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第3話 蛍光樹の都 ハーカルド

シューッと汽車が止まる音があちこちから聴こえる。天井が霞んで見えるほどとてつもなく高い。何に使われているのかわからないダクトのようなものが沢山あるこのスチームパンクな駅の名前は、マーベリック・マーティン駅。その名の通り、マーベリック・マーティンさんという人が建てた駅らしい。通称『マーブル駅』。




トニーが想像していたヨーロッパな感じに少しだけ似通った造りで、とてもテンションが上がっていた。トニーは駆け出しながら、


「うわぁ〜!!すっげー!!ここがハーカルド??」


「ここはまだイギリスじゃ。ハーカルドへ行くにはあの門を通るんじゃ。」


「えっ…?!」


シュテロンが指さした所は、さっきまで壁だと思っていた場所だった。とてつもなくでかい。なんと言ったら良いか、とにかくでかい。これもまた上が霞んでうっすらとしか見えないほど高い。よく見ると少しだけ開いている。確かにそれは門だった。そしてその開いた門の下に関所らしきものもあった。


「あそこを通るの、、?」


「そうじゃ。なんだ不安か?」


「ふ、不安なもんか!...でももし、通ってる途中で門が閉まったりしたら、、」するとシュテロンは大声で笑い出した。


「はっはっはっはっ!!そんな事があるんなら見てみたいわ!あの門が動いているところをわしは見たことがない。きっと錆び付いて動かんのじゃろう」


「そうなんだ、、」


僕は門を見上げる。そこには心を不安にさせる【何か】があるように思えた。遠くにいるのにずっとこちらを睨み付け、一歩たりとも動くことを許さない威圧感。そんなものをこの門から感じた。


トニーは話を変えようと今後の予定を聞いた。


「ねぇシュテロン。僕達これからハーカルドへ行くけどまず何をするの?」


「そうか。そこの説明がまだじゃったな。まず服屋へ行こう。トニーにお似合いの服を買ってやる。」


「服屋?!なんで急に?僕は服持ってるよ??」


トニーが不思議そうに聞くと、


「何を言っておる。おぬし今パジャマじゃろ」


「あ。」すっかり忘れていた。夜に部屋から抜け出した事を。


「それに、『トラベラー』たるもの!服装にまで気を配らなくてはならん」


「まだトラベラーになるなんて言ってないし…、でもそっかぁ!こっちの世界の服装になれるんだね、、楽しみだっ!」


「ほっほっほっ。そうか楽しみかっ!」


「うんっ!!でもそのあとは?服を買いに来た訳じゃないんでしょ?」


「もちろんじゃ。服を買ったあとは、いよいよメインターミナルにゆくぞ」


そんな話をしながら歩き、ついに門にたどり着いた。すると関所の人がこちらにやってきた。


「これはこれは、シュテロンさん。ハーカルドへ行かれるのですね。一応お連れ様の通行書を拝見します」


トニーは通行書なんて持っていない。するとシュテロンが、


「その本じゃ」とトニーの手元を指差す。


「トニーは【Dimension・travel】が通行書代わりなんじゃ」


「へぇ、そうなんだ。...はい、お願いします」


トニーは少し緊張気味に本を差し出す。関所の人は本を開き、何も書かれていないページに手をかざした。すると、みるみる文字が浮かび上がってきた。


「ふむ。種族は人間。ランクは0。トラベラーNo.13。新しくトラベラーになられる方ですね?」


げ、個人情報ダダ漏れじゃん、、別にバレてもいいような情報だけど、、。


「そうじゃ。これから本部へ行くためにハーカルドへ行く。」


「了解しました。どうぞお通り下さい。」


さっと関所の人は道を開ける。シュテロンはほぼ顔パスだった。一体何者なんだろう、、、。


「どうもありがとう」


シュテロンがお礼を言ったのに続けてトニーもお礼を言った。そして...


