ダンジョン創世記0002
巫山戯た内容ではあった訳だが…一応は警告に従い羊皮紙を床へと落とすと…羊皮紙から怪しい気配が!慌てて飛び退くと同時に羊皮紙が燃え上がる!
一体どう言う絡繰なんだぁっ!確か…何の変哲もない代物で発火する要因など見当たらなかった筈。
そんな羊皮紙が行き成り燃え上がったから驚きだ!
ボーゼンっと燃え行く羊皮紙を眺めていると…瞬く間に真っ白な灰へと。
完全に燃え尽きてしまった…な。
しかし…ダンジョンコアとか記載されていたが…それらしき代物は見当たらない。
訝しく思い辺りを再度見渡していると…燃え尽きた灰が、再度業火となり火柱が上がる!
うおおおっ!慌てて火柱から飛び退き、火柱を見守っていると…唐突に消え去る。
一体…なんだったんだ?
そう思っていると…火柱が消えた場所には俺の背丈ほどはある物体と一冊の本が。
物体は黒い球体を3つの爪が支え、その爪は3本の柱へと。
その柱は下部にて台座のような物へと繋がっていた。
見様によれば、巨大なトロフィーにも見えるだろう。
そんなトロフィーの横には床へ直接1冊の百科事典のような分厚い本が落ちていた。
革張りの装幀がなされた本は非常に高そうな品ではあるが…何処から現れた?
いや、それを言うと…トロフィーのような代物もだが…
ただ現在の俺には、これらの代物しか無い状態だ。
いや、机や椅子、ベッドに蝋燭も有ると言えば有るのだが…それが何の役に立つと?
先程の羊皮紙に記載された人を食ったようで上から目線にて揶揄するようなの文面から鑑みるに、どうやら俺は拉致されているみたいだ。
悪戯か何かかと思いもしたのだが…決定的なことが、な…
記載にあった内容で確実に確認できること…それは俺に記憶が残っているかどうか…そう、自分の記憶は偽れない筈。
そう考えた俺は、自分の名前や生い立ちなどを思い出そうと…それが、無理だと思い知り、絶望的な気持ちを味わうこととなった訳だ。
そう、あの羊皮紙に記載されていたことは、全てが事実だったのだ。
「これから…どうすりぁ良いんだよぉ…」
絶望的な状況にて心が折れそうになっている現在、それでも動かねばなるまい。
羊皮紙には空気だけは清浄に保たれているとは言うものの、食い物どころか水すら無い状態だ。
飢える前に渇きにて果てることになってしまうだろう。
また、ご不浄も存在しない部屋では衛生上の問題から病気になる可能性もな。
このような密閉空間で生活空間としては不適切な場所へと押し込まれている状態で、何をしろと?
そう思いながらも、唯一の手掛りとなると思われる本を調べることに。
革張りの表紙を開き目次を飛ばした1ページ目へと目を通すと…大まかな説明が記載されていた。
∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
はじめに
本書はダンジョンを作成するに当たり参考となるガイダンスである。
本書に記載されている内容を元にダンジョンコアへ命ずることにてダンジョンの制御を試みられることを願う。
・ダンジョンマスターとは
ダンジョンマスターはダンジョンを管理せし者にてダンジョンの1部である。
故にダンジョンに縛られし者にてダンジョンから離れること能わず。
その代償としダンジョンを異界からの干渉にて構築制御せし権利を得た者とする。
構築制御はダンジョンコアをもって成されるであろう。
貴殿の死はダンジョンの死と同意義にてダンジョンを己が命を守るためにも堅牢たる要塞と化されることを願おう。
・ダンジョンコアとは。
本書が現れると同時に現れた3本柱に支えられた球状コアの事である。
3方の柱へ刻まれたルーンと呼ばれる魔法文字が爪を通しコアを制御すべく機能している。
台座へは各種魔方陣などが刻まれており、コアにてダヌへと変換された力を元に異界の力を引き出し物質を創り出すのである。
ダンジョンコア自体は堅牢にて不懐処置を施している故に破壊されることはなかろう。
だが努々(ゆめゆめ)忘るるなかれ、ダンジョンコアはダンジョンの核にて心臓であることを。
ダンジョンコアが失われることはダンジョンが死ぬということである。
即ちダンジョンマスターの死と同意義である。
ダンジョンコアは人々からは秘宝と呼ばれ莫大な褒賞と対価を得られる代物と知られている。
国はダンジョンコアにて得られる素材を欲しダンジョンコアを求める。
ダンジョン外でコアを使用できるのはダンジョンにて貯えられたダヌが尽きる迄であり、当然ダヌは該当ダンジョンでしかコアへと貯えること能わず。
よってダンジョン内にて蓄えられたダヌ分しか物を生み出さぬ。
だが…ダンジョンマスターが死しき時に生み出される膨大なダヌを吸収し貯えたるダンジョンコアが含むダヌは膨大となろう。
その多くのダヌを消費して得られる代物は垂涎の的となりえるのだ。
そのことからも人々はダンジョンコアを求めて襲い来る故に、周到たる防衛構築に勤しまれるように。
・ダンジョンブックとは。
本書のことである。
異界よりダヌを用いて得られる効果について記載してあるが、一種のカタログに近いと考えて良かろう。
異界の力にて空間自体への干渉を行い物理的に不可能と思われる現象を作り出す。
ある意味、異界の神の権能を引き出しているとも言えようが、その力には意思はなくダヌを対価に使役できるのみであろう。
本書を紐解きダンジョンを早く構築することを願う。
猶予は1年とするが、期限を過ぎると自動でダンジョンが開放されるので留意願おう。
早ければ早いだけ準備期限内を維持すべきために与えたダヌが還元されようことを肝に銘じよ。
また、己が選んだ地形へと開放されしことで永らえることもあろう。
まぁ地図などの世の情報は得られぬように制御されておるので地形的指示しか行えぬが、行わぬよりは良いであろう故。
さて、はじめに伝えるべきことは以上である。
良きダンジョンライフを送られることを願おう。
∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
そのような内容が記載され、自分の置かれた…いや、ダンジョンマスターの立ち位置というべき現状を嫌でも理解したのだった。