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おばさんクエスト~あるあるだらけの冒険記~  作者: ぱんちゅう
第四章 再開するおばさん編
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あるある099 「墓穴を掘りがち」

「カイトさん、起きてください」


夢現に夢の中を彷徨っていると俺を呼ぶセリーヌの声が耳に届く。

これは夢なのか、現実なのか、それさえもわからない。

ただ温かで柔らかな風が俺を優しく包むだけ。

それはまるで母の腕に抱きしめられているような心地よい感覚で。


「う、うん……」


俺は導かれるように静かに瞼を開いて辺りを見回した。


「カイトさん。お目覚めですね」


セリーヌは優しく微笑みながら俺を見つめる。


「セリーヌ?」

「おい、カイト。いつまでそうしているつもりだ?」


ゴウが恨めしそうに俺を睨みながら愚痴をこぼす。

気がつくと俺はセリーヌの胸の中に頭を埋めた状態でいた。

夢の中で感じた柔らかな感覚はセリーヌの胸だったようだ。

こんな目覚めならいくらあってもいい。

毎日、セリーヌに優しく起こしてもらうのもアリだな。


「まったく羨ましい奴だぜ、カイトは」

「そうですね。僕もあんな風に起こされてみたいです」

「今度、街へ寄ったらお姉さん方にしてもらいましょう」


ゴウ達、ソウル・ベルはマークニットの意見に一致団結する。

冒険者は基本、街にいる専門のお姉さん方に癒してもらうのが普通だ。

とりわけ若い冒険者ほど嵌りこんでしまい毎日通い詰めになってしまうようで問題にもなっている。

まあ、女遊びは経験を積んでからした方が無難なのだろう。


「さあ、カイト。準備を整えろ。出発するぞ」

「お、おう」


辺りを見回すとすでに太陽は沈み、蒼紺色の空が広がっていた。

今夜は雲がすっきりと晴れていて月明かりが砂をキラキラと輝かせている。

その光景は辺り一面に広がり、幻想的な景色を作っていた。


俺達は馬車に乗り込み定位置に着く。

すでに荷物は積み込まれていて馬も馬車に繋がれていた。


「よし。シンポス地下神殿へ向けて出発だ!」


俺の合図で馬車は連なりながら前へ歩み出す。

トコトコト砂を踏みしめながら馬はゆっくりと歩いて行く。

太陽が沈んだので砂の熱も引いているようで馬の足取りも軽い。

このペースで進めればだいぶ距離が稼げるだろう。


目指す方角はオアシスを起点にして東南東の方角だ。

前回は少し北寄りに進んで来たから修正をするために方角を変えた。

とかく何もない砂漠地帯では迷ってしまうことが多い。

だから、途中、羅針盤で方角を図りながら修正する必要があるのだ。


「カイト!何か見えるか?」

「今のところ何も見えない」


辺りを見回してもモンスターの影は見られない。

ただ砂漠が果てしなく広がっているだけ。

運がいいのか悪いのか、この様子なら問題なく進めるはずだ。

何もないことが返って不安を掻き立てるのは事実だが、大丈夫だろう。


「ふわ~。それにしても暇だな。モンスターのひとつでも出てくればいいのに」

「物騒なことを言うんじゃない。こんなところをモンスターに襲撃されたらひとたまりもないんだぞ」

「それにしたって暇でしょうがない」


エレンはつまらなそうに呟いてから酒瓶に手を伸ばす。


「おい、エレン。酒なんて飲むんじゃない」

「酒でも飲まないとやってられないよ。カイトも飲むか?」

「誰が飲むかよ。酔っ払い運転になるだろう」


飲みながら馬車を運転して捕まることはないが判断が危くなる。

まあ、馬は前に進むだけだから少しぐらい飲んでも大丈夫だろうが。

すると、セリーヌが酒の入ったグラスを2つ持って運転席へやって来た。


「カイトさんも一杯どうですか?美味しいですよ」

「俺は辺りを警戒しながら運転しているんだ。酒なんて飲めるかよ」

「モンスターの発見ならばトイプーちゃんがやってくれます。ですから少しくらい飲んでもよろしいのでは?」


