをはじめる挑戦者達。
けたたましいボタンの連打音が会場になり響き渡るとナッシュの電光掲示板が赤く光った。
「A.のひとり!」
「正解です。ナッシュさん1ポイント先取です」
「よっしゃー!」
ナッシュはガッツポーズをしながら全身で喜びを露わにする。
まだ、一問正解しただけなのに勝ったかのような喜びようだ。
この調子で行けば後半は力尽きてへばっているかもしれない。
「第二問。カイトと一緒に行動することになったエレン。はじめて倒したモンスターは何? A.デッドウルフ B.ゴブリン C.ビックマウス」
再び挑戦者達がボタンを連打して解答権を得ようと試みる。
すると、今度はメリルの電光掲示板が赤く光った。
「A.のデッドウルフ!」
「ブブー。不正解です」
「えー、何でよ。カイト達がはじめて戦ったのはデッドウルフじゃないの」
納得がいかない様子のメリルは頬を膨らませてブー垂れながらダニエルに睨みを聞かせる。
その威圧に一瞬怯みそうになるがダニエルは自分を取り戻してクイズの進行に努める。
そして次の解答権を得たのは艶やかな黒髪のロングヘアーが特徴の古風な雰囲気が漂うおばさんだった。
そのミステリアスな黒い瞳に見つめられたら一瞬で逝ってしまいそうなほど澄んでいる。
おばさんと分類するには惜しいほどの美貌とたわわなおっぱいが眩しい。
大きさで言えばGカップと言ったところだろうか。
「B.のゴブリンです」
「正解です。カスミさん1ポイント先取」
正解したカスミはとりわけ喜ぶでもなく平然としながら次の問題に集中する。
その隣でまだ納得していないメリルが食らいつくようにダニエルに抗議していた。
「何でゴブリンなのよ。デッドウルフでしょう!」
「これは引っ掛け問題です。カイトが最初に戦ったモンスターはデッドウルフですが、エレン達と一緒に戦ったモンスターはゴブリンなんです」
「えー、そんなのズルいわ」
「これもルールです。メリルさんは1回休みです」
ふて腐れながらも仕方なさそうにテーブルに伏せるメリルの顔は鬼のような形相に変わっている。
まんまとアンナが仕掛けた引っ掛け問題に引っかかってしまった自分が許せないようだ。
そのやるせない思いが怒りとなってダニエルに向けられていたことは他でもない。
ダニエルも変な汗をながしながらクイズの進行に努めていた。
「お前らしい癖のある引っ掛け問題だな」
「普通に問題を出していても面白くないからね。これも場を盛り上げるための演出よ」
悪びれた様子もなくさらりと言ってのけるアンナは会場を見渡しながら満足気な顔を浮かべる。
アンナの狙い通り引っ掛け問題で観客のボルテージも上がっていてひと際盛り上がりを見せていた。
メリルを推しているオヤジ達はガックリしていたがメリルを励ますような声援も送られていた。
「第三問。地下通路でビックマウスと戦ったカイト達。とどめを刺したのは誰? A.カイト B.ミゼル C.エレン」
問題が読み上がる前から激しいボタンの連打音が響き渡る。
先ほどとは違って簡単な問題に誰もがスタートダッシュしたのだ。
解答権を得たのはまたしてもカスミ。
表情を変えることもなく淡々と答えを述べる。
「Cのエレン」
「正解です。カスミさん2ポイント先取」
それに不平を唱えたのはいうまでもなく、メリル。
ダニエルに抗議をしながら不満をぶちまける。
「ズルいわ。私の時だけ引っ掛け問題で今度はチョー簡単な問題じゃない。こんなの無効よ」
「これもちゃんとした問題です。文句があるならば主催者のアンナさまに言ってください」
「何をしているの、ダニエル。ちゃっちゃと進めなさい」
「はい。すぐに」
アンナのツルの一声でメリルも口を閉ざしダニエルが次の問題を読み上げる。
ここでアンナに逆らったら退場させられるかもしれないと悟ったのだ。
アンナはオーディションすら動かせるほどの権力を有している。
絶対的な権力を握っているから誰も逆らえないのだ。
「メリル、これからよ。頑張って」
「ナッシュ、ありがとう」
「いっしょにあのおばさんを倒そう」
沈んでいるメリルを励ますようにナッシュが声をかけるとメリルの表情が緩む。
