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婚約解消を提案したら王太子様に溺愛されました ~お手をどうぞ、僕の君~【書籍化・コミカライズ完結】  作者: 春風悠里
後編 学園入学後

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84.女子会

 あれから次の土の曜日になり、今日はメルルとの短時間の女子会だ。


「完っ全に、ヨハンに落ちたわ……」

「え、今まで落ちていなかったんですか」


 メルルには世話になったので、お嬢さんたちへの占いと午後の補講が終わってから、お礼を言うために来てもらった。


 一緒に補講を受けたヨハンは残念そうだったけれど、誕生日パーティーには王宮に泊まるし許してもらおう。

 夕食だけは一緒に食堂で食べる約束をしている。


「夢のないことを言っちゃ悪いかと思って言わなかったんだけど、私、前の世界で夫とうまくいってなかったのよ。たぶん浮気してたんだろうなー、くらいに」

「うわぁ、大人の世界ですね」

「愛し合って結婚までしても、そうなる時はそうなるし。だから、そんなにのめり込まないようにセーブしている部分もあったんだけど……落ちたわね」

「それは、なんていうか……おめでとうございます」

「うん、ありがとう」


 まさか罵られに行って、あのようなことになるとは。


「月の曜日、午前中休まれていたので心配したんです」

「……少しね、泣きすぎて顔が酷かったのよ」

「え」

「悪い意味で泣いたんじゃないのよ。ヨハンに、息子のことを思い出したらいつでも言っていい、みたいなことを言われて、止まらなくて……」

「ああー…………」


 メルルまで苦しそうな顔をして、項垂れた。


「ヨハネス様は、やっぱりライラさんの一番の理解者なんですね」

「理解者っていうか、目敏すぎるのよねー。それに十代じゃないわよ、絶対。精神年齢が人の三倍くらいのスピードで上がっていく設定とかあるんじゃないかしら。前世の記憶を忘れた魂なのだとしたら、前のあの人にも惚れる自信があるわね」

「そ、それはすごいですね。でも息子さんの話ということは、前の世界の話をされたんですね」

「そう。その話をしなかったせいで、すれ違いがあったから。でもねー……、ごめん。そのことを言ったら、なぜかメルルが転生者ってこともバレちゃったのよ」


 号泣して落ち着いた後に、ヨハンに聞かれた。


『メルルにも、ライラと同じ前の世界の記憶があるんだな』

『……なんでそう思うの』

『おかしいと思っていたんだよ、色々と。最初に会った時はライラって名前に反応して振り向いて白桃を落としていたし、他にも不自然な点があった。食堂で相席した時には、こっちの僕の方がいいって言ってたしね。今思うと、あれは僕に対するカマかけだね。君から聞いているか試したんだよ』


 後者はともかく、前者の部分は違和感すら持たなかった。あんなに戸惑っていたのに、見るべきところは見ていたらしい。


「――と、ヨハンは言ってたわ」

「あ、はは。白桃は、やっちゃったーって思いましたね。相席の時は、どうなのかなーと思ってつい、そんな感じに言ってしまいました。えへへ」


 この子もなかなかに食えない子よね……。

 第二王子の嫁に、なるべくしてなるって感じ。


「ライラさんが伝えれば私のことも分かるんだろうなって思っていたんで、大丈夫ですよ」

「うん、ほんとにごめんね。まさか芋づる式に勘づかれるとは。セオドアにも、メルルが言いたいのなら言ってもいいからね」

「あ……はは。でも、よかったです。月の曜日の午後からずっと、それはもう今まで以上に仲よしで。解決したのかなーって思いました」

「……え。今まで通りにしていたつもりだったけど」

「全然違いますよ。雰囲気が違います」

「……どう違うの」

「言葉で言い表すのは難しいですけど……、お二人とも付き合いたての恋人みたいな……」


 ぎゃーーー!!!

 なに、その恥ずかしいフレーズ!!!

 え、そんな雰囲気を醸し出してたの!?