確かに警戒をしながら辺りを見回しているよりトイプーの鼻に任せた方が楽だ。

トイプーはこのためにいるようなものなのだからこき使ってやらないと。

俺はセリーヌの差し出したグラスを受け取って口に運ぶ。

そして鼻から息を吸い込んで酒の香りを楽しんでから一口飲み込んだ。

カァーと焼けるように喉が熱くなると同時に酒の美味さが口いっぱいに広がった。


「うまいな」

「でしょう。このお酒はゴートスの街で仕入れた一級品なのでおいしいんですよ。エレンさんが見つけたんですよ」


酒に煩いエレンが選んだのだから間違いないのだろう。

ただ、そのおかげで持ち金が減ったことは否めないが、この際、目をつぶることにしよう。

シンポス地下神殿でブルー・アイを見つけたら一気に金持ちになれるのだから。

大金が舞い込んだら、まずは借金を返済して残りの金で豪遊をする。

シーボルトの船を新しくしてから、新しい武具を新調しよう。

今までの戦いで武具も痛みはじめているから取り替えるいいタイミングだ。


「グルルル……」


と、急にトイプーが飛び起きて威嚇をはじめた。


「どうした、トイプー?モンスターがいるのか?」


目を凝らして辺りを見回してみるがモンスターの影は見当たらない。

もしかしてサンドバイパーが砂の下に隠れているのか。

だとしたらトイプーが威嚇するのもわかる。

俺は馬の手綱を引いて馬車を停めると後ろにいたゴウへ伝えた。


「ゴウ。モンスターらしい。いったん馬車を停めて警戒しろ!」

「了解した!」


ゴウも馬車を停めて辺りの警戒にあたる。

しかし、モンスターの影すら見えず、出現する気配すらない。


「おい、カイト!何も見えないぞ!」

「だけど、トイプーは警戒しているんだ!近くに何かいるはずだ!」


すると、俺達の馬車が急に傾いて砂に引きずり込まれて行く。

馬車の下を見るとすり鉢状に砂がくぼんでいるのが見えた。

馬は理性を失い暴れ回るが返って引きずり込まれるだけで抵抗出来ないでいる。

俺達は慌てて馬車から飛び降りて砂の窪みから逃れた。


「あれは何だ?」

「ヘル・イーターの巣だ!」


ヘル・イータとはサラハル砂漠に生息しているモンスターのひとつ。

砂漠にすり鉢状の巣を造り、その下に潜みながら獲物がかかるのを待っている。

簡単に言えばアリ地獄を大きくしたようなものがヘル・イーターだ。

全長が5メートルほどあり、全身砂色で覆われているので発見するのが難しい。


ヘル・イーターは底の砂をはじき出しながら砂流を造り馬車を引きずり込む。

馬は声にもならない声で泣き叫びながら必死の形相で抵抗するが、成す術もなく、馬車と一緒に窪みに吸い込まれてしまった。

そこまで沈み込むとヘル・イーターが現れ大きなハサミで馬車を挟み込む。

そしてお尻をムズムズ動かしながら馬車を砂の下へ引きずり込んで行った。


「馬車が……」

「あれじゃあもう助からない。諦めよう」


思わず飛び出しそうになる俺の肩をしっかりとつかんでゴウが制止する。

その顔には諦めの感情がありありと現れていて、唇を噛み締めて首を横に振り返した。

いったんヘル・イーターの巣に嵌ると逃げ出せるものはいない。

地獄の名がついているように獲物の立場からしたらまさに地獄なのだ。


「これは大きなロスになりますわね。あの馬車には食料と水をたっぷりと積んでいたのですから」

「仕方ないさ。ヘル・イーターを倒したところで俺達の力では馬車は引き上げられないのだから」

「だけど、このまま黙って見てるのも気に障るな」


エレンは大剣を引き抜いて肩に担ぎあげる。


「おい、エレン。まさかヘル・イーターと戦うつもりじゃないだろうな」

「そのまさかさ。先に手を出して来たのはあっちなんだ。なら、その喧嘩を買うってのが私のもてなしだ」


エレンの気持ちはわからないでもないが分が悪いぞ。

サンドバイパーの時のように平坦な砂の下に隠れているならまだ戦い様があるが、すり鉢状の巣の底に隠れているんだ、うかつに手は出せない。

俺達もあのすり鉢状の巣に嵌ったら二度と這い上がれなくなるだろう。


