あるある157 「主役になりたがりがち」
予選のジャンケン大会は順調に進み本戦へ進む30名が決定した。
その中にはあの大根おばさんも含まれている。
30名中の8名がただのおばさんと言う結果になったことは憂うべきか。
運の良さだけで本戦まで辿りつくなんてあってはならないことだ。
本戦に進む前に最館壮で前夜祭が行われた。
主役の30名のおばさん達はめかしこんで普段着ることのない豪華なドレスを纏っている。
このドレスもアンナとスポンサー契約を結んだ服飾店から無償で提供されたものだ。
もちろんドレスはおばさん達だけに支給された訳ではない。
俺達の衣装もスタッフ達の衣装も全て提供されていた。
「何だか落ち着かないな」
「馬子にも衣裳ってこう言うことを言うのね」
「馬鹿にしているだろう?」
「わかった?」
「この野郎」
俺の格好を見て馬鹿にして来るアンナの頭を小突きたかったがセリーヌに制止される。
「カイトさん、どうですか?似合ってますか?」
「ああ、似合っているよ」
「ちゃんと目を見て言ってください」
「もう、似合っているよ。これでいいだろう」
セリーヌの要求通りに目を見つめて褒めると満足したようにくるくる回りながらドレスを靡かせた。
端っからこの調子だと後が思いやられるな。
前夜祭がはじまったらとっとと分かれてひとりになろう。
酒で酔い潰そうと思ってもセリーヌは底知れないくらいアルコールに強いから無駄に終わってしまうし。
すると、壇上に登ったダニエルがマイクを片手に司会進行をはじめた。
「さあ、お集りの皆さん。本戦を明日に控え今夜は前夜祭です。これも主催者であるアンナ・クローネさまの配慮により立案された企画です。前夜祭で打ち解けあって親睦を深め、正々堂々と本戦に望む。その姿勢こそがアンナ・クローネさまの重視していることです。勝負に勝つだけでは本当の勇者とは言えません。まっさらな心で真っすぐな意志で戦うことが大切なのです」
「あのおっさん。結構いいこと言うな。あれも台本なのか?」
「そうに決まっているだろう。主催者はアンナだぞ」
ガッシュがグラスを片手にダニエルを褒めているので俺はたまらずにからくりを口にする。
アンナは自分をよく見せるために手段を選ばない奴だからはじめから台本を用意したのだ。
あくまでこの会場に参加しているスポンサーの心象を良くするためでもある。
交渉を有利に進めるためにも自分の人柄を知ってもらうことは有効なのだ。
「アンナ・クローネさまは説きました。”誠実な者にこそ勝利の女神は微笑む”と。それではアンナ・クローネさまに登場してもらいましょう!」
ホールの灯かりが落ちるとスポットライトが四方からアンナの姿を捉える。
照明に誘導されるようにアンナが手を振りながら壇上に登ると拍手が巻き起こった。
「ただいまご紹介に預かりましたアンナ・クローネです。このたびこのような前夜祭が迎えられたのもひとえにスポンサー様方をはじめ皆さまのお力添えがあってのことです。今夜は存分に楽しみ明日の本戦を迎えましょう」
スタッフが差し出したワイングラスを掲げるアンナに再びスポットライトが照射される。
それに合わせるように乾杯の音頭をとると会場から歓声と拍手が巻き起こる。
参加者は各々のグラスのワインを口にしてから談笑をはじめた。
会場の一角にはオーケストラが並び悠長なクラッシック音楽を奏でている。
スタッフはお酒の入ったグラスを持ちながらホールを歩き回って参加者達に酒を配っていた。
アンナの周りにはスポンサー達が集まり楽しそうに談笑をしている。
そんな姿を遠目に見ながら俺はセリーヌから距離をとって人ごみに姿を眩ませた。
こんなところでセリーヌの相手をしていたらせっかくの楽しみもなくなってしまう。
久しぶりのパーティーなのだから心行くまで楽しみたい。
「おい、カイト。こんなところにいたのか」
「ガッシュか」
「何をそんなにこそこそしているの?」
「セリーヌに見つからないようにだ」
「カイトもモテるわね」
冷やかすように言って来るエミルはほろ酔い気分となっているようで頬を赤らめている。
あまりお酒に強い方ではないからすっかり出来上がっているようだ。
隣には彼氏であるマークが寄り添っていてエミルをエスコートしていた。
「おい、エミル。飲み過ぎじゃないか?」
「まだ1杯目だから大丈夫よ」
