第7話 マスターツリーでの誓い
ガーランを後にし、タネバスに乗りハーカルドへ着いた。本部の場所は“リガト”と“レーフ”の間にある大通りを真っ直ぐ北へ向かった所だ。ちなみに反対の南へ向かうと、ほたる通り六丁目にあたる。
しばらく歩いて本部の前に着いた。
「トニー。準備はよいか?」
「うん、大丈夫だよ」
「よし。まぁ緊張するかもしれんが、リラックスじゃリラックス。肩の力を抜いて」
そんなこと言われたって緊張するものは緊張するって、とトニーは心の中で静かに抗議した。
扉の前にやってきた。
あちこちに着いている窓から淡い光が外にもれ出している。装飾も元々の樹を活かしたデザインだ。
“本部のある樹”は通称『マスターツリー』と呼ばれている。上を見ると、枝分かれしている部分がかなり遠くにあり、マスターツリーがどれほど大きいのかがすぐわかる。
シュテロンが門のような大きなドアを開けた。
中の光景を見るなりトニーは驚いた。
見たことも無い色々な生き物達が広大なエントランスを縦横無尽に行き交っている。
上には、とても大きく立派なシャンデリアが吊るされていた。そのシャンデリアが、至る所に置いてある蛍光樹の光を乱反射させて地面をキラキラと輝かせていた。
両脇には大きな螺旋階段があり、別のフロアへ行けるようになっている。
「このエントランスは自由の象徴じゃ。色々な種族の生き物が集っておる」
二人は螺旋階段を上り、一つ上の階に来た。
正面の扉を開け、中に入る。
そこは、まるで裁判所の様な部屋の作りだった。
すると突然、長らしき人が、大きな声でトニーを呼んだ。
「13人目のトラベラー!トニーよ!!良くぞここまで来た!!」
「?!」トニーは一瞬驚いたが、一呼吸おいてお辞儀をした。
「うむ!」と言うと長は向きを変えて、「シュテロン。案内役ご苦労だった。トニー、話はよく聞いている。さっそくだが、君はこれからトラベラーとして様々な活躍を私達に見せて欲しい。かなり急だし、そして何より大変な旅もあるだろう。それでもやってくれるか?」
少し間を置いてから
「はい!」と大きく返事をしたトニーは、沢山の祝福の拍手と共に正式に13人目のトラベラーして任命された。
「トニー。慌ただしくてすまんが、取り急ぎ向かってほしい場所がある。早速最初の旅だ」と長が言った。
「もうか?!今し方ハーカルドへ着いたばかりじゃ。トニーも疲れておるじゃろうて。少し休ませてやってくれ」とシュテロンが気に掛けてくれた。
あまりにも衝撃的な事が数多く起こっていたせいで忘れていたが、トニーは夜中に家を出発していた。そしてもうじき夜明けの時間のはずだ。
「うむ。それもそうだな。よし、今日はゆっくりと休むがよい。部屋を用意しよう。ページ!」と、手を2回叩くと奥から若い新人らしき人がやってきた。
「トニーを部屋に案内してやってくれ」
「かしこまりました」
ホテルの様な廊下を通り部屋へ案内された。
「トニー。ゆっくり休むがよい」
シュテロンが優しい声で言った。
こうしてトニーの長い長い一日が終わった。