「戦うあてでもあるのか?」

「そんなものは必要ない。目の前の敵をぶちのめすだけだ」


聞くだけ無駄だったか。

エレンのこれまでの戦いを見て来ても作戦の「さ」の字は全くなかった。

エレン曰く、”戦いは体でするものだ”と言っていたことを今になった思い出す。

エレンが攻撃体制に入るとゴウが訝し気な顔をしてツッコミを入れて来た。


「おい、作戦も立てずに戦うつもりか?」

「あたり前だ。私にそんなものは必要でない」

「何言ってやがるんだ。ヘル・イーター相手に作戦を立てずに勝てる訳ないだろう」

「作戦ってのはな、カイトみたいな頭でっかちがやることだ」


俺がいつから頭でっかちになったと言うよりエレンがただの馬鹿なだけだろう。

初心者の俺から見てもヘル・イーターに作戦なしで立ち向かうことは無謀でしかない。

闇雲に突っ込んで行ってもヘル・イーターの思う通りになるだけだ。


「エレン、これは命令だ。作戦を立てるまで待て!」

「私に命令をするな。私は犬っころじゃない!」


そう呟いてからエレンは足を踏ん張って高く飛び上がる。

そして空中で大剣を下に向けて構えると突き刺すように勢いよく降下して行く。

しかし、ヘル・イーターは砂の中で外に姿は現していない。

それでもエレンは構うことなく地面を切り裂くかのように大剣を突き刺す。


「お前が出て来ないなら、こっちから行くぞ!」


大剣は勢いよく突き刺さり沈み込むように砂の中へ消えて行く。

すると、エレンは舌打ちをしながら大剣を勢いよく引き抜いた。


「ちぃ、外したか」


どうやらスカだったようだ。

ヘル・イーターの巣の底でエレンは足元を見回しながらヘル・イーターを探す。

けれど、ヘル・イーターは全く姿を見せない。

引きずり込んだ馬を捕食している最中だからなのかもしれない。


「おい、エレン。今のうちに登って来るんだ。ヘル・イーターが現れたらひとたまりもないぞ」

「そっちから出て来ないなら、こっちから行くだけだ」


エレンは大剣の切っ先を天頂へ向けるとゆっくりと回しはじめる。

両足を踏ん張って大きくスイングさせるように大剣を振り回しながら勢いをつける。

あの構えはいつぞやの戦いで見せた必殺技『大旋風』の構え。

『大旋風』は遠心力で剣を振り回して竜巻を作る必殺技だ。

エレンの周りにはいつの間にか竜巻が現れて砂埃を撒き散らしている。

そして勢いのまま『大旋風』を地面に向かって放った。


「さっさと出て来やがれ!」


竜巻は地面の砂を巻き上げながら砂の中にめり込んで行く。

それはドリルで穴を開けるかのようにピンポイントで砂を抉り出しながら。

その竜巻に巻き上げられるようにヘル・イーターが姿を現した。

ヘル・イーターは高速回転しながら宙に舞い上げられる。

そしてそのまますり鉢状の巣の外まで放り出された。


「一丁あがりっと」

「なんて強引な奴なんだ。自ら巣に飛び込んで『大旋風』でヘル・イーターをはじき出すなんて」


ゴウ達は呆気にとられながらしばしの間、ぼーっとしていた。

こんな無謀な戦い方を出来るのは間違いなくエレンしかいない。

普通は作戦を立ててモンスターに合わせた戦い方をするものだ。

でないと勝てるのも勝てなくなるからな。

だが、しかしエレンだけは例外のようだ。


エレンの強さはこれまでの戦闘経験が裏付けになっている。

対人戦、対モンスター戦、どちらの経験もひっくるめたものが強さの秘訣だ。

とりわけ対人戦では『再現』の特殊能力があるから強さにも磨きがかかる。

エレンの『再現』を前にしたら、どんな戦士も苦戦を強いられるだろう。

それはコロセウムで証明済みだ。


「さあ、カイト。私を引き上げてくれ」

「そんな暇はない」


見ると裏返っていたヘル・イーターは体を動かしながら表に返る。

そしてお尻を激しく動かしながら砂の中へ潜りはじめた。

丸く回転しながら砂を巻き上げてすり鉢状の窪みを作っていく。

俺達はヘル・イーターの周りを取り囲んで武器を翳した。


「砂の中に逃げられる前に倒すぞ」


