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おばさんクエスト~あるあるだらけの冒険記~  作者: ぱんちゅう
第五章 喪失するおばさん編
122/361

あるある121 「やたらとエロスを振り撒きがち」

ゴートスの港から西北西へ沖合100㎞の海域を進む一艘の船。

北に輝く北極星と空に浮かぶ星々を頼りにしながら蒼紺色を海を行く。

雲一つない夜空から降り注ぐ月明りは静寂の海に命を灯す。

周りに他の船影は見えずに打ち寄せる波の音が辺りに響きわたっていた。


ゴートスの港を出航してから2時間。

モンスターに出会うことなくこの海域まで来られたことは幸運か。

後を振り返ればゴートスの街の明かりがぼんやりと夜空を照らす。

俺は暗闇に浮かぶ島影を目にとめてシーボルトに尋ねた。


「おい、シーボルト。島が見えるぞ」

「ここはモール諸島と呼ばれる無人島が浮かぶ海域だ。海底が浅い岩礁地帯だから大型船は入り込めない。マシュー、灯かりを」

「はい、船長」


シーボルトがニタリと笑みを浮かべてマシューにランプを持って行くように指示を出す。

マシューは船室にあったランプに火を灯すと船首に立ち覗き込むように暗い海を照らした。


「見てください、カイトさん。キレイでしょう」


ランプで照らし出されたのは水中に浮かぶクラゲの数々。

ランプの光を反射して青白く輝きながら雪灯籠のように煌めく。

その光景は幻想的でまるで夢でも見ているような感覚に襲われた。


「こいつらは雪クラゲと呼ばれる種類のクラゲだ。見た目とは裏腹に触手には毒があって触れられただけでも失神してしまうんだ。触るなよ」

「美しい花には毒があるものよ。私と同じようにね」


ペロリと舌なめずりをしてニタリと笑うアンナに思わずツッコミを入れたくなったが我慢した。

どうせここでツッコミを入れたところでアンナの性格は治らないのだ。

ならば、好きなようにさせておく方がいい。


「お前にあるのは「毒」じゃなくて「欲」だろう。海に飛び込んで身を清めて来い」

「それはあなただって同じでしょう。まだ、島にも着いてもないのにひとりではじめちゃってさ」

「これは喉が渇いたからだ。まだたんまりあるんだ。少しくらいいいだろう」

「このお酒がみんなエレンの胃袋の中に消えることを考えたら惜しくてしかたないわ」


エレンはどこからか引っ張り出して来た酒瓶を片手に一煽りしていい訳を垂れる。

その自由気ままなエレンの態度に怒る気も起きないアンナは大きく肩を落として項垂れた。

俺から言わせてみれば二人ともどっちもどっちだ。

エレンは酒の亡者でアンナは金の亡者。

どちらも酒や金のことになると驚異的な執着心を発揮する。

それはまるで岩場に張り付いている牡蠣のようでもあり、パンに集る蝿のようでもあり。

とかくおばさんと言う生き物は何かに執着したがる。


すると、さり気なくセリーヌが俺の隣に並び身を寄せて来る。

顔をうっすらと朱色に染めてとろけるような色っぽい目をしながら雪クラゲを見つめる。


「きれいですわね。まるで夜空に流れる天の川のようですわ」

「おい、離れろよ、セリーヌ。くっつき過ぎだ」

「せっかくロマンティックなムードになっているのにもったいないですわ」

「そうなっているのはセリーヌだけだろう。俺は素面だ」


俺は体を寄せて来るセリーヌを引き剥がしながら距離をとる。

セリーヌもいつの間にか大胆な行動をするようになってしまった。

出会った頃は品があって控え目でエレン達とは違うタイプなのだと思っていたが。

やっぱりおばさんはおばさんだな。

セリーヌはある意味、恋の亡者なのかもしれない。


「ハハハ。カイトはモテるな」

「別にモテてるわけじゃないよ」

「照れるなって。それにしてもセリーヌは随分と大胆になったな」

「大胆になりますわよ。カイトさんって恋には奥手ですから」


セリーヌは恥ずかしそうにしながらも強引に俺の腕を掴んで身を寄せて来る。

そのセリーヌの大胆振りにミゼルは感心したように大きく頷いてみせた。

俺が恋に奥手なのは相手がおばさんだからだ。

これがミクぷのような若くて可愛いい美少女だったら迷わず飛び込んでいただろう。