「1杯目でそれって相当酒に弱いな」
呆れ顔を浮かべながらガッシュは正直な感想をエミルに伝える。
そんなぼやきも気にも止めずにエミルはグラスの酒を煽っていた。
こう言うところがおばさんに似ている。
と言うかこう言うところがおばさんの原点なのだ。
エミルもいずれはおばさんになってしまう。
それは避けられない運命なのだ。
「マーク。エミルを頼んだぞ」
「任せてください。エミルをちゃんとエスコートしますから」
マークにエミルを任せて俺達はホールの奥へと足を進めた。
もちろん目的は若い娘の選手達と交流を深めるためだ。
おばさんの相手はいつもしているから若い娘に的を絞ったのだ。
30名中若い娘は5人いた。
それぞれが腕に自信がある戦士達で若いなりにもそれなりの風格を醸し出している。
今でこそ綺麗なドレスに身を纏っていてしとやかだが戦士に戻ればいかんなく強さを出すだろう。
一人目は金色の長い髪を後ろで編み込んだヘアスタイルが特徴のシスタールと言う女剣士だ。
引き締まった体には似つかわない透き通った肌をしておりドレスを着ていればどこぞのお嬢さまと言った感じに見える。
ギャルと言うには少し年齢が高いが23歳と若い。
二人目は若草色のショートヘアと金色の瞳が特徴のメリルと言う弓使いだ。
エルフの血を引いているらしく耳は尖っていて肌が妙に艶やかで色っぽい。
18歳とは思えない色気に思わず生唾を飲み込む。
三人目は肩口まで伸びた紫紺色の髪と切れ長の目が特徴のロレインと言う魔法使いだ。
魔法使いと言うだけあって高い知性を兼ね備えているような整った顔立ちをしている。
24歳とこのメンバーでは最年長だが負けじと劣らぬ美貌を持っている。
四人目はオレンジ色のショートヘアに目鼻立ちがはっきりとした元気印のナッシュと言うシーフだ。
シーフと言うだけあって身長は低くすばしっこそうな華奢な体つきをしている。
どちらかと言うと妹系の娘で年齢は16歳と若い。
五人目は焦げ茶色の長い髪を後ろで束ね、大きなメガネをかけた優しそうなフローレンスと言うプリ―ストだ。
童顔で見た目では10代と言ってもわからないような愛嬌のある顔をしている。
実年齢は20歳と言うことだがギャルを名乗ってもおかしくない。
ガッシュとシスタールは話が合ったようで二人してどこかへ行ってしまった。
お持ち帰りをするなんてガッシュの奴も男になったものだ。
セントルース騎士団学校に通っていた頃はモテていたけど女子とは距離をとっていたくせに。
きっと今夜はたっぷりと甘い夢を見るのだろう。
悔しい……。
「どうしたの、カイト。そんなに怖い顔をして」
「いや、何でもない。ちょっと嫌な妄想が浮かんでいただけだ」
「変なの」
心配そうな顔をしながら俺の様子を伺って来るマルクには女の話はまだ早いだろう。
マルクはどちらかと言うと女子から可愛がられる弟タイプの男だから男としては見られない。
目の前にしている女性達もマルクを見る視線は家族を見る時のような温かなものだ。
「それであなたがカイト軍団のリーダーって訳ね」
「そうだ」
信じられなさそうな視線を向けて来るロレインは俺がリーダーであることを改めて確認する。
確かに見た目から判断すれば俺はリーダーって貫禄が全く備わってない。
知的な顔をしている訳でもないし、逞しさを身に着けている訳でもない。
どこにでもいそうなごく普通の16歳の少年なのだ。
だけど俺がエレン達おばさんをまとめて来たことは事実だ。
自信を持ってもいいだろう。
すると、最年少のナッシュが人懐っこそうに俺に話しかけて来た。
「私と同じぐらいに見えるけれどリーダーには見えないわ」
「失礼なことを言うな。俺はカイト軍団のリーダーだ」
「なら証明してよ。リーダーなんでしょう?」
いちゃもんをつけてくるナッシュを小突いてやろうかと思ったが我慢をする。
ここで手を出そうものならばリーダーらしい落ち着きがないと思われるだけだから耐えたのだ。
これがアンナであったら間違いなく頭を小突いていたのだが。
「無理を言ってはいけないわ。本人がリーダーだって言うんだから信じてあげないと」
「えーっ。でも、ホラを吹いているかもよ」
「カイトさんがそんな風に見えるの?」
「見える」
俺に助け舟を差し出して来るフローレンスだったが無邪気なナッシュにねじ伏せられてしまう。
