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8.ゴブリン退治

「おはようございます・・うぁ。」

「あら,ウサギちゃん。おはよう。」


ここは、冒険者ギルドです。コリンナさんは、アンを見るなり抱きついてきました。豊かな胸を押しつけて抱擁しており息苦しそうです。男の子のアンにはそれはそれで良いようですが・・


「昨日はどうだった。男物のズボンなんか履いて、素敵な鎧はどうしたの。買えなかったの?」

「いやぁ、それが・・お金が足りなくて、結局、カレンの剣だけしかかえませんでした。」

「それじゃ。かわいい鎧は買えなかったの。残念ねぇ。魔法師の服もかわいいやつを用意していたでしょ。」

(やっぱり、こいつが犯人か。ギルさんが変態と知っていて、あそこを勧めたな。)

「僕は男です。あんなの着ることができません。それより、今日は依頼を探しにきたんです。」

コリンナさんはちょっと憮然とした顔をしています。

「依頼ねぇ。ちょっと、こっちへ来て、依頼書を見てあげるわ。」

「助かります。」


コリンナさんは、アンを膝の上に載せて依頼書の束を見せています。なぜ、膝の上で見ないといけないのかは謎です。


「そうね。ウサギちゃんにふさわしい仕事ねぇ。」

「あのう・・・もう、降りてもいいですか。」

「だめよ。よく見えないじゃないの。」

「ランクが上がったから、これなんかどうかうかしら。」

「これってストー村のゴブリンの調査ですか。」

「どういう依頼内容なのですか?」とカレンが聞きます。

「ストー村の郊外の森でゴブリンの目撃情報があるの。近く、ギルドから討伐隊が派遣されるから予定になっているだけど。そのための調査と状況確認の依頼よ。」

「なるほど。理想的には巣を見つければ良いんですよね。」

「はぐれコブリンがいれば討伐しても良いけど。巣を見つけたら必ず帰ってくるのよ。あつら、集団になると強いから。普通のゴブリンだけじゃなく、アーチャーゴブリン、メイジゴブリン、ソルジャーゴブリンまでいるから気をつけてね。」

「はあい。」

「よろしい。あーん、ウサギちゃん・・、いってらっしゃい。早く帰ってくるのよ。夜遊びしちゃだめよ。」


 やっと、膝から降ろしてくれました。ああ、出会ったばかりの頃は、冷徹聡明なエルフの受付嬢でしたが・・・壊れています。


ウサギコンビは東門に向かいます。ブロフの町の出入り口はいくつかあるのですが、必ずここを通るようにとジェィクとマシューに頼まれていました。なんでも、一日一回は、カレンと話をしないとレスリーの機嫌が悪いそうです。アンは面倒だからイヤだと言ったのですが、夕食代を出すと言ったらカレンが承知してしまいした。


いつものように地獄の門番レスリー・ニッシュに声をかけました。

「お早うございます。レスリー・ニッシュさん。」

「おう、カレンか。いいもん下げているな。それが新調した剣か。」

 カレンは腰に下げていた。黒い無骨な剣を見せます。

「ありがとうございました。おかげで良い剣が買えました。」

「そうだろう。あいつは、ちょっと、気むずかしいが、腕は確かなやつなんだ。」

(レスリーさんの前ではあの趣味は披露したことがないみたいだな。)

 黒い剣を抜いて、薄青く光る剣をみて息をのんでいます。

「おお、これはいものだな。この剣もわしには、ちょっと、軽いが良く切れそうだ。」

「そうなんですよ。ここの波紋がいいでしょ。」

「おう、これか。これは良い物を買ったな。」

「へへへ。」

 カレンとレスリーは気が合います。

「それで、どこへ行くんだ。」

「ストー村です。」

「ゴブリンだな。気をつけろよ。討伐隊が午後にもいくからな。無理をするんじゃないぞ。」

「では、行ってきます。」

まるで可愛い息子の心配をする父親のようです。


ストー村は、南の草原を超えて歩いて半日ほどの村です昼前には着きました。十数軒ほどの家屋が集まった小さな村でした。のどかな牧歌的な風景です。ほとんど人通りはありません。アンは、村長さんを訪ねて、依頼内容を確認しようと思いました。さて、村長宅はどこでしょう。荷物を担いだ女性を見つけに尋ねます。


「すみません。村長さんの家はどこですか?」

「この奥ですよ。大きな白壁の家がみえますから」

「ありがとうございます。」

「何かご用で?」

「ゴブリン討伐にきたんですよ。」

「ああ、そう言えば今日来て下さるんでしたね。よろしくお願いします。あいつらが現れて森に入れなくなって、困っているんです。」

「僕達は、先発調査ですが、お任せ下さい。」

「あら、そうなの。頼もしいこと。実は私はそこの娘で、シャーリー・リックウッドと言います。ご案内しますね。」

「え?そうなんですか!お願いします。」

「あっ、持ちましょうか。」とカレンが荷物に手を出しました。

「ありがとうございます。」


しばらく、街道を進むと一段と大きな家屋がみえました。たぶん村長さんのお宅でしょう。解放されていた門を抜けて中に入ると中庭があり、おじいさんがベンチに腰掛けています。


