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初冬の俳句

作者: まのやちお

湯屋(ゆや)の友 (ばば)にも子にも 冬()たる』



 銭湯のことを古い言葉で“湯屋(ゆや)”といいます。


 同じような時間に銭湯に通っていると、だいたい同じような顔ぶれと出会います。


 湯船(ゆぶね)の中をチョロチョロ歩こうとする幼児。


「風邪をひくから首までつかりな」

 幼児をむんずと捕まえる鶴のように痩せた、いつもしかめっ(つら)のお婆ちゃん。


 母親にしがみつき、逃げてきた小動物のようにお婆ちゃんを警戒する我が子に、ちょっと困り顔の若いお母さん。


「ごめんなさいねぇ。この人、こう見えて悪気は無いのよ」と笑う、真っ白でまん丸なフクフクしたお婆ちゃん。


 ──の隣で、そっぽを向いているくせに幼児を気にしてチラチラ見ている()せ婆ちゃん。


 名前も知らない。でも顔を合わせるとなんとなく挨拶をかわす。そんな淡いお付き合い。


 初冬、広い浴場に吹き込む風が少し冷たくなる季節。

 ポカポカお風呂で温まりたい季節になりました。







『冬もみじ (おきな)湯船の 一睨(ひとにら)み』



 昔の銭湯には大きな浴槽の隣に小さな浴槽がありました。小さい浴槽のお湯の方がかなり熱いのです。そして熱い方の浴槽にはきまって頑固そうなお爺ちゃんがつかっていました。

 いつ行っても熱い方のお湯の中に必ずいて、静かに目を閉じているお爺ちゃんはまるでお地蔵様のようでした。


 ある日、若いお兄さん達が洗い場で騒いでいると、

「おぅ。○○ん(とこ)坊主(ぼうず)」と渋い声が──。


 見れば、お地蔵様の目が開いて騒いでいるお兄さん達をギロッとにらんでいます。


 お兄さん達はすぐに静かになり、お爺ちゃんはまた、少し赤らんだ顔のお地蔵様に戻ってしまいました。


 枯れ色の木々の中で、なお鮮やかな色を残した紅葉を“冬紅葉(ふゆもみじ)”と言うそうです。





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