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私は今日拉致されます。

初めまして。

小説はよく読むのですが、自分が執筆するのは初めてです。

拙い文章ではありますが温かい目で見守りながら楽しんでいただければ幸いです。

コメントやご意見等も良ければお願いします。

ブックマーク登録もお願いします。


「“ワトソン君”、そう聞いてみんなは何を想像しますか?」


 授業開始と同時に教壇から生徒に質問を一つ投げかける。

 これが私の授業スタイル…いやルーティーンだ。


 そうして生徒たちは各々で好き勝手に私の質問に答えてくれる。


「わからん!」

なら答えるな。

「午後五時!」

それは君が見ているアニメに出てくるキャラクターだろ。

「鈴木!」

なぜ鈴木君のあだ名が“ワトソン君”になったのかは聞かないでおこう。

「ホームズ!」


 一人の生徒が私の想像する回答をしてくれるまで待つ。(まあ出ない場合はそのまま先に進むけど)

 これも私のやり方だ。


「そうです。これは世界的に有名な探偵“シャーロックホームズ”の永遠の相棒である“ワトソン”を想像する人が多いと思います」

 まあこのクラスに関してはそうではないようだが。


「しかし、これは間違いです。彼の本来の名前は“ジョン・H・ワトスン”。つまり本来は“ワトスン君”が正しいことになります。にも拘らず、なぜ“ワトソン君”と呼ばれているのか?それをここで説明するつもりはありません」


 こんな訳の分からない話をされても興味のない生徒もたくさんいるが、正直ここまでの話はあまり関係ない。

 質問を投げかけて生徒たちに答えさせることだけが私の狙いだ。

 一呼吸おいてまた話し始める。


「そんなことどうでもいい!と感じている方もいるかもしれませんが、私が皆さんに伝えたいことは“自分が当たり前だと思っていることは当たり前ではないかも知れない”ということです。それを見極めるために自分の中における指標を作ってください。そのために勉強はするものだと私は思います。それでは授業を始めましょう」


 初めの質問以降は生徒たちに何も質問は投げかけず私一人の時間を作り出す。

 この話を生徒たちが聞いているか否かはそれほど重要視していない。

 堅苦しい授業の前にその緊張を解くために全く関係のない話から入っているにすぎないのだ。

 

 そうしてこのルーティーンから下らない授業を開始する。

 無論私の授業が下らないという意味ではなく、高校で習う内容など高校生にとってはほとんど退屈に過ぎないだろうと感じてならないのだ。

 少なくとも私自身はそうだった。

 所詮公務員が与えられた仕事をこなしているに過ぎない、そんな風に考えてしまった高校一年生の夏にはもう私は授業を聞かなくなってしまっていた。


 そんな私が何故今の教師と言う自分が最も滑稽だと思っていた仕事に就いたかと言うと、挑戦という言葉が最もしっくりくるだろう。

 「現代教育を変えてやる!」などと言えば聞こえはいいが、要はただ単に自分の力が教育現場でどこまで通用するのかと言うことを確かめてみたかったからに過ぎない。

 なので、私の授業で私の生徒を私自身が変えてみせると考え、私は教師になったのだ。


 などと意気込んでいたのも始めの三年ほどだけだった。

 徐々に年と歴を重ねる中でそんな気持ちも薄れてきてしまい、35年も経った今では定年までを何も大きな問題を起こすことないようにしているだけの教師人生になってしまった。


 今回の授業も何の変哲もなく終了した。

 職員室に戻ると先生方(大半はボンクラ)が騒然とする中、ひっそりと自らの席に着く。

 次の時間も授業があるがこの数分の一休みが何気に効いてくる。

 多忙を極める医者や土木作業員の方々だって何の休憩もなしじゃ体が持たないからな。


「桜井先生、授業御苦労さまです。もし、よければ今夜飲みにでも行きませんか?」


 この人は阿部豊先生。

 印象的なパーマをかけているため、生徒たちからは『パーマアベ』などと呼ばれている。

 同じ数学の先生で毎日のように飲みに誘ってくる、所謂ナンパだ。


「いえ、今日は仕事の方が残っていますので…また別の機会にお願いします」

「分かりました。では」


 そう言い残し阿部先生は自分の席に戻る。

 これもいつもルーティーンだ。

 正直毎日毎日飲みに誘ってくるのも勘弁してほしい。

 