デートをしたり、手を繫いだり、キスをしたりしてウハウハしていたはずだ。

それが……。

まあ、でもセリーヌとキスをしたり、お風呂に入ったり、おっぱいサービスをしたりとエロいことは一通りして来たのだけれど。

そんなエロいことを思い出していると鼻から赤い血がつーんと滴った。


「カイト。今、スケベなことを考えていたよな?鼻血が出ているぞ」

「こ、これは違う。ちょっとのぼせただけだ」

「風呂も入っていないのにのぼせるかよ。おおかたロマンチックな雰囲気にやられてあらぬことを妄想していたんだろう?」

「そ、そんな訳あるか」


少し羨ましそうな顔をしながらシーボルトが俺を茶化して来るのできっぱりと否定した。

その横でセリーヌは蛇のように手を伸ばして来て俺の腰をグッと引き寄せる。


「カイトさん。私はいつでもいいですわよ。心の準備は出来ていますから」

「何が心の準備だ。俺はそんなことしない!」

「カイトさん。僕達には構わないでください。向こうへ行っていますから」

「余計な気を使うんじゃない。セリーヌが本気にするだろう」


マシューはいやらしそうな笑みを浮かべながらそそくさとその場を後にする。

船首に引っ掛けられたランプが俺達をスポットライトのように照らし雰囲気を作り出す。

すっかりその気になっているセリーヌは唇を尖らせてキスを催促して来る。

それを足蹴にしながら逃れると俺も船の後尾に向かって走り出した。


「カイトさんってば初心なんだから」


セリーヌは離れ行く俺の背中に向かって指鉄砲を放つ。

瞬間、俺の足が甲板の溝に引っかかり大きく前に転げてしまった。

その様子を見つめながらセリーヌはクスクスと小さく笑っていた。





夜の航海が危険だと判断したシーボルトは無人島の傍に船を止め無人島に上陸した。

船を止めた浅瀬は腰ぐらいの高さまでしか海水がなく小舟は出さずに歩いて渡る。

荷物は1日分の食料と水と酒、それに火熾し用の薪と藁、あとは眠る時に使う軽めの布だ。

夜でも気温は25度と快適な温度なので分厚い毛布などは必要でない。


「こんな暗い海を歩いて渡るの?不気味だわ」


アンナが指摘するように夜の暗い海は不気味な雰囲気を醸し出している。

浅瀬とは言え船にぶつかる波の音が静寂をかき消して怪しげに響きわたる。

足元を照らすランプの灯かりでもなければ歩いて渡ることなど出来ないだろう。


「小舟を出してもいいのだけれど、それだと何往復もしなければならないからな」

「面倒臭くても私はその方がいいわ」

「我が儘を言うな、アンナ。もう決まったことなんだ」


不服そうな顔を浮かべながら海から視線を逸らすアンナを嗜めるように告げる。

ひとりの我が儘を許すと雪崩式に我が儘が伝染して行くから注意が必要だ。

とりわけおばさんともなると自分と他人を比較するので目もあてられなくなる。


「それに服はどうするのよ。これじゃあ濡れちゃうわ」

「濡れたら乾かせばいいじゃないか。さっさと行くぞ」

「あんたはいいわよね。ビキニアーマーなんだから。濡れても屁でもないわよね」

「お前も着るか?」

「冗談は言わないで。私はエレンと違って羞恥心はあるつもりよ」


ビキニアーマーのパンツを引っ張って兆発して来るエレンを人睨みするとそっぽを向いてむくれる、アンナ。

まるでエレンとは「別の生き物です」と言わんばかりのわかりやすい態度をする。

その様子を見ながらエレンはニタリと笑みを浮かべると海の中に飛び込んだ。


「そんなところに突っ立っていないで、さっさと行くぞ」

「仕方ありませんわ。このまま行きましょう」

「本気?濡れちゃうのよ」

「なら、服を脱いだらどうだ?」


不意に横を見るとミゼルが服を脱いで着替えているところだった。

ミゼルの服はアンナの服とは違って裾が短い作りになっている。

民族衣装を思わせるような装飾が施された服でエルフの常套の装いだそうだ。

他の店では売っていないので一着しか持っていないのだと言う。


「ミゼル。こんなところで裸になるつもりなの?」

「濡れるよりマシだろう。それに下着は着けているからな」

「スケベのカイトがいるのよ。下着姿になったらカイトを興奮させるだけよ」