門から溢れ出る光の中へと入っていく...。




──────────────


──────────────────


トニーは思わず息を呑む────


あまりの美しさ故だ────


辺りに生えている木は黄色い光を優しく出し、それが半透明の葉を通して少し黄緑色に見えている。大きな樹がありそれが家として使われているようだ。街灯の代わりになるような小さめの木もある。地面の道は、木の間を縫う様に複雑に絡まりあっている。そしてなんと言っても気になるのが、ずっと遠くにあるが存在感がすごく、どこを見ても視界に入ってくるような巨大な樹だ。恐らくあれが本部なのだろう。いくつもの窓からこれまた黄色い光が漏れている。




街を歩いている人達の服装は、女性は幾何学模様の入ったワンピースのようなものを着ている。男性は上と下が分かれているよく目にする服装に同じ幾何学模様の入った服を着ている。全て少しだけ袖が広く作られている。こっちでは女性は貝殻の髪飾りが流行っているようだ。


トニーが聞いた。


「あの光る樹はなに?」


「あれは【蛍光樹(けいこうじゅ)】という樹で、“常夜帯(じょうやたい)”という地域でのみ見られる希少植物じゃ」


「常夜帯??」


「文字通り、常に夜の場所という事じゃ」


「どうして常に夜なの?」


「まだ多くが謎に包まれており詳しくは解らんが仮説では、この地域の特産物の【デビルズ・ピューピル(悪魔の瞳)】という鉱石が何らかの物質を出していて、その物質が光を物凄いパワーで吸収しているのではないか、と言われている。」


「言われている?そんなのその物質を捕まえて調べれば分かるんじゃないの?」


「本当にあるかどうかわからんし、あったとしても光を吸収している物質は、反射した光を捉えている生き物の目には見えんのじゃ」


そんなもんなのか。とトニーは1割も理解が出来なかった。


「さぁ、服を買いにショップへ向かうぞ。商店街は、ちと遠いので“タネバス”にでも乗るか」


「タネバス?」


「まぁ見てれば分かる」


たどり着いた場所に“ハレーン商店街行き”の文字が書かれている木の看板があった。しばらく待っていると突然、ふわふわな綿毛がいきなり目の前に現れた。正しくは、「現れた」と言うより「落ちてきた」。その落ちてきた綿毛の下の種の部分に人が座っている。座りやすそうな形になっていた。


「さぁ、乗るぞ」


トニーはワクワクしていたがちょっぴり怖かった。これは安全な乗り物なのかどうなのかを考えていた。そんな気持ちを読み取ったのかシュテロンが言う。


「タネバスは乗っている人が落ちないように空中では座席まわりが綿で包まれるのじゃ。だから心配はいらん」


シュテロンが言い終わるやいなや、あっという間に綿毛が体を包み込んだ。


「うおっ!モフモフだ!」


すると、フワッと足が地面から離れた。かと思うと一気に木々の合間を抜けて空へと上昇した。


「うわぁぁぁぁぁぁあ!!」トニーは感動と恐怖の大絶叫をした────




空を飛んでいると、色々なバス停があってとってもおもしろかった。僕らが乗った所が『中央関所前』、そしてその次が『アルトル地区』。他にも行ってみたいと思う様な気になる名前が沢山あった。『ほたる通り一丁目』、『オースロントンネル』、『リュオット港』『タレーラン湿原』などなど、、、しばらくして下の景色が変わっていった。木が綺麗に並んで生えている。その間を人々が行き交ってかなり賑わっていた。どうやらあそこが『ハレーン商店街』らしい。




綺麗な街並みをボーッと眺めていると、なんと綿毛がみるみるうちに萎んでいった。トニーは大慌てでシュテロンを呼んだがシュテロンは楽しそうにしている。他のみんなも「何騒いでるんだ」っていう顔をしていた。トニーは少しだけ顔を赤らめた。その瞬間綿が萎み一気に地上へと急降下した。




危うくぶつかるといったところで綿がボフッと広がり空中に留まった。トニーは思わず「もう乗らない、、」と呟いた。

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