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人間と遭遇

「キュッ!?」


近くを通り過ぎようとした兎の首に噛みつき、抵抗するよりも速く骨を噛み砕く。


噛みつく、そして首の骨を砕く。抵抗されるのは面倒なことこの上ないからな。


拠点としている小川まで兎を持っていく。


転生(仮)をしてから14回夜が過ぎたが……狩りが本当にキツい。本来、狼は集団で狩りをする。それなのに俺のように一匹で狩りをするのは普通に大変でしかない。


まず、相手に見つかるより早くこっちが見つけない。例え見つけたとしても、向こうに気付かれないように接近しないといけない。


次に、草食動物ならまだ良いが肉食動物と獲物がブッキングしてしまうこと。大体が熊とか他の群れの狼で勝ち目があるときは確実に仕留め、勝ち目がなければさっさと逃げるしかない。


そして、最後に――


「―――――――!」

「ッ!!」


強い殺気を察知して食べようとしていた兎を咥えると気配がする方向に投げつけ森の中に入る。


森に入ってすぐのところで身を屈め、投げた兎の肉を窺っていると中年の男と十代前半の少年がやってくる。


互いに弓と矢を装備しているため俺は物音をたてずに回り込む。


狩りの難しさよりも、他の肉食動物よりも、一番厄介なのは人間だ。


元人間だから相手がどのような存在なのか、嫌というほど理解している。本能で狩る肉食動物よりも理性で狩る人間の方が相手にしにくい。


何時もならさっさと去るが……数時間かけてやっと手に入れた食べ物を人間どもに奪われるのは不愉快だ。


元より、こっちは獣だ。獣は手に入れた物に随分と執着する――それが獣の習性だろ、人間。


茂みから勢いよく飛び出ると同時に獲物を注視していた中年の男の首元に噛みつく。


「――ッ!?」


遅い!


男が腰からナイフを引き抜くよりも速く肉を引きちぎりながら男を蹴って飛び退く。


男は千切られドクドクと出血する傷口に手を押さえながら膝から崩れ落ちる。


「――!?――――!」


ちょっと何いってるのか分からないな。


少年が怒りの眼差しと怒声と共に弓を捨てナイフを引き抜いて構える。それと突貫してくる。


少年のナイフによる突きを真横に回転して避け、横切り様に前足の爪で少年の右足を切り裂く。


ふーむ……この世界の人間の言語が分からないというのは普通に困るな。人間たちの声を聞いて分かる内容かと言われれば分からないしな。


ま、人間と自分から関わるつもりはないからそこまで大きな問題ではないけど。


「――――……」


地面を這って逃げようとする少年の背中を前足で押さえつけ、首筋に噛みつく。血の味が口内を満たしていく。


うわっ、人間の血と肉って案外不味いな。あんまり食べたくないな。


少年が動くのを完全に止まったのを確認して口を離し、すぐに川の水を飲んで口内の血を洗い落とす。


うう……人間は血も肉も不味い。他の動物より大きくない癖に筋ばっか。狙うメリットはない。これなら熊の肉の方が幾分か


口内の洗浄が終えたらやっと兎の肉を食べる。


血の味が濃いが、人間の肉の味と比べれば遥かにマシだ。


骨と臓物を除き、兎の肉を全て食い終えるとさっさと川で水浴びをして森に入っていく。


狼になって思ったが、自由なのに基本的に食糧の確保が常の目的になるのか。自由なら自由なりに苦労は多くなるものだな。

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