「だれがおばさんの下着姿を見て興奮するんだよ。そんなしょうもないことを言っていないで早く行くぞ」


興奮していたのは俺ではなくシーボルトとマシューだった。

下着姿のミゼルを見るなり鼻血を垂らしながらニンマリといらしい笑みを浮かべる。

マシューにいたっては両手で顔を覆い隠す素振りを見せたが指の間からマジマジと見つめていた。

下着姿のミゼルは普段が淑女なだけに余計にエロスが溢れ出ている。

エレンに次ぐナイスバディーだし、艶やかな色白の肌がエロスを増長していた。


「カ、カイト。俺達は後から行く。先に行っていていいぞ」

「案内人のお前が行かなくてどうするんだよ。下着姿のおばさんに現を抜かしていないで早く行くぞ」

「お、俺は別にアンナ達の下着姿が見たいって訳じゃないぞ」


わかりやすいリアクションを返して来るシーボルトの鼻の下はぐーんと伸びている。

鼻息を荒立てながらスケベそうな顔で下着姿のミゼルをマジマジと見ていた。

そこにイエローキャットの船長としての貫禄はない。

ただどこにでもいそうなスケベおやじと化していた。


「カイト以外にもスケベがいたのね。迂闊だったわ」

「そんなことはどうでもいい。早く海を渡るぞ」

「私達は後で行くからカイト達は先に行っててちょうだい」

「そうさせてもらうよ。行くぞ、シーボルト、マシュー」


シーボルトとマシューの腕を引っ張り強引に連れて行くと二人はわかりやすくしょんぼりする。

確かに女性の下着姿なんてそうそう拝めないから興奮するのはわかる。

だが、相手はいい年をしたおばさんなのだ。

興奮するまでもないだろう。

俺はすっかり見飽きしてしまって興奮すら覚えない。


「俺が先に行くからカイト達は後から着いて来てくれ。たまにシビレウニがいるから気をつけろよ」

「そのシビレウニって何だ?」

「ウニの仲間でトゲトゲに触れると麻痺するんだ」

「そんなヤバい奴がいるのかよ」

「ただ、身は最高級品だ。滅多に市場に出回らない」


シビレウニとは拳大ぐらいの大きさをした濃い紫色をしたウニだ。

ウニと同じで普段は岩陰に身を潜めていてワカメなどを捕食している。

ただ、トゲトゲにはシビレ効果があり触れただけで全身が麻痺してしまう。

漁師達の間では人気が高い食材だが扱いにくいので市場には出回らない。

だから希少性が高くひとつで銅貨1枚はする高級品だ。

これを知ったらアンナが乱獲するかもしれないから黙っておこう。


「それにしても夜の海はヤバいな。真っ暗で何も見えないからやたらと恐怖が湧いて来る」

「これが海の恐ろしさってやつだ。昼間は穏やかな顔をしているが夜はまた違った一面を見せる。まあ、でも注意すればそれほど脅威ではないのだけれどな」

「シーボルトは慣れているからそう思うのだろう。俺は怖くて怖くて仕方ないよ」

「カイトさんは意外と可愛いんですね。ちょっと意外です」


恐る恐る海を渡る俺を見てマシューは馬鹿にしたような口調で言葉を投げかかる。

自分はこの程度のことは平気だと言わんばかりに大股で歩いて余裕ぶりを見せる。

するとシーボルトがマシューの頭を小突いて注意をした。


「マシュー。調子に乗り過ぎだ。怖いのはシビレグラゲだけでないぞ」

「すみません、船長」

「他にも恐ろしい生き物がいるのか?」


俺の質問に答えることなくシーボルトはそそくさと海を渡って行く。

けっして後は振り返らずに前だけを見据えて前へ前へと。

後で聞いた話だが夜の海は危険性物でいっぱいだったと言う。

毒ヒトデ、お化け巻貝、鬼ウツボ、死の大ダコ、豪雨降らしなど様々だ。

どの生物も毒を持っておりシビレクラゲよりも速攻性があるらしい。

シーボルトは俺達に恐怖を抱かせないために黙っていたと言うが、それならそれで早く言ってもらいたかった。

面倒だが小舟を使って海を渡る選択もあったのだから。


「俺が火を熾すからマシューは海岸へ行って食材を集めて来てくれ。食べられる貝でいいからな」

「わかりました、船長」

「マシューにだけ任せていいのか?」

「素人のカイトが行ったところで見分けがつかないだろう?」

「それもそうだ」


マシューはひょろっとして頼りなさそうな風貌をしているが船乗りの経験が豊富だ。

