壱
辿りついた住所は怪しい神社だった。
住宅街の奥に佇むこの場所は森に覆われ、怪しげな雰囲気が漂っていた
「…本当にここよね?」
もう一度書いてもらった住所を確認し、携帯の地図アプリを見る
「マジですか、木島君」
木島真司クラスの中でも地味で目立たない存在。常に目を覆い隠す黒い前髪は、誰も触れることが出来ない。それは、地味というだけではなく、彼の持つ独特な雰囲気、つまりこの神社と同じく、怪しさ満載なのだ。
だが、あくまでも見た目だけで、身長もあまり高くもなく低くもなく平均的で、勉強も運動もすべて普通。
何かを特別持っているわけではないのだが、やはり声をかけるような人はいなかった。
そして、私内藤未菜はそんな木島君が珍しく休んだためプリントを持ってきたのだった。
目の前にある古びた石畳の階段を一段登る。
そこから数段見上げた景色はもうほとんど森の中で、5月の夕方だというのに、かなり暗い。
どこかで、カラスの鳴き声が響いて聞こえた。
(こんなの、無理でしょ!?)
一番家が近いからという理由により、決まったプリント運びは、正直言って辛かった。
しかし、ここは『帰ったらアニメが観れるぞ、早く終わらせてしまおうという』脳内会議の〝冷静〟の判決により、古びた石畳の階段を登っていった。