共通の敵を造り出すことで協力体制を築いたのだ。
ナッシュとメリルの間には誰も裂くことの出来ない繋がりが生まれた。
クイズは個人戦であるが協力して戦っても問題はない。
ようは先に10ポイント先取した人から勝ち上がるのだから。
クイズは第四問、第五問へと続き第十問目まで終わった。
中間報告はカスミが5ポイント先取し、ナッシュが2ポイント、メリルが1ポイント、残りの2ポイントは他のおばさんが1ポイントずつとった。
ナッシュとメリルは協力してカスミを止めようとしたがカスミの早押しの方が上回って止められずにいた。
カスミはボタンの早押しもさることながら、問題の正答率は100%で完璧だった。
この調子で行けば間違いなくカスミが一位抜けするだろう。
そうなると残り2枠をナッシュ、メリル、他のおばさんで争うことになる。
ポイントで見ればナッシュが一つ飛び抜けているから有利に見える。
しかし、ナッシュの正答率も100%ではないから1回休みでもくらえばすぐに抜かされてしまうだろう。
「どうする、メリル。あのおばさん強いわよ」
「このままだと負けちゃうわ。何か作戦を考えないと」
「問題が読まれる前から早押してみる?」
「それもひとつの手だけれどリスクも高いわよ。間違えたら1回休みになっちゃうし、ポイントも減らされちゃうから」
出来れば自分達がリスクを冒すことなくカスミを引きずり下ろせるのが一番いい方法だ。
けれど、100%の正答率と確実な早押しをしてくるカスミに対抗する手段はない。
いっそうのことカスミが不正を働いてくれれば退場に追い込むことが出来るのだけれど。
ナッシュとメリルは難しい顔を浮かべながらお互いを見合って考え込む。
「ねえ、メリル。あのおばさんのテーブルの下に解答用紙を忍ばせておこうか」
「そんなことをしてどうするの?」
「カンニングしているように見せかけるのよ。カンニングは不正行為だからすぐに退場になるわ」
「それはいいけどバレたら私達が退場になっちゃうわよ」
思いもよらないナッシュの提案はいいアイデアだがリスクが高いのも事実だ。
正々堂々と戦うことを主張しているアンナだから不正が見つかればすぐに咎められる。
オーディションの出場権をはく奪されるばかりでなく罰も与えられるかもしれない。
ここでカスミを引きずり下ろすことに注力するよりも残り2枠を確実に抑えることを考えた方が無難だ。
「やっぱ不正は止めておこう。退場になったらやだし」
「そうよ。残り2枠を奪取して最終審査へ行こう。水着審査には自信があるから」
「そうね。会場のお客さんはスケベおやじばかりだし私達に有利ね」
ナッシュとメリルはお互いの手をとると固く握りしめて勝負を誓い合った。
「おい、お前ら。よからぬことを考えていただろう」
「別に私達は正々堂々と戦おうって誓い合っていただけよ」
「そうそう。私達が不正でもすると思ったの?」
疑るような視線を向けるとナッシュとメリルは目を泳がせながら明後日の方向を見る。
あからさまに不正を考えていたことがありありと見て取れる。
しかし、ここで追及をするのは無粋だと思い話題を変えた。
「しかし、あのカスミっておばさん、強いな。もう、5ポイントも先取しているぞ」
「惚れた?」
「何をバカなことを言っているんだ」
「だって、カイト。年上好きじゃん」
上目遣いで妙に色気のある視線を向けるナッシュは悪戯にニヤリと笑う。
まるで俺の心を見透かしているようで逆に恐怖を感じさせる。
確かに俺は『おばさんを惹きつける』特殊能力のせいでおばさんと縁がある。
だからと言って年上の女性が好きって訳じゃない。
カスミは確かな美貌と肉体を持っていて色気たっぷりのおばさんではある。
古風を感じさせる雰囲気がミスティアスさを醸し出していて妙に惹かれる。
アンナ達にはない魅力を持ったおばさんだから余計に感じるのかもしれない。
「俺がおばさんを好きじゃなくておばさんが俺を好きなんだよ」
「同じことじゃん。カイトはマザコンだってことよ」
「あーあ。私、結構カイトを気に入ってたんだけどな。おばさん相手じゃ敵わないな」