俺達がマシューを助ける前は貿易船でコックをやっていたから食材の扱いには長けている。

料理の腕も一人前でひとりで大勢の料理を作ってしまうほど腕が立つ。

とかく特殊能力である『解体術』は重宝されていてモンスターでさえ捌けるのだ。

だからマシューを連れていれば喰いっぱぐれる心配はない。

是非ともカイト軍団に入ってもらいたいところだがマシューにその気はない。

あくまでコックをすることが夢なので冒険はしたくないとのことだ。


「いい助手をもったよな、シーボルトも」

「ああ、そうだな。マシューが加わってくれてから航海もだいぶ楽になったよ。それまでは粗末な料理ばかり食べていたからな。食が満たされるだけでも十分満足だ」

「できればカイト軍団にスカウトしたいところなのだけどな」

「マシューは冒険って柄じゃないさ。どこかの料理店で腕を振るっている方が似合う」


シーボルトは目を細めて遠くを見やると少し物悲し気な表情を浮かべた。

いずれマシューと別れることになると予想しているのだろう。

シーボルトは船乗りでマシューはコックだからお互いに共通するところはない。

今は縁があって冒険を続けているだけなのだ。


すると、そこへ海を渡って来たアンナ達がやって来た。

頭まですっかりとずぶ濡れ状態になり下着は透けていた。

そのスケスケの下着から覗くほんのりとピンク色したお山がやけに色っぽい。

シーボルトはマジマジと見つめながらニタリといやらしい笑みを浮かべる。


「これはこれで萌えるな」

「スケスケがこんなにもエロいとは思いもしなかった」

「やっぱりカイト達、スケベな顔をしているわ。犯される」

「こうもあからさまにスケベ根性をむき出しにされると引くに引けないな」

「ミゼルさん。そっちの気があったんですか?」


アンナ達は文句を垂れながらも少し頬を赤く染めて恥ずかしそうに体を隠す。

その仕草がやけに色っぽくて俺とシーボルトのスケベ心が余計に震わされた。

おばさんと言えどずぶ濡れの下着姿はスケベ心を根底からくすぐる。

濡れた肌がやけに艶っぽくて、追い打ちをかけるようにスケスケの下着が追い重なる。

このシチュエーションに萌えない男はいない。


「カイト、俺、たまらなくなって来た。このままだと抑えきれないかも」

「おい、シーボルト目を覚ませ。相手はおばさんなんだぞ。おばさんを抱いても何の勲章にもならないぞ」

「何の勲章にもならなくていいよ。この心の底から湧き上がる情動を抑えられるなら」


ダメだ。

シーボルトの目はあっちの世界へ逝っちゃってる。

このままだとマジでアンナ達に襲いかかるかも。

その前にシーボルトを悪の手から救わないと。

俺はシーボルトに馬乗りになって頬を思いっきり叩いた。


「シーボルト、目を覚ませ。お前は悪の手にやられてしまっているだけだ。あいつらは悪魔だ。俺達が相手をしていい奴らじゃない」

「酷い言いようね。私達の美貌が悪魔的なのはわかるけれど、私達はそんな破廉恥な女ではないわ。抱かれる相手ぐらい選ぶわよ」

「私もカイトさん以外の男性に抱かれたいと思いませんもの」

「男はみんなこんなものさ。下心を丸出しにして生きているからな」


辛辣な言葉を浴びせて来るアンナ達の顔はすっかり呆れモードで死んだ魚のような目をしていた。


「カイト……俺は?」

「目を覚ましたか、シーボルト。お前はあいつらの魅惑に飲まれていたんだ」

「あいつらって……ぐほっ!」


虚ろな目でアンナ達を見つめたシーボルトは思いっきり鼻血を吹き出して昇天してしまう。


「シーボルト、しっかりしろー!」


俺の悲痛な叫びが真っ暗な夜空に響きわたったのだった。





それから1時間。

シーボルトは行き絶え絶えなカエルのように顔をヒクつかせていた。

体中の血液をほとんど吹き出してしまったようで軽い貧血になっていた。

おばさんのエロスでここまで追いやられるなんてシーボルトも以外とチョロイ。

ただ、濡れ下着のスケスケ状態にやられない男はいないだろうが。


「船長も大したことないんですね。がっかりしました」

「そうシーボルトを責めるもんじゃない。お前だって見ただろう。あの破壊力のある濡れ下着スケスケ姿を。おばさんでもあれだけエロくなれるんだ。美少女がやったら驚天動地だぞ」

