1-8
あと少し、あと少しで本編に入れるんだ…
夢を見ていた。
小さい頃の夢を。
「いいか? 終物、人間は矛盾ばっか言っている。だけどな、良い事も悪い事もそれが自分の我儘だって思うならそれを押し付けてしまいな。それが人間ってもんだ」
そう言っているのは化賀魔 始牙こと、俺の尊敬する父さんだった。
母さんは怪亜を生んで亡くなって以来、男手1人で育ててきてくれた父さんにはただの尊敬じゃなく崇拝にも似た感情を持っていた。
だからこそそんな言葉を言われた時、癇癪をおこしてしまったのだろう。
しかし父さんは顔色1つ変えずに言った。
「人間矛盾していいんだ、憎しみと愛を両方持つように人間は矛盾をしなければならない」
そう言って俺の頭をポンポンと叩いた。
「…分かんないよ」
やっとの事で振り絞った言葉も父さんは笑って言った。
「それで良い。分かんないって事は矛盾しようと努力しているって事だ。」
そして俺の頭にのせていた手を俺の手に合わせて、言った。
「約束だぞ。たとえ人類と約束を天秤に懸けたとしても約束を守れ」
そう言って笑った。
「う、うぅぅ…」
暖かい。
目を開けると最初に飛び込んできたのは、燃え尽きた火だった。
次に周りを見渡すと壁にもたれて目を閉じて眠っている師匠だった。
身体を起こし、師匠の所へ行こうとすると。
「起きたか?」
と師匠は目を開けて言った。
「うん、起きれたよ」
と返すと師匠は滝を指して言った。
「とりあえず洗ってこい、顔もな」
と言って出てった。
「顔?」
そう思い水たまりをのぞくと俺の顔に涙の跡があった。
「洗ってくるか…」
昔を思い出してしんみりしている場合じゃない。
俺はもう人間じゃないから。
※数十分後
顔を洗い師匠が持ってきた服(日本で買ってきたらしい)に着替えて昨日仕留めた鹿(何故か凍っていた)を焼いて食べているとおもむろに師匠が言った。
「紛争止めてきたから明日、国連会議に乗り込むからな」
そう言って鹿肉を頬張る。
しかし、待ってほしい、俺は特性すら上手く扱えてないのにどうすればいいんだ?
「俺、何もできないよ?」
と聞くと、「ただ突っ立てているだけで良い」と返ってきた。
なるほど、と思いまた食事を再開しようとすると。
「で。妹はどうすんだ?」
と聞かれ、危うくせき込むところだった。
…怪亜か。絶縁状態とはいえどうしようかな…
ふと今朝見た夢を思い出す。
人類と約束を天秤にかけても約束を守れか…
「師匠、ちょっと提案があるんだけど」
そう言って[提案]を師匠に話し始めた。
※国連会議場
国連会議場は静かな熱気に溢れていた。
しかも話題はやはり紛争がおきているQ国とR国の軍隊を[使用不可]にした事で両陣営のど真ん中に「明日一時、国連会議場に訪れさせてもらおう」と書かれた看板が大地に刺さっていたことだろう。
しかも両陣営共に襲撃者がカメラに写っているにも関わらず、誰にも一致しなかったのだ。
やがて会議と時間は進み、ついに1時になった。
ガコン ギィィィ
会議中にも関わらず扉が開いた事に驚いて扉に視線が集まりやがて、どよめきがおこる。
「邪魔するぞ」
そう言ったのは皺だらけの白いズボンに上もまた白い服、そして命こそ全てと書かれたマント。
まさに紛争を止めたヤツだったからだ。
すげぇな。
入って見た感想はそれだ。
何せ[人類]的に重要な人ばかりだ。
そう考えているうちに師匠はしゃべりだした。
「全員黙れ」
…戦争でも始める気かい。
そう思ったが師匠はそんなことに頓着せず言い放った。
「俺がQ国とR国の紛争を強制的に止めたヤツで、こいつが俺の弟子だ」
と後半は俺を指さして言った。
「さてここに来た理由はいたってシンプルだ、俺たちと[対話]しろ。」
そう言い放った。
次の瞬間怒号、そしてそれを宥める声が大量に響いた。
しかし師匠は懐から袋を取り出し、袋から戦車(!?)を取り出した。
さすがにこれには全員驚いたのかシーンとなった。
「いいか。見ていろ」
そう言って師匠は力をこめ始めた
ミキ、ミキミキ バキッ!
そう音をたてて戦車は壊れた。
全員が静まった事を確認すると師匠は言った。
「[対話]する気になったか?」
と。
これ、やっぱり脅しだよなぁ…
…あれ、これまだ続くやつ?