俺は頭を高速回転させながら最適な作戦を組み立てる。

ヘル・イーターはサンドバイパーと同じように視覚は悪い。

周りに入る獲物は砂の動きを敏感に感じとって位置を割り出している。

だから迂闊に攻撃は仕掛けられない。

死角があるとすればそれは頭上だ。

まずはセリーヌの『ゴットハンド』でヘル・イーターの動きを封じることが必要だ。

動きを封じるならば『シールズ』でもいいのだが、『ゴットハンド』ならば中空に固定できる。

砂から離しさえすればヘル・イーターの動きは封じたようなもの。

後は俺とゴウでとどめを刺すだけだ。

ゴウがどんな必殺技を使えるのかわからないが剣闘士だったのだ、何かしら使えると見ていいだろう。

俺はすぐさまゴウ達に作戦の概要を説明をした。


「さすがはカイトさん。ヘル・イーターの弱点を突いた作戦ですわ」

「まずはモンスターの弱点を突くことが作戦のポイントだからな」

「カイトがここまでやれるとは驚きだ」


ゴウは関心しながら俺を羨望の眼差しで見つめている。

それはルミウス三世とマークニットも同じようでゴウ以上に関心していた。


「よし、準備はいいな。作戦開始だ!」


俺の合図でセリーヌがすぐさま魔法の詠唱に入る。

その間、俺とゴウはヘル・イーターにけん制攻撃を仕掛けながら砂の中に逃げ込まれないように注意を惹く。

ルミウス三世とマークニットはヘル・イーターの巣に嵌っているエレンの救出にあたってもらった。

少しでも戦力が多い方がいいから主力のエレンの救出は必須だ。

その間にセリーヌは詠唱を終えて『ゴットハンド』を放つ。


「大地を統べし地の神よ、その強大なる力で、悪しきものを封じよ『ゴットハンド!』」


ヘル・イーターの足元に巨大な金色の魔法陣が浮かび上がると魔法陣の中から巨大な右手が現れる。

それはまさに神の手の如く、筋肉隆々で力強さを如実に表していた。

神の手はヘル・イーターを握りしめると動きを封じたまま中空で固定される。

たまらずにヘル・イーターはもがき暴れるが神の力の前には歯が立たなかった。


「よし、やったぞ。後は俺達の番だ」

「これならやれるぜ。俺の神髄を見せてやる」


俺とゴウは武器を掲げながら意気を高めて行く。

そして意識を武器に集中させてから足を踏みしめて空高く飛び上がった。


「まずは俺からだ!」


俺は小剣の切っ先をヘル・イーターの頭に向けると落下の勢いのまま貫く。

ズブリと鈍い音がすると同時に小剣はヘル・イーターの頭に埋もれて行った。

ヘル・イーターの装甲は見た目よりも弱いようだ。

普段、砂の中にいるから体表は強化されなかったらしい。

小剣を引き抜くと中から緑色のドロッとした血液が滲み出て来た。


「やるじゃないか、カイト。次は俺の番だ!」


俺の攻撃を受けて続けざまにゴウが攻撃を仕掛ける。

空中に高く飛び上がり体を高速回転させながら回転力を高めて行く。

そしてその勢いのままヘル・イーターの体を裂くように一撃を加えた。

回転する鋸のようにゴウの戦斧はヘル・イーターの体を裂き肉片を撒き散らす。


「これが俺の『回裂斬』だ!」


ゴウは勢いのままヘル・イーターを二つに裂くと地面に降り立った。

ヘル・イーターは見る形もなく無残に二つに分かれて緑色の血を溢れさせている。

セリーヌの『ゴットハンド』の魔法が解けるとヘル・イーターの残骸が大地の転がった。


「ゴウ、やるじゃないか!」

「このくらい朝飯前だ」


羨望の眼差しでゴウに向けるとゴウは鼻の下をこすって得意気な顔を浮かべる。

ヘル・イーターの頭を足蹴に踏みしめながらキメのポーズをとっていた。

ゴウがこれほど出来る奴だったことは意外だ。

剣闘士の経験も伊達じゃないようだ。


「案外、ヘル・イーターもあっけなかったな」

「これもカイトさんの立てた作戦のおかげですわ」


もっと褒めてくれ。

これで作戦の重要性が証明されたのだ。

ただ、ここにエレンがいないことは致命傷だけど。

エレンにこそ作戦の重要性を示さないといけない。

”作戦をなくして勝利なし”と言うことをわからせる必要があるのだ。


