恩人だとしても怖いものは怖い話
「で、これからどうしましょうか?」
少女は服を着て、近くの岩に腰掛けて皆に問う。
その傍らには服を剥ぎ取られ、全裸のまま鎖でぐるぐる巻きにされた御者の姿が。
カレンは皆の意見を求めたつもりなのだが、エルフもドワーフも、平伏して顔をあげない。
――おかしいわね。今の状況って私が皆を助けてあげたはずなんだけど。
それでも辛抱強く待てば、ドワーフが恐る恐る手を上げる。
カレンは喜び、促した。
「あ、あのどうか命だけは、お助けを――」
――なんでそうなる。
「いや、だから、私は契約士で、彼は私の契約精霊なの!」
だから全然危険はないと説明するのだが、ドワーフもエルフも納得がいかないよう。
「大体、イラが悪いのよ」
『善処スル』
「って、イラ? どこにいるの?」
声はすれども影がない。
カレンはイラを探すのだが、見当たらない。
「あー、嬢ちゃん。その、頭の上――」
ドワーフの指摘に、頭に手を伸ばせば、冷たい感触が。
――カレンの頭の上からニョキッとイラが生えている。
人間の頭部が二つ縦に並んでいる様子は気色悪い事この上ない。
「な、なにをしているの! ちょっともしかしてこれって、すっごく気持ち悪いんじゃないかしら?」
尋ねられたドワーフは無理やり愛想笑いを、エルフは小さく悲鳴を漏らし視線をそらす。
「もう! ややこしくなるからあんたは引っ込んでいなさい!」
カレンは手で無理やりイラの頭を影に押し込んでいく。
沈んでいくイラ。
傍から見ると、カレンの頭にイラの生首が飲み込まれていく光景。
そうでないとわかっていても、正視に耐えられるものではない。
「――で、これからどうするつもり? 断っておくけど、次、くだらない命乞いなんてしたら――あんたらの身体に生首を生やすわよ」
カレンの誠意が通じたのか、『とても素直になった』ドワーフとエルフは近くの街で開放して欲しいと頭を下げてくれた。