あからさまにモーションをかけて来るメリルの目は笑っている。
遠回しに俺をバカにしているようで返って胸糞が悪くなった。
「バカなことを言っていないで残り後半戦を戦え」
「もう、そんな時間?」
「早ーい。もうちょっとお喋りしていたかったな」
「はいはい。後でな」
ナッシュは少し物足りなそうな顔をしていたが気を取り直してクイズへと向き合う。
俺は俺で審査員席に戻りナッシュ達の戦い振りを見守った。
結局、クイズの方はカスミが一位勝ち抜けとなりナッシュ達は残り2枠を争う形になった。
おばさん達との戦いで一進一退の攻防を繰り返していたがナッシュが最初に勝ち上がりメリルがその後に続いた。
これで今のところ若者グループで最終審査へ行けたのは第一組で勝ったロレインと第二組で勝ったナッシュとメリルの3人だけになる。
フローレンスは死闘を繰り広げたが僅か1ポイントの差で大根おばさんに敗退してしまった。
ただ、敗者復活枠に食い込めたので第三組の結果次第では最終審査へ望める。
敗者復活枠は獲得得点で決まることになっている。
なので獲得得点が高い者が優先的に敗者復活となる仕組みだ。
ただし、同点となった場合にはジャンケンで勝敗を決めることになる。
いっそうのことクイズで決めればいいと思うのだが時間を切り詰めるためジャンケンにしたのだ。
「カイト、やったよ!」
「すごいでしょう。最終審査へ残ったわ」
「まあ、順当な結果だな。でも、優勝は見込めないけどな」
「どう言う意味よ?」
あからさまにナッシュとメリルの胸の見やりながら大きなため息を吐いてみせる。
その視線を感じてナッシュが半目を見開きながらブー垂れて聞き返して来た。
「どう言う意味って。お子ちゃま体系のお前らじゃ水着審査は通らないぞ」
「胸の大きさが女の魅力じゃないわ。脱げば凄いんだからね」
「そうよ。私達にはおばさんにない若さがあるのよ。おばさんには負けないわ」
ナッシュはない胸を突き出しながら体を摩って美ボディをアピールして来る。
その隣でメリルも肌艶を自慢するように見せびらかせながら啖呵を切る。
ただ、どこからどう見ても胸のデカいおばさんに見劣りしてしまうのは否めない。
仮に布面積の小さいセクシーな水着を着て来たとしてもロリっ子体形じゃ無理だ。
「まあ、期待しないで待っているよ」
そしてクイズ大会は第三戦目へ進む。
出場者はあのピンク色のツインテールのちびっ子エマと若者代表のシスタール、それにひと際美人なおばさんと他いろいろだ。
この中にもただのおばさんが混じっていてあたり前のようにテーブルに着いている。
運と強かな欲で勝ち上がって来ただけのおばさんだからここで真価が問われるだろう。
「さて、本戦のクイズ大会も最終組となりました。ここで勝ち上がった3名が最終審査への切符を手に入れます。残り3枠に食い込めるのは果たして誰なのか。さっそく勝負へ移りたいと思います」
巧みな話術で司会進行するダニエルの言葉に合わせるように観客席のボルテージも上がる。
第一戦、第二戦と盛り上がって来ただけに第三戦への期待も自ずと高まる。
客席にいるスケベおやじ達も推しがはっきりと分かれていて、それぞれの推しへ声援を送っていた。
中でも人気があったのが若者代表のシスタールを抑えてピンク色のツインテールのちびっ子エマだった。
ツインテールのロリっ子と言うブランドがスケベおやじ達の心を捉えたようでツボにハマったのだ。
ピンク色のウイッグを着けたおやじやエマのコスプレをしたおやじ達が入り乱れていて客席はカオス状態となっている。
「あれじゃ変態の集まりじゃないか」
「盛り上がっている証拠よ。こっちはグッズが大量に売れてウハウハなんだから問題ないわ」
指折り稼いだ金を数えながらニタリといやらしい笑みを浮かべるアンナ。
頭の中には金のことしかないようでクイズ大会などそっちのけだ。
まあ、でもアンナが儲けてくれると回り回って俺達カイト軍団も潤うことになるのだから悪い話ではない。
せいぜいオーディションでたんまり稼いでくれよ。