「ねえ、あなた。カイトの友達なんでしょう?カイトがリーダーってあることを証明してよ」
「えっ、僕?そうだな……魔王戦で指揮をとっていたのがカイトだよ。カイトの作戦があったからこそ魔王を退けることが出来たんだ」
「えーっ。それ本当の話?信じられなーい」
絶妙な質問をして来るメリルに絶妙な返しをするマルクはさすが親友と言うべきか。
誰よりも俺を近くで見ていたからこそ言える言葉であり、それこそが真実だ。
俺が魔王戦で指揮をとったことで魔王を退けることが出来た。
王都マグナカウスが陥落しなかったのも全ては俺の力量があったからなのだ。
俺が誇らしげに顔を緩めているとナッシュの疑いの眼差しが注がれる。
あくまでマルクの言った言葉を信じないつもりでいるようだ。
そう言うおバカさんは相手にしない方がいい。
「それよりロレイン達は本戦へ出場するんだろう。自信はあるのか?」
「もちろんよ。次はクイズらしいから私が勝ち上がるわ」
「随分と自信があるじゃないか」
「伊達に魔法使いなんてやっていないからね」
少し得意気な顔をしながらロレインは俺に啖呵を切って来る。
魔法使いと言えば高い知性が求められる職業でもある。
難解な魔導書を解読したり、複雑な呪文を覚えたりと。
だから必然と知性の高い者が魔法使いになっていることが多い。
しかし、例外もある。
アンナの場合、『無詠唱』で魔法を放てるのでわざわざ複雑な呪文を覚えなくていいためアホなのだ。
金のことしか頭にないただの『金の亡者』なのだから。
「私もクイズは得意よ。よくクイズの本を読んでいるし。特にクロスワードが得意かな」
「それはクイズじゃないだろう。お前はバカか?」
「あーっ。バカって言った。バカって言う奴の方がバカなんだから」
少し誇らしげな顔をしながらクイズが得意だと言い出すナッシュはやっぱりおバカさんだ。
クイズとクロスワードなんて天と地ほどの違いがあるのに同じだと考えているなんて。
どちらかと言うと見た目もバカっぽいしリアクションもバカっぽいから天然のおバカさんなのだろう。
反抗するような視線を向けて来るナッシュは頬を膨らませてブー垂れている。
そんなナッシュの視線をかわしつつフローレンスに話を振った。
「フローレンスもクイズが得意なのか?」
「得意と言うほどでもありませんけれど読書が好きですわ。これまでに千冊の難解書を読破しました」
「そんなにもか!これは強敵になりそうだな」
にこやかな笑みを浮かべながらメガネをくいっとあげるフローレンスはどことなしか誇らしげ。
俺からしてみれば難解書を手にとること自体苦痛なのにそれを千冊も読破するなんて、フローレンスの知識の深さは底知れない。
ロレインといい勝負になりそうだ。
「みんな入れ込んでいるのね。私なんて運で勝ち残って来たようなものだから自信がないわ」
「そんなこと言って私達を油断させるつもりなんでしょう?ミエミエよ、そんな手は」
「本当のことよ。クイズなんてやったことないし、学校も出てないからね」
半目を見開きながら疑いの眼差しを向けるナッシュのツッコミに真っ向から正直な答えを返す、メリル。
少し気落ちをしたような表情を浮かべながら肩を竦めてみせた。
「メリルは不良だったのか?そうは見えないけど」
「別に不良だから学校へ行かなかったんじゃないわ。その頃はエルフの村に住んでいたから学校へは通わなかったのよ。エルフの村には学校なんてないからね。太陽が昇ったら起きて沈んだら眠ると言った自然な暮らしを送っていたから」
「じゃあ、メリルは私よりおバカさんなのね。安心した」
弁解する訳でもないがエルフ村でのことを説明しているメリルの言葉を聞いて安心したのかナッシュが見下すように言ってのけた。
本人には悪気はないのだけれどストレートに言うから言葉尻に棘がある。
メリルも少しムッとしていたようで鋭い視線をナッシュに向けていた。
「まあ、誰が勝ち残るかは明日になればわかるさ。それより今は楽しもう」
「そうね。勝負は時の運とも言うからね」
「なら、俺達の出会いに乾杯をしよう」
酒を運んでいるスタッフを呼び止めて新しい酒を用意させるとみんなに配る。
そしてグラスを掲げながら改めて乾杯の音頭をとった。
「俺達の出会いに乾杯」
「「乾杯!」」