 さてと、休憩時間もそろそろ終わるころなので教室に戻るか…

 3-A。

 受験特化のクラスなので授業により力を入れる必要はある。


 ――――― 1時間後 ――――――――


 無事授業は終了した。

 受験に特化した授業だったため面白さは全くなかった。


 そもそも勉学とは自ら好んで学んでいくのであって誰かに言われてするものではない。

 そういった意味では現代の受験制度はどうかと思う。

 全く興味のない科目を勉強させられて生徒もうんざりしているだろう。

 それよりも自分が好きな科目を思う存分学びたいと感じている生徒もたくさんいるだろう。

 

 だが、私がそれをどうこう言ったところで政府を動かすことはできるはずもない。

 私の出来る抵抗はせめて自分の生徒が受験で数学に苦しむことの無いように分かりやすく楽しい授業をすることくらいだ。

 

 しかし、教師になった以上はその責務は果たしたい。

 自分の生徒の為に命を懸けるくらいの覚悟は常に持っている。

 たとえ、私が教師をクビになったとしても生徒にとってプラスになるのであればまあいいかなとも思っている。

 そのために私自身もより一層向上し続けなければいけない。

 阿部先生のナンパに付き合っている暇なんかこれぽっちも無いのだ。


 などと考えているうちに職員室に着いた。

 授業も終わったことだし、残っている仕事を片付けてさっさと帰ろう。

 勿論、阿部先生には気付かれないように。


 そうして職員室の入ると中は騒然としていた。


 「今すぐ校長を呼べ!さもないとこいつを殺す!」


 私が真っ先に目に入った光景は職員室の奥で刃物を持った男が生徒を人質に教師を脅している姿だった。

 どこからどう見ても、みすぼらしい姿で生徒を脅すという点から考えても後がない人間、つまりは無職の男であると予想される。

 私は”シャーロックホームズ”ではないが、それくらいなら私にでも予想がつくほどに男は格好も目も只者ではないことは直ぐにわかった。

 人質に取られている生徒は私のクラスの生徒園田翔太君だった。


「落ち着いてください。ひとまず刃物を置いて話をしましょう」

 教頭が男を制止する。

 

「うるせぇ!さっさと呼ばないと本当に殺すぞ!」

 男は教頭の言葉には耳を貸さず、会話がまともにできない状態だった。

 

 行くぞ…


「待ちなさい!今すぐその子を離しなさい!」


 教頭を追い抜き、男の前に出たのは私だった。

 そうして男に一歩、二歩と近寄る。


「それ以上近づくな!」


「よく考えて!校長を呼びたいなら生徒ではなく教師を人質に取るべきじゃないかしら?」

「どういうことだ?」

 よし、食いついた。


「その子を殺せばその子のご両親が黙ってないわよ。たとえあなたが逃げたとしても親御さんはあなたを地の果てまで追いかけるでしょう。逃げ切れるとは思わないことね。それほどに親の愛情とは深いものなの」


 この男の目的は分からない、そしてそれを考えている時間も無い。

 それっぽいことを言って、男を翔太君から引き離すことだけを考えるしかない。


「だから何だ!用件だけ言え!」

 だからこうするしかない。


「私を人質にしなさい。私には両親はいないし、配偶者もいないわ」


「桜井先生!」

阿部先生、今は黙っていてください。

「先生!」

 大丈夫、君は私が守るから。

「桜井君!」

 あんたは叫ぶしかできないのか、教頭。


 男が翔太君に向ける刃物の力が弱まったことは確認できた。

 今がチャンス。


「さあ!早くしなさい!」


 男はほんの数秒ほど考えた後に答えを出した。


「いいだろう。こいつの代わりにあんたが人質になれ」


 よし、ひとまず翔太君は助かった。


「こっちに来い」

 

 男に言われるがままに私は近づき、そしてスムーズに向ける刃物を私に変えた。

 翔太君はその場から逃げ、教師陣の中に紛れた。

 男は私の首を自らの腕で掴み、刃物を頭につけた。


「これで文句ないだろ!さっさと校長を連れてこい!」


 男は依然変わりなく怒号を飛ばしているが後はどうでもいい。

 この男の目的も、なぜ校長を呼んでいるのかも私には関係のない話だ。

 翔太君を助けられた時点で私の役目は終了している。


 そんな悲しそうな目で見ないで、翔太君。

 先生は君を守れただけで十分満足だから。


 緊張からだろうか…私の意識はそこで飛んだ…

 


 目を覚ました時、私は真っ白で広い部屋に閉じ込められていた。

 人ひとりが入れるであろう小さなドアと、この部屋では目立つ色をした便器が置かれているだけだった。

 

 さてと、どうしたものか。


初めて小説を書いてみて、自分はこんなにも文章力がないのかと感じさせられました。

伝えたいことを伝えられているか不安ではありますが今後ともよろしくお願いいたします。

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