「それでは第一問。エレン達の身勝手な行動を正すため修業に向かったカイト達。そのお寺は何という名前でしょうか? A.妙法寺 B.法名寺 C.建流寺」
おばさん達がボタンを連打しているよりも素早くボタンを連打していたエマが解答権を得る。
「Bの法名寺じゃ」
「正解です。エマさん1ポイント先取」
正解してもエマはとりわけ喜ぶこともなく淡々と次の問題へと集中する。
その姿は正答するのがあたり前と言わんばかりの自信が見え見えで返って鼻につく。
「第二問。法名寺の和尚さまの名前は次のうちどれ? A.パク B.ホセ C.ロン」
ダニエルが問題を読み上げると同時にボタンを早押しするおばさん達。
しかし、それよりも素早い連打をして解答権を得たのはまたしてもエマだった。
「Aのパクじゃ」
「正解です。エマさん2ポイント先取」
「あのちびっ子、やるじゃねえか」
正答率で言えば今のところ100%だ。
おまけに早押しのスピードがずば抜けている。
他の追従を許さないぐらい素早くて抜けがない。
この調子で行けば間違いなくエマが一位勝ち抜けするだろう。
「第三問。身を清めるため滝行をすることになったカイト達。その時のエレンの格好はどんなのだったでしょう? A.白衣 B.ビキニアーマー C.さらし」
すかさずエマが先手をとりボタンを早押しする中、あっさりと一押しで解答権を得たのは美人なおばさんだった。
足元の付け根までスリットの入った中華風のドレスを身に着けた深緑色の髪のおさげスタイル。
どことなく異国感を漂わせるような雰囲気が相まってより色っぽさを感じてしまう。
突き出た胸はエレンクラスのHカップぐらいだろうか、たわわに揺れている。
「Aの白衣」
「正解です。ライレイさん1ポイント先取」
正解しても顔色ひとつ変えることなく問題に集中する、ライレイ。
隣に座っているエマは悔しがるように小さく唇を噛み締めた。
「あのおばさん、ライレイって言うのか。妙に色っぽいな」
「どこを見ているんですか、カイトさん。そんなに生足気見たいのなら私が見せてあげます」
「べ、別に俺はライレイの生足なんて見てないよ。雰囲気がちょっと色っぽいなと思っただけだ」
鬼のような形相を浮かべているセリーヌの追及を逃れるため適当な言葉で誤魔化す。
ただ、それはセリーヌもわかっていたようで端から相手にせずスカートの裾を肌蹴て生足を見せて来た。
「お、おい。セリーヌ、こんなところでよせよ」
「いいえ。カイトさんの気が私に向くまで止めませんわ」
「わかったよ。俺が悪かったよ。だから、スカートを元に戻せ」
目のやり場に困りながらもチラチラとセリーヌの生足を見ながら制する。
普段、布に隠れている部分が見えると意外とドキッとするものだ。
それがたとえおばさんとて同じこと。
とりわけセリーヌ達はただのおばさんよりも色気があるからハマってしまうのだ。
セリーヌは俺の下心を確認すると満足したような笑みを浮かべて生足を隠した。
「カイト。あのライレイ、結構やるわよ。エマと同率で5ポイント先取したわ」
俺とセリーヌがくだらないやり取りをしている間に問題は進みエマとライレイの一騎打ちとなっていた。
どちらも一歩も譲らずに解答権を奪いあいながら他を圧倒していた。
「お主、やるな」
「あなたの方こそやるわね」
「ワシはエマ・ラミネスじゃ」
「私はライレイ・スーよ」
エマとライレイはお互いに自己紹介すると右手を差し出して握手をした。
それはお互いの雄姿を称えてと言うよりもお互いの腹を探り合うような握手だった。
まだ、勝負はついていないから当然のことであるがそれが返って恐ろしい。
「じゃが、勝つのはワシじゃ」
「それは簡単に譲れないわ」
「なら、勝負じゃ」
「望むところよ」
エマとライレイは顔で笑いながらも熱い視線をバチバチとぶつけ合う。
遠目で見ていても火花が散っているようで花火のようでもあった。
「さて、小休止はここまでです。続いて第十二問。セリーヌが新しいペットを買って来ました。そのペットは何でしょう? A.小鳥 B.子猫 C.小犬」
ダニエルが問題を読み上げる瞬間を狙ってエマとライレイの早押しが唸る。