それぞれのグラスを合わせて軽快な音を鳴らすとグラスの酒を一煽りする。
喉の奥が焼けるように熱くなると酒の香ばしい香りが鼻から抜けて行った。
「くーぅ。滲みるな」
いつも飲んでいる安い酒と違って香りもコクも味も一級品だからアルコール度数も高くなっている。
一口飲んだだけで体中が熱くなりポカポカと顔がほてって来た。
それはロレイン達も同じようでほんのりと顔を赤らめながらほろ酔い気分になっていた。
「ロレインも結構イケる口だな。ほれ、もっと飲め」
「何?私を酔わせてよからぬことを考えているんじゃないでしょうね?」
「そ、そんん訳あるか。俺はだだな」
「カイトって結構純情なのね。可愛いい」
艶っぽい声を出しながら俺に詰め寄って来るロレインはすっかり酔っているようだ。
その誘いに動揺しているとロレインは意味あり気な視線を向けながら小さく笑った。
その時、直感した。
こいつは押せば持ち帰りできると。
童貞のガッシュがすでにシスタールをお持ち帰りしているのだから俺だってお持ち帰りしてもおかしくない。
ロレインはインテリ系の女性だけれど今は酔いが回っていて大胆になっている。
体が熱いからかドレスの胸元を肌蹴てその下に隠れている艶やかな胸肌を露わにしている。
それだけ見れば間違いなく誘っていると勘違いしてしまいそうだ。
「カイトのロレインを見る目が嫌らしいね。鼻の下を伸ばしちゃってさ。ロレイン、狙われているよ」
「余計なことを言うんじゃねえ。子供はあっちへ行っていろ」
「何、その態度。やっぱりロレインを狙っているんじゃない」
俺の作戦を微妙に感じ取ったナッシュがロレインに注意を促す。
その言葉に強く反論するとますますナッシュの疑いを強くしてしまう。
半目を見開きながら睨みつけるように視線を向けるナッシュはすっかりご機嫌斜め。
自分が相手にされていないからふて腐れているようだ。
まあ、俺はロリっ子が好きじゃなから端から相手にしていないのだけれど。
やっぱり抱くならばそれなりにたわわに実った果実を捥ぎ取りたいのが男心と言うものだ。
ペッタンコのロリっ子には興味ない。
「ロリっ子はあっちへ行っていろ。マルク、ナッシュを任せたぞ。って、マルクがいない」
「マルクならメリルとフローレンスを連れてどこかへ行ったよ」
「あの野郎。俺を差し置いて2人も持ち帰りするなんて」
辺りを見回しながらマルクの姿を探してみるが影も形も見えない。
いつの間にひとりで抜け駆けをしたのかキレイどころの二人を連れて行くなんて。
マルクはどちらかと言うと弟タイプだから年上のメリルとフローレンスに刺さったのだろう。
畜生。
今頃、二人相手にウハウハしているのかもしれない。
同じ童貞の癖にいきなり3Pデビューなんて美味し過ぎる。
そんな妄想を膨らませていると余計に惨めになって来た。
「ロレイン。俺達も行こうぜ」
「どこへ?」
「そ、それはだな。いいとこだよ」
ロレインの肩に手を回して強引に連れて行こうとするとロレインが上目遣いで見つめて来た。
その瞳はキラキラと潤んでいてやけに色っぽさを感じさせるような視線だ。
欲しがっているのかと思わせるようにな瞳に俺の下心もビンビンに湧き立つ。
これならイケる。
あともう一押しすればロレインは折れる。
これで俺も童貞から卒業だ。
ただ、そうは問屋が卸さない。
ナッシュと言う天敵が俺の前に立ちはだかっていたのだ。
「二人だけでずるい。私も連れて行ってよ」
「これからは大人の時間なんだ。お子様は家に帰ってママのおっぱいでもしゃぶっていろ」
「何、その言い方。カイトだって私と同い年じゃない。大人ぶらないでよ」
俺達の前に立ちはだかって邪魔をしてくるナッシュの顔からは苛立ちが感じられる。
あからさまに子ども扱いされたことにご立腹なようでブー垂れながら文句を言っていた。
「確かに俺はお前と同い年だけど精神年齢は大人なんだ。お前とは違う」
「どこが大人ななのよ。ロレインとエッチなことをしたいだけでしょう」
「お、おい。こんなところでそんなこと言うんじゃない!」
ロレインの前で俺の下心を露わにするナッシュに強めのツッコミを入れながらその場を取り繕う。
ただ、ロレインはそんなことを気にしていないようで誘いをかけるように俺に甘い視線を送る。
「私はいいわよ。カイトとなら」
「マ、マジか!」
来たーぁぁぁぁぁぁ!
