45.六人でわいわい
扉が開き、こちらを見たメルルが驚きで目を見開いた。思いもよらない人がいたからだろう。
「やぁやぁやぁやぁ、君だったのか、メルルちゃん! これはいいサプライズだ。君が緩衝材だったんだね!」
「え、あ……えっと」
うん、ごめん。
この人を、ヒロインオーラでどうにかしてもらおうと呼んだのよ。
「この前は一緒にセオドアを探してくれて、ありがとう。あの後に無事見つかったよ」
「あ、そうだったんですね。よかったです」
おー、普通の会話じゃない。
ほっとするわね。
「メルル、立っているのもあれだし、座って座って」
「あ、はい」
一つのテーブルには二~三人掛けのソファが向かい合うように置いてあり、私たちはそこに座っていた。私とヨハン、セオドアとジェラルドがそれぞれ横並びだ。
左右には一人掛けのソファが一つずつあり、空いているのはそこだけだ。
メルルは、私とセオドアに挟まれる形で座った。
そうよね……ヨハンとジェラルドには挟まれたくないわよね。
この並び順でよかったわ。
「皆さんは昼食後、いつもここなんですか?」
「んー、私とヨハンはそうなるかも。メルルともゆっくり話をしたいし、たまにでも毎日でも、ここを覗いてほしいわ。セオドアもね」
「わぁ、いいですね! ここに来れば誰かがいる、そういうの……ずっとずっと憧れていたんです!」
うんうん、そういうのも学生ならではよね。
前世の大学でもそうだった。
知り合いがいつもいる部室。友人がよく雑誌を読んでいる学内の図書館。そんな場所がいくつもあって、その時に会いたいと思う相手に会いに行っていた。
もう二度と戻れないと思った、青春の日々だ。
「ライラちゃーん? 今、僕の名前を意図的に外したよね」
「私とヨハンの仲を、引き裂こうとしたくせに」
「恋人たちには仲を深めるための試練が必要だろう。感謝してくれてもいいと思うな」
「えー! ジェラルドさん、そんなことしたんですか! このお二人の仲を引き裂くなんて、絶対にできませんよ」
「メルルちゃんまで、そう言うのか」
ジェラルドは少々うんざりぎみだ。
さすがに諦めたかな。
「あ、皆さん勢揃いですねー!」
リックまで談話室に来た。
確かに勢揃い感がある。
「リックさん、そうですよね!」
珍しくメルルが憤慨したまま、リックに話しかけた。
「え、え、な、なんですか、なんの話ですか」
「ヨハネス様とライラさんの仲を引き裂こうなんて、無駄ですよね! お二人は絶対に、結婚しますよね!」
……メルル、なんでそこまで。
「あ、さっきの話ですね。もちろんです、絶対ですよ」
どうしてあなたたちが絶対って言えるのよ。
「……ああ、絶対だな」
セオドアまで!?
「ジェラルド以外は分かってくれているようだね。僕たちは絶対に、結婚するよ」
「はい、分かっています。絶対ですよね」
「絶対、ですからね。ジェラルドさん!」
絶対……絶対……絶対……しつこい……。
この、隣にいる金髪碧眼の王子様と絶対に結婚して、子供を産んで……。
え、待って。あれやこれやするの?
こんなに格好いい、キラキラした人と?
「ちぇー、分かったよ。でもライラちゃんは、そこまでは思っていなかったみたいだけどね」
ほんっと、よく見ているわよね……この性悪王子。
「ライラー? 僕がどれだけ口説いてもなかなか照れてくれないのに、なんで今、赤くなっているのかな」
「皆が絶対絶対言うから、うっかり具体的な未来を頭の中で描いちゃったのよ」
「今まで、描いてくれなかったってことかな」
「そ、それは……」
「馬鹿だな、ヨハネス。具体的なって言ってるんだから、きっとエロ……痛ぁ!」
「黙れ、兄上」
うわ、セオドアがジェラルドをチョップした!
ジェラルドがいると、セオドアの新たな一面がたくさん見られるわね。
こういうのも、化学反応みたいで楽しいわ。
「ジェラルドがいると、セオドアの弟らしさが際立つわね」
「え、いや……今、叩かれたよ? 弟に」
「自業自得。それでどうする? 他の曜日でもいいけど、水の曜日は皆で必ずここに集まるようにする? ジェラルドも来なさいよ」
「…………」
全員の視線が私に集まる。
え……私、変なこと言った?
「ジェラルドも、か……。僕はライラがそう言うのなら、それでもいいけどさ……」
本当にいいのか、という目でヨハンに見られる。
……しまった。
私とヨハンの仲も理解したようだし、とは思ったのだけど……一番ジェラルドを嫌っているだろうヨハンに了解を得るのを忘れていたわね。なんでも受け入れてくれるから先走ってしまったわ。
「この厄介な兄の相手をしてくれるのなら、私も嬉しくはあるが……いいのか」
セオドアまで、なんでそんなに疑わしい目で見ているのよ。兄でしょう。
「私、やっぱりライラさんが大好きです! 私もたくさんお話したいですし、毎日来ますね」
メルルまで、キラキラした瞳で見ているし。
「ライラ様……何をされたのかは知りませんが、ヨハネス様との仲を引き裂こうとした方にまで親切に……。俺、改めて忠誠を誓います!」
だから、様じゃなくていいんだってば、リック。しかも重いってば。
皆がこう言ってくれるのも、私が公爵令嬢であり、ヨハンの恋人だからよね。プライドが高いはずなのに、平気な顔をしているってだけで親切だと思われる。
勘違いしないように気を付けないと。
それよりも……。
固まっていたジェラルドへと視線を移すと、他の皆も彼を見た。
慌てたように口に手をやって、顔を背けている。
「ジェラルド? あなた、顔が赤いわよ」
「……うるさいな」
可愛いところも、あるじゃない。
嫌われていると内心では思っていたのかもしれない。引っ掻き回している自覚はあったのね。
「ジェラルドがいると、場が盛り上がるものねー?」
「うるさいうるさい」
「それで、来るのよね?」
「……来るよ」
照れているジェラルドも、新鮮ね。
「それなら水の曜日の昼食後は、できるだけ皆ここに来てちょうだい。それ以外は気分次第。いいかしら?」
「はーい!」
リックとメルルが元気よく返事をして、セオドアが笑いながら頷いた。
ジェラルドは照れたまま、口に手を当てながらそっぽを向いている。
「君はすごいな」
ヨハンが隣で、苦笑しながら私の頭をなでた。











