七話~異世界食堂(物理)~
「これは勇者と大賢者に関する文献でも見たことがないレベルじゃ!」
「流石は穂村君!」
(褒めて貰えるのは嬉しいんだけど吹雪も褒められてる事に気付いて無いのかな、、、?まあ、吹雪のこんな所が可愛いんだけどね。)
「愛しのマイハニー、今から評議会に行ってこのことを報告してくるからホムラ殿達にこの国を案内しておいてくれ」
「分かりました!」
エリュは、嬉しそうに返事をして王宮を後にした。
「やったね穂村君!これでようやく街を見られるよ‼」
「うん。僕もこの世界の街には興味があったんだ。」
街に向かうや否や、穂村の腹の虫が鳴いた。
「そういえばそろそろ御飯時ですね。ここから近いいい店、知ってますよ!」
今まで全く喋らず、真っ白になっていたアルバートが急に色を取り戻した。
「この近くに、『月兎亭』という店があってですね、そこの『ホーンブルのステーキ』が絶品なんですよ。」
「じゃあ、お腹も空きましたしそこで食べましょうか。」
「へいらっしぇーい!お、アルバートじゃねえか。何にするよ?」
「いつものを四つで」
「おう!『ブルステ』四つだ!お前ら、またせんじゃねえぞ!」
「へいおまち!『ホーンブルのステーキ』四つだぜ!『エゲンオラジュース』もまけとくぜ!」
(思ってたよりデカイな。そしてこのジュースは何だ?紫色、、、ブドウジュース的なものなのか?何はともあれ食べてみるか。ん!?ナイフをいれた瞬間、まるでバターのような柔らかさで切れていく!それに、肉汁が切れ目から溢れ出てくる!そして、口にいれた瞬間、まるで溶けるかのように消えていく。だが、それでいて塩コショウという簡素な味付けのおかげで油のしつこさが適度に調整されている。これは米が欲しくなる!でも、油のしつこさが適度に調整されているとは言ったものの油のしつこさが完全に消えた訳ではないし、塩が結構効いているせいか喉が乾くな、、、この謎ジュースを飲むしかないのか。)
「ふぅ。よし!」
ゴクッ
(はっ!これはブドウジュースなんかじゃない、オレンジジュースだ!?どうしてこんな色からこんな味になつのかは知らないけどこの程良く甘酸っぱいオレンジジュ、、、エゲンオラジュースのおかげで今まであった肉の油っこさやしょっぱさがリフレッシュされる!これぞまさに『いくらでも食べられる』だな!)
「このジュース美味しいねー。オレンジジュースみたい!」
「そもそもエゲンオラって何なんですか?」
「果実の一種で、紫色の外観からは似ても似つかない美味しさと一つの木だけでも多くの果実を実らせる事から、この国では砂糖よりも多く流通しているのです。」
と、穂村の素朴な疑問にも丁寧に返してくれたエリュ。
「それでは、腹ごしらえもしたことですし、屋台や店等を回ってホムラ殿たちにこの国を見て戴くというのはどうでしょう?」
「良いですね。それでは早速行きましょう。」
(あれ?財布が落ちてる。革製で巾着じゃなくてチャックが付いるし、かなりずっしりしてる。多分かなりの額はいってるんじゃないかな?まあ、落とし物は交番かその場に置いておけば、財布を忘れた事に気付いた持ち主が取りに来るから、ここに置いておこう。)
「「「「御馳走様でしたー」」」」
「また来いよ!」
そうして月兎亭を後にした。
「やー、美味しかったねー穂村くん。」
「うん。やっぱり異世界の楽しみの一つは食事だもんね。」
「お二人とも、イチャついて無いで服でも買いに来ましょう。その服だと街中では目立ち過ぎですので。」
そんな会話をしている間に、とても高そうな服屋が見えてきた。
「このお店にしましょうか。」
「た、高そうですけど、、、?」
「安心してください、フブキさん。これでも姫なのでこの国の財布の中に入っているお金だけで家一軒買う事が出来ます。」
「それなら安心ですね。じゃあ、入りましょうか。」
「いらっしゃいませ。どのような商品をお探しでしょうか?」
「この二人に合う服です。」
「かしこまりました。お二人は冒険者様でしょうか?」
「「はい」」
「それでは、このような服は如何でしょう?」
そうして手渡されたのは真っ白でとても軽い上、引っ張ってもビクともしないローブだった。そして、そのローブは見るからに高そうだった。
「そのローブは「女王蜘蛛』の糸を利用した高級品で、魔力を通し難い性質を持っています。そして、そのローブのフードに書いてある魔術回路は、『耐寒』と、『耐熱』で、フードを被れば寒い時は温かく、暑い時は涼しくすることが出来ます。一度、試着してみませんか?」
「はい。」
「してみたいです!」
二人は着替えた。
「うわぁすっごい軽いよ!穂村くん!」
「うん。それに肌触りもすごい滑らかだ、、、」
「でもちょっと薄いなー。これだと今の時期は風邪ひいちゃう。」
と、呟いた吹雪に対して店員は、「フードを被って見てください」と声をかける。
「うわぁ、すごい!暖かくなった!」
「流石は異世界、、、」
「これがいい!」
「ホムラさんは、それでいいですか?」
「うーん、確かにこれはすごいいいんだけど、、、色がちょっと、、、」
「色でしたら、三分戴ければ着けるこることが出来ますが?」
「だったらそういうことで。」
「私もー」
「色は装飾の部分と布地の部分、両方選べますが何色にしますか?」
「僕は布地が黒、装飾が青と白と黄緑を4:3:3で混ぜた色で。」
「私は、布地はそのままで、装飾は黄色かな。」
「かしこまりました。代金は金貨20枚の商品2つなので、金貨40枚になります。」
「はい。出番ですよ、姫様」
そして、この瞬間店員を含む全員が、エリュの異変に気付いた。エリュがバッグに手を入れたまま固まっているのだ。そして、今にも倒れてしまいそうなエリュは、唇を震わせながらも言葉を紡いだ。
「財布が、、、無い!?」