俺の時代が来た。
セントルース騎士団学校を卒業してから今の今までおばさんとしか縁がなかった。
幾度かのエロいシチュエーションに陥ったこともあったが俺は何とか堪えていた。
はじめてがおばさんだなんて人生に汚点が残るようなことをしたくなかったからだ。
それも今日でおさらばだ。
俺のはじめてをロレインに捧げよう。
そして俺は童貞から卒業するのだ。
神様、ありがとう。
「それじゃあ行こうぜ」
「ダメーッ!ダメよ。行かせないわ」
「邪魔をするな。これから大事な儀式をするんだ」
「儀式って言ってエッチをするだけでしょう。そんなことさせないわ」
鬼のような形相をしながら俺達の前に立ちはだかるナッシュは仁王のよう。
アルコールが回っているためか顔は赤く染まり肩を怒らせながら制止する。
何をそんなにムキになっているのかわからないがこれはお子様には関係のないことだ。
男にとって童貞から卒業をすることは幼き頃より抱いて来た夢だ。
一皮むいて大人になって一人前の男になるための大事な通過点なのだ。
「何だよ。お前も俺に抱かれたいのか?俺は3人でもいいぞ」
「な、何言っているのよ。私はそんなに不純な女じゃないわ。バカにしないで」
俺のよからぬ提案にあからさまに動揺を浮かべるナッシュは顔を真っ赤にしながら恥かしがる。
こう言うところが子供だと言うことに本人は気づいていないようだ。
男からしたら3Pだなんて夢のようなシチュエーションでしかない。
たわわなおっぱいを4つも独占できるのだから夢そのものだ。
まあ、ナッシュはペタンコだから数には入らないのだけれど。
「ナッシュは10年後に抱いてやる。それまでたわわに実らせておけよ」
「何よそれ!変態!」
「それじゃロレイン。行こうぜ……って」
ロレインの手を引いて連れて行こうと振り返ると誰かとぶつかって止まった。
「痛っ!」
顔を振り上げると酒場で見掛けたちびっ子がドレスを着て立っていた。
ピンク色のツインテールに合うような純白のドレスを纏い手には酒の入ったグラスを持っている。
飲みかけなのか半分ぐらいしか酒は入っておらずスタッフを探していたようだ。
「お前はあの時の!」
「ワシはお前など知らんぞ」
興味なさそうな視線を向けながらちびっ子は辺りをキョロキョロと見回している。
そして近くにやって来たスタッフを呼び止めて酒の入ったグラスと取り替えていた。
「それよりも人にぶつかっておいて何もなしか?」
「お主がぶつかって来たのじゃろう。謝るならお主の方じゃ」
「この野郎、喧嘩を売っているのか?」
ちびっ子の胸ぐらを掴みあげると周りの客達の視線が俺達に注がれる。
さっきから口論をしていたから余計に関心を集めてしまったようだ。
すると、ちびっ子が俺の手首を掴むと強引に引き剥がした。
その力はただのちびっ子とも思えないような強力なもので逆に俺の方が手を放してしまった。
「失礼な奴じゃ。礼儀も知らないとはロクな死に方をせんぞ」
「ちょっとぐらい力が強いからって粋がるなよな。ちびっ子は所詮ちびっ子だ」
「さっきっからちびっ子、ちびっ子と煩い奴じゃ。ワシの名はエマ・ラミネスじゃ。覚えておくがいい」
そう言い残すととエマは踵を返して人ごみの中へ消えて行った。
「カイト、大丈夫?」
「別に大したことないよ」
「それにしても強そうな人だったわね」
「あれが?ただのちびっ子だ。迷子にでもなって迷い込んだのだろう」
ロレインは人ごみに消えて行くエマの背中を見つめながら素直な感想を述べる。
ただ、俺にはそうは思えずロレインの考えを否定していた。
確かに腕が立ちそうな振る舞いをしていたが所詮はちびっ子だ
最終審査まで残ったとしても水着審査で落とされてしまうのだオチだ。
カイト軍団にはロリっ子は必要でないからあんな奴は即落とした方がいい。
現実はそんなに甘くないことを叩き込めばあの減らず口も折れると言うもの。
「気分が悪くなった。今夜はたらふく飲むぞ」
「待ってました。なら、新しいお酒を持って来るね」
俺達の前夜祭はこうして終わりを告げた。




