五話~のうきん~
国の門の近くに差し掛かったところ、衛兵らしき人物が現れた。
「お疲れ様です皇女殿下。今、門を開けさせます」
そう言った衛兵は門に戻り他の衛兵に門を開けるよう指示した。
「では行きましょうホムラ様、フブキ様。ここが私たちの王国です。」
開かれた門の中には、異世界の人々が暮らす大都市、否。大国家が広がっていた。それを見るや否や、吹雪が興奮した様子で話しかけてきた。
「穗村君!凄いよ!中世の建物みたいだよ!」
吹雪が指差した建物は、地球でいう『ベルサイユ宮殿』の様な建物が建っていた。
(そういえば吹雪はファンタジックなものが好きだったな、、、)
「ちなみにあれは中世というよりも近世のバロック様式だね。ちなみにバロックって言うのは、歪んだ真珠とかそんな意味だったと思うよ。」
「も、もう!そういう事は良いの!それより早く行こうよ!」
「イチャツイテイナイデイキマショウオフタリトモ」
「すみません。アルバートはそういった関係を一切持ったことがないもので。まあ、行きましょうか」
心の中でアルバートを嘲笑してから、そうだね、と穂村は軽く会釈して大きな建物(恐らくお城なんだろうが)に向かって行った。
大きな建物の門から入るとメイドがずらっと並んでいた。
「お父様は何処に居られますか?」
メイドの一人にエリュが聞くと案内してくれた。
「ふぅ、、、お父様、入ります」
(あれ、何でため息を?)
どんな人なんだろう、と想像しながら入る穂村。そこには、想像を絶する光景が広がっていた。
「きゅうせんきゅうひゃくきゅうじゅうななぁ、きゅうせんきゅうひゃくきゅうじゅうはちぃ、きゅうせんきゅうひゃくきゅうじゅうきゅうぅ、いぃちぃまぁぁんん!」
何故か、腹筋をしている上半身裸で40歳くらいの中年男性がいた。
「お父様、そんなはしたない格好で腹筋なんてしてないで返事くらいしてください。それでも国を納める人間なんですか?」
エリュは声のトーンを低くして、まるでGを見るかのような冷徹な眼差しで見つめていた。
「おぉ!我が愛しのマイハニーよ、そんな冷たい眼差しで見つめないでおくれぇ!」
「はぁ、、、いい加減その呼び方は止めてもらえませんか?」
そんなやり取りに呆気を取られていたところ、話を進めるべく国王が口を開いた。
「そんな事より何か用事があって来たのだろう?普段何かしらの用事がない限り、儂の部屋になんて近寄りすらしてくれないじゃないか、それに後ろの3人は誰じゃ?」
急な口調の変化や、「3人」と言った事に動揺しつつもしっかりと返答した。
「国王、、、私の名前はアルバート・ネーサス、この国の王宮騎士団の副団長をさせてもらっていて、姫様の護衛役でございます。因みに騎士に任命してくださったのは国王様です。」
「僕は異世界から来た一般市民のホムラ・シグサメです。」
「右に同じく一般市民のフブキ・ビャクヤです。」
「何っ!異世界人じゃと!これは凄い!今宵は宴じゃー!」
急にハイテンションになった国王だった。