「お父様、ただいま。」

「おお、シャーリーか。お帰り。」

「こやつらは何者かな。」

「お父様、失礼よ。この人達は、ブロフの町の冒険者ギルドから派遣されてきたものですよ。」

「僕がアン・ノーベル、こちらがカレン・ターラントです。」

「おお、冒険者ギルドの冒険者ですか、なかなか、かわいいお嬢さんですのう。わしがストー村の村長ジェフ・リックウッドじゃ。確か、十数名と聞いておったが・・」

「僕らは先発隊です。調査にきました。」

「なるほど、そういう訳か。」

「ゴブリンの話をきかせてもらえますか。」

「ここではなんですから、お父さん、食堂の方に行ってはいかがです。」

「そうするかのう。」


なかなか大きな家ですが、造りは質素なものです。木製の大きなテーブルと椅子が並ぶ部屋に案内されました。そして、テーブルの上に羊皮紙を何枚か広げられていました。


「さて、何から話そうかのう。そうじゃ、牧草地の中で羊が消えたことかのう。てっきり、オオカミだと思っていたんじゃ。ところが、森で山鳥を取っていた狩人が、泉の近くでゴブリンに出会ったんじゃ。それ以来、森の奥の泉は近づくなと言っているがのう。」

「それは、どの当たりですか。」

「地図で示そう。ここじゃ。」


 それは、村、森、泉、山、街道が書かれた簡単な地図でした。そこには、バツが一杯書かれていました。


「これは・・・他の目撃の場所ですか?」

「えー、すごい数じゃないですか。」

「ここ、先月ぐらいから急にふえたんじゃ。」

「ここが水場か。こっちは狩り場、こりゃ、十分生活している可能性が高いなあ。」

「そうなんじゃ。そのうち、村に下りてきそうな気がするんじゃ。」

「繁殖が進むと知恵のあるヤツが生まれるらしい。そうなるもう戦争だ。早く巣をみつけて叩かないと。」

「そうなんですよ。それで、領主様に泣きついたんじゃが、『まず、巣を見つけろ。それからだ。』と言われてのう。」

「そうですか。もう少し情報を集めたいんで、酒場のようなどこか人が良く集まるところはないですか。」

「酒場ですか。『テリーの店』というのがある。」

「そこは、昼も食べられますか。」とカレンが口を挟みます。

「もう、腹が減ったのか?」

「へへへ」

「飲食の提供は、昼もやっていますか?」

「ええ、やっておるよ。」

「ありがとうございました。行って見ます。」


 アンとカレンは村長の家を出て『テリーの店』に向かいます。どうもそこは雑貨店の用でした。金物の農具まで扱っているようです。さらに、飲食店まで兼ねているらしいです。まずは、飲食店舗らしきところに入ります。見ればどこかで見た男が一人でソーセージを肴にエールをのんでいます。2人を見て声をかけてきました。


「おお、これは、ウサギコンビ・・・失礼、殲滅ウルフキラーのお2人じゃないですか。私ですよ。小物商のシルヴェスター・グルーバーです。」

「ああ、お久しぶりです。」と

小物商のシルヴェスターに軽く挨拶して、アンは店の奥に向かって叫びます。

「すみません。食事できますか?」

アンが店の奥に声をかけると恰幅のいいおばさんがでて来ました。

「あらまあ、かわいいお嬢さんだこと。できますよ。こんな田舎だからたいしたものはないけど。」

「なんでも結構です。パンと一緒にください。」


「シルヴェスターさん、ご一緒して良いですか。」

 そう言って、アンとカレンは、シルヴェスターが座るテーブルにつきました。

「いいとも、今日は何の・・ああ、ゴブリンの依頼か。」

「そうなんですよ。まもなく討伐部隊くるとかで、僕たちはその先行調査にきたんです。」

「なるほど。その討伐部隊は、すべて、冒険者か。」

「そうらしいですね。」

「領主軍はこないのか。なるほどねぇ。」

「そう言えば、カレン、ちょっと、変だとおもわないか。」

「うん、何が?」

「領主様にまで伝わっているのに、領主軍を派遣せずに、冒険者に依頼するなんて。」

「領主軍?そんなのあるの。」

「ある程度の領主は、私設の軍隊を持っているんだ。普段は巡回警備をしているけどな。ゴブリンは、領主軍の良い軍事訓練になる程度だ。喜んで領主軍を派遣してくるはずなんだ。」

「そうなの。ふーん。」

「ははは、よくご存じですね。でも、今の領主様が、そんなことしませんよ。」

「何故なんです?」

「ここストー村の東に廃坑があります。それというのも、領内に金鉱があるというので開発をすすめたのですが、掘っても、掘っても何もでない。情報提供者に逃げられたて大損をしたことがありましてね。結局、詐欺に引っかかった訳ですが、領主軍を動かすと、昔の恥を晒すことになるんで、冒険者を使って秘密裏に処理しようとしているじゃないですか。まあ、このあたりの人間はだれでも知っていることですがね。」

「廃坑があるんですか?ゴブリンは洞窟や廃坑に住み着くことが多いそうです。そこを拡張して住んでいるのは確実じゃないですか。」

「シルヴェスターさん、その廃坑というのはこの地図のどこですか?」とカレンが地図を取りだして見せました。

「ここですよ。」

「まちがいないなあ。ここが巣だとすると目撃情報も合点がいく。」

「やったあ。これで依頼達成ね。」

「いやいや、現場に行って、確認しないとな。」


 その時、さっきの女将さんが料理を運んできました。


「ほれ、ポトフだよ。さぁ、お食べ。」

「わーい。」



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