 明日の委員会、私の動きが不自然になりそう……。


「メルルにそれを言われるとは……」

「あはは、そうですね。私たちもそうです」


 やはりメルルたちも学園祭最終日に、ゲーム同様恋人になったらしい。秘密の花園でも、恋人ができたって言っていたものね。


 セオドアはゲームでも攻略していないので、想像もつかない。


「でも一番驚いたのは、昨日の放課後の委員会ですね」

「あれ……ね」


 どんな心境の変化があったのかは分からないけれど、顧問としてカムラが参加した。

 とはいえゲームへの参加ではなく、カードを配ったりといったサポートだ。


『五人もいるのに誰も私の授業を取ってくれていませんが、臨時講師で委員会の顧問となりましたカムラです』


 という挨拶から始まった。

 メルルとも顔見知りのような雰囲気だったので、お忍びの時に一度会ってはいるものの、出会いイベントも発生したであろうことは察せられた。

 剣術など私とヨハンでかぶっていない授業も少しはある。その合間に、主従の会話をメルルに聞かれるというイベントが起きたのだろう。


『ヨハネスの執事か……』

『そういえば、セオドア様とも入学前にお会いしましたね』

『ああ。あのカムラがこの国に取られたこともヨハネス付きになることも、当時は話題になっていたようだ……』


 と、セオドアとも会話をしていた。

 強いということで、やはり有名だったらしい。かなりの大金で買われたのかもしれない。

 カムラがこの国に来た時には、セオドアも幼かったはず。後から情報として聞いたのだろう。


 この次の言葉に度肝を抜かれた。


『では、ここにいる皆さんがご存知ということで、自己紹介をやり直しますね。ヨハネス様付きの執事でライラ様の息子のような存在だと、とある界隈で一定の評価があるので、気楽に絡んでくださいね』


 シーナの最初の挨拶の真似よね……。

 どこかに潜んでいたのだろうけど、その後のヨハン以外の皆の目が全て私に注がれ、化け物を見るような顔だったのよね……。


 セオドアやメルルやリックが化け物に遭遇したら、こんな顔になっちゃうんだー……っと勉強になったわ。


 いったい何をしたらカムラが息子になるんだ、という顔だった。


「カムラさんにあれだけ気に入られていれば、安心ですね」

「心配してくれていたものね。それでね、カムラにもメルルが転生者だって気付かれていると思うわ。私たちが森へ消えたのを目撃されて、質問されたの。前の世界の話をして、メルルには花園に連れて行ってもらったとしか言ってないけど……鎌倉幕府とか会話しているのを聞かれていたから」

「ふわぁ~、それは恥ずかしいですね。大丈夫ですけど、私……変なことを言っている人でしたよね」

「……私もね」

「そっかぁ、それでもカムラさんに普通に質問されるだけなんて、さすがライラさんですね」


 普通に質問されるだけ……では、なかったけれど……。あー、カムラのベストエンドルート、気になるなぁ。


「ここだけの話、ヨハンが私を捨てたらカムラが私をもらっていくみたいなことも昔言ってたくらいだし、たぶん大丈夫よ。今後も何もされないわ」

「うっわ〜! すごいライラさん! あー、私も男性側になって、ライラさんに口説かれてみたかったですー!」

「……口説いてはいないわよ」


 ゲームに参加はしなくても、カムラが委員会に来てくれて助かった面はある。日の曜日はシーナかローラントがいるけれど、金の曜日は完全にリックが恋人二組に囲まれてしまっている。

 正直、気分としてはどうなのかなと思っていた。


「それでね、メルル。ほら……この世界、現実ではないじゃない?」

「……はい」

「人の思いでつくられた世界なら、人の思いで発展する部分もあると思うのよ。世界観が壊れない程度に、いきなりデジカメは開発されないだろうけど、カメラが発達しないかなーと強く望めば、誰かがフィルムを使ったカメラを早めに開発してくれるかもしれない、みたいな」

「あー、あるかもしれないですね、それは」

「それで、少し言いにくいんだけど」

「……はい」

「カムラのように地獄を見る子が必要ない世界にしてみせるって、カムラに大風呂敷を広げちゃったのよ」

「うわーーー! ライラさん、格好よすぎるーーーー!!!」


 え……ちょっと、ベッドの上をぐるぐる転がっているけど、大丈夫? 落ちそうよ?


「そ、そんなわけでね。そのための体制とか組織とか教育とかあり方を、ざっくりと卒業までに考えようかと思って。前の世界では数人の願いで世界は動かないでしょうけど、ここではなんとかなるかもしれないし。そうするつもりだってことを、ジェラルドにも伝えてほしいかなって。モデルケースができれば、各国にも広がるかもしれないし……。できれば、こっちで確立できたら協力をお願いしたいというか。実権握るまではあまり動けないでしょうけど、ここの世界設定を考えた人達を上回れば、なんとかなるかなーと」

「もちろんです! 私にも協力させてください。あ〜、私もライラさんと結婚したかったな〜!」

「……セオドアに怒られるわよ」


 もうすぐ冬が来る。

 ここは一年中温暖な気候でそんなに変化はないけれど、あっという間に時は過ぎていく。


 隣国に行ってしまうセオドアとメルルに働きかけられるのは、この学園生活の間しかない。

 今しかできないことを、精一杯やろうと思った。

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