俺達がほっと息をついているとヘル・イーターの頭がピクリと動く。

そして地を這うように高速で近づいて来るとゴウの背後まで迫っていた。


「何だ?」


妙な気配がして後ろを振り向くと目の前にヘル・イーターがハサミを開いて構えていた。

ゴウは驚いて思わず尻もちをついてしまう。

そこへヘル・イーターのハサミが迫った。


「うわぁっ!」


次の瞬間、ヘル・イーターの頭は大剣で串刺しにされ地面に突き刺さる。

そして見上げると目の前にエレンがしたり顔を浮かべながら立っていた。


「お前らもまだまだだな」

「エレン。いつ戻って来たんだ?」

「さっきだよ」


エレンはヘル・イーターの頭の上にどっかりと腰を下ろして勝ち誇る。

まるでひとりでヘル・イーターを討ち取ったかのような勢いだ。

こうなるからエレンはつけあがるんだ。

あくまでヘル・イーターを討ち取れたのは俺の作戦があったらなのだ。

そこら辺をエレンにわからせないとダメだ。


後を見るとルミウス三世とマークニットが大きく肩で息をしている姿が映った。

エレンの救出に全力を出し切ったようで二人も満足気。

この勝利にはルミウス三世とマークニットの力もあるのだと改めて思った。


「しかし、馬車が犠牲になってしまいましたわね」

「それは諦めよう。馬車が一つ残っただけでも良しとしなければ」

「そう思うのが一番だな。だが、食料と水の喪失は大きいな」


食料と水のの大半は犠牲になった馬車に積んであった。

ゴウ達の馬車にも食料と水は積んであるが僅かだ。

その代り酒だけはたんまりとある。

エレンが勝手に飲まないようにゴウ達の馬車に積みかえていたのだ。


「次のオアシスまであとどのくらいかで変わって来るな」

「オアシスで水が補給出来たとしても食料までは補給できませんよ」

「そうだな……そいつでも食うか?」


俺はエレンの尻につぶされていたヘル・イーターを見つめて提案する。

すると、すぐさまセリーヌが反応して目をむき出しながら凄い剣幕で反対して来た。


「本気で言っているんですか、カイトさん!あんなもの食べられる訳ないじゃないですか!」

「冗談だよ。試しに言ってみただけだ」


冗談だとわかってもセリーヌの興奮は冷めやらず、大きく肩で息をしていた。

まあ、モンスターを食べるなんて普通では考えないことだ。

見た目からしてゲテモノだし、緑色の血を出しているし、明らかに毒を持ってそうな雰囲気がある。

せめて見た目がブダや牛だったら食べられそうな気がするのだけれど。


「食えないこともないぞ。どこぞの民族はモンスターを食していると聞いたことがある」

「本当か?」

「あくまで噂話だけどな」


ゴウの聞いている噂話もあてにはならなそうだ。

人づてに伝わって来た情報だから話が盛られているとみた方がいいだろう。

おそらくモンスターと言えども家畜に近いモンスターなのかもしれない。

あくまで緑色の血を出すヘル・イーターでないことは確かだ。


「とりあえず酒はあるんだ。それだけで十分だろう」

「それはお前だけだ。いっしょにするな」


いくら酒を飲んでも腹は膨れない。

酔っ払って酩酊状態になるだけだ。

とかくエレンは飲み過ぎるのだから注意しないといけない。

その内、アルコール中毒になるのがオチだ。


「そろそろ出発しませんか。朝になったら動けなくなりますよ」

「そうだな。ここで考えていてもはじまらない。まずはオアシスを探そう」


不安げに提案して来るルミウス三世の言葉に従い出発の準備を整える。

まだ太陽は出ていないが薄っすらと東の空が明るくなりはじめていた。

あと、小一時間もすれば朝になってしまうだろう。

その前に次のオアシスに辿り着かなければ。


馬車がひとつしかなくなったから馬の負担も大きくなる。

馬は二頭立てだが大人6人と荷物を合わせれば、それなりの負担だ。

俺達は小まめに休息をとりながら次のオアシスを探しに出かけた。


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