「それはわかりますけれど、船長ならばもっとシャキッとしてもらいたかったです」


マシューは残念な顔をして横になっているシーボルトに辛辣な目を向ける。

マシューの思い描いていた船長像はどんな状況でも冷静に対応できる大人を指しているのだろう。

とりわけ航海ってのは常に危険が伴うから冷静な判断を出来る船長を必要とする。

仲間をピンチから救ってこその船長なのだから問われる資質も必然と高くなるのだ。

シーボルトをフォローする言葉を言えば海にはエロスがないことだけだろうか。

だから、シーボルトも素面だったら何も問題ないのだ。


「カイトに次ぐチョロさだな、こいつは」

「私達を見て昇天するなんて正直な奴じゃない」

「カイトさん以外の男性を逝かしたなんて恥ずかしいですわ」

「それだけ私達の魅力が強すぎたのだろう」


エレン達は酒を煽りながらシーボルトを酒の肴にして宴会を楽しむ。

マシューの作った料理は魚介の出汁をたっぷり吸った雑炊と干し肉のステーキ。

干し肉は真水で戻してふやかせてからフライパンで焼いたものだ。

干し肉とはいえ肉質はよくて歯ごたえもちょうどいいぐらいに仕上がった。

これもマシューが腕の立つ料理人であったことが大きい。


「お前ら、あんまりシーボルトを刺激するな」

「勝手に逝ったのはそっちでしょう。私達に罪はないわ」

「だからと言ってな」

「カイトだって興奮していたじゃない。目の色を変えちゃってさ」


アンナは蔑むような視線を向けながら俺にひと睨みして来る。

さすがに今は服を着ているがさっきまでは濡れ下着姿だったのだ。

興奮しない男の方がおかしいと言うもの。

だからシーボルトも俺も悪くない。

アンナ達の濡れ下着スケスケ姿に問題があるのだ。


「お前らは羞恥心がなさ過ぎだ。少しは恥じらいってものを覚えろ」

「あんた、馬鹿?私達は生娘じゃないのよ。少しぐらい肌を見せたからって恥ずかしがらないの。それに服を濡らせて海を渡れとでも言う訳?」

「水着を着るとか他にやりようがあったろう。ただでさえ何着も服を持っているのだから水着ぐらいあるだろう」

「私達だけ何でそんな苦労をしなくちゃいけないのよ。気を使うなら私達に使って」


ああ言えばこう言うおばさんの得意技に成す術がない。

アンナはあくまで悪いのは俺達の方だと主張を曲げずにいる。

確かにおばさんと冒険をしているのだからちょっとやそっとのエロい状況は予測できる。

ただ破壊力のあるエロスだけは勘弁してもらいたい。

ただでさえ日照りなうえ、ここにはおばさんしかいないのだ。

間違っておばさんを襲うことがあったのならば人生に汚点が残ってしまうのだ。


「それは間違いが起こっても問題ないってことか?」

「間違いなんてある訳ないでしょう。そんなことをしたら魔法で消滅させるわよ」


俺のツッコんだ質問にすぐさま反応してアンナは鋭い視線で睨んで来る。

間違いなくアンナだったややりかねない雰囲気を出している。

それとは裏腹にセリーヌは頬を赤らめながら物欲しそうに俺を見つめる。


「私はカイトさんだったら申し分ないですけれど」

「くぅ……」

「カイトもセリーヌにはお手上げのようだな。チャンスをやるからとっとと決めろ」

「何を決めるって言うんだ。馬鹿なことを言っていると酒を取り上げるぞ」


ムキになって俺が酒瓶を取りあげようとするとエレンは阻止して酒瓶を遠ざけた。