小刻みにボタンを連打して解答権を得ようとするエマに対して一定の感覚でリズムを刻むようにボタンを押すライレイ。
どちらのボタンもその反応に対応出来ずにボタンを押す音だけがカチャカチャと鳴り響いていた。
それでもエマもライレイもボタンを押す手を緩めない。
そして解答権を得たのはエマの方だった。
「Cの子犬じゃ」
「正解です。エマさん6ポイント先取」
勝負を制したエマはここぞとばかりにガッツポーズをして喜びを露わにする。
自分と対等に張り合える相手が見つかったことで余計に嬉しさが倍増したようだ。
前半戦の冷静であったエマからは想像も出来ないくらい豹変している。
それはライレイも同じだったようで唇を噛み締めながら悔しさを滲ませていた。
「次は私が先取するわ」
「やれるものならばやってみるのじゃ」
啖呵を切って来るライレイを正面から受け止めて挑発する、エマ。
どことなしか嬉しさを溢れ出させていて勝負を楽しんでいる様子が伺えた。
「第十三問。セリーヌがペットにつけた名前は何? A.チワッチ B.トイプー C.ポメちゃん」
この問題は簡単だったようですべてのおばさんがボタンを連打して解答権を得ようとする。
しかし、エマとライレイのスピードには敵わずにあっさりと解答権をライレイに奪われてしまう。
「Bのトイプーよ」
「正解です。ライレイさん6ポイント先取」
ライレイもエマを挑発するようにガッツポーズをして喜びを溢れ出させる。
二人の間にはバチバチと火花が散っていて勝負の炎を揺らめかせていた。
「拮抗しているな。これじゃあどっちが先に勝つか予想できないよ」
「その方がいいのよ。客席を見なさい。あの観客達の溢れ出ている興奮を」
アンナの指摘している通り観客席のスケベおやじ達は鼻息を荒げながら興奮状態に陥っている。
万馬券を買って勝負に望んでいる客のように勝敗を見つめる視線が赤く燃えている。
エマ推しのロリコンスケベおやじ達はコスプレ衣装を脱ぎ捨てて身を乗り出して声援を送る。
それに対抗するようにライレイ推しのスケベおやじ達も集まってライレイを後押ししていた。
「私はこれを狙っていたの。だからクイズ大会にしたのよ」
「これもお前の狙いだなんてどこまで恐ろしいおばさんなんだ」
アンナのお金にかける情熱は人並みを外れていると言うより桁違いだ。
観客を興奮させて金を落とそうだなんて普通の人間ならば考えが及ばない。
その隙間を縫うようにアンナの張り巡らせた計画が緻密にリンクをして今の状態を作っているのだ。
カオスを通り越して天変地異が起こしたような状況と言うべきか。
その後もエマとライレイの激闘は繰り返され第二十三問目で決着がついた。
一位勝ち抜けを果たしたのはエマでライレイとは1ポイント差であった。
当然のことながら二位抜けを果たしたのはライレイでエマと同じように最終審査への切符を手に入れた。
若者代表のシスタールは一歩及ばずに敗退してしまった。
敗者復活枠も他のおばさんに奪われてしまう始末。
しかし、シスタールは負けた悔やんではいなかった。
強敵のエマやライレイと戦えたことが誇りに感じていたようで満足していたのだ。
その心意気はさすが剣士といったところだろうか。
竹を割ったようなあっさりとした性格に爽やかさを感じる。
やっぱり勝負はこうでないと面白くないのも事実だ。
その後、敗者復活枠をかけてジャンケン大会が行われて1人が決まった。
若者代表のフローレンスはジャンケン運に見放されて敗退してしまった。
しかし、最終審査まで進めた若者は3人にも登った。
10人と限られた枠の中で3人だなんて幸先がよい方だ。
最終審査へ勝ち残ったのはライレイ、カスミの美人おばさん2人とちびっ子のエマ。
若者代表からはロレインとナッシュ、メリルの3人。
おばさん代表からは大根おばさんが勝ち残り、他の3人もおばさんだった。
ただのおばさんである大根おばさんが勝ち残ったことは称えるべきなのか。
ただ、素直に喜べない自分がいることも事実だ。
この勢いのまま優勝を掻っ攫わないかとヒヤヒヤしている。
けれども、その姿を見れば安心するのも確かである。
なにせただのおばさんなのだから。




