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婚約解消を提案したら王太子様に溺愛されました ~お手をどうぞ、僕の君~【書籍化・コミカライズ完結】  作者: 春風悠里
後編 学園入学後

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49.ダンスイベント

 うん、さすがに寮の裏は人がいないわね。


 共生の森で一人で寝たのは駄目だったけれど、ここで二人でダンスなら問題ないでしょう。


「ナチュラルターンは習った?」

「はい、それを次の授業までに繰り返しやるようにと。部屋でも練習しているんですが、それだけでも私には難しく……」

「じゃ、やってみて」

「は、はい。う〜、でも恥ずかしいです。ライラさん、一緒に横でやってくれる気は……ないですよね」


 うわぁ、メルルのおねだりがきたー!

 可愛い。可愛い可愛い可愛い。

 よし、抱いちゃおう。


「私が、男役をしてあげるわ。メルルより背も高いし、ちょーどいいでしょう」

「そ、それは嬉しすぎて、倒れそうです」

「んふふ、お手をどうぞ、お嬢さん」


 柔らかい手を、そっと握る。

 リードできるって気分がいいわね。

 さっきは、カムラに主導権を握られたからなぁ。


 女の子同士で、キャッキャしながらダンスの練習。

 楽しい……!


「後ろ、右足、閉じて。引きすぎないで軸を立てて。もう一回ね。引きすぎると押し倒されるわよ」


 何度も何度も繰り返していると、どこからか声がした。


「あ、いいなぁ。ライラさんから、ダンスの手ほどきを受けてる」


 リックがこちらへ歩きながら声をかけたようだ。


 これは……私がいるから恋愛イベントではないのよね? 何イベント?


「うん、いいでしょ。一人占めしているの」


 お。メルルとリック、いつの間にかタメ口になったのね。

 同じ平民出身で同じ学年。仲よくなったらそうなるのは当然ね。


 ……セオドア、大丈夫かな。


「ライラさん、ここで俺も見学していいですか? 前のダンスの授業、酷くて。メルルさんと組んだのですが、全然リードできずに迷惑かけてばかりで……」

「私のが酷かったよ。足、たくさん踏んじゃったし」

「いや、それは俺のリードが悪かったから……」

「私があんな状態だったからだよ」


 あー……この子たち、いい子よねー。

 カムラと会った後だと癒される……。

 二人とも最初はそれで当然よとフォローしたいけれど、この可愛らしい会話をずっと聞いていたい気もするわね。


「あ、姉さーん! こんなところにいたの姉さん! あれ、さっき会ったメルルちゃんと、リックじゃないか。姉さんずるいよ。僕が探しまわっている間に、こんなところで遊んでいるなんて!」


 うるさい……。

 そういえば、ローラントが私を探していたんだっけ。


「驚かせようとするからよ。前もって言っておいてちょうだい。ここに来る申請はしているでしょう」

「ヨハネス様が土の曜日は戻るって聞いたから、暇しているだろう姉さんのためのサプライズだよ。せっかく父さんと母さんからの手紙を持って遊びに来たのに、どこにもいないんだもんなー」

「それを理由に入ってみたかっただけでしょう?」

「あはは。バレた?」

「手紙も、無理矢理書かせたんじゃない?」

「そこまでじゃないよー」


 無理矢理書かせたのね……。

 ローラントは相変わらずよね。一応両親の前ではお父様やお母様と呼んで年相応の貴族の息子らしくしてはいるけれど……なぜか、私の前では昔から変わった気がしない。


 ゲームでは私のせいで泣いているメルルを慰めるイベントが発生したはずだけど……今回はないに決まっているしね。


 世話焼きキャラから、ただの明るくて無邪気な弟キャラに成り下がってしまった気がするわ。姉の性格が悪くて初めて発揮される長所だったのかもしれない。


「それで、こんな人気のないところで三人で何をしていたの?」

「そうね。ローラントが協力してくれるって言うのなら、教えてあげるわ」

「何それ、姉さん。普通に考えて内緒の話とか……あ、もしかして僕、邪魔ってこと? 遠回しに去れって言われてる?」

「言ってないわよ、メルル、お手をどうぞ」


 えー、と目を丸くして、怖じ気づきながら私の手に彼女の手が重なる。本当に踊るんですか、と問いかけるような上目遣いだ。


 キュンキュンする……!!!

 可愛い女の子を動揺させるの、はまりそう。

 動揺させた後に、安心させてあげたくなる。


 ふと、十歳の自分の誕生日パーティーを思い出す。ヨハンに初めてダンスを申し込まれた時だ。まさか踊るなんて思わなかったから、たじろいだ。


 もしかして私……あの時にこんな顔をしていた? そうだったのなら、ものすごく恥ずかしい。


 たどたどしく動くメルルをリードしながら、ステップを踏む。


「あ、ダンスの練習だね!」

「はぅ〜、ライラさん、いきなり誘われると胸がドキドキです」


 いちいち可愛いな、もう。


「ローラント、あなた、女役でリックと踊ったらどうかしら」

「え!?」

「はあ!?」


 二人が固まっている。

 妙案だと思ったんだけどな。背の高さもリックがものすごく大きくなったから、ちょうどいい。


「ダンス、なんとかしてあげたいって言ってたじゃない。いつだっけ、六年前くらい?」

「昔すぎる話を出さないでよ! それに、僕が女役をやるとは一言も言ってないはずだよ!」

「でも、やれるでしょう?」

「……まぁ、やろうと思えばやれるけどさ。え、本気で言ってる? 男女二人ずついるんだよ、おかしいじゃないか」

「授業ならまだしも、プライベートで私がヨハン以外の男性と踊ったら駄目に決まっているじゃない。メルルだって変な噂は立てられたくないはずよ。メルルの相手は私が適任よ」

「えー、だからってさー」


 そんなに嫌なものなのかな。


「い、いいですよ、ライラさん。そんな無理をローラントさんには言えません。俺は俺でなんとかします。あ、ライラさんを真似しながら、横でステップを踏んでみますね」


 まぁ、それでも練習になるわよね。

 仕方ないか。


「……もういいよ、分かったよ。僕が女役をやるよ。ほらリック、準備して。姿勢悪いよ、背筋伸ばして。最初の一歩で押しすぎないでよ」

「え!? あ、は、はい」


 こ、これは……。

 私が提案したものの……かなりシュールね。


「姉さん、見てないで一緒にやるよ!」


 やけっぱちなローラントも一緒に、この日は夕食の時間までダンスの練習をした。メルルがものすごく頑張って笑いを堪えている様子だったのには、気付かなかったことにしよう。

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