この酒は自分のものですと言わんばかりの横柄な態度に余計に怒りが込み上げる。

エレンはすっかりほろ酔い気分になっていて悪酔いしながら俺に絡んで来た。


「なら、私とやるか?優しく教えてやるぞ」

「遠慮しておく」

「ハハハ。カイトも正直者だな。ここがおっ起っているぞ」

「変な所を触るんじゃねえ!」


エレンが弄るように俺の股間を触ると何故だかビンビンと感じはじめる。

さっきのアンナ達の濡れ下着スケスケ姿が思い出されて少し反応してしまった。

ただ、これはアンナ達に逝った訳でないことは付け加えておこう。


「カイトがまだ誰とも経験していないことが問題だな。一度、最後まで逝ってみたらどうだ?」

「誰と逝くって言うんだよ。問題点を擦り替えるな」


論点はそこではない。

おばさん達が羞恥心のない行動をとることが問題なのだ。

生娘でないとは言えど異性の前では恥じらいを覚えてもらいたい。

とかくエレンにいたってはどうしようもないくらい恥じらいを知らない。

普段からエロスたっぷりのビキニアーマーを着ているから感覚が鈍っているのだろう。

いっそうのことビキニアーマーは禁止にして服を着させようか。

でも、そうなるとエレンがエレンでなくなってしまうが。


「カイトは本当に羨ましい奴だな。エレン達から好かれて、しかもエロいことたっぷり味わっているなんて」

「シーボルト!目が覚めたのか?」

「さっきから起きているよ。お前達のやり取りを聞いて寝ていられる訳ないだろう」


シーボルトはゆっくりと体を起こして喝を入れるように酒を一煽りする。

乾いた体には酒が染みるようで肩を震わせながら酒を味わっていた。


「あんた、私の体を見て逝ったんだからお金を払いなさいよ。タダじゃないのよ」

「おい、アンナ。病人に追い打ちをかけるようなことを言うな。それにお前らが勝手に見せただけだろう」

「勝手に見せたんじゃないわ。カイト達が勝手に見たんでしょう。下着姿になって海を渡って来たんだからそれくらい想像できたでしょう?」

「くぅ……」


確かにアンナの指摘はツボをついていて返す言葉が見つからない。

アンナが下着姿になった時点で気づくべきだった。

ただ、ここでアンナの押しに負けて認める訳にはいかない。

これはあくまで事故だったのだと処理しなければ。

俺は自分の主張を切り返してアンナを宥める作戦に出た。


「そうだな。アンナの言う通りだ。ただ、これは事故だったんだ。俺達とアンナ達は出会ってはいけなかったんだ」

「何よそれ?」

「だから見物料は払おうじゃないか。ドラゴンオーブを売った金の取り分を8:2にしてやる」

「本気で言っている訳?冗談じゃシャレにならないわよ」

「本気だとも。その代りこの航海で起こるであろうエロい状況を含めてだけどな」


俺の提示した条件にアンナは肩を震わせながら喜びを露わにする。

指折り自分の取り分を数えながらニンマリと笑みを浮かべた。

そのくらい投資しても何の問題もない。

どうせドラゴンオーブが売れなかったら元もこうもないのだし。

それよりも未来で起こるエロい状況まで含めたことは俺の成果でもある。

おばさん達といるのだからエロい状況は自ずとやって来るのだから。

俺はニンマリと笑みを浮かべると強かに笑った。


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