這い寄る混沌非日常の足音
非日常が始まると思った?残念。日常のままだゾ。ビバ日常。
そんなことを考えながら学校に行く。
「おはよう。ヨミくん。今日も元気そうだね」
「おう、いお。今日も可愛いな」
こいつは朝華伊織。俺はいおって呼んでいる。外見超絶美人のショートカットの女の子に見えるが
「ありがとう。男の僕に言う台詞じゃないよね?」
殴られた。そう。いわゆる男の娘である。おっと勘違いしないでくれ?確認したよ。ついていたさ。立派なのが。
「何かキモい事考えてる顔だね?」
また殴られた。あと人にキモいって言うのやめよう?傷つくから。
「オース、お前ら。ヨミは一段とキモいな」
だからやめろって言ってんの!!何なの?夜和泉のライフはとっくにゼロよ?
ちなみに、夜和泉瑞樹の最初をとって『ヨミ』らしい。
「おはよう。お姉様」
「かーっ。いつ見ても伊織は可愛いねぇ!」
「お姉様のおかげだよ」
ちょっと扱い違いません?…こいつは伊織の姉の朝華昴。男勝りな鋭い目。伸ばしきった長い髪。昴が男で伊織が女って言われても全然信じれる。髪型交換すれば。
「てか、いつもギリギリのお前がなんでこんなに早いんだよ?」
「え?だって初登場だろ?紹介してもらいたいし」
メタいこと言うなよ。
…まあ、一波乱あったがまだ日常だ。こんな感じで雑談しながら学校に行く。
ちなみに、俺と伊織が1年2組。昴が3組だ。だから友達の少ない俺は伊織と話す。なぜかは知らないが、女子グループがいつも俺達を見守っている。が、そんなことはどうでもいい。
「なあ、いお。好きな人いる?」
えぇ~!?…女子が五月蝿いな。日常会話だろ?
「えっと…僕はいないかな。女の子にはね」
キャアァアア!!…ちょっと黙ってろ!
「いお、お前わかって言ってんな?」
「てへ」
はい可愛い。まあいないのは本当なんだろう。
「そーゆーヨミくんはどうなの?」
「…この学校にか?」
伊織が頷く。一応二人、いるにはいる。気になってるって程度だが。
まず、このクラスの紡原蓮華。大人しい子だが、いつもニコニコしてて可愛い。二人目は3組の詠月恵。スポーツ万能、成績優秀。才色兼備に加えてツンデレらしい。そこに男心が魅かれる。
「…って、なんでそんなに意外そうなんだよ。いお」
「いや…ちょっと感心した。がんばれ」
いや…なにをだよ…。まあ、伊織のおかげで全員紹介できたな。伊織には感謝しなければ。
「それと、今日転校生が来るみたいだよ」
「え?なんで知ってるんだよ」
「僕の情報網を甘く見ないで欲しいな」
そうだった。こいつは男女問わずありとあらゆる情報網を持ってるんだった。
「ちなみに女の子ね」
んじゃあ、俺はモブらしく、『彼氏いますか?』とか、『好きな人のタイプ』とか、『スリーサイズを上から!』とか聞こう。脇役はこうでなきとな。
…少しずつ日常が綻んでいることに俺はまだ気づかなかった。